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サリンジャー『ナイン・ストーリーズ』

2009-05-11 18:34:00 | ノンジャンル
 柴田元幸さん新訳のJ.D.サリンジャー「ナイン・ストーリーズ」を読みました。
 「バナナフィッシュ日和」は、陸軍の精神病院から退院したばかりの夫が、少女と浜辺で戯れた後、拳銃自殺するという話。
 「コネチカットのアンクル・ウィギリー」は、大学時代のクラスメートが遊びに来て、死んだ元恋人のことを語り合い、娘の空想上の恋人に悩む話。
 「エスキモーとの戦争前夜」は、同級生の家で同級生の変わった兄に会って会話をする話。
 「笑い男」は、放課後、スポーツの世話役をしてくれている若者が語る「笑い男」という怪奇物語と、彼のガールフレンドの話。
 「ディンギーで」は、息子の家出癖が再発したのは、メイドが夫の悪口を言ったことがきっかけであることが分かる話。
 「エズメに―愛と悲惨をこめて」は、戦場で神経衰弱になった男が、Dデイ前にイングランドで知り合った少女から時計を送られる話。
 「可憐なる口もと 緑なる君が瞳」は、友人からの妻が帰ってこないという電話に悩まされる話。
 「ド・ドーミエ=スミスの青の時代」は、通信制美術学校の講師として不思議な体験をする話。
 「テディ」は、自分を聖者の生まれ変わりと考え、輪廻を信じる少年と青年の会話の話、です。
 どれも会話が生き生きとしていて、柴田さんの訳も優れているのでしょうが、カットインしながら続いていく会話というのも、第二次世界大戦の前後の時代では画期的だったのではないでしょうか? また、複数の物語が重層的に語られるのも特徴で、例えば「笑い男」で、野球に参加する女性の話が語られる一方で、幼少時に誘拐され頭を万力ではさまれ変形してしまった犯罪者の話がコーチによって語られるなど、ひと粒で二度おいしい話になっていました。主人公が様々な年齢、様々な性別、様々な階層に及ぶのにも感心しました。現代小説がお好きな方にはオススメです。