海外のニュースより

政治・経済・社会の情勢について書かれた海外の新聞や雑誌の記事を選んで翻訳しています。

石油の高騰は何をもたらすか?

2005年02月15日 | 政治と文化
『ニューヨーク・タイムズ』2月13日号に掲載されたトーマス・フリードマンの論説。
『ウオール・ストリート・ジャーナル』の2月10日号のトップ記事によると、イランを支配している保守的なシーア派聖職者達は、今や石油の高騰によって現金の海の中を泳いでいるような状態なので、彼らは外国の投資家を歓迎するどころか、追い出しにかかっているという。トルコの民間の携帯電話会社がイラン初の携帯電話会社を設立する契約を交わしたが、その後、イラン国会によって契約が凍結されたと言う。その理由は携帯電話はトルコや外国のスパイがイランをスパイするかもしれないということであった。スコットランドのセント・アンドリュウ大学のイラン専門家であるアリ・アンサリによると、「イラン政府が海外から投資を必要としなくなった理由は、石油価格の高騰によって、十分な資金を手に入れることできるからである。」
フリードマンによれば、これはまさにブッシュのエネルギー政策のせいである。
アメリカにおけるエネルギー備蓄を改善したり、アメリカのドライバーに1ガロン当たり1ドルのガソリン税を段階的に課したり、再生可能なエネルギー資源を開発したり、デトロイトの自動車メーカーにリットル当たりの走行距離を増やすように要求するようなことをすべて拒否することによって、ブッシュのチームは、テロに対する戦争の矛盾に直面しているのである。われわれは、アメリカ軍に税金を投入しながら、サウディ・アラビアやイランやスーダンのために棚ぼた式の利益を与えているのだ。これらの国々は、石油による収入のお陰で、彼らの経済を開放せねばならず、女性を解放し、学校を近代化するという圧力から免れている。これらの国々は、その代わりに、アメリカが改善しようしている進歩的で多元的な計画に根本的に対立するマドラサ(宗教教育中心の学校)やモスクや過激派に資金援助をしているのだ。
ネオコンの戦略は、イラクやもっと広いアラブ世界における改革の引き金を引くのに必要であったかもしれないが、それはフリードマンが「ジェオ・グリーン戦略」と呼ぶものによってフォローされないならば、十分ではない。「ジェオ・グリーン戦略」とは、「環境保護」と「地政学」とを結びつける戦略で、これが最も「道徳的且つ現実主義的戦略」であると彼は主張している。
もし、ブッシュが彼の威勢の良い説教と政治的資本を使って、国民にエネルギー消費を下げ、ガソリン税を受け入れるように促したらどうなるだろうか。それによって、テヘランからモスクワまでの最悪の政権の中に改革を産み出すだろう。それによって、石油を巡って中国とグローバルな争いになる機会が減るだろう。
「京都議定書」なんかよりももっと気候の変化が減るだろう。われわれを良き地球市民にすることによって、アメリカの立場は劇的に改善される。それによって、財政赤字は縮小するだろう。
しかし、「残念なことにブッシュのチームは、このことを考えようとさえしない」とフリードマンは嘆いている。彼はアメリカの保守派に属する論客だと思われるが、ネオコンなどと違う点は、彼が「環境保護」の問題を極めて重視している点である。そういう人が、ブッシュの間違った政策に対する批判をやっている点に注意したい。
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