海外のニュースより

政治・経済・社会の情勢について書かれた海外の新聞や雑誌の記事を選んで翻訳しています。

イラクの選挙。

2005年01月30日 | 国際政治
ドイツの『ヴェルト』紙のイラク選挙の記事から。
有権者の数:1,400万人+海外在住のイラク人28万人
政党数:75
立候補者数:11,000名
議席数:275名
選挙制度:比例代表制、選挙区は一つ、言い換えるとイラク全土が1の選挙区。
シーア派の選挙民の80%が投票し、スンニー派の選挙民は、20%しか選挙に行かないだろうと予想される。
投票センターの数:5,300箇所、一つの選挙センターの下に平均5つの投票所があり、投票所の数は、28,000箇所。投票数はそれぞれの投票所で投票終了後直ちに数えられ、その後、首都バグダッドに運ばれて、集計される。一週間後には投票結果が判明する。投票箱の数は、9万個。投票用紙は、6千万枚用意されている。
クルド人の居住地域では、同時にクルド自治州の議会の選挙も行われる。111の議席数をめぐって、463人の候補者が立候補している。
同紙の記事によると選挙監視のために連合軍兵士とイラク治安部隊合わせて、30万人が動員されていると書かれているが、イラク治安部隊の数がかなり水増しされているように見える。
今後のプロセスについて:議会が成立した後、新しいイラク政府が構成される。議会と政府の任務は、新しい憲法案をつくり国会で承認を得ることである。2005年の年末には、新しい憲法のもとで国会議員の選挙が行われる予定。
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イラクの選挙は、イラクに平和をもたらすか?

2005年01月30日 | 国際政治
1月30日、イラク全土で選挙が行われる。「全土」と言ったが、人口ではイラク人の20%を占める「スンニー三角地帯」と言われる地方は、選挙ボイコットが徹底しているので、恐らく投票所に行く人は少ないだろうと予測されている。ドイツの新聞『ツァイト』は、アメリカ軍が2003年春に軍事的には勝利を収めながら、どうしてイラクでの治安回復に成功しないのかという理由を次のように、分析している。
第一の理由。バグダッド占領の際、アメリカ軍は、暴徒がすべての官庁の建物を略奪するに任せたが、石油省の建物だけは、略奪に任せなかった。これは、アメリカ政府のイラク戦の理由が、彼らの言う「民主主義の拡大」ではなくて「石油の利権」であるとイラク人に信じさせた。
第二の理由。アブグレイブ刑務所でのイラク人に対する拷問が明るみに出た後、「アメリカ軍は解放者ではなくて、サダム・フセインと同じく、イラク人の抑圧者である」と考え、抵抗運動に参加するイラク人が増えた。
次に『ツァイト』紙は、スンニー派の人たちが今度の選挙をボイコットする理由として、次のような事実を挙げている。
第一の理由。今度の選挙では、イラク全土を一つの選挙区として、比例代表制で選挙が行われる。従って、多くの議員を獲得した党派が国会で多数派を占めることになる。イラクでは、シーア派に属する人が国民の60%に達するから、少数派の民意が代表されないとスンニー派の人たちは考えている。これがスンニー派が選挙ボイコットを呼びかけている最大の理由である。
第二の理由。最近イラクで流れているうわさでは、ヨルダン人テロリストのザルカウイは、実はアメリカの手先であって、アメリカは、彼のテロ行為を理由にして、イラクを分裂国家に追い込もうとしている。言い換えれば、「アメリカはテロを理由に占領を正当化し、長期化しようとしているのだ」とかなり多くのイラク人は信じているという。何かと言うと「ユダヤとアメリカの陰謀だ」と考えたがるアラブ人の間では、この説はかなりの信憑性を持っていると言う。これはもちろん間違っていて、アメリカは今となっては、なるべく早く軍隊をイラクから撤退させたいし、できればザルカウイを捉えるか殺害したいと考えているだろう。
しかし、「今度の選挙がイラクを分裂させ、アメリカのイラク支配を半永久化するものだ」というイラク人の予想は、ブッシュ政権の意図とは違うかもしれないが、結果論としては、正しいかもしれないと私は考えている。
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