海外のニュースより

政治・経済・社会の情勢について書かれた海外の新聞や雑誌の記事を選んで翻訳しています。

「われわれは仲の良い友人だ」と題する”Economist”誌の記事。

2007年03月16日 | 国際政治
日本の安部晋三首相が今週オーストラリアとの間に安全保障共同宣言を発表したとき、彼は一撃で日本の同盟国の数を二倍に増やした。これまで、日本は、第二次大戦以来、米国とのみ形式的な安全保障条約を結ぶことによって、その庇護の下で平和憲法をもちながら暮らしてきた。それは相互防衛条約には達していないとしても、あるオーストラリア人にとっては、ジョン・ハワード首相によって3月13日に署名された共同宣言は、正当性を欠いている。なんと言っても、日本は戦時中オーストラリアに侵入する瀬戸際まで行ったのだ。オーストラリアの捕虜は、日本軍の収容所で酷い扱いを受けた。ほんの数週間前、安部首相は、外国人「慰安婦」が戦時の軍の売春宿に働くように強制されたという事実を否定することによって、自分に不面目を招いた。数人の年取ったオーストラリア女性が証言した人々の中にいた。けれども、世界は動き続け、ハワード首相の見方では、「オーストラリアは、アジア・太平洋地域では日本よりもより良い友人、もっと信頼できるパートナーを持っていない。」安部首相は「共有された運命」について語った。
 そういうわけで、この二つの国が同盟国になることが重要だとすると、自然な問いは、「誰に対する同盟か」ということになる。これを質問することは、全く要点を見損なうことであると一目見たところ両国は主張している。両国の協力は、いくつかのレベルで深められた。去年6月まで、オーストラリアの部隊は、イラク南部で復興事業を遂行している日本軍を護衛した。もっと本国に近いところでは、両国の平和維持部隊は、カンボジアと東チモールで一緒に仕事をした。
 アレクサンダー・ダウナー外相の父は、三年以上も日本軍の捕虜だったが、ダウナー外相は、2004年の年末に起きたインド洋津波の後、災害復旧で日本と協力した。アジアにおける二つの国は、目的を共有している。こうして、両国の外相と防衛相を含む定期的な会合、合同軍事訓練、情報の共有のためのより形式的な合意についての暫定的な取り決めは、人道的使命を促進するだろう。
 安全保障共同宣言は、両国関係の新しい側面を構築するシンボリックなやり方であるとダウアー外相は述べた。両方は、それゆえ、経済的絆を強化する自由貿易協定を交渉するだろう。だが、両国が否定すればするほど、安全保障共同宣言の主たる触媒がますます明白になる。それは中国の台頭である。
 このことは、ある人には驚きであるかもしれない。オーストラリアは、鉄鉱石やウラン鉱石のような商品に対して貪欲な食欲を示している中国との取引で利益の民主的原則について人権団体からの非難に対してしばしば自己弁護をしなければならなかった。オーストラリアの外交官達は、「中国は良い建設的な商業パートナーだが、考えや価値に関しては、日本ほどはわれわれに近くはならないだろう。明らかなことは、日本がアジアでは最良の友人である」と言っている。
 オーストラリアの安全保障についての姿勢は、長い間、中国側の用心の原因だった。特にオーストラリアと米国との同盟関係と中国の台湾に対する戦争では、オーストラリアは米国を助けるという可能性の故に。新しい共同宣言が東シナ海における日本と中国との領土上の議論で日本を援助することを含まない限りは、中国政府は、その不快感を隠そうとするだろう。経済的結びつきが第一だ。
 安部首相に関して言えば、この協定は、彼の前任者であった小泉純一郎によって始められた日本のためのより強固な外交の一環である。イラクへ部隊を派遣する前に、小泉は、アフガン戦争を援助するために、日本の自衛隊によるインド洋上の給油艦を派遣した。
 昨年九月に安部が首相になって以来、彼は米国との同盟関係に対する小泉の肩入れを引き継いだが、米国の庇護以上のものを望んでいる。彼は北朝鮮の挑発に直面して、ミサイル防衛システムのより速やかな配置を推進した。彼は防衛庁を防衛省に昇格させた。彼はまた憲法の平和主義的な第九条を修正しようとしている。安部首相は、東南アジアとの安全保障関係を構築しながら、インドとの新しいパートナー関係を模索している。
 これらすべては、中国の地政学的台頭とバランスをとる戦略である。言い換えると、日本は、中国をこの地域の先頭にするために、寝転がろうとはしていない。与党の自民党とその連合は、今年7月に参議院議員選挙に直面しているので、安部首相の国内での不手際は、短期の在任を意味するかもしれない。そうだっとしても、日本の明らかになる地域での姿勢は、安部首相よりも長続きしそうだ。
[訳者の感想]オーストラリアとの安全保障協定が日本にとっては何を意味しているのかを解明した評論だと思います。
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