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神代辰巳監督『青春の蹉跌』

2012-09-30 06:06:00 | ノンジャンル
 神代辰巳監督の'74年作品『青春の蹉跌』をスカパーの日本映画専門チャンネルで見ました。
 大学のアメフト部の同級生・三宅(河原崎建三)のアパートにやって来た江藤(萩原健一)は、彼が同棲する京子(赤座美代子)と出会います。アメフトの試合に勝利した江藤は、試合を見に来ていた従妹の靖子(檀ふみ)から食事に誘われますが、用事があると言って断ります。次期のキャプテンも断る江藤。彼は家庭教師先の娘(桃井かおり)の家に行き、下着姿の彼女に「やろう」と言いますが、「何を」と言う娘に「勉強を」と言うと、娘は笑い始め、服を着ます。「最後の授業なのだからちゃんと教えてもらいなさい」という義母に、水商売上がりと罵倒する娘。
 試験に合格した娘は、彼氏を連れた友人たちと旅行すると言って、江藤をスキーに誘いますが、江藤が行ってみると、娘は友人たちは皆病気になったと言います。「えんやーとっと」と言う江藤の声をバックにスキーする二人は、凍死体のアベックを発見します。
 学園紛争の大学で、元活動家の小野(森本レオ)は学生たちに自己批判を迫られますが、逃げ出し、久しぶりに江藤に会います。司法試験を受けることにしたという江藤は、アメフト部を辞めたことを小野に告げます。娘とのセックスを繰り返す江藤。妻と幼い2人の娘と住む自分のアパートに江藤と三宅を招いた小野は、既に3度司法試験を落ちているので、今度の試験に落ちたら田舎に帰ると言い、自分が試験を受けるのは階級闘争のためだと言って江藤に殴りかかります。
 自分の試験が近いので、当分会わないようにしようと言う江藤に、試験に受かってから結婚しようと言う娘。三宅は、京子が元恋人との間に生まれた子と一緒に暮らし、刑務所の彼に未だに差し入れをしていると言います。新宿の歩行者天国を娘と歩いていた江藤は、若い男性と歩く靖子が「100円を恵んでくれ」という女性にからまれ、やがてその女性の仲間たちに囲まれるのを目撃します。喫茶店で靖子を慰める江藤は、靖子がその男性からプロポーズされたと聞きます。
 セックスで「私、うまくなったでしょ?」と言う娘から、生理が遅れていることを知らされ、堕ろせと言う江藤に、「怖いから嫌だ」と言う娘。義母が不倫をしている現場に乗り込み、金をせびる娘。娘は江藤に堕ろしたと言いますが、彼から金は受け取ろうとはしません。つわりで吐く娘は、義母が駆落ちしたと江藤に告げます。筆記試験に受かり、靖子に誘われてキックボクシングを見に行く江藤。小野は試験に落ち、田舎に帰ります。内ゲバで暴行を受けた三宅と交番に向かっても何も言わずに交番を立ち去る江藤に「えんやーとっと」の声がかぶさります。
 司法試験に合格し、スポンサーだった叔父のヨットに乗る江藤は、「いずれは自分の会社を継いでもらいたいので、大学に残れ」と叔父に言われ、靖子と一緒に海で泳ぎます。「今日から私だけにして」と靖子に言われる江藤。娘はセックスの後「短大を辞めた」と言いますが、江藤は「婚約したからもう会えない」と言い、娘の腹を蹴ろうとすると、娘は「死んじゃう」と言い、子供を堕ろしていなかったことが分かります。「えんやーとっと」の声をバックに産婦人科に行く2人。既に5ヶ月なのでもう堕ろせないと言う医者。江藤は冬の東北に娘を連れていくと、深い森の中で2人はセックスし、「滝壷に落ちて心中しよう」と言う娘を江藤は絞殺してしまいます。「えんやーとっと」の声。
 京子の子と遊ぶ江藤。パーティで靖子との婚約を発表した江藤は、飲み過ぎて何回も倒れます。靖子と自転車の練習をする江藤。アメフト部に復帰した江藤の元に刑事がやって来て、「彼はもう逃げられない」と言いますが、江藤は試合で首の骨を折るのでした。

 日本版『アメリカの悲劇』といった話で、萩原健一と桃井かおりのだらだらした感じが印象的な映画でした。

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ポール・ギャリコ『ザ・ロンリー』

2012-09-29 06:59:00 | ノンジャンル
 高橋洋監督・脚本の'07年作品『狂気の海』をDVDで見ました。とてつもなくチープな作りと荒唐無稽なストーリーに唖然としました。

 さて、山田詠美さんとの対談本『文学問答』の中で、終戦後に書かれ、戦争というものがよく分かると河野多惠子さんが言う、ポール・ギャリコの'47年作品『ザ・ロンリー』を読みました。
 ロンドン郊外のゲズバラ空軍基地に所属する23才のジェリー・ライト少尉は、戦争神経症のために搭乗勤務をやめてスコットランドに行き、2週間ほど休んでくるようにと、航空医官から言われます。彼はアメリカのアッパーミドルの家族の中で育ち、何不自由なくこれまで過ごしてきました。彼はハイスクールや大学での1、2年間にフットボールをやったように、戦争という「ビッグ・ゲーム」に参加し、リベレーターという愛称でよばれるB-24爆撃機のクルーとともに毎日大試合に取組んでいました。彼が慕うレスター・ハリソン少佐はジェリーに、休暇に女の子を連れていけば、寂しさもまぎれると助言します。そう言われたジェリーは、将校クラブのダンスパーティで知り合い、何回かデートを重ねていたパッチズのことがすぐに頭に浮かびます。彼女は英国空軍婦人補助部隊の一員で、やはり休暇がもらえるとジェリーに伝えていたのでした。ジェリーは故郷に残してきた婚約者のキャサリンのことも考えますが、幼い頃から付き合ってきて、彼にとっての「聖女」であるキャサリンと、別に美人でもないパッチズを比べることはあたわず、パッチズに彼女の存在を知らせた上で旅行に誘うと、パッチズは誘いに乗ります。パッチズは既にジェリーに恋していたのでした。
 旅行に出かけた二人は、自転車で風光明美なスコットランドをめぐるうちに、一心同体と思えるほど親しくなりますが、先に休暇が終わるパッチズは人足先に帰ります。残されたジェリーは、パッチズの存在が自分の中でいかに大きなものになってしまっているかを認識し、たまたまスコットランドで会った同郷のウィリアムズがVIPの移動のためにアメリカまで往復するというのを聞き、それに同乗して、キャサリンに婚約の破棄を伝えようと考えます。
 故郷に着いたジェリーは、実家に向かう途中で、図書館から出てきたキャサリンを見かけますが、声をかけることができません。実家に帰り、パッチズと出会ったのでキャサリンとの婚約を破棄したいと両親に告げると、母は取り乱します。父は自分が第一次世界大戦の時に「例の」フランス娘と1週間ほどのバカンスを過ごした時のことを語り、それでも故郷に帰って婚約者だった母と結婚し、今の生活を築いたことについて悔いはないと言って、一時はジェリーの怒りを買いますが、やがてジェリーは今までの故郷での生活を思い出し、父への怒りも収まります。結局キャサリンと会う勇気はなく、そのままイギリスに戻ることにしたジェリーでしたが、父は早合点してジェリーがパッチズとの結婚を諦めたとジェリーの母に告げ、疲れ果てたジェリーもそれに同意せざるをえずに、イギリスに帰っていきます。
 一方、パッチズはジェリーに婚約者がいるにもかかわらず、彼と旅行に出たことについて自分を責め、他の男性の誘いに乗ってデートをし、その帰りに強引にキスされますが、やはりジェリーへの思いはあきらめられないことを悟ります。そしてイギリスに帰り、混乱したままだったジェリーは、街角でパッチズに出会うと、思わず彼女を抱きしめ、彼女にプロポーズして、それが認められると、彼女を愛していること、キャサリンを愛したことなど今までなかったこと、そしてパッチズと結婚することによって生まれる様々な困難を乗り越えていく覚悟が自分にできていることを知るのでした。

 きわめてシンプルなストーリーが、淡々と語られていく小説であるとともに、アッパーミドルとして生きるジェリーの家族の「子供」ぶりが暴かれる小説でもありました。人称が絶えず変わるという珍しい小説でもあったと思います。

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増村保造監督『「女の小箱」より 夫が見た』

2012-09-28 09:36:00 | ノンジャンル
 増村保造監督の'64年作品『「女の小箱」より 夫が見た』をスカパーの日本映画専門チャンネルで見ました。
 入浴後に夫の川代(川崎敬三)から波子(若尾文子)にかかって来た電話は、今日も帰りが遅くなるというものでした。ナイトクラブを経営する石塚(田宮二郎)に会社を乗っ取られようとしている株式課長の川代は、石塚から株を買い戻すように重役に命じられます。石塚は株の過半数を取るまで買い続けると川代に言いますが、川代は帰りしなに石塚の秘書・エミ(江波杏子)に今夜も会う約束をします。
 結婚7年で半年も夫と夜の営みがないと嘆く波子を、産婦人科医は石塚のナイトクラブに誘います。マダムのヨーコ(岸田今日子)は銀行の頭取を自分のアパートに誘い、酔った波子を家まで送った石塚は、彼女にキスして別れます。頭取と寝て4千万を出させることに成功したヨーコに、汚れた体を抱くのは嫌?と聞かれた石塚は猛然と彼女を抱きます。
 株を守り切れば部長になれると言われた川代は、波子に株主名簿を預けますが、疲れたと言って波子の夜の相手をしようとはしません。エミから得た情報により売春容疑で石塚のナイトクラブを営業停止にさせた川代でしたが、石塚にエミとの不倫を波子に密告され、その現場を見た波子の帰りを食事に誘った石塚は、波子の家に強引に上がり、株式名簿を見て、大株主に太陽電機の社長・大曽根(小沢栄太郎)がいることを知ります。エミは川代からスパイ料をもらいますが、バーのマダムになりたいと言う彼女はもっとお金を欲しがります。川代がエミのアパートを去るのを見る、石塚の部下でエミの元恋人だった吉野。石塚が波子の元から帰ろうとするところに出会った川代は、石塚に二度と会うなと波子に言います。別の部屋で寝ると言い出す波子。川代を獣呼ばわりする波子を殴る川代でしたが、酔った後、彼女に謝ります。
 石塚はナイトクラブを売って、足りない分はヨーコの体に頼り、大曽根の株を買おうとします。警察が川代の元を訪れ、エミが昨晩殺されたことを告げますが、彼は夕方には家にいたと嘘を言い、波子に口裏を合わさせます。しかし波子は警察を訪れ、証言をくつがえし、川代は会社で刑事の訪問を受けます。警察から石塚とともに出てきた波子は、石塚から愛の告白をされ、家に帰ると酔っている川代に離婚してくれと言いますが、川代は絶対にしないと言います。川代に乱暴された波子は家を出て、兄の家に一晩泊めてもらいますが、兄は家に戻れと苦言を呈します。
 やっと金をそろえた石塚は大曽根を説得して株を譲ってもらうことになり、川代は重役から責任を追及され謹慎となります。波子に泣きつき、体を売って石塚に株を売るようにしてくれと言う川代。石塚は吉野の手に歯型の傷があるのに気付いて、エミ殺しの犯人が吉野であることを知り、彼と一緒に警察へ行きます。ヨーコは石塚にやっと夫婦になれると言います。石塚から犯人が分かったと知らされた波子は、彼の誘いに乗り箱根に行くと、そこで株を売ってくれれば結婚してもいいと言うと、石塚は株よりも結婚を取ります。石塚と寝て、こんなに燃えたのは初めてと言う波子。波子は川代にも株か自分かを迫り、石塚と結婚するふりをして株を売らせろと言う川代に、石塚をだますためとして離婚届を書かせます。10年体を捨てて自分につくしたヨーコに、株を売って得た2億を渡して別れようとする石塚でしたが、最後に一度抱いてというヨーコに応じると、彼女に腹を刺されます。産婦人科医で石塚を待つ波子の元に、課長に戻った川代が兄と来ますが、波子は川代とよりを戻すつもりはないと言います。医者から絶対安静と言われた石塚は、暴力団を使って波子に硫酸を浴びせようと電話するヨーコを止めようとし、波子をおびき出そうと電話するヨーコを絞殺します。電話口の波子に「会いたい」と言う石塚。駆けつけた波子の腕の中で、石塚は息を引き取るのでした。

 吐き捨てるような台詞回しは、この頃から既に見られ、最後の凄惨な愛の場面は『曾根崎心中』を思わせる迫力でした。若尾文子さんの代表作の一つだと思います。

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阿川弘之『霊三題』

2012-09-27 07:53:00 | ノンジャンル
 山田詠美さんとの対談本『文学問答』の中で、終戦後に書かれ、戦争というものがよく分かると河野多惠子さんが言っている、阿川弘之さんの『霊三題』を読みました。
 『看護婦の幽霊』 わたしは武漢の漢口海軍病院に幽霊が出るという話を聞いたのは、終戦後の昨年の秋、十一月の末か十二月の初めか、もっと先だったか今ははっきりしません。病院にはクラスの風野が警備指揮官として泊りこみ、親しい歯科医の丸山中尉もいました。そこを訪ねたわたしは、三人で合流したあと、風野とわたしで支那町で酒と肴を買って帰り、丸山中尉の希望で、歯科の看護婦を二人よんで、酒宴を催しましたが、そこで六階の階段で富永シズの幽霊が出るという話になります。富永シズは終戦後二カ月ばかりして病死した外科の看護婦で、軍医長のU中佐からひどくつらくあたられていたらしく、ある晩、風野は夜おそく闇に包まれた裏階段を昇っていた時、サワサワと衣ずれの音がして何やら白いものがすっと近づき、トンと肩にぶつかり、はっと思った時にはもう白いものは消えるように闇の階段を降って行ってしまっていたとのこと。それから二日して今度は丸山がやられ、「誰だ」と気を強くしてきいたところ、「すみません」という微かな声を聞いたようでもあり、空耳のようでもあったといいます。風野、丸山の二人は、噂になるのを防ぐため一切黙ることにしましたが、それから一週間ばかりすると、誰からともなく、富永の幽霊が出るという噂が病院の中にこっそりひろまり始めました。医務科の下士官が巡検に廻る時、何度もランプの火が消え、三度目に消えた時、ランプの前を白い女がすうっと通り、顔は暗くてわかりませんでしたが、姿は確かに富永だったということで、また富永が生前していたように、「検温注意」という声が病室から病室へと伝わって、影のように幻のように富永が通るのを見たという患者は1人ではなかったというのでした。十二月の二十四日が富永の四十九日にあたり、僧籍に在る者が供養したら、それから幽霊は出なくなったという話でした。二月の初旬、風野もわたしも、富永の英霊も、漢口を発って江を下り、わたしと風野は三月末に博多に上陸、復員しました。富永の英霊も、もう上海から病院船で送られて郷里に帰ったにちがいありません。丸山君は部下をU軍医中佐に預けて先に帰る気持になれないと言ってまだ漢口に残っています。
 『夢枕』 同じ漢口で、広島市が原子爆弾にやられた報らせが入り、日ならずして被害の詳細がわかりました。わたしの父母は広島にいたので、わたしは絶望しましたが、夢枕に立ってくれない父母に対してものたりなくもあり、不思議な気がしました。そしてあるいは父母は生きているかも知れぬと思ったりもしました。そしてそういう晩、一度わたしは、死んだものなら今夜是非わたしの夢枕に現れて下さいと、一生懸命念じながら寝たことがありました。それでも父母は夢枕に立ちませんでした。三月の末、復員して帰ってみると父母は広島に生きていました。わたしはそれから夢枕というものを、逆な意味から信じる気持が強くなりました。
 『ある日』 四月の初め、わたしは東京に来ました。靖国神社の境内を出て、市ヶ谷から省線電車に乗ったら、急にさみしくなって来ました。死んだ人々のことをいろいろと思い出しました。霊が何もしないこんな静かなものなら、それだけででも、わたしたちは生命をもっともっと大切にすべきだと思いました。荻窪で下りて家に帰ると、先ごろ葉書を出しておいた広島高等学校時代の大浜という友人から来た手紙が届いていました。文中に光風さんとあるのは、高等学校の時の恩師、中島光風先生のことです。光風さんは二人の幼子を残して奥さんの後を追って広島で死にました。手紙の所は奈良の丹波市になっていました。その晩わたしはすっかり憂鬱になってしまい、早く寝ました。

 3編合わせて上下段7ページほどの短編でしたが、淡々と綴られた文章が、戦争の悲惨さを静かに示していたように思いました。

→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/

森崎東監督『ニワトリはハダシだ』

2012-09-26 11:08:00 | ノンジャンル
 森崎東監督・共同脚本の'03年作品『ニワトリはハダシだ』をスカパーの日本映画専門チャンネルで再見ました。
 「舞鶴港」の字幕。知的障害児のサブは15才を迎え、同居する潜水夫の「父」(原田芳雄)とともに初潜りに向かいます。ウンコをしわすれ、船の上でするサブ。途中で汽船に乗る「母」(倍賞美津子)と妹のサルに出会う二人。サブは潜りますが、小便をしたくなり、すぐに浮上します。大阪府警からは橘が県警に特命派遣されてきます。姿を消したサブは、田んぼで妹といなくなったヒナを探していました。兄妹心中の歌を歌う二人。
 サブの誕生日に「父」はいつも通りにコロッケを買い、怒ったサブはそれを踏みつぶします。ケーキを持ってやってきた「母」と妹でしたが、父が不機嫌なのに怒った「母」は妹と帰ってしまい、サブも怒って家を出ます。
 「京都」の字幕。サブが通っている施設の先生ナオコは、警部で父の桜井(石橋蓮司)に呼ばれて京都の実家に行き、そこで母が父と離婚を決意したと聞いて喜びますが、一緒に住みたいと言うナオコに母は実家の灰原の家に戻ると言い、菩薩のような子供たちと一緒にいれば道が開けるとナオコに言います。兄妹心中の歌を歌いながら酔いつぶれるナオコ。
 検察庁の裏金作りがスクープされ、検事の朽木(柄本明)が検事次長の灰原を告発しているニュースが流れます。それをもみ消そうとしている桜井。橘はロシア船に乗っているロシア女性に聞き取りをし、ロシア船に中古車が持ち込まれ、それが検察庁の裏金につながりがあることを掴みます。車の持ち込み現場にいて、ナンバーを外していたサブは、これまで持ち込まれた中古車のナンバーを全て暗記していて、橘は盗難車のナンバーとそれが全て一致することを知ります。暴力団の重山(笑福亭松之助)は自分の盗まれたベンツのありかをサブに尋ね、「ホフマン窯跡」に行きますが、ロシア人・赤気のカーンは隠してあったベンツで逃げ去ります。ナオコはサブのために「父」に「母」との復縁を頼みますが、サブと妹は重山組に連れ去られます。サブらは警察に連れていかれ、そこで警部の丹波はサブを少年院送りにしようとしますが、人権侵害だと判断した橘は秘かにサブと妹を逃がし、丹波から暴行を受けます。サブらの居所を聞くために重山の元へ出向いた「父」は逆に暴行を受け、灰原が次期の検事長に決まり、これからは自由に商売ができると言う重山は「父」をロシア船に捨てます。そこにあったベンツから中古車取引の出収表を見つける橘とナオコ。目を覚ました「父」が「母」を追って泳ぎ着いた「旧海軍燃料基地」では、サブのハーモニカに合わせて「母」や祖母が踊り、「父」は「母」にもっと堂々と生きろと言われます。
 施設の祭りで作業所を作ろうとナオコに言われるサブ。朽木は桜井に明日テレビ出演して検察庁の汚職を暴露すると言いますが、朽木は翌日別件で逮捕され、灰原は無事検察長に任命されます。汚職の証拠となる情報を握るサブを少年院送りにしろと桜井に命じる灰原。その様子を見ていたナオコは、ベンツを桜井に引き渡すのを止めてベンツで逃げ出し、橘はそれを追います。ボートで逃げたサブと妹は途中で櫓を落としてしまい、発電所の取水口に吸い込まれそうになりますが、すんでの所で「父」に助けられます。重山に脅されてベンツのありかの施設にやって来た「母」でしたが、ベンツは事前に「父」によって海中に沈められていました。重機で施設を壊す重山の手下。そこへやって来た桜井は重山らを現行犯逮捕し、ナオコに汚職の立件をすることを誓います。
 後日、サブは海中に潜り、ベンツの中から中古車取引の出納表を手に入れ、橘に引き渡すのでした。

 原田芳雄を中心として、「庶民」の生活の熱っぽさがよく表されていた点で、森崎監督作品らしさがよく出ていたと思いました。知的障害児たちに混じって、出演者たちが踊るシーンも印象的でした。