海外のニュースより

政治・経済・社会の情勢について書かれた海外の新聞や雑誌の記事を選んで翻訳しています。

「中国の将来についての10の質問」と題する『ヴェルト』紙の記事。

2007年03月05日 | 中国の政治・経済・社会
北京で世界最大の議会が招集される春毎に、中国は、国防費の増加を告知する。国家予算と将来のための重要な転換が計画される。
3月5日から16日まで、2,937名の代表委員が集合するならば、国家予算についての賛否と並んで、二つの重要な法案が中心になる。私有財産の保証と改革された企業課税は、中国に市場経済へのさらなる一歩をもたらすはずだ。
1.中国の台頭は、西欧との戦争に繋がるか?
答え:そうはならないだろう。核保有国家中国の台頭は、世界を予測不可能にする。それは一方では、中国指導部が安全保障政策上の目標を貫徹する際に用いている不十分な透明性のせいである。その上、中国が目指している多極的世界秩序は、基本的に不安定だということをヨーロッパの歴史は示している。にもかかわらず、指導部が呪文のように唱えている「平和的発展」というスローガンは、信頼に値する。熱い紛争が起これば、一番多く失うのは中国だ。中国は、一年間に600億ドル(7兆2000億円)もの直接投資の最大の受け入れ国である。戦争が始まれば、投資家は投資を止め、成長は停止する。中国は安定した世界を必要としている。北京は外交的利害を力を使わないで効果的に貫いている。中国は貿易相手国を巧みに互いに競争させ、多極的なフォーラムで経済的側面に全力を注いでいる。
2.1989年のように、大きな政治的反乱はあるか?
答え:殆どない。一党支配を揺るがせうるような大衆のデモや政治的不安はありそうにない。中国の市民社会には、組織的に政治的圧力を行使するための制度がない。都市の市民は、大多数が、基本的な体制の変革に関心がない。彼らは、党が保証した経済のブームから利益を得ている。何千万という不満で貧しい農民や出稼ぎ労働者は、独裁政治にとって潜在的な危険である。公式の数字によると、2005年には、農村で、8万7千件の地方的な暴動が起こった。2006年にはその数は、20%減った。だが、それは非常に疑わしい。厳格な統制のために、1989年の天安門事件のような運動は、起こりえなかった。
3.中国は、民主国家になるか?
答え:さしあたりは、ならない。温家宝首相によれば、中国は少なくとも100年間、社会主義体制を維持する。だが、専門家達は、別のシナリオが可能だと考える。1)指導部の中の進歩的勢力が意志を貫いて、上からの民主化を導入する。かってのソビエトのように。
2)経済的発展は、政治的決定に参加したいと望む市民層の形成を促進する。このプロセスの終わりに、複数の政党と自由な選挙をもった民主的体制が成立する。これらの可能な展開の萌芽は存在する。それらの発展に対して、にもかかわらず、安定した一党独裁が存続する。
4.国家が崩壊する危険はあるか?
答え:どちらかといえば、ない。中国の巨大な諸問題は、ペシミスト達に国家が間もなく崩壊するだろうと予言させた。事実、金持ちと貧乏人との二分化は、劇的である。都市住民は、平均して、8億人の農民の五倍稼いでいる。2億人の出稼ぎ労働者は、職を求めて豊かな沿岸部へと移動している。一人っ子政策は、彼らが豊かになるよりも早く中国を老化させるだろう。腐敗は、国民経済の15%を食い尽くしていると「国際透明性研究所」は、見積もっている。これらのリスクに対して、党の経済的成功が対立している。それによって、党は、それ自身の支配を正当化し安定にしている。
5.ヨーロッパは、中国の経済奇跡にゆえに、自分の福祉が脅かさされると心配しなければならないか?
答え:心配しなければならない。中国の経済的台頭は、ヨーロッパにとっては、祝福であると同時に脅威である。中国は、確かにわれわれの商品を買うが、もっと沢山売っている。米国についてと同様、ヨーロッパの対中貿易赤字は、増大している。(2005年には、赤字額は、1300億ユーロ(19兆5千億円)だった。これは、何百万もの中国人にとっては仕事があり、貧困からの解放を意味した。だが、ヨーロッパは、不利な状況に陥らないためには、競争力を維持するように急がねばならない。低賃金領域では、西欧は中国と競争できない。だが、サービス部門やインノベーションでも極東は追いつきつつある。欧州委員会によると、中国の国内総生産に対する公的私的研究開発への投資比率は、2010年には、欧州連合よりも大きくなるだろう。(以下省略)
[訳者の感想]『ヴェルト』紙の特派員キルスティン・ヴェンク記者の記事です。
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