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クロード・シャブロル監督『沈黙の女 ロウフィールド館の惨劇』

2010-07-08 18:29:00 | ノンジャンル
 本『山田宏一のフランス映画誌』で絶賛されていた、クロード・シャブロル監督・共同脚色の'95年作品『沈黙の女 ロウフィールド館の惨劇』をビデオで見ました。
 ソフィ(サンドリーヌ・ボネール)はブルジョワのカトリーヌ(ジャクリーン・ビセット)とジョルジュ(ジャン=ピエール・カッセル)の夫婦にメイドとして雇われます。ソフィはテレビばかり見ていますが、家事は完璧にこなし、やがて郵便局で働くジャンヌ(イザベル・ユペール)と親しくなります。夫妻の娘の誕生パーティに食事の仕度をした後抜け出し、ジャンヌと時を過ごすソフィ。ソフィはヤケドで娘を殺した嫌疑を受けたことのあることをジャンヌに正しますが、ソフィも放火殺人の嫌疑をかけられたことがあったのでした。手紙を開封している疑いをジャンヌにかけるジョルジュをののしるジャンヌ。ジョルジュはソフィが横柄になってきたことでクビにしようとカトリーヌに相談しますが、カトリーヌはメイドのいない生活には戻りたくないと言います。ジャンヌが屋敷に出入りしていることを知ったジョルジュは、ソフィにジャンヌを館に入れないように言いますが、それを聞いたジャンヌは激怒します。やがて夫妻の娘が妊娠していることを知ったソフィは、自分が字を読めないことを知った娘に対して、それを夫妻にばらしたら自分も妊娠のことをばらすと脅します。娘は夫妻に事情を告白し、夫妻はソフィに1週間以内に館を去るように言います。ソフィとジャンヌは館に侵入して狼藉を尽くし、彼女らを見つけたジョルジュを猟銃で射殺すると、残りの家族も惨殺します。先に逃げ出そうとしたジャンヌはたまたまやって来た神父の車にぶつけられて死に、証拠隠滅をして後を追ったソフィは、ジャンヌの車から発見されたラジカセに犯行の一部始終が録音されているのを知るのでした。
 ラストの、音楽も効果音も全く排した見事な惨劇のシーンに息を飲みました。それにしても、ジャクリーン・ビセットは『アメリカの夜』の時とまったく変わらない美しさなのに驚きました。文句無しにオススメです。

谷崎潤一郎作品集 第一巻 短編集

2010-07-07 15:57:00 | ノンジャンル
 '50年に創元社から刊行された『谷崎潤一郎作品集 第一巻 短編集』を読みました。
『幇間』は、兜町の相場師から幇間に転身した年老いた男の軽妙な生き方の話。
『秘密』は、私が上海に行く船の中で一時恋人だった女性と、たまたま女装して映画館にいた時に出会い、目隠されたまま女性の家に通う日々が続きましたが、結局女性の居所が分かってしまい、それっきり会わなくなってしまったという話。
『ちひさな王國』は、小学校の教師の貝塚が、餓鬼大将の沼倉をうまく取り込んだと思っていたところ、沼倉が子供相手に増々増長していき、最後には彼の作った偽札を使おうとしてしまったという話。
『二人の稚児』は、延暦寺で育った2人の若者のうち、年長の者が女人が何かを知るために半日だけ里に降りると言ってそのまま戻らず、残った者に浮き世は楽しいと手紙を送ったが、年下の者は夢枕に立った老人のお告げで、悩みの原因となっている女人の生まれ変わりの鳥に会いに行くという話。
『馬の糞』は、友人に自分の妻のことを馬の糞と馬鹿にされる話、です。
 『幇間』での屋形船上でのろくろ首に扮した男の踊りの印象的なシーンや、「秘密」の謎めいた雰囲気に惹かれる部分もありましたが、『少年』や『刺青』のように衝撃的な短編はありませんでした。ということで、他にも既読の『私』や『途上』以外にもいくつかの短編が収められていましたが、読まずに終わらせてしまいました。開いた時間に手軽に読むのにはオススメの本です。

クリント・イーストウッド監督『グラン・トリノ』

2010-07-06 13:36:00 | ノンジャンル
 クリント・イーストウッド製作・監督・主演の'08年作品『グラン・トリノ』をWOWOWで見ました。
 妻の葬儀でウォルトは息子たちから陰口を叩かれます。生前の妻からウォルトに懺悔させてほしいと言われていたという牧師に、ウォルトは神学校出立ての若造にと相手にしません。ウォルトの隣に引越して来たモン族の一家。息子のタオの従兄のフォンらは、ウォルトの持っている'72年型のヴィンテージ・カー、グラン・トリノを盗むようにタオをけしかけ、タオはウォルトに撃たれそうになります。街角でタオを連れ出そうとするフォンらにライフルを向けるウォルト。翌朝、モン族たちはタオを助けてくれたウォルトの家に贈り物の山を築きます。ウォルトはタオの姉のスーが黒人グループに囲まれているのも助け、すっかり彼らと親しくなります。タオは車を盗もうとしたことへの償いにウォルトのために働くと言い出し、フォードの工場で働いていたウォルトは知り合いを紹介してタオに仕事を世話してやります。しかし仕事の帰りにフォンらに捕まり、顔に根性焼きを入れられ、ウォルトに借りていた工具も壊され、ウォルトはフォンの仲間を襲って今後タオに手を出すなと警告します。その夜、タオの家は銃の乱射に会い、スーは暴行を受けて帰宅します。荒れるウォルト。すぐに復讐しようというタオに冷静になることをウォルトは促し、牧師に懺悔に行った後、タオを自宅の地下室に閉じ込め、単身フォンらのアジトに乗り込みます。彼らが多くの銃でウォルトを狙う中、ライターを取り出すと見せかけて胸から手を出したウォルトは一瞬のうちに蜂の巣となり死にますが、取り出していたのは本当にライターで、丸腰のウォルトを撃ち殺したフォンらは長期刑を課せられることになります。牧師はウォルトの遺言で妻の意向に従うために財産はすべて教会に寄付し、グラン・トリノはタオに譲ることが遺族の前で発表されます。ウォルトの犬とともにグラン・トリノに乗るタオは地平線遥かに車を疾走させるのでした。
 沈んだ色調の画面が映画のテーマとマッチしていて、イーストウッドの暗い情念とともに魅力的でした。イーストウッド・ファン以外の方にもオススメです。

小田嶋隆『日本問題外論』

2010-07-05 18:07:00 | ノンジャンル
 中田秀夫監督の'99年作品『ガラスの脳』をDVDで見ましたが、手塚治虫の原作の荒唐無稽さだけでなく、役者の演技の稚拙さと演出のわざとらしさに見ていて気恥ずかしい思いをしました。中田監督、私とはあまり相性がよくないのかもしれません。

 さて、内田樹さんの本『ためらいの倫理学』の中で言及されていた、小田嶋隆さんの'98年作品『日本問題外論 ―いかにして私はデジタル中年になったか』を読みました。小田嶋さんが'95年から'96年にかけて様々な雑誌に掲載したエッセイをまとめた本です。
 当時話題になり始めていたインターネットの他に、ウィンドウズ95、バブル崩壊、お台場などなど、時事的な話題に関するエッセイが中心になっていますが、特に慰安旅行への出席を断ったことで会社を半年で辞めるに至った経緯には、共鳴する部分が多くありました。その中で入社前の研修資料の「フレッシュマン・コース」への感想文に「〈フレッシュまんこ押す〉というのは、いくらなんでも‥‥」と書いて会社に提出したのはスゴイと思いましたし、「研修の真の目的は、職業意識や士気向上ではなく、不良分子の割り出しであ」るという指摘も、やはり入社時の研修合宿で不適応を起こした私としては親近感を抱くものでした。他にも「本当の決断は、軽率な人間にしか下せない」、あるいは「決断というのは、(中略)下される瞬間には、ある軽率な力を要するのだ」という言葉にもなるほどと思い、「新しいものが現れると、必ず新しい不適応が発生する」という言葉も、「新しいもの」として今まで度々排除されてきた経験のある当事者として、力付けられる言葉でした。
 非常にユーモラスな語り口で、一気に一日で読めてしまいました。痛快な文明批評を読みたい方には特にオススメです。

マキノ雅弘監督『日本やくざ伝 総長への道』

2010-07-04 12:01:00 | ノンジャンル
 マキノ雅弘監督の'71年作品『日本やくざ伝 総長への道』をスカパーの東映チャンネルで見ました。
 前野一家の舎弟の出征を祝う一代目の総長は、大松(若山富三郎)がまだ来ていないことに気付きます。馴染みのお若(野川由美子)と別れを惜しんでいた大松は、拳銃を撃ってきた舎弟をその場でひねり殺してしまい、帰ってきたら結婚してくれとお若に言い、その場に駆けつけた代貸の龍太郎(高倉健)にお若のことを託すと警察に引っ張られていきます。前野組の乗っ取りを狙う大宮(天津敏)はイカサマ師の十郎にお若をすけこまさせ、十郎はお若と逃げます。それを知った龍太郎はすぐに後を追いますが、大阪の南善親分(嵐寛寿郎)から助っ人の要請があり一旦大阪に向かいます。馴染みの布袋屋をどぶ辰に取られた南善親分のために、龍太郎は河合組の粂吉(鶴田浩二)に仲裁してもらい布袋屋を返してもらうことに成功しますが、京都に十郎がいるという情報を得て京都に向かうと、お若は女郎になっていて肺病も患っていました。龍太郎は彼女を身請けしますが、彼女は死の床に就き、仮出所した大松はかろうじて彼女の臨終に間に合います。大宮を迎えたどぶ辰は歓迎会を無理矢理布袋屋でやろうとして南善親分夫妻を刺殺し、龍太郎は単身どぶ辰へ斬り込みます。駆けつけた大松とともにどぶ辰と大宮を倒しますが、大松は瀕死の重傷を負い、龍太郎は彼を担いでその場を立ち去るのでした。
 マキノ監督最後から二番目の作品です。無駄のないショットの連鎖、またショット一つ一つの見事さに魅せられますが、話の救いのなさも特筆すべきでしょう。なお、詳しいあらすじは私のサイト「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto)の「Favorite Movies」の「マキノ雅弘」にアップしておきましたので、興味のある方は是非ご覧ください。