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北尾トロ「裁判長! これで執行猶予は甘くないすか」

2008-04-30 16:30:52 | ノンジャンル
 「裁判長! ここは懲役4年でどうすか」('04)の続編で、北尾トロ氏の'07年作品「裁判長! これで執行猶予は甘くないすか」を読みました。裁判傍聴記で章は22に分かれ、それぞれの章で一つ、または複数の裁判傍聴記が掲載されていて、傍聴マニアである阿蘇山大噴火氏とダンディー氏との対談も載せられています。
 笑えるものには、まず高裁で、窃盗で捕まり執行猶予を受けた帰り、スーパーで缶コーヒー2本を万引き、一審判決8ヶ月が思すぎると控訴した32才の男。これが豪快に泣いて「やったことは認めますが(ズズッ)、もうちょい短くなれば、ム、ムショはつらいんで‥‥く、くく」。執行猶予をくらった直後に万引き。この時点で同情の余地なし。そしてムショの暮らしがつらいんで、と泣く情けなさ。とりあえず笑っておきましょう、という感じでしょうか?
 あと、傍聴マニアの芸人・阿蘇山大噴火氏と北尾トロ氏との対談で、検察官に美人がおおいという話の中で、阿蘇山氏が「でも質問するときにケツ振りながらする人、いるすよ」という話も、そこに注目する方もする方だけど、ケツ振る方も振る方だなあ、と笑えました。
 いい話というのもあって、夫婦で子連れで駆落ちしたのはいいが、夫の仕事が見つからず、妻が働いて家計を支えていたが、子供も小学校にあがる年になり、妻の働き口もつぶれ、生活費にも事欠くようになって、夫が妻には内緒で空き巣狙いを始めて御用となった事件。やった犯罪が25件で被害総額100万円ぐらい。初犯。常習犯のため実刑も覚悟しなければならないケースですが、ポイントは被害者への弁償など、示談がすんでいるので、社会に復帰したとき、同じことを繰り返さないためにも、仕事のアテがあるかどうかなのだそうです。そこへ証人としておばちゃん登場! この人は工務店の社長で、職を探していた夫を、以前に面接したのだが、その時はたまたまやってもらう仕事がなかったので断ったらしい。しかし付き添って来ていた奥さんが、娘が小学校に上がるがパリッとした服もないので入学式は休ませようかと言うのを聞き、知人から服を借りて届けたのだそうです。そしてどこかで就職したと思っていたところに逮捕の知らせ。驚いて奥さんに連絡を取り、米を差し入れたりして面倒を見てきて、住居も、以前娘が住んでいた家賃3万円のアパートへ、自分が保証人になって引っ越しさせたらしい。米を差し入れた時に、子供は「おかあさん、明日、ごはん食べられるね」と言ったと言います。北尾氏はここで泣いてしまいます。執行猶予になれば、自分が被告を雇い、悪いことを言いふらす人がいたって気にしません、と毅然といい、「どうして、そこまで面倒を見ようとするのですか」と言う検察官の問いに「そうしたいんです」ときっぱり。世の中、こんな優しく強い人がまだいるんだなあ、とほろり、というか感動した裁判でした。
 逆に読んでて呆れたのは、罪悪感の全く無い準強姦(意識のない女性を強姦すること)罪のウーパーフリーの男。女性をものとしか見ない、女性の人格など全然考えない、どうしようもない人間。でもこれは氷山の一角で、そういう男は山ほどいるような気もします。
 その他にもやる気のない裁判官の話や、取り調べでねつ造したと思われる自白について警官を責め立てる弁護人の頼もしさとか、読みごたえ満点の本でした。裁判員制度が来年から始まりますが、その前に読んでおきたい本だと思います。文句なしにオススメです。

上橋菜穂子『精霊の木』

2008-04-29 15:24:31 | ノンジャンル
 昨晩から、夜の虫の音が聞こえるようになりました。庭のすずらんも満開間近です。季節はどんどん進んできているようです。

 さて、上橋菜穂子さんのデビュー作、'89年作品の「精霊の木」を読みました。
 地球が自然破壊によって死の星となり、他の惑星に移住して生きている人類。移民局改め環境調整局は、人類が住む星、資源のある星を我が者にするため、秘密裏に先住民のいる星で先住民たちを皆殺しにしたり、あるいは生かせておいて心理的に追い詰めて行き、絶滅するように導くという方法で星を手に入れていきます。ナイラ星の先住民ロシュナールは精霊の木から精霊をもらい生きていた民族でしたが、環境調整局により精霊の木をすべて切られてしまい、新しい世代は精霊をもらえず、滅んでいった民族でしたが、人類と混血できる遺伝子を持っていたことから科学者たちが研究のため、何人かのロシュナールを人間の孤児として人間社会の中で成長させ、常に彼らを監視することにします。そうした混血児の1人リシアがロシュナールが持っていた超能力を発現させ、夢の中で過去を見ることができるようになり、ロシュナールが滅ぼされた本当の理由を知り、また今年、精霊の力によって200年前のロシュナールの人々が時代を越えて現れることを知ります。環境調整局は、リシアに異変が起こったことを知り、自分たちの行なってきた汚い過去を隠し通すため、リシアを捕え、家族や友人を人質にとって、自分たちのシナリオ通りに動かそうとしますが‥‥。

 先にも書いたように上橋菜穂子さんのデビュー作ですが、完成度の高さに驚きます。上橋さんは文化人類学者だけあって、征服した側から見た歴史は多くの書籍の中に残されていますが、征服された側から見た歴史はほとんど残されてないことから、この物語を書こうと決心されたそうです。実際、今の地球は自然破壊によって地球温暖化を招き、このまま手をこまねいていれば、この小説と同じように人類は絶滅するでしょう。そうさせないためには、自然と共生してきた、あるいは現に共生している先住民族の人たちの生活から学ぶことは多くあると思います。スリルあふれるストーリーだけでなく、多くのことを示唆している小説であると思います。私も自分が精霊に守られていると考えることができたら、どんなに安心できるだろうと思いました。皆さんはどう感じられたでしょう?

生野慈朗監督『手紙』

2008-04-28 15:56:49 | ノンジャンル
 WOWOWで東野圭吾原作、生野慈朗監督の'06年作品「手紙」を見ました。
 両親のいない兄弟。兄は弟の直(山田孝之)の大学進学のための資金を稼ぐため無理して仕事をして腰を悪くし、仕事をクビになり、空き巣をしますが帰って来た住人と揉み合ううちに、過って相手をハサミで刺し殺してしまいます。判決は無期懲役。兄は自分のせいで大学進学ができなくなった弟に謝り、弟は自分のせいで兄が刑務所に入ることになったと思い遣り、手紙のやりとりでお互いに励ましあい、近況を報告しあいます。弟は進学を諦め、工場に勤めますが、上司の勧めもあって、小学校からの相棒とお笑いの道を本格的に目指します。ライブでテレビのプロデューサーに認められ、テレビに出演するようになり、自分達がメインの番組まで持つようになりますが、ネット上の書き込みで兄が強盗殺人犯だということを流布され、弟は相棒に迷惑がかかるのを恐れ、お笑いを諦めます。元のバイトのバーでまた働くようになりますが、工場で知り合った由美子(沢尻エリカ)がやって来て、私も本当に自分のやりたいことを直のようにやりたいと思い、美容師をめざしてるんだ、と言いますが、直は由美子につれない態度で接します。その後、弟は兄が強盗殺人犯ということで、バイトを次々に首になり、部屋の次々に追い出され、恋人も失い、そうしたことを知らずに手紙を直に送り続ける兄を次第に恨むようになります。大型電器店の社員になりますが、そこで内部の犯行とみられる窃盗事件が起こり、直は疑われて倉庫管理に異動させられますが、ある日会社の会長が訪ねて来て、直に兄が強盗殺人犯という事実は隠しきれないのだから、それを知られた上で前に進むしかない、と言います。そしてある人から君のことについての手紙をもらい、感動してここに来たことを告げます。直はひょんなことから、由美子が自分の名前をかたり兄に手紙を書いていた事を知り、また会社の会長に手紙を書いたのも由美子だと分かり、これからは由美子のことを自分が守って行くといいます。二人は結婚し、娘にも恵まれますが、兄のことが知れると社宅の人たちからも冷たくされ、娘の公園デビューでも他の母親たちは子供を連れて逃げてしまいます。弟は4年半ぶりに兄に手紙を書き、兄のためにどれだけ自分たちが苦しい思いをしてきたかを書き、兄とは縁を切って生活していくことを伝えます。由美子は兄からもらった最後の手紙を直に見せます。そこには直から縁を切るという手紙をもらい、自分の存在自体が罪なんだということが分かったので、今後は手紙を書かないようにします、と書いてありました。直は強盗殺人の被害者の息子のところを訪ねますが、家には上げてもらえても、焼香もお詫びの品も拒否されます。今だに兄のことを憎んでいるという息子は、兄から最後にもらった手紙を直に読ませ、これでもう終わりにしましょう、と言ってもらい、直は号泣します。直は兄のいる刑務所に元の相棒とお笑いコンビとして慰問に訪れ、ネタの中で自分にとって兄はかけがえのない血のつながった人だと言い、それを聞いた兄も号泣します。直の娘も無事に公園デビューを果たし、明るい光が差してきたところで映画は終わります。

 沢尻エリカと山田孝之が出演しているということで見ましたが、屈折した青年役をやらせたら右に出る者ははいない山田孝之は当然うまいのですが、沢尻エリカはミスキャストだと思いました。彼女はやはり強きな女性を演じさせた時が一番輝くようです。救いようのないラストシーンを書く東野圭吾にしては珍しくちょっと希望を持たせる終わり方をしていましたが、直が急に由美子と結婚する決意をするところや、大企業の令嬢(吹石一恵)と付き合うようになるところなどは、感情の流れが不自然で、まったく乗れませんでした。そして延々と強盗殺人犯の弟として差別され続ける直を見せ続けるストーリーも決して心地よいものではありませんでした。演出で特にひどかったのは大企業の令嬢の家で令嬢の父と直が会う場面で、安っぽい装置に、父親の紋切り型の台詞に安っぽいテレビドラマを見ているような気がしました。冒頭など桜の散る場面を背景に兄弟がお互いに手紙を読みあう声がかぶさるシーンなど、見るべきところもあるのですが、やっぱり嘘っぽい、感情的なリアリティに欠けるシーンが多かったのが残念です。生野慈朗監督、生き残っていけるのでしょうか?


北尾トロ『気分はもう、裁判長』

2008-04-27 16:18:38 | ノンジャンル
 北尾トロさんが'05年に書いた「気分はもう、裁判長」を読みました。小中学生向けに書かれた、裁判傍聴を勧めるガイドブックです。
 まず「キミが法廷に入る前に」と題して、裁判を傍聴する面白さを紹介します。新聞やニュース番組が取り上げない事件はその何十倍も何百倍もあって、それらに対する裁判が全国で無料で見られ、裁判ほどエキサイティングで、さまざまな人間模様が見学できるところはめったにない、と語られます。そして傍聴のルールを確認した上で、一番分かりやすい地方裁判所の刑事事件を中心に実際に傍聴して見られる裁判の様子が語られていきます。
 最初は窃盗事件の裁判。ここで裁判の基本的な事柄が述べられ、被告が罪を認めている場合、弁護側はなるべく刑を軽くするように、検察側はなるべく刑を重くするように証人を立てて争い、裁判官が最終的な判断を前例に準じて下すという裁判の基本的な流れが述べられます。ここではデパートで3万円相当の商品を万引きした、以前に一度やはり万引きで捕まったことのある男の裁判の様子が描写されています。
 2番目は強制わいせつの事件。電車の中で下着の中にまで手をつっこんで痴漢をした男の裁判です。男が仕事の疲れからやってしまったと言い、妻が涙ながらに今後は私が絶対にさせません、と証言したのが効いたのか、執行猶予がつきました。また、この裁判には社会見学の女子中学生が大挙して傍聴していたので、裁判官が張りきり、普通はしない被告本人への説教もするというおまけつきでした。
 3番目は民事裁判の離婚裁判。離婚には双方同意しているのですが、親権で争っています。妻は情緒不安定でそれまでも育児をさぼることがあり、夫は経済的にも恵まれていて、妻の言っている不倫も彼女の妄想だと言っています。
 4番目はサギ事件。コンビニの倉庫から商品を持ち出し、それをレジに持って行って返すから返金してくれ、というおまぬけな犯罪。裁判を進めるうちに、妻と子供を名古屋に置いて、東京の養母を訪ねるつもりが、なかなか養母の家が見つからず、仕事も行き詰まり、家族に心配させまいと連絡もせず、結局一文無しになり衝動的に行った犯行ということが分かります。
 5番目は強盗事件。ナイフで被害者を脅して大金を奪った容疑で捕まった被告ですが、決定的な物証はなく、一度は罪を認めた被告も、警察で無理矢理言わせられたもので無実だと言い出し、紛糾している裁判です。その結果、この裁判は1年も続いています。
 6番目の裁判は殺人事件。老人をナイフで刺し、家を漁って金を盗んだとして逮捕された被告。計画的な犯行だとうする検察に対し、衝動的に殺してしまったという弁護側。どこから見ても普通の青年に見える被告。無期懲役が求刑され、最後に行われる被告に与えられた話す機会に、彼は「罪のない方の命を奪ってしまい、本当に反省しています。刑務所に行って罪を償い、出所したときには、まず被害者の墓参りに行きたいと思います」と話し、被害者の遺族の涙を誘います。
 最後に著者は、裁判の面白さを再度説き、また公正な裁判が行われるためには傍聴という「開かれた裁判の制度」がぜひ必要だと主張し、それだけにそこでは必ず守られなければならないマナーが存在するとも言います。そして6番目の裁判の紹介の最後で「裁判は、犯人を刑務所に入れて、この社会から追い出すために行うんじゃない。裁判の真の目的は、法律を破った人に一定の罰を与えるだけじゃなくて、罪を償ったら再び社会に復帰できるように導くことなのだ。」とし、我々が前科のある人たちに抱く偏見を糾弾します。
 これ以外にも、裁判に関するミニ知識のコラムやマナーに関すること(「裁判が終わって法廷を出てすぐに軽々しいことは言わない事。なぜならすぐそばに被告の家族や被害者の家族がいる可能性もあるのだから。」といったような実用的なもの)が書かれています。
 今まで北尾トロさんの著作を多数読んできましたが、この本が一番感動しました。まだ読んでない方がいらっしゃいましたら、是非手に取ってください。一日で読める量ですし、子供向けに字も大きく、とても読みやすいので、本当にオススメです。私はこの本は売らずに、手許に残して置くことにしました。皆さんもそうしてくだされば、幸いです。

自殺大幅減 秋田の挑戦

2008-04-26 17:04:47 | ノンジャンル
 今日の朝日新聞の朝刊に「自殺大幅減 秋田の挑戦」との見出しの記事が載っていました。
 「12年連続で自殺率が最も高かった秋田県でいま、全国トップレベルの勢いで自殺件数が減っている。借金苦が原因で命が失われることがないように県内で活動しているグループの効果ともいわれる。その取り組みとは。」という文章で始まる記事は、'07年6月、弁護士や司法書士、消費生活相談員ら70人で立ち上げたグループ「秋田なまはげの会」の活動の様子を伝えています。借金を繰り返した多重債務者自身が悩みを共有し、これまでの経験を生かして借金を整理するのが狙いだそうです。ヤミ金融は犯罪者なので支払う必要はない、と本人が振り込まないように会社への行き帰りに行動を共にしてあげるとか、手厚い面倒見で、整理手続きも終わりかけの女性は、話し出した途端に泣き出して「ほんとにつらかったから。みんなも頑張って」と言ったそうです。
 生活費に事欠いて自殺に至るケースというのは多いと考えられます。私の二度の自殺未遂もこのケースでした。秋田県だけでなく、全国でこうしたグループの活動で大切な命を一つでも多く救ってほしいと思います。