海外のニュースより

政治・経済・社会の情勢について書かれた海外の新聞や雑誌の記事を選んで翻訳しています。

「ある偶像の終焉--バイロイトの運営が危機に」と題する『ネット新聞』の記事。

2007年07月31日 | 人物
 老齢と衰える健康とは、ヴィルフガング・ワーグナーが、バイロイト祝祭劇場のある「緑の丘」の独裁者としてここ数十年間可能であったように、これまでの権力を近似的に発揮することを不可能にした。
 ある偉大な人物の時代は、2007年夏に情け容赦なく終わるのだ。この催しの大掛かりな経過以上に、このことを明らかにするものは何もない。この催しのアイドルは、これほど長くこれほど完全に疑問の余地がなかった。
 先週の金曜日、「バイロイト友の会」が、例年のように集まったとき、1953年に創設された忠実で財力のあるパトロンの会に一度も欠席したことのない人物がいなかった。それはヴォルフガング・ワーグナーである。
 彼の広報担当者が読み上げた欠席の理由、つまり、昨年の集会における立腹という理由付けには、「友の会」会長であるゲオルク・フォン・ヴァルデンフェルス従男爵でさえ、異議を申し立てた。バイロイトの事情にとっては、前代未聞の出来事だった。これまで、ヴォルフガング・ワーグナーは、開会公演で有名人訪問者を出迎える際、公式にはほんのわずかな時間しか姿をあらわさなかった。
 彼は、明らかに老衰してはいたが、感動するほど元気に、62才の妻グートルンと娘のカタリーナの間に立っていた。カタリーナは、『ニュルンベルクの職匠歌手』の舞台監督として新しい演出の責任を引き受けていた。だが、それは、あれほど長い間、祝祭劇場に常に現れ、この重要な文化的な出来事の争う余地のない権威であった男ではなかった。
後任の問題は、非常に差し迫っている。
 どれほど差し迫っているかは、2008年から2010年までの160万ユーロ(2億5600万円)に達する資金不足についての「友の会」の集まりでの議論が証明している。確かに、パトロン団体は、不足金額を支払う用意があると断言したが、名誉会長のエーヴァルト・ヒルガーは、「危険な状況」について語った。これは、作曲家ワーグナーの孫の時代にはなかったことだ。なぜなら、彼は、節約する財政家で疲れを知らぬ金策調達者という評判を得ていたからだ。
 その間、祝祭主催者は、「友の会」の批判を退けた。地方紙『バイエルン・クーリエ』の論説で、「それは明らかな経営の危機を招く」と書かれた。ヴォルフガング・ワーグナーただ一人が、祝祭劇主催者として終生はっきりした関係を考慮することができると述べた。だが、老人は、何が何でも29才の娘カタリーナを後継者としたがっている。(彼女は二度目の妻グートルンとの間にできた。)
 若い総監督は、これまで、「リヒャルト・ワーグナー財団」の24名の理事のお気に入りではなかった。だが、この理事会が、ヴォルフガング・ワーグナーの引退後、あるいは死後、将来の監督の地位を決定しなければならない。大量のメディア・キャンペーンでもって、ワーグナー夫妻は、娘のために道を開こうとした。カタリーナの『ニュルンベルクの職匠歌手』は、バイロイトの出来事の見物人の多くには、将来の劇場指揮のための唯一の求職票だった。
 しかし、まだ、ヴォルフガング・ワーグナーは生きているし、『ラインの黄金』の中で巨人のファゾルトが言う「契約は守れ」という言葉も財団理事会のメンバーにとっては、生きている。だが、8月30日に88才になるヴォルフガング・ワーグナーを守っている契約は、この数週間、彼にとっては重荷と呪いになるだろう。
[訳者の感想]バイロイト祝祭歌劇場の運営をめぐってヴォルフガング・ワーグナーと「ワーグナー財団」理事会とが対立しているようです。
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