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谷川直子『おしかくさま』その2

2013-10-31 10:29:00 | ノンジャンル
 昨日の続きです。
 ミナミはお清めをしたお札と無紋のお札を重ねて財布に入れてパチンコをしたら、5万3千円儲かったとアサミに報告します。アサミは姉が騙されていると思い、説得しようとしますがダメです。ユウは学校では友人もおしかくさんのことを知っていました。友人はコピーした用紙でおしかくさんを始めますが、途中で先生が入ってきて、おしかくさんを帰さないままになってしまい、おしかくさんを始めようと言い出した友人が腹痛で保健室へ運ばれます。ユウらは祟られたのではと思い、すぐにおしかくさんの続きをすると、友人の腹痛は治りました。一方、ミナミはつまらない原稿書きの仕事を辞めて、スーパーで地道に働こうと思うとアサミに言い、おしかくさんを一緒にやってくれと頼みます。ミナミはスーパーで仕事をやるべきか尋ねますが、お告げは台所の仕事をしろと言い、おしかくさまには10月15日の2時に上野動物園で会えると言うのでした。
 そしてその日、たまたま訪ねてきたミナミの父も合わせた6人は上野動物園に向かいます。ミナミは父が生きていく上で大事なのは知識と教養だとしか教えてくれず、生きる上ではお金だけが頼りであることを教えてくれなかったと父を非難します。彼らは気付くと2時になっていて、いつの間には目の前にAKBのような少女が立っていて、自分がおしかくさまの化身であると言い、いろんな質問をミナミがすると「すでにおまえはその答えを知っている」と言い、「金は鏡である。金は金を向き合うすべての人の心を映し出す」と言い、「限界をつくるのは人であり他の神である」と言いました。「光速より速いものは存在するの?」という問いに「啓示だ」と答えられたミナミは怒り出すと、少女は「私の背後を見なさい。おまえが見るものはおまえが一番見たくないものである」と言うと、5人は皆一瞬のうちに打ちひしがれてしまい、「神を試すことはできない」と言って少女は去っていきました。ミナミはその時、分かれた夫と見知らぬ女性と小さな男の子が手をつないで楽しそうに歩いている姿を見、他の4人も別れた家族の姿を見たと言うのでした。
 それからしばらくして「少女タレントにおしかくさま名乗らせインターネット新興宗教詐欺! ?」と題された記事がスポーツ紙に載り、「サイトを運営していた芸能プロダクションの売上総額は1億円。ご利益がないなどの苦情が複数警察に寄せられたため、警視庁が捜査に乗り出す方針。プロダクション側はAKBのオーディションを落ちた少女が啓示を受けたのは事実で、経費を除いた売り上げはすべて東日本大震災の義援金とするつもりであると主張している」と書かれていました。ミナミはユウに小説を書き始め、スーパーのレジの仕事も始めるつもりだと告げます。ある日、ミナミの許へ父に連れられた藤木野らがやって来て、少女が「清められた金がなせることは穢れた金の何倍かにもなるであろう。それを恐れてわたしとおしかくさまの信者は迫害されるだろう」と言っていたことに言及し、彼らはおしかくさまを助けにいくことにします。
 ネットへの書き込みで集まった人々を前にして、ミナミは語り始めます。「詐欺と報道されてから、あたしたちは世間から馬鹿者呼ばわりされています。あたしたちは愚かなことをしたのでしょうか。この国ではお金が何よりもお金が大事と声に出して言うことは下品だと思われていますが、実際お金ほど頼りになるものはない。だから人よりお金を信じようとしたのです。少女は金は鏡であると言いました。おしかくさまは何を教えようとしたのでしょう。ここにろうそくがあります。このろうそくの火で、どちらかを燃やしてください。穢れた1万円札か、無紋の札か」次の日には、この様子はYouTubeで流され、少女に対する世論は変わり、おしかくさまの名義で1億円が日本赤十字に振り込まれて、批判を続ける人は少数派となりました。
 ミナミは慣れない手つきでレジでバーコードを読み込みながらアサミと話し、1万円よく燃やしたなあという話になると、ミナミは自分は燃やさなかったと言って、いたずらっぽくアサミに笑いかけるのでした。

 話し手が父、洋子、ミナミ、アサミ、ユウと次々と変わるので、慣れるのに少し時間がかかりましたが、「ウツ病は先のことを考えず、5秒10秒先のことだけを考えるように」など、示唆に富んだ部分も多くあり、小説として面白いだけでなく、お金の使い方をも考えさせてくれる、そんな小説でした。

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谷川直子『おしかくさま』その1

2013-10-30 10:09:00 | ノンジャンル
 北上次郎さんが推薦していた、谷川直子さんの'12年作品『おしかくさま』を読みました。
 46歳のアサミは49歳の姉のミナミを呼び出し、母の洋子から76歳になる父が駅の近くに住んでいる一人暮らしの73歳の女性の家に出入りしているらしいことを聞き、アサミは民生委員をして忙しいということで、ミナミが洋子からおこずかいをもらって、父のことを調べることになります。ミナミは離婚でもめたあたりからウツ病になり、拒食症と不眠症ですっかりやせてしまい、それからもう十年近く経つのにまだ病院に通っていました。父が出入りしている家の表札には「藤木野」と書かれていました。父はその家に入ってから1時間ほどして出てくると、中からは複数の声が聞こえてきました。
 アサミの一人娘で中学一年のユウは、よくミナミの家に遊びに行っていました。ミナミの家にはスポーツ新聞が置いてあり、ある日遊びに行くと、ミナミはAKBがグループとして5億円を東日本大震災の義援金として寄付し、ファンが寄付できる義援金口座も開設、主要メンバーが極秘で被災地を慰問していたことなどを報じた記事をスクラップしていました。ユウは最近肉を食べたくないと言い出し、その理由を牛がかわいそうだからとミナミに打ち明けます。洋子は藤木野から夫宛に電話があって、また父が出かけるらしいので、また尾行してできれば藤木野に会ってきてほしいとミナミに頼みます。藤木野は高校で国語を教えていた父の昔の教え子の保護者だったということでした。ミナミは藤木野の家の前で父が出てくるのを待っていると、藤木野に中に通されます。中には同年代の4人の女性、藤木野、本田、奥村、馬場がいて、皆“おしかくさま”の信者で、「大きな災いより半年を経た日、おしかくさまの遣わした者東より来たり、その者の言の葉よく聞きよく行えばおしかくさまのご利益いやましたり」というお告げがあり、東日本大震災の半年後、その日にたまたま近くのATMがテンポラリー・ランクアップお社に指定されていて、そこで4人がお参りとお清めをし終わってATMを出たところ、藤木野のバッグがひったくりに会い、それを東から来たミナミの父が取り押さえ、バッグを藤木野に返したのだということで、ミナミの父がおしかくさまの遣いと信じられていると言います。
 ユウはアサミに頼まれ、ネットでおしかくさまオフィシャルサイトがあることを発見します。トップページには「おしかくさまはお金の神様です 現世においてお金でものが買えるのはおしかくさまのおはからいです。 おしかくさまを信仰すればあなたのお金が活性化されます」とだけ書かれていて、それ以上の情報を得るためには五百円を払って会員登録する必要があるようでした。ミナミらの父はお金の歴史や七福神など様々な知識を披露し、おしかくさまに騙されている“問題児”4人を救おうと、今日も藤木野の家を訪れ4人に話をしますが、4人のおしかくさまへの信仰心はなかなか揺らぎません。彼女らは1万円で無紋のお札と呼ばれるただの白い紙を買っていて、それを財布に入れておくとお金が増え、無紋のお札を買うのに払われた1万円も、そのほとんどは東日本大震災への義援金に送られるのだと言います。
 一方、ミナミは離婚からずいぶん経っているのに、あのとき友達だと思っていた知り合いが一斉に背を向けて去っていったことからひどく傷つき、何かしっかりしたものを探し求め、たどりついたのが光の早さでしたが、最近光速を超えるニュートリノの検出に成功したという報道を見て、心穏やかではなくなっていました。ミナミの許を訪ねてきたユウは、売れるものならなんでもつくっちゃえっている人間のやり方にギモンを持ったと言います。
 好奇心からその後も度々藤木野の家を訪れていたミナミは、おしかくさまのお社とはATMのことでおしかくさまに手を合わせてからお札を預け、もう一度おしかくさまに手を合わせてから同じ額を引き出すのが清めの儀式で、実際そのお札で買ったナンバーズで馬場は75万円当てたとと聞き、無紋のお札を買います。それを聞いたアサミは、おしかくさまのオフィシャルサイトで会員登録し、その詳細を調べるのでした。そこにはお参りの方法、お清めの方法、無紋のお札の効用とそれを買うと一つの質問に答えてもらえること、こっくりさんの方法でおしかくさんというお告げをしてもらえる方法が書かれていました。(明日へ続きます‥‥)

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マキノ雅弘監督『月形半平太』

2013-10-29 10:12:00 | ノンジャンル
 マキノ雅弘監督、伊藤大輔脚本の'61年作品『月形半平太』をスカパーの東映チャンネルで見ました。
 京都の大乗院で、西郷(近衛十四郎)と桂(高田浩吉)が会い、薩摩藩と協力することを藩の上層部に賛成させるため、桂が長州藩に向かうことになり、後は月形(大川橋蔵)が京都にいる長州藩士のまとめ役をすることになります。幕府側の見回り組のリーダー、奥平(山形勲)は、勤王派の武士を殺し回ります。
 町人たちは見回り組の残忍さを批判し、長州藩士たちも奥平を斬ろうと言いますが、月形は倒すべきは奥平ではなく幕府だと言い、時期を待てと言います。月形の馴染みの梅松(丘さとみ)は、月形が死んだら自分も死ぬと言います。奥平が馴染みの染八と月見に行くと知った長州藩士は、月形の言うことを聞かず、月見の場所に駆けつけますが、月形はそれを察知して、自分が梅松が奥平と染八の代わりに行きます。
 見回り組の早瀬(里見浩太郎)はひょんなことから扇屋の娘・歌菊を助けます。その夜、酔って帰る月形を大勢で切り殺そうとする見回り組でしたが、果たせず、早瀬は自分たちのやっていることに疑問を抱きます。
 京都守護職で見回り組に責められた早瀬は、脱退届けを出し、会津から出てきたのは町の人を守るためだったと言って、国元へ戻って百姓をやると言います。彼は月形に会いに行き、味方になりたいと言いますが、月形はあせっちゃいかん、時期を待てと言い、とりあえず扇屋の職人になれと言います。
 長州藩邸では、月形が見回り組の脱退者を匿っていると月形を批判する声が起き、奥平にも繋がっているのではと疑われ、早瀬の居所を見回り組に密告しようという意見が出て、松方(黒川弥太郎)が彼らを止めようとしますが、失敗します。早瀬が月形からだと呼び出され、その場に行くと、見回り組が待っていました。そこへ月形が現れ、志しを持つ者は双方にもいることを知るべきだと言いますが、聞き入れられず、月形は奥平を斬ります。
 奥平の従弟の小宮山(平幹二郎)が染八の許に現れ、奥平の仇討ちをしたいと言います。仲良くしている早瀬と歌菊に月形は藩論が統一する時期は必ず来ると言います。一方、長州藩からの早馬が京都に到着し、徳川幕府と手を結ぶことになったと伝えられ、反論する者は藩の命令に背くのか、と詰問されます。意見を求められた月形は、酔った勢いで、上の意思が変わったことでジタバタするようでは、天下国家を論じるに当たらないとして去りますが、松方も月形を追って去ります。春雨の中を酔って歩く月形に染八が傘をさしかけ、月形は彼女の部屋に寝ますが、彼女が刀で月形を襲おうとすると、やぼなまねはよせ、と止めます。恥じ入る染八。奥平を斬ったのは今の世のため、花は必ず散るので、それまで待ってくれ、と言う月形。河原を歩く月形に、長州から帰ってきた桂が声をかけ、幕府と手を結ぶと言ったのは、薩摩と連合する際の藩の反対派を牽制するためだった、と聞きます。
 薩摩の屋敷で西郷と桂は会い、桂から月形への手紙が梅松の許へ届けられます。機は熟せりと早瀬に伝言する月形は、大乗院で桂と会うと梅松に言い、桂と一緒に国元へ帰るかもしれないとも言いますが、梅松は一晩でも会えないと辛いのにと言って泣きます。桂に会った後、三条河原で四つ半に会おうと梅松に言う月形。早瀬のところへ月形の伝言と手紙が届けられますが、そこには大乗院へ月形が行くと書いてあり、桂が長州藩邸にいることを知っていた早瀬は月形が騙されたことを知り、大乗院に急行します。月形が大乗院に着くと、誰もいず、図られたことを知ります。そこには長州藩士らから情報をもらった新撰組が待っていました。新撰組と斬り合う月形。大乗院へ行く早瀬を邪魔する長州藩士と斬り合う早瀬。桂と早瀬らが大乗院に着くと、月形は致命傷を受け意識が薄れていて、桂らを認めることもできない状態でした。そして夕暮れの中、三条河原で待つ梅松の姿で映画は終わりまます。

 人物関係が分かりにくく、筋を追うのに苦労しましたが、美術がすばらしく、またマキノ節も健在でした。特に酔っ払いながら弁説をふるう大川橋蔵の演技は素晴らしかったと思います。

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ジェフリー・S・ローゼンタール『運は数学にまかせなさい』

2013-10-28 08:44:00 | ノンジャンル
 石井輝男監督・脚本の'64年作品『ならず者』をスカパーの東映チャンネルで見ました。
 一匹狼の殺し屋を高倉健、香港の麻薬密売組織の首領を丹波哲郎、彼を裏切る中国人女性を三原葉子、売春Gメンを杉浦直樹、マカオの賭博師を江原真二郎、小悪魔的な女性を加賀まりこ、肺病病みの娼婦を南田洋子、悪者の人身売買組織の首領を安部徹が演じていて、屋外のシーンは全編香港とマカオの現地ロケで行い、石井監督ならではの銃撃戦も見られ、赤木春恵がオーナーの安宿と、南田洋子の住む薄暗い部屋の美術も雰囲気がよく出ていて、見る価値があると思いました。
 またエドワード・ズウィック監督、デミ・ムーア主演の'86年作品『きのうの夜は‥‥』もスカパーのBSイマジカでみました。恋愛ドラマのようで、最初の25分を見た段階で先を見るのを断念しました。現在の恋愛ものは(特にアメリカ映画は)苦手です。

 さて、朝日新聞で紹介されていた、ジェフリー・S・ローゼンタールさんの'05年作品『運は数学にまかせなさい』を読みました。
 監修者まえがきから引用させていただくと、「この本は全部で十七章からなり、その粗筋(あらすじ)はつぎのようになっている。まず冒頭では、ランダム性(デタラメさ)が確率にいかに大切な役割を果たすかを述べている。つぎに、偶然の一致が確率論の立場からどういう意味を持ち、意外と思われることの多くがじつは私たちの錯覚に過ぎないことを指摘する。そして、カジノのような賭博に確実に勝つ方法があるかどうかを検討し、そこでは『大数の法則』と呼ばれる確率論の法則がいかに大切な役割を果たすかを指摘する。これによって、サイコロ賭博、ブリッジ、ポーカー、ブラックジャックなどのカードゲームを確率論の立場から見るとき、長期にゲームを続ければ、客は確実に損をすると強調する。このカードゲームを出発点として、殺人、病気の伝染などの話に移り、その時間的な推移状況が『回帰分析』と呼ばれる統計手法で求められることを示す。また、火災保険に入るか入らないかの行動にたいしては、意思決定論のなかの『効用』の概念が無視できないことを述べる。面白いことに、この効用を使うと、宝くじを買うか買わないかの行動も解析される。つぎに、確率論の中心テーマである正規分布に移り、それが中央極限定理から導かれることを示す。この正規分布を駆使すると、今後に起こる確率を事前に予測したとき、その誤差の範囲を求めることができ、それによって、大統領選挙などのさまざまな事前予測が的中したかどうかの判定ができる。(中略)なお、最後の第17章では、日常生活のなかから確率に関する問題を十五問取り上げ、読者に解答を求めている。読者の解答と正解を比べれば、この本に対する読者の理解度が求められるという寸法である」
 へえ、と思ったのは、41人以上だと生まれた月日が同じ人がいる確率は90%を超えること、多く事物があると、まったくの偶然からその一部がそこここで集まりがちになることを「ポアソン・クランピング」と呼ぶこと、ランダムな出来事が多くなればなるほど平均値に近づくことを「大数の法則」と呼ぶこと、50%の確率のものが3つ重なれば、0.5×0.5×0.5×=0.125となり、p値が12.5%となるが、これが5%より少なくないと、ダンダムの結果の誤差内と考えられるのが一般的だということ、DNA鑑定は少数の「目印(マーカー)」だけが識別・照合されるので、誤差は必ず生ずること、「モンティ・ホール問題」という面白い確率の問題が存在すること、スパムメールに対するフィルタは、スパムメールに存在する確率の高い語句やその組み合わせでスパムメールである確率を計算して、スパムメールを割り出していることなどでした。
 既に知っている部分が多い反面、初めて知ることに関してはよく分からない部分が多くありましたが、日常的な例が多く取り上げられていて、楽しく読め、また最終章の問題もほとんど正解できたので、まあまあ理解できたのかな、とも思います。数学嫌いな人でも、楽しく読める本だと思いました。

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相米慎二監督『夏の庭 The Friends』

2013-10-27 00:06:00 | ノンジャンル
 相米慎二監督の'94年作品『夏の庭 The Friends』をスカパーの日本映画専門チャンネルで見ました。
 仲のいい木下と川辺と山下は、この近所に一人暮らしのおじいちゃんが住んでいると聞き、死ぬのを自分たちで発見しようと、監視することにします。雑草が生えっぱなしの汚い家。もしかしたらテレビをつけっぱなしで死んでしまってるのかも、と考えた3人は敷地の中に入ると、老人(三國連太郎)がガラス戸を開けて現れ、3人は驚いて逃げ出します。老人は傘をさして買物に出かけ、3人は尾行します。
 夏休みに入り、塾に行くため早く家を出た木下は、ゴミのポリ袋を敷地から出し、山下は新聞も腐ってると言いますが、老人は「お前たち、何してる? 勝手に人の家に入ったりして」と言います。死んだお父さんは消防士で、人を助けるために死んだと語る川辺。買物を尾行し、やがて老人を見失い、病院は老人ばかりいるということで、木下は病院へ行きますが、病院内を彷徨い、やがて死体置き場に至り、逃げ出します。川辺はお父さんは死んでなく、別のお母さんとの間に別の子がいると言い出します。上半身裸の3人。長い歯をつけてバアと言う老人に、バカにすんなと言う3人。老人は縄を張り、洗濯物を干します。
 雑草のために蚊が多くて困ったもんだ、と老人が言うので、3人は草取りをします。老人は「ここは御国を三百里」と口笛で吹きます。草取りを終え、古井戸に「おーい」と叫ぶ老人と3人。老人はスイカを出し、魚屋をやっている山下は器用に包丁を研ぎます。スイカにかぶりつく4人。庭に種を捲こうと老人が言い出すと、様々な花の名前を皆が言い出し、早速明日捲くことにします。畝を作り、コスモスの種を捲く3人。そこへ彼らの担任の近藤先生(戸田菜穂)が現れ、君たち感心ねと誉めてくれます。しけてる畳みを干し、縁側を修理し、障子紙を貼り直し、窓をふき、屋根に青いペンキを塗る3人。ブランコから見下ろして、甦った家を4人は見ます。老人は川辺の質問に答え、結婚をしたことはあるが、弥生という名の奥さんと別れてしまい、子供はいなかったと答えます。その夜台風が来て、3人が老人の家に集まると、老人は戦争には行ったが、仲間とジャングルを逃げ回っただけで、窓にやってくる蛾は死んだ人間が挨拶に来てるんじゃないかと言います。そしてジャングルの中で小さい家に行き当たり、そこには女と子と老人しかいませんでしたが、敵への通報を恐れ、皆殺しにしてしまい、食べ物をたらふく食って、今こうして生きていると言うのでした。
 3人は弥生さんを探し出してしまい、老人ホームに会いに行くと、弥生さんは近藤先生の祖母でした。老人の写真を見せ、「この人分かるよね、自分を捨ててひどいと思いますか?」と聞くと、弥生(淡島千景)は「私が奥様なら、その方を恨んでなんかない。私の旦那様はとうに亡くなってしまった」と言います。近藤先生は「死んでないの。戦死したことになってるんやけど」と言います。近藤先生はおじいさん宅を訪れ、弥生という女性と幸福な生活を送っていたが、召集され、その時妻は娘を妊娠していて、父が戻らず、娘が20歳の時に私が生まれた、つまり喜八の子供が私だと言います。新婚当時の喜八と弥生の写真を見せますが、老人は喜八は自分ではないと言い、その様子を3人は外から伺います。3人は老人の名前を知り、老人が名前を隠したがっていることも知ります。老人は明日弥生さんの元を訪ねると言い出し、3人は自分たちはサッカーの試合で行けないがお互い頑張ろうと言います。試合から帰り、コスモスが咲く庭を通り、老人の元へ行くと老人は既に亡くなっていました。泣き出す3人。葬儀社の者(笑福亭鶴瓶)に頼んで焼香させてもらった3人は焼き場に向かいますが、そこへ弥生を連れた近藤先生が来て、弥生に故人と会わせてやってほしいと言います。喜八の顔を見て、しゃがみ込み、「おかえり、なさいませ」と言う弥生。
 「ここどないなるんやろ、跡形もなくなるんやろうな」と話した3人は「お弔いしよう」と言って、古井戸に「おーい、お弔いやでー」と言って蝶を落します。すると井戸から無数の蝶が舞い出てきて、「今の何? おじいちゃんや、きっとあいさつしたんや」と話し、「さいならー、さいならー」と言って去ります。重機の音。喜八と3人の話し声。井戸には亀裂が走り水が洩れ、家は廃墟化していくのでした。

 ここでもワンシーン・ワンカットの魅力的なシーンが多く見られました。

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