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三好春樹『関係障害論』

2009-05-15 14:16:00 | ノンジャンル
 友人に勧められた、三好春樹さんの'97年作品「関係障害論」を読みました。'96年に行なわれた講義録に著者が訂正、加筆したものです。
 この本で言っていることを要約すると、身体の状態の問題だけでなく、社会、家族、そして自分との関係(プライド)を失うことによっても、老人の生活能力は衰えていき、それぞれの関係は加算的ではなく、かけ算的、つまり一つでもゼロになると全体がゼロになるというもので、一旦失われてしまった関係性は先ずデイケアなどを通して社会的関係から回復させていくのが効果的で、それが回復していけば、それと相関関係を持つ家族的関係や自分との関係も回復する傾向があるということです。そしてここで言う関係とは、あくまで相互的なもので、一方的にしてあげる、してもらうというものは関係には成り得ないということです。(例えば、食事をさせられるとか、入浴させられるとか。)もともと人間存在の根本にコミュニケーションがあると思っている私としては、全面的にうなずける内容でした。それ以外にも勉強になることが多々あり、例えば、
こちら側からは見えて、向こうからは見えないという眼差しの関係が権力の発生基盤だというフーコーの理論、またそれを分かりやすく解説してある本が桜井哲夫さんの「フーコー 知と権力」だということ、権力を持った人間は必ず堕落するということ、寝たきりの老人を介護する人は介護される側にとってはまさに「社会の代表」のような存在であること、交感神経や自律神経は嘘をつかないので、瞳を見ればその人が自分を好きかどうかが分かる、具体的には瞳孔が開いていれば好き、閉じていれば嫌いであること、寝たきりの人はタフなのであって、病弱な人は寝たきりになる前に死んでしまっていること、家族だけで介護しようとすると、どんなにいい家族関係があったとしても、3年で崩壊するということ、デイサービスではキャアキャアとお祭り騒ぎをする時間を持つことが、現実の嫌なことを忘れるきっかけを作ることになり大切なこと、同じくデイサービスでは利用者の人数が20人ぐらいいた方が、グループが自然発生的にできて好ましいこと、介護者は自分一人に依存するような利用者を作ってはいけないこと、などでした。また、専門家に相談すると症状は消えるが人間でもなくなってしまうという話や、24時間テレビでくれた車がリッター3キロしか走らない話や、法律は現場で柔軟な対応ができるように「原則として」とか「おおむね」とか「等」という言葉がついているのに、県、市町村と降りてくるに従って、そうした言葉が抜け落ちてくる話など、介護現場での裏話的なものもあり、三好さんのユーモラスな語り口もあって、とても楽しく読めました。それにしても、この10年で介護現場というのは随分改善されたものだとも感じました。介護に興味のある方以外にもオススメの本です。