海外のニュースより

政治・経済・社会の情勢について書かれた海外の新聞や雑誌の記事を選んで翻訳しています。

ブッシュ、イラクの選挙に失敗」と題する『ワシントン・ポスト』紙の記事。

2007年08月31日 | イラク問題
イラク暫定政府のアヤド・アラウイ元首相は、先週、テレビのインタービューで、イラクの戦後の一番理解されていない転換点の一つを示唆した。それは、2005年1月に行われたイラクの国会議員選挙である。
 「われわれの敵対者は、経済的に他の方面からたっぷり援助を受けていた。われわれには経済的援助がなかった」とアラウイ元首相はCNNテレビのウオルフ・ブリッツァーに語った。「われわれはわれわれを支持するイラク人以外からは何らの援助を受けないで、選挙戦を戦ったのだ。」
 アラウイの言葉の背後には、イランの政治的干渉と対決するひそかな行動計画を実施するかどうかについての陰謀と米国の不決断についての物語が横たわっている。このような計画は、中央情報局CIAによって念入りに作られたが、後で下院の民主党体表ナンシー・ペロシと当時国家安全保障委員会顧問だったコンドリーザ・ライスを含むあり得ない連携からの反対によって引っ込められた。
 元政府高官によって物語られたように、この物語は、イラクでの米国の努力の多くを特徴づけている傲慢さとナイーブさの混合を表現している。ブッシュ大統領から、官僚に至るまでイラクの民主化には熱心だが、イランとその代理人が支配的な政治的勢力として台頭するのを確実にする行動を取ったのだ。
 CIAは、2004年の夏と秋に、イランが、2005年1月30日の総選挙を操るために、「連合イラク同盟」として知られるシーア派の連合体のためにイラクにお金をつぎ込んでいると警告した。CIAの一人は、イランの秘密の基金は、イランに友好的で、シーア派の大アヤトラであるアリ・シスタニ師の旗の下に集まった候補者のためのメディアと政治的作戦のために一週間に1千百万ドル(13億2千万円)が使われていると推定した。CIAは、選挙を有利にするために、毎週、イラク南部の諸州で投票登録するために、偽造の配給カードを持った5千名のイラン人が国境を越えていると報告した。
 このイランの潮流に対抗するために、CIAは、2千万ドル(24億円)かかる政治的行動計画を提案した。この活動は、イラク穏健派の候補者とスンニー派部族長の支配範囲及びイランの影響に対抗する他の努力に対する基金を含んでいた。秘密の行動計画は、2004年の秋に準備され、ブッシュ大統領の署名を得た。法律に定められていたように、ペロシを含む議会の高位のメンバーに報告された。
 だが、答申が署名されて一週間以内にCIA高官は、それが引っ込められたと聞かされた。
 バグダッドにいた情報員は、イラクの政治家に会い、分配された資金を返還するように求めた。CIAの高官が聞かされたところでは、ライス顧問とペロシとは、米国がイラクの民主制を祝いながら、他方でそれを密かに操作することはできないとう結論で一致したのだ。
 倫理的には、それは確かに原則的な考え方だった。しかし、イラクの現場では、スタート・ストップ行動は、穏健派で世俗的なイラク人の足下をすくう効果があった。情報局の答申を引っ込めた点について質問すると、ライスとペロシの報道官はコメントを拒否した。
 「イラン人たちは、戦場の命令を完遂した」と当時イラクにいた米国の官僚は回想する。
 「イラク人たちは混乱していた。彼らはアメリカ人が何をしているのか理解できなかった。アメリカはイラクをイランに差し出しているように彼らの目には見えた。われわれはワシントンにこれは不幸をもたらす出来事だと報告した。(中略)
 将来の歴史家は、ブッシュの行政府は、実際、新生イラクについての民主主義レトリックで生きていたが、ある時点でそれはイランの影響に対抗することを目指す行動計画を破棄したと記録すべきだ。現在、行政府は、イランがイラクに介入することに対抗しようとしている。だが、恐らく今となっては遅すぎる。
[訳者の感想]コラムニストのデービッド・イグネイシアスが書いた評論です。イランに民主主義を確立するという建前と裏で世論操作をするという矛盾を超えられれなかったということでしょうか。あれほど権力をもったブッシュがライスの意見を尊重したためでしょうか。ちょっと信じられないほどのナイーブさだと思います。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「完全雇用が呪いとなるとき... | トップ | 「テロとの戦いは、文明の衝... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

イラク問題」カテゴリの最新記事