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田中登監督『神戸国際ギャング

2010-11-30 03:19:00 | ノンジャンル
 田中登監督の'75年作品『神戸国際ギャング』をスカパーの東映チャンネルで見ました。
 「昭和22年 神戸」の字幕。工場の廃墟で売春婦の金を踏み倒して去ろうとする米兵を銃撃し、放水によって穴から転落死させ、その死体をトラックに積み込み、MPになりすまして占領軍の物資を強奪した団(高倉健)率いる愚連隊は、その物資を中国人ギャングの九竜同盟に売り付け、金を出し渋るボスのヨン(王滝秀治)を脅して、強引に味方につけます。愚連隊で唯一の女性であるマキ(真木洋子)は、ほのかに団に思いを寄せますが、団は闇市で一目惚れした山の手の婦人に熱を上げます。そんな折り、九竜同盟のメンバーが三国人同盟に誘拐され、団は身柄の引渡しを要求するために、そこのボスである朴(丹波哲郎)に行きますが、朴はやがてお互いを殺し合うことになるだろうと予言します。それ以降、三国人同盟は団の暗殺に血道を上げ、街頭で銃撃戦が展開されるに及び、刑事(戸浦六宏)は彼らの仲裁に入りますが、朴は聞く耳を持ちません。朴が大阪から人集めをしていると聞いた団は、ついに朴の自宅を探し当て、彼を射殺しますが、団の部下の大滝(菅原文太)は現場にたまたま居合わせた民間人の酒屋まで射殺してしまい、団の怒りを買います。刑事は仲間割れのチャンスを利用して、大滝に団を密告させ、その結果、団は朴殺害の容疑で逮捕されます。団の保釈中に昔仲間だった丸山(田中邦衛)が帰ってきますが、大滝は自分に挨拶がないと丸山に暴力を振るい、それに怒った団は大滝を追放します。団は懲役18年の判決を受け刑務所に入りますが、刑務所付属の病院に入り込んだ部下のポチ(石橋蓮司)から密告者が大滝であることを知らされ、ポチらとともに脱獄します。ケガを負ったポチを連れて山の手婦人の家に匿ってもらおうとしますが、彼女は警察に通報したため、その場を逃れざるを得なくなったポチは出血多量で命を落とします。やがて占領軍の闇ダイヤを大滝が横流しで手に入れようとしているという情報を得た団は、その現場を急襲し、ダイヤを得て大滝を倒しますが、団も死に、一人残ったマキはMPと警察に包囲される中、山と積まれた手榴弾で自爆するのでした。
 すべての画面の構成が完璧ともいえる見事さで、また役者もここに書いた以外にも、団の部下に夏八木勇、大滝の仲間に和田浩治などなど、主役級の人を贅沢に使っていて見ごたえがありました。度々現れる「丸い穴」も、蓮實先生風に言わせてもらえば、「主題論的統一」のなされた画面ということになるのでしょうか? 高倉健、真木洋子の代表作(中国人のボスを怪演している大滝秀治も!)であるとともに、田中監督の代表作でもあると思います。世間的には'73年に始まった『仁義なき戦い』シリーズの亜流と見られているのかもしれませんが、隠れた名作であることは間違いありません。映画好きの方、必見です。

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北尾トロ『全力でスローボールを投げる』

2010-11-29 00:20:00 | ノンジャンル
 WOWOWで'06年の映画『デス・ルーム』を見ました。蓮實先生がよく書いていたモンテ・ヘルマンを含む監督のオムニバス映画とのことで見たのですが、モンテ・ヘルマンのエピソードは、いきなり二人の主要人物がジャン・ヴィゴの『アタラント号』の話を始めるので、すぐにそれと分かりました。映画自体はどうってことなかったのですが‥‥。

 さて、北尾トロさんの'10年作品『全力でスローボールを投げる』を読みました。'08年1月17日号から'09年1月1・8日号までの「週刊文春」に「ガラスの五十代」のタイトルで掲載された北尾さんのエッセイに、一部加筆・修正して作られた本です。
 エッセイは大きく分けて、自分が疑問に思っていることを自ら体験して、その体験記を書くというものと、興味ある行動をしている中年男性を観察した結果を書くというものから構成されていました。その中から「へえ~」と思ったものを書き出してみると、
・カルチャー教室のエッセイ講座というのは、年配の女性たちが「切磋琢磨しながらオノレの能力を磨き、共通の趣味を持つ仲間と知り合う」コミュニティの場として機能しているということ、
・ニューヨークのゲイでは、色んな色が共生する「虹」が性の多様性を表す象徴として使われていること、
・京都の縁切神社には、不倫の成就を願うなどの絵馬が本名でガンガン書かれていること、
・日比谷の地下に60畳の禅室を備えた座禅カフェがあること、
・自民党政権の時、総理大臣が代表質問の答弁をする際、与党側の女性議員数名が「ソーリ!」とかけ声をかけていたということ、
・苦労して登った末に至る富士山の山頂には何軒も茶屋があり、興醒めであること、
・宝塚歌劇団は組同士で競い合い、それぞれの組の中で、厳しいレッスンの日々を過ごしながらトップを目指すシステムとなっていること(これはAKB48を秋元氏が作る時、参考にしたのではと思いました)、
・長野県伊那市と下伊那郡大鹿村の境にある分杭(ぶんぐい)峠は、磁場ゼロというパワースポットとして賑わっているということ、
などなどで、勉強になるとともに、北尾さんの謙虚な人柄とこなれた文章力によって、楽しく読ませていただきました。また北尾さんは私と1年しか生まれた年が違わないこともあり、映画月刊誌「スクリーン」のエロ洋画紹介ページに心踊らせたり、シカゴの『サタデー・イン・ザ・パーク』やスピッツの『ロビンソン』が好きであることなど、共通点も多く、今回も不思議な縁を感じました。
 こんなに楽しい本なのに、アマゾンの古本ではもう400円を切る値段で売られているというのは驚きです。楽しいエッセイをお探しの方、文句無しにオススメです。

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ルネ・クレマン監督『狼は天使の匂い』その2

2010-11-28 06:07:00 | ノンジャンル
 昨晩WOWOWで、中国のチベットに関するBBC制作のドキュメンタリーを見ました。その自然の迫力に圧倒されましたが、「チベットから流れ出る水が全世界の半分の人口を支えている」というナレーションに、今さらながらに「そうか~」と思いました。中国の人々もインドの人々も、チベットから発する流れに支えられて生きているんですね。チベット、おそるべしです!

 さて、昨日の続きです。
 チャーリーはギャングのマッカーシーに怨みがあり、裁判を控える彼の有罪の証人として警察ビルの18階に保護されているマッカーシーの愛人・ドボガンを拉致しようとしますが、実は彼女は既に保護されている最中に自殺してしまっていて、その事実をまだ知らないマッカーシーをおびき出す餌としてチャーリーは彼女の存在を利用しようというのでした。彼らが隠れ家を出発した後、一人残ったシュガーのところへトニーの追っ手がやってきて、トニーが以前空中撮影の途中で過って飛行機を墜落させ、自分達の仲間を大勢死なせたこと、そしてその仇を討つために彼を追っていることを教えます。警察の隣のビルから消防車の非常梯子で侵入したチャーリーらは、ドボガンの遺品を盗むのに成功しますが、警察との銃撃戦となり、リッツィオは警察に捕まってしまいます。彼は警察による拷問にも耐え、自殺し、チャーリーらはドボガンという餌に誘われてやって来たマッカーシー一味を皆殺しにすることに成功しますが、マットーネは相手に射殺され、チャーリーも重傷を負います。彼らは隠れ家に帰りつきますが、何者かがそこへ近づきつつあるのを知り、チャーリーは自分一人が残って、トニーとミルナを逃がしますが、トニーも逃げる途中で追っ手に背中を刺され、自分が傷ついていることを隠して、ミルナに明日ニューオーリンズで会う約束をし、嫌がる彼女を一人去らせます。その頃、マッカーシーらが虐殺された現場へ警察によって連れて来られたシュガーは、チャーリーの銃が血まみれになっているのを見つけ、彼が重傷を負っていることを知ります。隠れ家に戻ったトニーに、チャーリーはビー玉を賭けて銃の当てっこをしようと提案し、二人は死を前にして人殺しの遊びに興じるのでした。
 フランシス・レイの哀調を帯びた音楽、子供時代のカットバック、美しい秋のカナダの風景などはまさにメロドラマなのですが、山田さんが書かれているように、ロバート・ライアンの顔と声は人生の凄みを感じさせ、見ごたえがありました。先日亡くなられた池部良さんをもっとすさんだ感じにした魅力といったらいいのでしょうか? レオ・マッサリも、ちょっと人生に疲れた感じのけだるい魅力にあふれていたと思います。2時間40分という長さがちょっと気になりましたが、楽しめる「小品」だと思いました。オススメです。

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ルネ・クレマン監督『狼は天使の匂い』その1

2010-11-27 06:42:00 | ノンジャンル
 北朝鮮による砲撃で韓国の市民レベルで報復の気運が高まっているようですが、「毅然とした態度」の不穏な雰囲気が感じられて、よくないなあと思いました。先日の少年への死刑判決で、裁判員の1人の方がやはり、あえて自分の顔と声をマスコミに曝け出して「毅然とした態度」の表明をされていましたが、これまた不穏な雰囲気を存分に醸し出していたように思います。内田樹さんの『9条どうでしょう』を読んだ方には、彼らがやっていることの野蛮な危険性がよく分かるのではないかと思いますが、皆さんはいかがお考えでしょうか?

 さて、山田宏一さんが著書『山田宏一のフランス映画誌』の中で取り上げていた、ルネ・クレマン監督の'72年作品『狼は天使の匂い』をNHK・BS2で見ました。
 仲間の仇としてイタリア人グループに命を終われているパリ生まれのトニー(ジャン=ルイ・トランティニャン)は、モントリオールで偶然にレナーという男が殺される場に行き会い、死の直前に「チャーリーの計略だ。ドボガンは死んでいる。自殺したんだ」という言葉とともに彼から大金を渡されます。その直後に現れた二人組の男・リッツィオとポールによってトニーは拉致されますが、車で連行されている時に抵抗してポールに致命傷を負わせます。湿地帯をボートで進み着いた先の小島には彼らのボスであるチャーリー(ロバート・ライアン)の隠れ家があり、彼と先の二人の二人に加え、気が荒い男マットーネ、ポールの妹で人を殺すことを何とも思わないペッパー、そしてチャーリーの情婦で料理係のシュガー(レオ・マッサリ)が住んでいました。トニーはフランスで起こした強盗と警官殺しの罪で警察に追われていると嘘をつき、腹に銃創を負っているのがその証拠だと言ってチャーリーを信用させると、彼から金をもらい逃がしてもらいますが、島と陸を結ぶ唯一の橋の向こうに追っ手の姿を見て隠れ家に取って返します。彼はレナーが持っていた大金のありかを知っていると言って、命を保障しれくれればそれを教えるとチャーリーに迫りますが、チャーリーはすぐにその話には乗りません。芸術家肌のリッツィオが作った作品を誉めて彼を味方にしたトニーは、シュガーからもその男気の良さから好意を寄せられますが、まもなくトニーの腹の傷がナイフによるものであることにシュガーは気付き、彼が嘘をついていたことを知ります。トニーは追っ手が警察ではないことを告白しますが、チャーリーは彼の嘘を許し、シュガーが彼と寝ることも許します。トニーはポールに致命傷を負わせたのも自分であることをペッパーに告白しますが、ペッパーは彼を殺すことができず、自分の本当の名はミルナだと言い、彼を愛してしまったことを認めます。そこへ武器商人がやってきますが、ポールとレナーがいなくなっていることを必要以上に詮索したため、殺され、彼らは武器と車を手に入れます。そしていよいよチャーリーの計画が実行される時が来ます。
 ということで、まだ長くなりそうなので、続きは明日に‥‥。

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内田樹×三砂ちづる『身体知』その2

2010-11-26 06:40:00 | ノンジャンル
(昨日からの続きです。)
11、愛情は自分の中から湧き出てくるものではなく、誰かにもらい、それをまた誰かに渡していくという流動的なものであるという主張、
12、ゆっくりやらせてあげるというのは愛情表現であるという指摘、
13、部活動というのは日本独特のシステムであり、他の国では富裕層しか文化的な習い事をすることはできていないという事実、
14、日本の学校は勉強以外にも社会性、協調性、多数派の価値観に対する忠誠心を養う場として機能し、またそれらを獲得する場として社会から期待されているのに対し、例えばブラジルなどでは単なる勉強の場としてしか認識されていないという指摘、
15、昔はお雛祭りの時に全国的に13才までの女の子を集めて性教育をしていたという事実、
16、「おせっかいをやく」ことの重要性、
17、お産に関して日本では昔は助産院や小規模な開業医という形でパーソナルケアを実現できていたにもかかわらず、現在は世界の趨勢に反して大規模施設でのケアを目指してしまっているという事実、
18、赤ちゃんは本来生まれた直後でもお母さんが抱いてあげれば泣くことはなく、現在のように恣意的に泣かすようにすると、赤ちゃんは小さい時から「泣いてもダメなんだ、外界と壁を作らないと生きていけないんだ」と世の中に絶望する危険があるという指摘、
19、家庭内で母は子供を全面的に肯定し、父は社会ルールを教え込むという役割分担が以前は機能していたにもかかわらず、最近はそれが男女で逆転し、子供にとっては非常にシビアな環境になってきているという事実、
20、苦労してキャリアを形成してきた女性は、そのことがある種の「誇り」になってしまうと、自分の後の世代には「楽をさせてあげよう」という発想にはなかなかなっていかないという指摘、
21、認知症というのは、優しくされたいがため、一番最初に抱きしめられた時点まで退行していく現象であるのだという主張、
22、未来志向になるためには、トラウマとなるような経験が言葉と出会って説明がついた瞬間に「流す」ことによって、そのトラウマを忘れることが重要であるという指摘、
などなどでした。
 今回の内田さんの本も、毎日生活していく中で役立つ考え方で満ち溢れていて、読んでいてとても気持ちのいいものでした。毎日の生活に疲れ気味の方や出産、結婚に二の足を踏んでいる方には特にオススメできる本だと思います。公共図書館にも結構置いてあると思うので、気軽に手に取ってみてはいかがでしょうか?

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