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海の底

2006-03-31 17:12:25 | ノンジャンル
 有川浩さんの「海の底」を読みました。巨大ザリガニの群れが横須賀港に上陸し、県警、機動隊を突破し、最後には自衛隊に一網打尽にされ、めでたしめでたし、という話を、たまたま横須賀に停泊中だった自衛隊の潜水艦に緊急避難した子供たちと二人の自衛官のやりとりを中心にすえて語った小説でした。
 前半は警察や自衛隊の組織の名前や輸送機の名前がぎっしりつまった文章を読まされて、ちょっと辟易したのですが、途中から潜水艦内部の人間模様に話の中心が移ってくると、結構楽しく読めました。子供たちの中に女子が一人交じっていて、その子だけ高校生なのですが、その弟は両親が事故死してから声が出せなくなり、親戚の家で暮らすその姉弟は住む団地でもいじめられていて、そのいじめの張本人を母に持つ少年もいたりして‥‥。いわゆるグランド・ホテル形式(登場人物が一ヶ所に集まって進むドラマ)の小説になっていて、青春あり、恋愛あり、の内容でした。
 ご本人もあとがきで書いてらっしゃいますが、怪獣ものにベタな青春だの恋愛だのを混ぜるのはどうか、とお思いの人もいるかもしれませんが、これは著者にとっては息をすることと同じで、これなしでは小説は書けないのだそうです。
 また、あとがきを読んで知ったのですが、有川浩さんは名前を「ひろ」と読む女性なのだそうです。すっかり「ひろし」という男性だとばかり思っていました。主婦をやりながらの作家人生なのだそうです。そんな普通の主婦がなんで警察や自衛隊のことに詳しいかと思ったら、参考文献のところに、自衛隊の本が6冊、警察関係の本が3冊、危機管理の本が2冊ありました。勉強されたんですね。そんなパワーが私もほしいです。

キース・ジャレット・スタンダード・トリオ

2006-03-30 17:32:08 | ノンジャンル
 W0W0Wでキース・ジャレットのスタンダード・トリオの演奏を見ました。ベースはゲイリー・ピーコック、ドラムスはジャック・デジョネット、'86年10月28日東京での公演でした。
 このトリオはあらかじめ曲目を決めず、キースが弾き始めると残りの二人が曲目を察知して演奏を始めるので、みんなが知ってるスタンダードしか演奏できない、というので、こういう名前のトリオになったそうです。
キース・ジャレットの演奏する姿を初めて見ましたが、ぶっ飛びました!
メロディーを常に口ずさみ、椅子から立ち上がったとみると、体をねじったり、手をつっぱったり、とにかくおとなしく椅子に座っている時間が圧倒的に少ない。中腰で演奏する時間が長く、ベースやドラムスのソロパートになると、タオルを持ってどっか行ってしまう。とにかく音楽への集中の仕方がすごかったです。
 演奏した曲は「You Don't Know What Love Is」「With a Song in My Heart」「When You Wish Upon a Star」「Love Letters」「Georgia on My Mind」「You and the Night and the Music」「When I Fall in Love」そしてアンコールとして「On Green Dolphin Street」でした。
 キースは、現在でもこのトリオとソロの演奏の二本立てで演奏活動を続けているそうです。実際にこの目で見てみたいけど、東京公演があってもチケット高いんでしょうねえ。でも行きたい!

今がわかる時代がわかる世界地図

2006-03-29 18:33:29 | ノンジャンル
 どこから仕入れたのか忘れましたが、面白いと薦められて「今がわかる時代がわかる・世界地図・2005年版」を読みました。確かに面白い!例えば、ブッシュ大統領と小泉首相の報酬がほどんど同じだったり、愛知県の知事の報酬はアメリカのどの州知事の報酬よりも高かったり、米軍の派遣先の2位がドイツだったり、世界の軍事費の2位が中国、5位が日本だったり、ODAの中での贈与比率が日本だけ以上に低かったり、「国際政治」と銘打った章だけ見ても、これだけの面白い発見がありました。
 これ以外の章建ては、「社会」「産業経済」「交通・情報」「環境・自然」「文化・スポーツ」「統計」となっていて、その後にも詳細な世界地図が70ページにわたって掲載されています。
 他の章についても、ネタに困った時には、面白かった発見を発表していきたいと思います。今後ともご期待ください。(?)ちなみにご自分で手に入れたいという方に。定価は税込み1680円です。

きいろいゾウ

2006-03-28 16:55:01 | ノンジャンル
 西加奈子さんの最新刊「きいろいゾウ」を読み終わりました。「くうねるところすむところ」でシビアなビジネスの現実を味わった後だったので、読んでいて、とても癒される感じでした。
 海に近い田舎に引っ越してきた新婚夫婦に、近所の老夫婦(おばあさんは少しボケてる)、登校拒否の小3の男の子の孫と住む夫婦、気の強い少女、妻我(めが)さんに飼われているレトリバー「メガデス」、野良犬の「カンユ」さん、チャボの「コソク」ら、個性の強いキャラクターが絡んで、ちょっとした事件が起こりながらも淡々と進む日常を、主に新婚夫婦の妻の視点で描いた小説です。
 悪意というものがもともと存在しないかのような世界なのに、現実ばなれしたところもなく、登場人物の心情にも説得力があって、とてもいい小説だと思いました。
 題名の「きいろいゾウ」というのは、妻が小3の時に心臓を患って1年間入院した時にみた、空飛ぶきいろいゾウと世界中を旅する夢(?)から来ています。きいろいゾウが飛ぶ力を失って灰色のゾウの群れに加わる時の話もなかなかよくて、それだけで一冊の絵本が書けるほど内容が濃いと思いました。
 前作の「さくら」も良かったし、西さんの次回作も注目です。

リチャード・フライシャー、死す!

2006-03-27 16:59:16 | ノンジャンル
 今日の朝日新聞の夕刊に小さい囲み記事が掲載されていました。
「リチャード・フライシャーさん(米映画監督)
25日、ロサンゼルスの病院で老衰のため死去。89歳。ロサンゼルス・タイムズが26日報じた。
ニューヨーク出身。SF映画などの大作を数多く手掛けた。主な監督作は「海底2万マイル」(54年)、「ミクロの決死圏」(66年)、「マジェスティック」(74年)。旧日本軍による真珠湾攻撃を描いた「トラトラトラ!」(70年)では共同監督を務めた。」
 フライシャーはお父さんが「ポパイ」で有名なアニメーターで、本人もサミュエル・フラーやニコラス・レイ、ロバート・アルドリッチ、ロバート・ロッセンらと肩を並べる、50年代を支えた映画的才能の一人です。私が印象に残っているのは、リチャード・クラインを撮影監督に迎えた晩年の映画「ザ・ファミリー」の見事な夜の撮影や、「マンディンゴ」のリアリズム、「スパイクス・ギャング」の軽やかさ、そして「絞殺魔」の無気味さです。
 アメリカでは過去の監督の再評価の気運が盛り上がっていて、ハワード・ホークスなどはアカデミー授賞式でどうどうと名前が呼ばれるようになってきています。リチャード・フライシャーを始め、50年代の世代の監督にもこれからスポットライトを当てていってほしいのですが‥‥。