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松浦寿輝『川の光2 タミーを救え!』その3

2014-05-31 11:50:00 | ノンジャンル
 また昨日の続きです。
 マクダフは彼らが潜んでいた物置小屋の中の段ボールの中におもちゃが入っていて、花火も大量にあることを知ります。マフダフはビス丸に口で石を投げる練習をさせ、マルコがマッチを使えることを知り、リルにマッチを見つけてくるように言います。彼らは倉庫の2階に窓から侵入し、そこと1階との間にあった螺旋階段が今では取り外されていることを知ります。マルコが紐を結ぶこともできると知るマクダフ。
 一方、リルは地下鉄のネズミに知り合いのあるスズメに「タータとチッチが困っている」というメッセージを地下鉄サムに届くように託しますが、リルが指定した場所に地下鉄サムはなかなか現れません。リルは詩が得意であると地下鉄サムが自称していることから「詩を聞きたい」というメッセージも発すると、数時間後に地下鉄サムが現れます。リルは地下鉄サムから喫茶店のラベルの貼ってあるマッチをようやく入手し、マクダフのもとに急ぎます。
 マクダフらは倉庫の2階に侵入し、ツヨシとマモルが外出するのを待って、マルコが結んだ紐をマクダフの胴に回し、ビス丸が少しずつそれを繰り出して、マクダフを1階に降ろします。その後、ビニール袋も降ろし、マクダフがタミーのケージの掛け金を外せることを確かめた時、ツヨシとマモルが帰ってきます。
 2人が寝静まった頃、マクダフはチッチに作戦開始を皆に告げろと言い、酔っ払っていたマルコに何とかマッチの火をつけさせます。倉庫の外の花火の箱は物凄い爆発音を上げ、ツヨシらを起こしましたが、火が激しすぎて2人とも外に出てこず、野次馬の視線を気にして扉を閉めようとしました。タミーは扉をすり抜けようとしましたが、失敗し、ソロモンのケージの中に隠れます。ビス丸はタミーの声を真似て、裏庭で吠えます。マモルは裏庭に行き、その隙に隠れていたマクダフはソロモンのケージの掛け金を外し、タミーを外に出しました。裏庭に飛び出すタミーとマクダフ。しかしツヨシとマモルが彼らに迫ります。その前に立ちはだかるビス丸。ツヨシが「一昨日逃げようとしたことの罰として、昨日も今日もゴールデンにはほとんど食い物をやってねえ」と言うのを聞いて激怒したビス丸は、ツヨシのふくらはぎに噛みつきました。ビス丸がふくらはぎを放すと、聞こえてくるパトカーの音。しかし殺意にかられたツヨシはマモルに金属バットを取りに行かせます。その時、マクダフは声を限りに叫びました。「川の光を求めて!」。ビス丸もタミーも続きます。
 するとキッドを始めとした猛禽の大軍がツヨシとマモルに襲いかかりました。思わず倉庫の中に逃げ込む2人。キッドらはそこにあったビニールシートを広げ、そこにマクダフとタミーとタータとチッチを入れて空中輸送することにします。ビル丸は直樹のもとに帰ることにし、マルコも隅田川に行くことになり、その場で皆と別れます。キッドらはやがて疲れたので休みたいと言い出しますが、そこはあの渋谷の上でした。するとそこにカラスのカアスケ率いるカラスの大軍が現れ、キッドらの猛禽たちと替わり、ビニールシートをくわえてくれます。そして無事、マクダフらは故郷に帰ることができたのでした。
 マクダフはタミーとともに先生に飼われる道をとりあえず選びましたが、4ヶ月ほど経ってまた自由な生活に戻りました。ツヨシとマモルは裁判にかけられていますが、懲役の実刑を喰らうのはまず免れないでしょう。マクダフを保護したお婆さんはある日、机の上にマクダフの首に巻いてやった首輪とピンクのバラが置いてあるのに気づきます。キッドは横暴なイヌワシとその仲間を打ち破り、森に平和を取り戻しました。チッチは父のもとに戻る前に川を下って海を見てみたいとタータに言います。タータはチッチに何と返事をしたらいいか、考えるのでした。

 「快晴の日に特有のこの甘い空気のにおい、頬に当たって吹き過ぎてゆくこのそよ風のこそばゆい感触、見つめているとなぜか懐かしくてたまらなくなるあの夕空の茜色、そういうのはみんなみんな、『良い』ものだ。生きること自体を、うきうきするような楽しい時間に変えてくれるものだ」(121~2ページ)のような文章を多く読むことができる小説です。600ページを超える分量も苦にならない本でした。

 →「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/

松浦寿輝『川の光2 タミーを救え!』その2

2014-05-30 08:48:00 | ノンジャンル
 昨日の続きです。
 また集まった地上の救出部隊は渋谷にさしかかりました。彼らは夜のスクランブル交差点を渡ろうとして、人並みに押され、お互いにはぐれてしまいます。タータとチッチは地下鉄へ向かい、ビス丸は闇雲に走っているうちに北の住宅街に迷いこんでしまいました。マクダフは雑居ビルの裏手の物陰に潜み、キッドと出会い、リルとキッドに残りの地上部隊を探してもらいましたが、行き先は洋と知れません。マクダフはリルに残りの地上部隊の捜索を任せ、自分はキッドに道案内してもらい、迷った時の目標として皆で決めていた東京タワーを目指すことにします。
 タータとチッチはホームを降りたところでドブネズミに出会い、地下鉄サムのところへ連れていってもらいます。地下鉄サムはドブネズミの組織〈渋竜会〉を仕切る婆さんネズミでした。地下鉄サムは東京タワーへの近道を教えてやると言って、その代わり2人に重労働を課します。そんな現場から逃げ出そうとして捕まり、リンチを受けるネズミのロック。彼は隣の駅に妻子を残して来ていて、やはり地下鉄サムに騙されて働かされているのでした。
 一方、ビス丸は見知らぬ男に首輪を奪われ、食当たりで熱を出し、公園の茂みに身を伏せていたところを、少年の直樹に助けられ、直樹の家で治療を受け、生まれて初めて“愛”を知ります。体が回復したビス丸は直樹に心を残しながらも、リルに促され、東京タワーに向けて出発します。
 タータとチッチはロックらと脱走計画を立て、実行に移しますが、仲間にスパイがいて失敗します。地下鉄サムの命令のもと、タータらは殺されんとしますが、そこへ本物の地下鉄サムであるフェレットが姿を現し、タータらは助けられます。偽者の地下鉄サムであるお福婆さんは姿を消し、残されたネズミはロックをリーダーにして組織の建て直しが図られます。タータとチッチは地下鉄サムとともに地下鉄に捕まって東京タワーを目指しますが、降りた駅から地上に出ると、そこにあったのは東京スカイツリーでした。彼らはそこで彼らを追ってきたマルコと再会します。マルコは、地下室での酔っ払いの暮らしにけりをつけるために、やって来たのでした。マルコは東京タワーを探すには高いところに登ろうと言い、スカイツリーに登ることを提案します。彼らは掃除器具に紛れてエレベーターに乗り、展望台から東京タワーを見て、また地上に降りてきます。
 一方、マクダフはキッドに先導されて東京タワーに既に着いていました。そこへ老ハヤブサのペテルがやって来て、キッドの森でイヌワシが横暴の限りを尽くし、キッドの母も弱っていると聞き、キッドはマクダフの助言もあり、一旦自分の森に帰ることになります。キッドが飛び立った後、ビス丸がやって来ます。リルも加わり、彼らはタータとチッチを待たずにレインボーブリッジを渡ることにします。
 タータとチッチとマルコは川を利用して東京タワーに行こうと考えます。乗り込んだ船は上流に進み出してしまい、途中で行き違う艀に乗り換える3匹。溺れそうになりながら何とか乗り換えることに成功しますが、艀は東京タワーを通り過ぎてしまいます。そこに森から帰ってきたキッドがやって来て、タータとチッチを掴み、マルコの尻尾をくわえて飛び立ち、マクダフとビス丸が渡りつつあるレインボーブリッジの展望台に落としてやります。やっと再会する地上部隊。
 マクダフとビス丸は一晩かけて最後の行程を踏破し、タータとチッチはキッドに運ばれて先に倉庫に到着し、偵察や情報収集にあたることになります。マクダフとビス丸は倉庫に囚われている他の動物も助け出すため、まずタミーを脱走させ、その後、警察をあの倉庫に踏みこませることに決めます。フェンス越しにマクダフは、中庭に出されたタミーに数日間絶食してくれと頼みます。病気のふりをしたタミーの異変に動揺したマモルは、獣医に診せるためにタミーを車に乗せようとしますが、その瞬間タータとチッチとマルコがマモルの体を登り、マモルの手からタミーのリードが離れます。タミーは逃げ出そうとしましたが、そこへツヨシが帰って来て、リードを靴で踏みつけました。作戦は失敗します。(また明日へ続きます‥‥)

 →「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/

松浦寿輝『川の光2 タミーを救え!』その1

2014-05-28 07:34:00 | ノンジャンル
 松浦寿輝さんの'14年作品『川の光2 タミーを救え!』を読みました。
 クマタカのキッドはツヨシとマモルという動物の密輸業者の罠にかかり捕えられ、脚革に紐が結ばれた状態で訓練を受けていましたが、脚革から紐が外され、フリーの訓練になった時を狙って、逃げ出しました。その知恵を授けてくれたのは、同じ倉庫に飼われていた老オオアルマジロのソロモンでした。キッドは水を飲むために川に降りましたが、釣り人が捨てた釣り糸にからまり、暴れていると、ゴールデン・レトリーバーのタミーがやって来て、彼を喰わえ、土管の中に隠してくれました。タミーは自分の主人である“先生”の手を借りて糸を外すため、先生を呼びに行きますが、その後、キッドの尾羽に付けられていた発信機の電波を追ってきたツヨシとマモルにキッドは見つかってしまい、また捕えられてしまいます。そこへタミーがやって来て、2人の人間の前に立ちはだかりますが、マモルは繁殖用にと言ってタミーも捕まえ、車で立ち去ります。車から捨てられる鑑札入りのタミーの首輪。
 ツヨシらの倉庫に連れて来られたタミーは、運動のために裏庭に出された時、首輪のリードを運動用のロープに付け替える一瞬の隙をついて逃げ出し、キッドのケージの扉を開け、自分も逃げ出そうとしましたが、マモルに尻尾を捕まれ、脱出に失敗します。1人逃げ出すキッド。
 キッドは初めてタミーに会った辺りに戻ると、そこでタミーの首輪を拾った雑種犬のマクダフに出会います。マクダフはタミーの友人だと言い、キッドの通信機を外して、カラスに遠くへ運んでくれるように頼みました。マクダフはタミーの救出部隊を組織するため、次の真夜中の午前零時に川の中洲で会おうとキッドに言います。そしてその時間になり、集まって来たのは、マクダフとキッド、甘えん坊の大型犬のジャーマン・シェパードのビス丸、スズメのリル、それにクマネズミの兄弟、タータとチッチでした。
 リルはキッドに導かれてタミーの様子を見に一足先に出発し、タミーに会い、救出部隊が向かっていることをタミーに伝えると、タミーの目にはいきなり涙がどっと溢れ出しました。
 地上部隊はタータとチッチがビス丸の首輪に捕まって乗り、出発しました。基本的に移動は一目につかない夜にすることにし、まず真東にある給水塔に向かいました。途中で会った“先生”は、タミーがいなくなったことで憔悴しきっていました。給水塔に着くと、そこにやって来たリルは、次の目標として教会を挙げました。途中キッドに道案内をしてもらいながら進むと、マクダフを親分と仰ぐカラスのカアスケに出会い、餌場を教えてもらいました。空家で昼を過ごした後、リルは地上部隊に、これからは都心を抜けて南のレインボーブリッジを渡ればいっぺんに距離が稼げると教えてくれます。
 彼らは教会に着き、次の目標の黄色いマンションに向けて出発した直後、目の前でお婆さんが引ったくりに会います。ビス丸は犯人の男からカバンを奪い、駆けつけた人達に犯人は捕えられますが、お婆さんはマクダフが犯人を捕まえてくれたと勘違いし、自分のマンションにマクダフを抱いて連れていってしまいます。チッチはお婆さんがマクダフを抱くために座りこんだ時に、お婆さんのコートのポケットに入り込んでいました。キッドはお婆さんを追って、マンションの位置を他のメンバーに教え、窓越しにチッチがマクダフとともにマンションの部屋の中にいることを知らせます。彼らがマクダフの救出作戦を立てていると、教会の地下に住む酔っ払いネズミのマルコが現れます。彼はメンバーが東京を横切ると聞くと、それなら地下鉄サムに助けてもらえと言って寝てしまいます。
 夜になり、チッチはマクダフが入れられたケージの鍵を開けると、扉のクレセント錠も開けることに成功し、マクダフとともにベランダに出ます。チッチを乗せたマクダフは狭いへりの上を歩き、非常階段へと向かいますが、最後にへりは途切れ、1メートルあまりジャンプしなければならなくなります。思い切ってジャンプするマクダフでしたが、前足が非常階段にかかるも、折からの雨で滑り、体が落ちていってしまいます。寸でのところでビス丸にくわえられ、落下せずに済むマクダフ。チッチは落ちてしまいましたが、それを見ていたキッドに空中で捕まれ、助けられました。(明日へ続きます‥‥)

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ハワード・ホークス監督『三つ数えろ』

2014-05-27 08:50:00 | ノンジャンル
 ハワード・ホークス監督の'46年作品『三つ数えろ』をWOWOWシネマで再見しました。
 男が女と自分のタバコに火をつけるシルエット。灰皿に置かれる火のついたタバコ2つ。タイトル。
 スターンウッド家に呼びつけられた私立探偵のマーロウ(ハンフリー・ボガート)。執事が主人に伺いを立てに行く間に、好色そうな娘がマーロウを誘い、戻ってきた執事は次女のカルメンだとマーロウに教える。マーロウを呼んだスターンウッド将軍は車椅子に乗り、温室の中にいる。1年前にジョー・ブローディから娘と引き換えに5千ドルを要求され、今回もまた別の男からの恐喝に会っていると言う。今まで担当していた私立探偵リーガンを、将軍は気に入っていたが、何の落ち度もないのに、一ヶ月前に黙って辞めていったらしい。将軍が見せた紙には“A.G.ガイガー 古書商。博打の借金用手形をお支払いください”と書かれていて、カルメンが振り出し人としてサインしてある小切手が4枚一緒になっていた。マーロウは娘のサインがあるのだから金を払うように将軍に言う。将軍はガイガ-を追い払ってほしいとマーロウに言う。マーロウは1日25ドルと必要経費を払ってもらうことを将軍に約束してもらい、将軍の許を去るが、温室を出ると長女のビビアン(ローレン・バコール)に呼ばれる。ビビアンは父にあまり心配をかけないようにと言い、秘密はなしとも言う。彼女はリーガンが好きで、父も気に入っていたと言い、リーガンを探してほしいとマーロウに頼む。
 “ハリウッド公共図書館”の看板。“初版本について”という章を読むマーロウ。メガネをかけ、帽子のつばを上げて、ガイガー書店に入っていったマーロウは、文学オタクのふりをして、女店員に『ベンハー』の1860年版の第3版、『オーデュボーン』の1840年版がないかと聞き、女店員がないと答えると、ガイガーに会わせろと言う。女店員は外出中だと言うが、そこに入ってきた客は女店員と身振りで何やらやり取りし、店の奥に消える。雷鳴。マーロウはガイガー書店を出て、向かいの本屋に入る。マーロウは女店員(ドロシー・マローン)に自分が私立探偵であることを明かし、ガイガーの身体的特徴を教えてもらう。雨が降り出し、女店員は「ガイガーが出てくるまで待つ気?」と聞くと、マーロウは「自分の車の中で。ポケットにウイスキーが入ってる」と答える。しかし女店員の様子を見て「ここで飲むか」と言うと、女店員は「午後は閉店にする」と言って、看板を出し、紙コップを2つ用意し、髪を下ろし、メガネも取る。女店員の顔の美しさに思わず「ハロー」と言ってしまうマーロウ。女店員も「ハロー」と返し、2人は乾杯する。
 ロマンティックな曲。女店員「ガイガーの車よ」「あの男は?」「付き人のラングレン」。マーロウ出ていく。それを見送る女店員。マーロウはガイガーが乗った車を尾行する。
 “ラバーン・テラス”の看板。雨の中、ガイガーは家の中に入る。後から別の車が来て、そこから降りた女が家の中に入っていく。マーロウはレインコートを羽織り、2台目の車を調べると、“登録者名 カルメン・スターンウッド”と書いてある。雨が上がり、車の中で横になって待つマーロウ。やがて家の中がまぶしく光り、女の悲鳴が聞こえ、マーロウは家に駆け寄る。2つの銃声がし、2台の車が去る。マーロウは窓を破り、家の中へ侵入すると、床にはガイガーの死体が横たわり、酔って忘我状態のカルメンが椅子に座っている。カメラのフラッシュと、仏像の頭部の中の隠しカメラを発見するマーロウだったが、フィルムは抜き取られた後だった。机の引き出しの中からはスターンウッドのページがある名簿が見つかる。マーロウはカルメンを連れて帰る‥‥。

 今回再見して、屋外に出た時の虫の音、そしてボガートとバコールの2人だけのシーンで流れる音楽が、おどろおどろしくなったり、ロマンティックになったりと、非常に効果的に使われていることに気づきました。オープニングタイトルから魅せられてしまうこの映画は、ホークスの代表作であり、またボガートとバコールの結婚後の共演第1作でもあります。なお、上記以降の詳しいあらすじは、私のサイト「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/)の「Favorite Movies」の「ハワード・ホークス」のところにアップしておきましたので、興味のある方は是非ご覧ください。

 →「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/

宮崎誉子『真夜中』

2014-05-26 08:43:00 | ノンジャンル
 ベルナルド・ベルトルッチ監督・原案・共同脚本の'72年作品『ラストタンゴ・イン・パリ』をスカパーのBSイマジカで再見しました。妻に自殺された中年男性をマーロン・ブランド、その男とお互い名無しの存在としてアパートの一室でセックスを重ねる若い女性をマリア・シュナイダー、その若い女性の許嫁で映画狂の青年をジャン=ピエール・レオーが演じていて、昼間でも夕方のような画面であるヴィットリオ・ストラーロの撮影と、初期のゴダール作品を想起させる、台詞の合間に流れる音楽の使い方、ジャン=ピエール・レオーの清清しい存在感などが心に残る映画でした。

 さて、'08年にリトルモアから刊行された『季刊 真夜中 No.3 2008 Early Winter』に収められた、宮崎誉子さんの短篇『真夜中』を読みました。
 同級生の五味由実に、冬休みの間、アパレルの倉庫で入力だけのバイトを一緒にしようと誘われた。携帯で昼休みに一緒に応募しようと言う由実に、昼休みはちょっと用事があると言うと、由実は「大知君、今日は無理なんじゃないかな。‥‥なんとなく不吉な予感がする」と答えた。
 それ以来、大知は行方不明になった。大知の行方不明に由実が関係している気がしたので、入力のバイトを一緒にする事に決めた。
 昼休み食堂で、由実は「ふふふ、真夜中にわたしとお揃いの体にしてあげるね」と言う。「頼むから食事中に気持ち悪い事、言わないでよね」と言うと、由実は「波野ちゃん、わたしに優しくしないと‥‥後で後悔するよ」と言われ、両手で頬を挟まれた。由実と一緒に帰りたくなかったので、ダッシュで駅まで走った。電車に乗ると携帯が鳴った。届いたメールは由実からで、心底うんざりした。件名は「真夜中」で内容は「死ぬまで一緒だよ」ですぐ削除した。
 翌朝目が覚めると寝汗でパジャマがぐっしょり湿っていた。気持ち悪くて、急いでボタンを外すと‥‥由実と同じ位置の膨らみぐあいまでそっくりなホクロができていてゾッとした。ゾッとしていると携帯が鳴り、由実から昨日と同じメールが何度も届いた。
 「すみません波野ですけど‥‥ちょっと熱が下がらないので今日は休ませて欲しいのですが」携帯から聞こえる軽い嫌みより膨らんだホクロで頭が一杯だ。
 自転車を全速力でこぎ近所の整形外科に向かう。待合室のソファーに座っていると、「ちょっと、あんた病院で足を出して座るなんて何を考えているの?年寄りが躓いたらどう責任とるんだい」と突然、車椅子の老婆に怒鳴られ動揺した。「すっ、すいませんでした」急いで足をひっこめながら泣きたくなる。「次から気をつけな」「はいっ」老婆は振り向きざま、由実と同じ声で言った。「次から命に気をつけな」驚いて声も出せずにいると看護師に呼ばれ、気のせいだと自分に言いきかせ、カーテンを開いて中に入る。「あのっ、ホクロを取ってほしいんですけど」「明日は会議があるから無理だけど、水曜日から金曜日までで都合のいい日ある?」今日は取れない現実に絶望する。「‥‥金曜日にお願いします」「メス使うけど傷は残さないようにするから」‥‥。

 この作品では、一人称の単語が巧妙に避けられていること、また「!」や「?」の後、通常であれば1文字分空くところを空けないで書かれていること、場面転換を説明する文を省いていることなどに気づき、これらのことが、ここでの文章の息せき切った感じを醸し出していることが分かりました。この作品は宮崎さんの初めてのホラー小説ですが、大成功を収めていると思います。短篇ですが雑誌を買って読む価値は充分ある作品です。なお、上記以降のあらすじについては、私のサイト「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/)の「Favorite Novels」の「宮崎誉子」のところにアップしておきましたので、興味のある方は是非ご覧ください。

 →「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/