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川上未映子『わたくし率 イン 歯ハー、または世界』

2010-04-30 14:09:00 | ノンジャンル
 昨日のWOWOWで007シリーズの特集をしていました。10代の頃は興味深々で見ていたこのシリーズですが、今見てみると画面は子供だましの陳腐なもので、かなり古びているように見えました。当時は音楽&荒唐無稽なアクション&女優の魅力などに翻弄(?)され、意識して画面を見ていなかったような気もします。

 さて、川上未映子さんの'07年作品『わたくし率 イン 歯ー、または世界』を読みました。同名の中編と短編『感じる専門家 採用試験』からなる本です。
 『わたくし率~』の冒頭の部分を引用させていただきます。
「―あなたの歯が生まれつきとことん健康であることはとてもよくわかりましたし面接はこれくらいなものですが、ねえ、そんな必死に、歯がいったい、あなたのなんであるの?
 ―わたしが、や、これは簡単な感想になりますけれども、わたしに限らず、ほかの誰かのわたしにも、まあ年齢やら性別やら記録やら色々なもんがひっついてありますわね。
 ―ありますね。
 ―しかしそれらからちゃっと独立して、それらにはなんでか左右されへん、そう、たとえば計算とかね、運動とか法則とかね、それじたいには性別もなけりゃ年齢もなくてですね、そういうような性質のもんもまた、わたしにははっきりとあるわけです。
 ―ウム。
 ―有無。そのドーナツの穴っぽいものがこう、ぐんと詰まってるような、あるいは詰められているような、あるいは詰めてきたような。そんな部分が体の中のどっかにあるということにしたって別段ええんやないのって、二十五年くらい前の春から、そんな風に念願してきたんです。その、詰まってるところが、歯。」
 ここまで読んだところで、先を読むことを断念してしまいました。この冒頭の部分は、まさに題名である「わたくし率 イン 歯」について述べているのだと思いますが、今の私には内容を理解しつつ読み進むことが非常に労力のいる「仕事」となってしまい、気楽に読むことはできませんでした。将来また読んでみたい本ではあります。ちなみにこれ以降に川上さんが書いた本はもっと理解しやすい文体になっていて、とても面白い本であることを伝えておきたいと思います。ということで、上記の文体に付いていける方にはオススメです。

AFI ジャンル別アメリカ映画ベスト10

2010-04-29 20:33:00 | ノンジャンル
 昨日のNHK・BS2で、'08年制作の「アメリカ映画協会(AFI)によるジャンル別アメリカ映画ベスト10」 という番組を放送していて、偶然見出したら止まらず、3時間余りの間最後まで見てしまいました。
 先ずアニメでの1位が『白雪姫』、2位が『ピノキオ』、3位が『バンビ』とディズニーの旧作が上位を占めていることに興奮し、次のファンタジーでは1位が旧作の『オズの魔法使い』、2位が『ロード・オブ・ザ・リング』、3位が『素晴らしき哉、人生!』とこれも嬉しく、SFでは9位にドン・シーゲルの『ボディ・スナッチャー/恐怖の街』、スポーツでは8位に『ハスラー』、イーストウッドが紹介する西部劇では、1位がフォードの『捜索者』、4位がイーストウッドの『許されざる者』、5位がホークスの『赤い河』、6位がペキンバーの『ワイルドバンチ』、8位がアルトマンの『ギャンブラー』、タランティーノが紹介するギャング映画では、9位が『犯罪王リコ』、6位がホークスの『暗黒街の顔役』、4位がウォルシュの『白熱』、ロマン・ポランスキーが紹介するミステリーでは、9位が『ダイヤルMを廻せ』、7位が「北北西に進路を取れ』、4位がジーン・ティアニー主演の『ローラ殺人事件』、3位が『裏窓』、2位がポランスキーの『チャイナタウン』、1位が『めまい』とほぼヒッチコックの圧勝。ロマンチック・コメディでは5位が『フィラデルフィア物語』、4位『ローマの休日』、2位『アニー・ホール』、1位が赤狩りの時にアメリカを追放されたチャップリンの『街の灯』、法廷ドラマの7位はジェイムズ・スチュアートとベン・ギャザラ出演の『或る殺人』、歴史ドラマでは9位が『レッズ』、8位が『プライベート・ライアン』、7位が『西部戦線異状なし』、5位はキューブリックの『スパルタカス』、3位が『シンドラーのリスト」といったものでした。
 私が子供のころのテレビ(ざっと40年前)ではよく外国映画の名場面集というのがやっていて、テレビの前にラジカセを置いて録音したりしたものですが、その頃の興奮を思い出しました。それにしてもこのラインナップ、単純にスゴイと思ったのですが、AFIってアメリカ映画の0B組織なのでしょうか? マイケル・J・フォックスの元気になった姿を見ることができたのも感動的でした。見逃した方、次に放映される時は要チェックです。

ガス・ヴァン・サント監督『ミルク』

2010-04-28 16:05:00 | ノンジャンル
 ガス・ヴァン・サント監督の'08年作品『ミルク』をWOWOWで見ました。70年代にゲイで初めて政治家となったハーヴェイ・ミルクについての映画です。
 同性愛者を不法に摘発しようとする警察の記事。「1978年」の字幕。ハーヴェイ・ミルクは自分が暗殺された時のために、今までの経緯をテープに録音しています。サンフランシスコの市政執行委員長が市長とミルクが暗殺されたことを発表するニュース映像。「1970年 ニューヨーク」の字幕。行きずりの男を誘い夜をともにするミルク。1972年当時、同性愛者たちの聖地だったサンフランシスコで、ミルクは仲間とともに店を開き、商店組合に入ろうとしますが、そんなことをしたら警察に営業許可を没収されると同業者に教えられ、ミルクは自らゲイの組合を作ろうとします。世界中から集まって来るゲイを追い出そうと警察は躍起になり、ゲイの経営する店に対する警官による襲撃が相次ぎます。ミルクは自分たちの代表を政界に送り込もうと考え、自らサンフランシスコ市政委員に立候補し、様々な脅迫にもめげず、平等な権利をすべての市民が有するための社会変革を訴えて戦い、善戦しますが敗れます。1975年に再び立候補し、前回の得票を上回る結果を出すもやはり敗戦。1976年、カリフォルニア州下院議員に立候補。フロリダのデード郡で成立していた同性愛者の権利を認める条例を廃止する運動を進める超保守主義活動家アニタ・ブライアントが、同性愛者を売春婦や泥棒と同じ犯罪者だと主張する中、敗れたものの、これまでで一番多い票を集めたミルクは弱気になります。デード郡でもアニタの勝利になると、怒ったゲイたちはデモを行い、ミルクも「ゲイに権利を!」と叫んで共に行進します。「1977年」の字幕。市政委員への3度目のチャレンジ。元警官で保守の出であるダン候補はゲイの排斥を主張しますが、ミルクはレズビアンのアンを新しい選挙参謀に迎え、彼女は新聞の支持を取り付けることに成功し、それまでバラバラだった組合、女性、高齢者、ゲイ、マイノリティなど社会的弱者の票を取りまとめてミルクは当選し、史上初めて市政委員会でリベラル派が過半数を占めることになります。「1978年」の字幕。ミルクは最初の仕事としてサンフランシスコでのゲイ差別禁止条例の成立を目指します。ダンに招待されたダンの息子の洗礼式にミルクは出席し、ダンに対して、彼の支持母体が反対している精神病院の建設に自分も反対する代わりに、ゲイ差別禁止条約の成立に協力してくれるよう要請し、ミルクはダンの心が揺れているのを感じます。アニタはブリッグス州議員と組んで、神の意思に反し、変態たちによって子供たちに悪影響が与えられるとし、カリフォルニア州のゲイの教師を追放するための住民投票を行うことを提案します。ミルクは仲間に家族や友人、雇用主にゲイであることをカミングアウトさせ、彼らの票を取り込むことを皆に提案します。一方、精神病院が子供のための施設であることを知ったミルクはダンを裏切って建設賛成の票を投じ、それを知ったダンは支持母体にどう言えばいいんだと言って怒ります。各地で同性愛者保護条例が住民投票によって廃止されていく中、ミルクはサンフランシスコでのゲイ公民権条例をダン以外の全ての委員の賛成を取り付けて成立させます。「1978年6月25日 ゲイ・フリーダム・デイ・パレード」のドキュメンタリー映像。暗殺の脅迫にもかかわらず、ミルクは大群集の前で演説し、独立宣言の「全ての人が平等な権利を持っている」という言葉を引用します。そしてマスコミと市長を連れてブリッグスに会いに行き、公開討論会を実現させますが、ブリッグスを支持する狂信的なキリスト教原理主義者たちの応援によって、討論会はブリッグスペースで進みます。「1978年11月7日 提案6号投票日」の字幕。州知事やレーガン元知事が、既に子供を守る法律は完備されているとして提案に反対し、カーター大統領も反対のスピーチをする中、序盤の地方票はブリッグス側に流れますが、大都市圏で圧勝したミルクは、住民投票に勝利します。ダンは辞表を市長に提出し、すぐに撤回しますが、ミルクの圧力で市長はダンを再任せず、ダンは市庁舎内で市長とミルクを射殺します。その夜、3万人の人々がロウソクを手に行進し、ダンは5年の刑期を終えた2年後に自殺、ミルクの仲間たちは現在も希望を胸に社会活動を続けているのでした。
 「エレファント」で見せたような独特のカメラワークはなく、平凡な画面と編集に終始していましたが、住民投票に勝ったシーンでは胸がつまり、ラストシーンでは号泣してしまいました。常に2人以上の人が画面に収まっている不思議な映画でもありました。公民権運動に興味のある方には特にオススメです。

難波江和英・内田樹『現代思想のパフォーマンス』

2010-04-27 14:35:00 | ノンジャンル
 難波江和英さん、内田樹さん共著の'04年作品『現代思想のパフォーマンス』を読みました。現代思想を代表する6人の思想家が提示した「考え方」を紹介し、その考え方を使うとどのように世界が見えてくるかを述べた本です。
 難波江さんが先ずソシュールの記号論を説明し、個があってそこから関係が生じるのではなく、関係が生じるのと同時に個が立ち現れることが、主に言語論として語られます。次に内田さんによるバルト論。関係が生じて裁断された環境が社会システムとなることが語られた上で、システムのモードを意識化することによって社会システムを相対化する試みが述べられます。次の難波江さんによるフーコー論では、現在人々が考えている「意味」とか「価値」というものは歴史的に捏造されてきたものであり、相対化の対象となりえることが語られ、次の内田さんによるレヴィ=ストロース論では、親族システムでも同じことが言え、システムに動きを与えることで、私たちがシステムの息苦しさから逃れえる可能性について語られます。そして次の内田さんによるラカン論では、精神分析においても、「石化」した患者の精神状態に動きを与えることが症状の緩和に繋がることが述べられ、最後の難波江さんのサイード論では、オリエンタリズムにおける西洋の東洋に対する優越がいかに恣意的で歴史的捏造のもとに作られた考え方であるかが述べられています。
 ソシュールの一般言語学に関しては、難波江さんがその研究の第一人者と認めている丸山圭三郎先生の講義を私が大学時代に直接受けていたこともあり、その時にもらったプリントの方がずっと整理されていて分かりやすかったと感じました。一方、内田さんによるバルトやラカンの説明はとても分かりやすく、応用のきく素晴らしいものだったと思います。特にラカンの用語「想像界と象徴界」を始めとして、バルトの用語「エクリチュール」「スティル」「モード」、フーコーの用語「権力」を初めて理解できたことは今後の人生において大いなる財産となると思うほどの衝撃でした。今の生活に息苦しさを感じている方すべてにオススメです。なお、もっと詳しく本の内容を知りたいという方は、私のサイト「Nature life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto)の「Favorite Books」の「内田樹『寝ながら学べる構造主義』」のところにアップしておきましたので、是非ご覧ください。

ジョセフ・H・ルイス監督『捨身の一撃』

2010-04-26 18:33:00 | ノンジャンル
 ジョセフ・H・ルイス監督の'55年作品『捨身の一撃』をDVDで見ました。
 6月4日のカレンダー。ケイレム(ランドルフ・スコット)は各地で保安官を勤めて殺した無法者たちの敵討ちの訪問を受けながら、現在は牧場主のエイサフに頼まれて彼の作った町の保安官を勤めています。同じ下宿には彼の片腕で医者のドクター・エイモス・ティンも住んでいます。一方、劇場主のソーンと酒場のオーナーのコーディは、近々溶鉱炉が完成し鉱山が再開するとの情報を得て、鉱山に集まる鉱夫たち相手に一財産作ろうと、エイサフから町を乗っ取ろうと画策し、金で無法者を雇っては邪魔なケイレムを殺させようとします。最初に買収されたティンゴは床屋で髭剃りをされていたケイレムを襲いますが、携帯銃で返り討ちに会います。ティンゴが大金を所持していたことから、ドクは誰かがケイレムを殺そうとしていることに気付き、ケイレムに町を去るように言いますが、ケイレムは「どこに行っても結局同じで逃げ場はないので、ここで生き抜いてみせる」と言います。ティンゴの妻と、彼の弟で怪力の持ち主であるドゥーリーが遺体と所持品の引き取りにやって来て、ドゥーリーはその夜酒場で大暴れをし、駆けつけたケイレムと壮絶な殴り合いをしますが、結局逮捕されます。一方、ソーンとコーディは新たな無法者ハーリー・バスカムを雇い入れ、5000ドルを提示しますが、バスカムは町の上がりを3人で3等分することを要求します。バスカムが去った後、ソーンはコーディに、エイサフを苦しめるために彼の妻を寝取ったが、もう役目が済んだので捨てたと言います。翌6月5日。ティンゴの妻がケイレムの元を訪れ、昨晩ケイレムに銃を使わせなかったことに感謝し、ドゥーリーを釈放してほしいと言います。ケイレムは今後はティンゴの妻を守ってほしいとドゥーリーに言って釈放してやり、ドゥーリーもその言葉を素直に受け取ります。そこへケイレムを狙って男がナイフを投げ、失敗した後、ケイレムを殺せば100ドルもらえると聞いたからやった、匿ってくれとコーディのところへ行って言いますが、顔を人に見られたと男が言うとコーディは即座に男を射殺します。夜、コーディの酒場で待ち伏せするバスカムに正面から立ち向かったケイレムは頭を撃たれ倒れます。ドクはまだ息があるケイレムを死んだと嘘を言ってドゥーリーらとケイレムを運び出し、留置所の中で秘かに手当てします。一方、コーディらはケイレムが死んで町が解放されたとお祭り騒ぎをし、ソーンとともにケイレム派の酒場を強引に乗っ取り始めます。町が無法者で溢れる中、彼らはエイサフの牧場へも乗り込み、牧童を次々に縄にかけて馬で引きづり、エイサフにケイレムの死を告げ、町から手を引けと命じます。エイサフは妻にはもう手を出すなというのが精一杯で、法の確立に費やしてきた20年間が水泡に帰したこで、もう疲れたと夫人に言って自室に戻ります。夫人はドクの元へ駆けつけ、ケイレムがまだ生きていることを知ると、ソーンが町の乗っ取りとそのためのケイレムの殺人を計画していたことを法廷で証言することをドクに誓います。翌6月6日の夜。回復したケイレムはコーディの酒場へ向かいます。酒場にいたソーン、コーディ、バスカムは外の喧噪が消えたことに気付き、死んだはずのケイレムが次々に酒場を閉めさせているという知らせを受け、バスカムは待ち伏せします。酒場のドアの外から銃を渡せと言うケイレムに対し、先に撃ったバスカムは、ダイビングしながら撃ってきたケイレムに射殺されます。ソーンとコーディは急いで家に帰り持ち出せるもの全てを持って逃げようとしますが、コーディはケイレムと間違われてソーンに射殺され、ソーンも駆けつけたエイサフらによって捕えられました。翌朝、ケイレムは自分の役目は終わったと言って保安官のバッジをエイサフに返し、命のやり取りの生活から逃げ出し今は舞台女優をしていて、ちょうど町を訪れていた以前の妻タリーと復縁して、ドクに銃を渡して、新たな生活が待つ牧場へ旅立つのでした。
 多くの登場人物の人間関係が錯綜していて(上のあらすじ以外にもタリーとソーンの間のエピソードなどあり)全編79分の中盤までは、それを理解するのに苦労しましたが、ケイレムがバスカムに撃たれた辺りから一挙に映画が走り出し、2年前の同監督作品『拳銃魔』には遠く及ばないものの、楽しめました。特にバスカムの右手と拳銃を手前に配して奥の酒場の入り口に立つケイレムを捕えたショットなどは秀逸だったと思います。一見の価値ありです。オススメです。