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山田詠美『アンコ椿は熱血ポンちゃん』

2009-07-31 17:38:00 | ノンジャンル
 山田詠美さんの'09年作品「アンコ椿は熱血ポンちゃん」を読みました。月刊誌「小説新潮」'06年12月号から'08年12月号までに連載された24本のエッセイが集められた本です。
 前作「熱血ポンちゃん膝栗毛」と同じく、愉快な家族たちと愉快な仲間、そして愉快な詠美さんがユーモラスな文章で綴られていて、何度も声を出して笑ってしまいました。そんな中でやっぱりと思ったのは、どこかうさん臭気だった石田衣良さんが「僕は小説を書きながら、自分で感動して涙を流すことがある」と発言していたこと、そしてやはり信用置けないと思っていた倉田真由実さんがそれを受けて「物語を作る作家の才能って、これだと思った」と思いきり勘違いして書いていたことなどでした。この本に触発されて読んでみたいと思った本は「日本文学ふんいき語り」、「恋愛小説ふんいき語り」、詠美さんと高橋源一郎さんの対談本「顰蹙文学カフェ」、余華著「兄弟」など、詠美さんとの縁を感じたのは表紙の絵を担当している吾妻ひでおさん、詠美さんがはまったという、増村保造監督作品にも出た渥美マリさんといった固有名詞と、1959年生まれを感じさせる様々なエピソード、そして多数派にあえて組みしない反骨精神(?)といったものでした。
 とにかく愉快なエッセイです。文句無しにオススメです。

ルイス・ブニュエル監督『グラン・カジノ』

2009-07-30 16:12:00 | ノンジャンル
 スカパーの260チャンネル「洋画★シネフィル・イマジカ」で、ルイス・ブニュエル監督の'46年作品「グラン・カジノ」を見ました。
 油田を持っているホセ・エンリケはファビオからの買収の話を断っていますが、妨害工作に会い働く人を集められません。そこへ刑務所から出て来たばかりのヘラルドとデメトリオがやってきて雇われ、デメトリオが人を集めることに成功し操業開始を迎えますが、ファビオの経営するグラン・カジノで馴染みの踊子・カメリアに会ったホセ・エンリケは彼女と2階に消えると、そのまま消息を絶ちます。彼の相続人である妹のメルセデスがやってきますが、迎えに出たヘラルドは彼女の連れをメルセデスを勘違いし、ホセ・エンリケが行方不明になったことを告げます。メルセデスは謎を解くため歌手としてグラン・カジノに雇われますが、今度はデメトリオが同じ手口で殺されます。真相を知ったメルセデスはヘラルドに自分の身元を明かし、兄の仕事を継ぎます。ヘラルドは復讐のためにカジノに向かい、ファビオの手下に囲まれますが、舞台に立って歌うことで囲みを解きます。メルセデスとファビオは2階に上がり、ヘラルドを殺そうと部屋に隠れていたファビオの部下を撲殺し、部屋に入ってきたファビオを痛めつけて殺しの命令を出したのが石油会社の重役であるエッケルマンであることを聞き出します。ファビオが拳銃を取り出したのでヘラルドは彼を撃ちますが、手下に捕らえられ殺されそうになります。メルセデスはエッケルマンを訪ね、ヘラルドを救うことを条件に油田を売ります。そして二人が旅立つ時、予定していた通り油田が爆破される音が聞こえるのでした。
 まさに絵に描いたような商業映画でした。シュールレアリズムの痕跡はわずかにファビオの手下がヘラルドに撲殺されるシーンだけに見られ、カーテンを鈍器で殴るとガラスが割れる映像がカーテンにオーバーラップされるというものでした。またヘラルドとメルセデスが話すシーンで、ヘラルドが床に落ちたコールタールをかき混ぜるところをアップで見せる部分も話とは全く関係がないだけに印象に残りました。シュールレアリスムの痕跡をわずかでも辿りたい方にはオススメです。

池上永一『テンペスト(下)花風の巻』

2009-07-29 16:23:00 | ノンジャンル
 朝日新聞の特集記事「2008年 感動と発見の一冊」で推薦されていた、池上永一さんの'08年作品「テンペスト(下)花風の巻」を読みました。
 流刑先の八重山で、船長を殺して逃げ出した清の奴隷たちを殺すために砲撃する英米軍に対し、寧温はナイトの称号を見せてそれを止めさせ、列強の脅威を知らせるために朝薫に手紙を出しますが、それが元で琉球からの使者によって投獄され、マラリアにかかり、山奥に捨てられます。が、豪雨で熱が下がり助かった寧温は女性に戻り真鶴として生きていく決心をし、踊りを評価されて琉球に連れて来られ王の側室試験を知らない間に受けさせられ良家出身の真美那とともに合格します。そんな折りペリー提督率いるアメリカ艦隊がやってきたので、ペリーから琉球を守るために真鶴は寧温に姿を変えて評定所に現れ、ペリーと取引して艦隊を日本に向かわせることに成功します。それ以降、真鶴と寧温の二つの姿を使い分け綱渡りの生活を続けますが、やがて真美那に正体がばれ、真鶴が懐妊したことから真美那は寧温を左遷させ真鶴の出産を助けます。真鶴は無事に王子を出産しますが、そのお披露目の場で兄の嗣勇から正体を明かされ、監禁された後真美那の手助けで王子とともに逃げ出します。その後自らが教師となって王子に教育を施し、王子が一人前になった時、明治政府は琉球王国を滅ぼします。無人となった王宮を訪れた寧温は王子の即位式を行い、その後の人生を真鶴として、今は明治政府の役人となった初恋の人と沿い遂げようと思うのでした。
 上巻ほどのジェットコースターぶりはなく、女性としての真鶴と役人としての寧温の葛藤が中心に描かれていました。また、上では触れていませんが、王宮の元女性最高神官である真牛が寧温への復讐に燃えながらも占い師、遊女、初恋、輪姦された末の廃人、貧乏人の葬列の経文師、そして自殺という波乱万丈の人生を送る様も描写されていて、読みごたえがありました。淡々とした歴史小説のようでありながら、真美那の「お嬢様爆弾」の表現や、若い女性の会話文での「よかったわ~」「~ですう」という表現など、現在の若者言葉からの引用もありました。下巻も上巻に負けない分量があり、たっぷり楽しめます。じっくり読書を楽しみたい方にはオススメです。

池上永一『テンペスト(上)若夏の巻』

2009-07-28 17:11:00 | ノンジャンル
 朝日新聞の特集記事「2008年 感動と発見の一冊」で推薦されていた、池上永一さんの'08年作品「テンペスト(上)若夏の巻」を読みました。
 江戸時代末期の琉球。滅びたとされる王家の血を引く孫家では男子が生まれず、親戚から嗣勇が養子にもらわれ、官僚になるための試験・科試の勉強をさせられますが、あまりの辛さに逃げてしまいます。嗣勇の妹として育った長女の真鶴は幼い頃から学問に優れ、兄を許してもらうために清帰りの宦官・孫寧温として自らが科試を受けることにし、現在の王に帝王学を授け今は引退している麻先生の直弟子として勉学に励みます。科試の日、寧温が宣教師から蘭学を学ぶためにもらっていた本が発見されますが、父は寧温が王家を復興することを願い罪をかぶって斬首されます。寧温は最年少で朝薫とともに科試に受かり、答案を見た王によっていきなり重職につきます。そして清の使いを歓迎する式典で、天才の女形として宮廷に仕えることになった兄と再会します。寧温はさっそく宦官であることを利用し、男子禁制の場にも出入りして裏金の調査をするように王から言われ、様々な妨害にもかかわらず財政の立て直しを行いますが、そんな折、薩摩藩の雅博に一目惚れします。英国船座礁の問題も解決しますが、宮廷の神儀の最高権力者である聞得大君に初潮の匂いを嗅がれてしまい孫家の娘であることをつきとめられ、兄も人質にとられ、聞得大君のいいなりになり、悲観して崖から身投げしますが、海中で龍によって助けられ、それによって大義を思い出した寧温はキリシタンの疑いをかけることによって聞得大君を宮廷から追放することに成功します。すると今度はアヘンの密輸問題が発覚し、腐敗した官僚たちによって一時は王の別邸の草取りにされてしまいますが、王と麻先生の助けもあって腐敗官僚たちを退治しアヘンの一掃を成し遂げます。そして次に列強に対抗するため西洋の技術や考え方を取り入れようと考えますが、清の宦官で異常性欲の持ち主・徐からデカルトの本を与えると言っておびき出され、女性であることを暴かれて脅され、結局職を辞して失踪します。真鶴としてこれからは生きていこうとしますが、そんな折王が死に、徐が幼い王を補佐する職についたと聞き、また寧温として職に復帰しますが、やがて徐に犯され、様々な陰謀の虜となり、最後には徐を道連れに崖から身投げしますが、王家に代々伝わる勾玉の首飾りのおかげで自分は助かります。しかし、徐の遺体から以前に朝薫からもらった簪が発見され、朝薫は泣く泣く寧温を終身の流刑とするのでした。
 文体はとても読みやすく、ストーリーもこれでもかこれでもかというほどに波乱万丈の人生を語り、あっと言う間に読んでしまいました。人物描写に関してはやや紋切り型の部分もあったように思いますが、何とか興味をつなぎとめることはできていたのではと思います。またシーンのアクセントとして歌われる琉歌もリズムを生んでいました。それにしても上巻だけで2段組400ページを超える量は半端ではないと思いました。下巻に期待です。

ジャック・リヴェット監督『ランジェ公爵夫人』

2009-07-27 18:06:00 | ノンジャンル
 WOWOWで、ジャック・リヴェット監督の'07年作品「ランジェ公爵夫人」を見ました。
 「1823年 マヨルカ島。フランス軍がカディスを占領しフェルナンド七世の王政復古を宣した頃」の字幕。モリヴォー将軍はかつての恋人・ランジェ公爵夫人の歌声を修道院で聞くと、病のため指揮権を大佐に委譲すると参謀長に手紙を書き、修道院へ夫人に会いに行き自分と逃げてくれるように言いますが、夫人は拒みます。5年前、友人宅で将軍に会った夫人は将軍を自宅に招いて誘惑し、将軍は恋に落ちます。2ヶ月後、将軍が日参していることを叔母(ビュル・オジェ)と叔父(ミシェル・ピコリ)に咎められた夫人は、将軍に訪問を控えてくれるように頼みますが、逆にいつかは自分のものにすると言われてしまいます。ある日夫人宅に告解僧が来ていて、夫人は二人のことを僧に話したと告げます。それから3ヶ月二人の間で宗教論争が続いた後、将軍は強引な手を使っても夫人を手に入れると宣言し、舞踏会の帰りに夫人を誘拐し、自分のものである証として焼ごてを額に押そうとしますが、夫人が素直にそれに従うのを見て夫人を解放します。それから夫人は将軍に毎日手紙を送り続けますが返事が来ないので、将軍の家を訪ねていき、そこに自分の手紙が全て未開封のまま置いてあるのを発見して失神します。夫人は生死にかかわる手紙だと言って最後の手紙を将軍に届けさせますが、将軍が自分を訪ねて来ないため、パリから姿を消します。そして5年後、将軍と仲間たちは夫人を助け出すために修道院に侵入しますが、夫人は既に息を引き取った後なのでした。
 リヴェットのいつもの映画の通り、演劇を思わせる静かな室内劇で、時間の経過は字幕で淡々と示されます。退屈して途中から早回しで見ましたが、それでも十分筋が追えるほど時間の進行が緩慢でした。山田宏一さんがリヴェットの映画は苦手だと言っていましたが、この映画に関しては全く同じ感想です。年老いたビュル・オジェとミッシェル・ピコリの姿が見られたのが収穫でしょうか。静かな映画がお好きな方にはオススメかも。