海外のニュースより

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「部族はアルカイダをアンバル県から追い出そうと戦っている」と題する『ガーディアン』紙の記事。

2006年10月03日 | イラク問題
イラクのアルカイダは、イラクの強力な部族と3日間戦った挙げ句、アンバル県の拠点から押し出されつつある。多くのアルカイダ戦士が殺されたが、その中にはサウディ・アラビア人やシリア人が含まれている。
 衝突が始まったのは、アンバル県の大多数の部族を代表する「アンバル救援会議」と名乗る新しいグループが彼らの県からテロリスト集団を掃討すると宣言した後であった。衝突は、部族指導者とヌリ・アル・マリキ首相が会談した後に起こった。先週、彼らはアルカイダに対して戦闘のために支持と武器を政府に要求した。
 イラク政府がアルカイダの新しい指導者であるアブ・アユブ・アル・マスリの逮捕が迫っていると信じると言ったときに、戦闘が始まった。この戦闘は、アンバル県に駐留しているアメリカ主導の連合軍に対する攻撃の数を減らさなかったけれども、いわゆる「スンニー三角地帯」での抗争ラインでの複雑な再秩序を指し示している。
 抗争の原因は、アルカイダ指導部からアブ・ムサブ・アル・ザルカウイに宛てた手紙の漏洩によって明らかになった。
 昨年12月に書かれ、ザルカウイが空爆で死んだ家の中で発見された手紙の中で、ザルカウイは、アルカイダの幹部に近いと言われているアリヤ・アブド・アル・ラーマンによって叱責されていた。ラーマンは「スンニー派の間で良い評判を得ている宗教指導者や部族指導者を殺す試みに反対する」と書いていた。ザルカウイは、他のスンニー派集団との関係を改善し、アルカイダの名称を慎重に使用するするように命じられ、場合によっては解任されると告げられた。
 アルカイダと部族との間の亀裂の中心にあったのはこの問題である。部族のメンバーの多くは民族的抵抗を支持している。
 アンバル県とイラク西部にいる部族指導者がアルカイダを歓迎した際には、アルカイダには安全な家と他のロジスティックの支持があった。
 喧嘩好きで悪名高いボウ・エイサ部族がアルカイダに反対したファルージャから、ボウ・マハル部族がアルカイダを追い出したカイムの町まで、アルカイダは、農村の多い西部から排除されつつある。
 イラク首相の部族に対する懇請は、現金贈与によって円滑にされ、部族長のある者には毎月5,000ドル(60万円)の給料が渡されている。部族戦士達は武器も頼んでいる。
 それは社会的宗教的政治的配慮によって行われる戦争である。部族指導者の伝統的な権力はアルカイダの首長によって傷つけられた。ある族長は、シーア派を狙ったアルカイダの攻撃に吐き気を催した。なぜなら、それらの攻撃は間違っているだけでなく、結局はスンニー派を傷つけるだろうと族長達は考えたからである。それは今年2月にサマラにあるシーア派の「黄金廟」への爆弾攻撃で頂点に達した問題である。
 戦闘は、カイムのような地域では何ヶ月も続いている。そこでは、ボウ・マハル部族がアルカイダを排除した。政府の食糧配給のトラックや水道設備や発電設備に対するアルカイダの攻撃に対する怒りが原因である。
 「彼らはアルカイダが嫌になったんだ」とあるアンバル県の住民は言う。「アルカイダは彼ら自身のチェックポイントを作り、財産や家を押収した。彼らは警察や軍を殺しただけでなく、彼らに賛成しない聖職者や部族指導者も殺した。」
 ラマディでは、ボウ・リシャ部族の若い族長であるシエイク・アブドル・サッタール・アル・リシャウイは、昨日、アルカイダがラマディの病院に侵入し、入院していた警官や兵士を虐殺したと非難した。彼はアルカイダが銀行強盗を行い、政府の給与を略奪し、ジャーナリストや人権ワーカーを殺害し、高速道路での強盗を行ったと非難した。
 「部族指導者は、プラグマッティックで、彼ら自身の利害に従っている」とある西欧の外交官は述べた。「アルカイダがやってきたとき、彼らは多くの金を持っていた。今は彼らは金を持っていない。ラマディのような町に多額の金を投じているのは政府だ。アルカイダ型は、誰でも殺すというイエデオロギーに染まる傾向がある。これは部族型の人たちが戦闘について考える仕方と合わない。要するにアルカイダは、排除されるのだ。」
[訳者の感想]部族指導者を味方にできれば、テロとの戦いは楽になりそうです。でも、アメリカ軍がやろうとしてもうまく行かないでしょう。その点ではイラク政府のほうがうまくやっていると思います。アメリカ軍が撤退した後、イラク政府は、部族指導者や宗教指導者を抱き込んでテロリストをイラク全土から排除できるかもしれません。
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