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エドワード・ゴーリー作、柴田元幸訳『おぞましい二人』

2010-01-31 12:08:00 | ノンジャンル
 エドワード・ゴーリー作、柴田元幸訳の'67年作品「おぞましい二人」を読みました。実話を基にして書かれた絵本です。
 5才の時病気の小動物を石ころで叩きころしているところを発見され、学校卒業後ことあるごとに書店で春本を万引きしていたハロルド。酒浸りの両親の間に生まれ、就職した安物雑貨店で宝石がすぐはずれるように装身具に細工して楽しんでいたモナ。二人は十進法の害悪をめぐる講演会で出会い、似た者同士であることを一目で悟り、犯罪映画が上映されると二人でかならず観にいき、とりわけ刺激的な映画を観たあとはたがいの体を不器用に探り、何年かのちに、人里離れたところにある殺風景な別荘を借り、愛しあおうとして長時間に頑張っても成果はなく、その年の秋、二人は自分たちの一生の仕事に乗り出すことを決め、厄介な準備の後、子供殺しに夜の大半を費やすようになりますが、ある日ハロルドが市電に乗っている時に彼のポケットから何枚かのスナップ写真がこぼれ落ち、逮捕された二人とも無関心に沈んだまま裁判はえんえんと続き、有罪、ただし精神異常という判決が下され、二人は入院後ニ度と顔を合わせることなく、ハロルドは43才の時風邪をこじらせて死に、モナは生涯の大半をひたすら壁の染みを嘗めてすごし、82才で、あるいは84才で死んだのでした。
 「うろんな客」での印象的な絵を覚えていましたが、今回の本はそれをはるかに上回る衝撃的な絵本でした。殺人の場面など決定的なシーンはことごとく排除されていますが、何気ない日常がかえって文章の異常さを際立たせているようにも思いました。猟奇的な事件が好きな方には特にオススメです。

マルセロ・シャプセス監督『チェ・ゲバラ ―人々のために―』

2010-01-30 18:36:00 | ノンジャンル
 WOWOWで、マルセロ・シャプロス監督の'99年作品「チェ・ゲバラ―人々のために―」を見ました。チェ・ゲバラに関するドキュメンタリーです。
 ゲバラの同志たち、ゲバラの娘たち、写真家たちが証言し、メキシコでのカストロとの出会い、アミリヤとの出会いと結婚、子供たちへの愛情、国家再建への道のり、コンゴでの活動などが語られます。
 フライシャーやソダバーグの映画で語られていた革命戦争の部分はほとんど省略され、それ以外の行動にスポットライトが当てられていました。写真や映像が多く収録されていて、フライシャーらの映画の主人公よりも実物の方がずっと魅力的であり、またキューバの大臣になっても彼1人だけ日曜の労働奉仕に参加するなど、人柄の点でも映画よりもずっと好意的に描かれていました。ゲバラの素顔を知るには劇映画よりもこのドキュメンタリーの方がずっと優れていると思います。ゲバラに興味のある方には特にオススメです。

小松左京『日本売ります』

2010-01-29 16:37:00 | ノンジャンル
 小松左京さんの'65年に刊行された短編集「日本売ります」を読みました。
 「日本売ります」は、宇宙人の手先となって日本の土地を買い占め、日本を丸ごと宇宙に持っていかれる話。
 「紙か髪か」は、火星で採取した菌が変異して世界中の紙を消失させ、その菌に対抗できる紙が発見されたが、その紙に使われている薬品は髪を抜けさせる働きを持っていたという話。
 「ダブル三角」は、「影が重なる時」に収録されていたものと同じ。
 「機械の花嫁」は、地球に残された女性が怠惰な生活を送る一方、宇宙で働く男性がアンドロイドの女性と結婚する話。
 「宋国屋敷」は、強い女性ばかりの世の中になって、しとやかな女性ロボットとともに風流に暮らす青年が家もろとも母たちに燃やされてしまう話。
 「墓標かえりぬ」「三界の首枷」「女か怪物か」は「影が重なる時」に収録されていたものと同じ。
 「四次元トイレ」は、パラレルワールドに通じるトイレを使って借金取りを別の世界へ送った浪費家が自分もその世界に送られてしまう話。
 「四次元ラッキョウ」は、皮をいくら剥いても無くならないラッキョウが宇宙人によって密かにもたらされるが、食料問題に用いることなく破壊するために核を使い、地球を蒸発させてしまうという話。
 「四次元オ  コ」は、ラブホテルで電気ショックと地震のショックを受け、膣が異次元宇宙とつながってしまう話。
 「蜘蛛の糸」は、自分に続いて登ってくる亡者たちを見たカンダタは早く登り切ってしまおうと天国を目指し、髪をつかまれたシャカが地獄へ落ちてしまい、カンダタが降ろした糸を登っている時、後から登ってくる閻魔大王らに登るなと言って糸が切れてしまう話。
 「仁科氏の装置」は、自分を安楽死させ、死体を焼却して骨を骨壷に収める装置を作り実演した男の話。
 「コップ一杯の戦争」は、コップ一杯の酒を飲んでいる間に終わってしまう核戦争の話。
 「サラリーマンは気楽な稼業‥‥」は「影が重なる時」に収録されていたものと同じ。
 「模型の時代」は、近未来でプラモデル熱が高まり、原寸大の車、飛行機、戦艦、月まで作ってしまう話。
 「ぬすまれた味」は、度重なる手術で脳だけになってしまった老人に感覚と味を奪われてしまった男が、復讐するためにわざとひどい味の物を食べたり、くすぐられたりするが、老人が発狂してしまい自分が精神病院に入れられてしまうという話。
 「地球になった男」は、人生に絶望した男が変身能力を得て、巨大な糞やペニス、女陰になって人類を滅ぼし、最後には自分が地球になるという話。
 「カマガサキ2013年」は、「影が重なる時」に収録されていたものと同じ。
 「フラフラ国始末記」は、父からボロ船を継いだ青年が船を独立国として宣言し、切手収入とラジオ放送で経営を軌道に乗せるが、船が座礁して計画が破綻する話。
 「サマジイ革命」は、人体改造を経て死ななくなった意地悪い老人たちが、全ての人を老人にしてしまう爆弾を爆発させる話。
 「本邦東西朝縁起覚書」は、吉野で甦った南朝の者たちが挙兵し、人々に支持されて現代に新政権を誕生させる話です。
 よくこれだけいろいろなアイディアを出せるものだと感心しました。エキセントリックさで言えば「サマジイ革命」が他を圧倒していたと思います。また必ず最後にオチがあることにも感心しました。洒落た短編を読みたい方にはオススメです。

スティーヴン・ソダバーグ監督『チェ 39歳 別れの手紙』

2010-01-28 16:01:00 | ノンジャンル
 昨夜、念願の「冬の深夜のヤビツ峠の鹿」を見に行ってきました。舗装道路ではありながら細い山道をくねくねと行くと、本当に道の脇にシカが2頭いました。自動車のライトが当たっても少しも動じることなく、無垢な目でこちらを見ていました。野性のシカを見たい方にはオススメです。

 さて、WOWOWで、スティーヴン・ソダバーグ監督の'08年作品「チェ 39歳 別れの手紙」を見ました。
 65年。変装してボリビアの空港に降り立つゲバラ。カストロはチェが国外に出たことを発表します。しばらくするとキューバからゲバラを慕う人々がボリビアに到着します。しかしボリビアの共産党は暴力革命を認めません。ゲバラらは食料不足になり殺気立ってきます。脱走兵の密告によりキューバ人の侵入がボリビア当局にばれ、アメリカの軍事顧問団が到着します。坑夫のストが起きますが、彼らは当局に虐殺され、仲間の部隊の捜索をする間にゲバラの隊は傷ついていきます。ゲバラは喘息の発作が続き、やがて仲間の部隊は裏切り者の密告のために渡河中に攻撃され全滅します。村で待ち伏せにあったゲバラは傷つき、ついに渓谷でボリビア軍の大軍に追いつめられゲバラは捕らえられます。結局彼は射殺され、ヘリコプターで遺体が運ばれるのでした。
 前作と同じく美しい風景に魅了されます。前作では人相が悪かったゲバラもこの後半では見られる顔になっていました。エピソードに関しても前作よりはつながりが見られ、プロットとして機能していたように思います。ゲバラに興味のある方にはオススメかも。

上野正彦『死体は生きている』

2010-01-27 15:40:00 | ノンジャンル
 朝日新聞の特集「深いテーマ 忘れえぬ一冊」の中で誉田哲也さんが推薦していた、上野正彦さんの'90年作品「死体は生きている」を読みました。東京都の監察医として変死体の監察をしてきた体験について述べた本です。
 具体的に死体のどういう状態から死因を決定していくかが述べられ、また妻の首を絞めて殺して放火した夫の犯行が監察によって暴かれた例が短編小説の形で掲載されています。
 驚いたのは、左胸に三寸釘三本を打ち込み自殺した大工さんがいたこと、独居の老人よりも家族と同居している老人の方が孤立して自殺しやすいことなどでした。ただ、同じ話が繰り返してなされたり、いかにもこなれていない文体が気になりました。変死体の監察について詳しく知りたい方にはオススメです。