杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

京都の19時間(その1)~比叡山延暦寺と日吉神社

2012-07-01 08:35:04 | 駿河茶禅の会

 6月28日(木)、早朝5時から深夜24時まで19時間、京都をぶら歩きしました。自分の備忘録がわりに時間を追って書きます。いつもながらの独りよがりのダラダラ日記で退屈させると思いますが、お許しください。

 

 

 

 前日27日(水)は午後からJR静岡駅前グランディエールブケトーカイで開催された(社)静岡県ニュービジネス協議会通常総会に出席し、19時前にお開き。協議会前専務理事で県庁女性幹部職の草分け的存在だった末永和代さん、協議会発足時からのベテラン会員でファイナンシャルプランナーの鈴木ふささん、パワーストーンやオーラ診断のショップを経営する女性起業家木村朝子さんという元気な先輩女性会員さんとMANDOで二次会。S経営研究所のOさんとカウンターでばったり会って、しばし酒談議。『小夜衣』2002年古酒浪漫とブルーチーズ&オリーブがなかなかの相性。私が22時の京都行き夜行バスに乗るのに少し時間があったので、三次会としてカラオケJOYランドへ。先輩女性群は今どきのカラオケシステムに「社会勉強になるわぁ」と感嘆しきりでした(笑)。

 

 

 

 

 

 22時静岡駅発の夜行バスで一路京都へ。朝5時きっかりにJR京都駅に着きました。この時間に着いて困るのはどこも開いていないということ。いつぞやは朝ご飯を食べに、テキトーに乗った北陸本線で敦賀まで行ったこともありましたっけ(こちらを)・・・

 今回は駅のトイレで30分くらいかけてゆっくり洗顔&歯磨きをし、駅の周辺を早朝散歩し、6時にオープンする八条口の喫茶店でモーニングを食べました。隣のビールバーでUEFAスペイン×ポルトガル戦の中継をやっていて、ついつい足が向きそうになったけど、店内は外人さんばっかりだし、朝6時からビールってのも・・・と、ちょっと躊躇しちゃった

 

 

 

 

 

 

 

 今回の旅は、久しぶりに興聖寺の坐禅に参加するのが目的でしたが、坐禅が始まる19時までたっぷり時間があるので、とりあえず、今、読んでいる『茶の文化史』(村井康彦著・岩波新書)にちなみ、比叡山延暦寺と坂本の日吉神社に行ってみようと思いました。

 

 お茶が日本に伝わったのは平家が滅亡して鎌倉幕府が出来た頃で、栄西禅師が宋から茶の実を持ち帰って長崎の平戸の富春園という小茶園に植えたのが最初、と言われていますが、実は9世紀初めに最澄が遣唐使船で持ち帰り、比叡山坂本の日吉茶園に植えたのが最初かもしれないと茶道研究会で教わって、『茶の文化史』でもその説が紹介されていて、茶産地静岡県民のハシクレとして、これは行かねば!と思ったのです。

 

 

 

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 7時前のJR湖西線に乗って比叡山坂本で下車。20分ぐらいかけてのんびりブラ歩きして、まず日吉神社へ到着しました。

 

 この神社は全国に3800ぐらいある日枝神社・山王神社の総本宮で比叡山の山の神でもあります。創建はおよそ2100年前。平安京遷都のとき、都の表鬼門(北東)にあたるため魔よけや厄払いの神として、また最澄伝教大師が開いた延暦寺の護り神として信仰されています。ただし織田信長の比叡山焼き討ちのときに社殿はすべて燃やされてしまいました。・・・さすがの守護神も信長には通じなかったのか、さすが信長、神をも恐れぬ革命家と言うべきか・・・現在の建造物はその後再建されたものだそうです。

 

 

 

 

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 ちなみに境内の中を流れる大宮川にかかる日吉三橋は、日本最古の石橋だとか。朝8時前の、人ッ気のない境内で、川面を覆う木立と水流の響きがなんとも清々しく、思いっきり深呼吸したらスッキリしました!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 境内に着くと、神猿(まさる=魔が去る・何よりも勝るの意)と呼ばれるお猿さんが迎えてくれました。西本宮と東本宮の2つの大きな社殿があって、西本宮は奈良の大神神社からお迎えした大己貴神の御神霊、東本宮は比叡山の山の神・大山咋神を祀っています。

 

 

 西本宮には包丁塚があって食や調理にかかわる人々がお参りに来るようです。

 5月には日本包Imgp0020丁道・清和四條流の方々が「包丁祭り」というのを執り行われたようです。・・・日本酒もそうだけど、日本の食って信仰に裏打ちされた大切な民族文化だってつくづく感じますね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、お目当ての日吉茶園が見当たらず、社務所で訊ねたら、京阪坂本駅に隣接しているとのこと。行きに通ってきたのにまったく気が付きませんでした・・・ 

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 とりあえず先に比叡山延暦寺へ行ってこようと、日吉神社を後にして、歩いてすぐの比叡山ケーブル坂本駅からImgp0033
ケーブルカーで一路延暦寺へ。日本一長い約2キロのケーブルカーで11分、山上の比叡山駅は1927年開業のイエロートーンの大正モダンな建物で、国の登録有形文化財になっています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 比叡山延暦寺は、小さい頃、家族旅行で来て以来です。根本中堂しか記憶がなかったのですが、今回は東塔エリアの大講堂、戒壇院、阿弥陀堂をじっくり廻りました。朝イチのこの時間、参拝者はまばらで、朝霧が一帯を覆って肌寒いくらい。

 

 

 

 比叡山では法然、親鸞、栄西、道元、日蓮といった一宗の開祖となった高僧が、こぞって修行していて、大講堂にはそれら高僧の等身大の尊像が安置されていました。聖徳太子像までありましたね。日本が誇る偉大な宗教家&哲学者オールスターって感じで、お参りした後はちょびっと賢くなった気がしました・・・。

 

 

 

 

 

 

 

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 戒壇院は僧侶になるために授戒する最も重要な院。「僧の資格を与える」という場所ですから、むやみやたらに作れません。授戒制度は鑑真が唐から伝えたもので、天平時代は全国で東大寺、大宰府観世音寺、下野国薬師寺の3カ所にしか設置されず、最澄自身は東大寺戒壇院で授戒しています。

 

 自分が心血注いで建立した延暦寺にも戒壇院を設けたいと熱望していた最澄ですが、保守勢力の抵抗に合い(・・・いつの時代も同じなんですね)、存命中には建立が叶わず、亡くなって7日後に、ときの嵯峨天皇からお許しが出たそうです。

 

 

 

 東大寺戒壇院は四天王像が好きでよく行くんですが、この戒壇院も(外観しか観られませんが)心惹かれる風情です。戒壇院という聖なる御堂だけが醸し出す空気感のせいでしょうか・・・。

 

 

 

 

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 阿弥陀堂は1937年に開創1150年大法要を記念して建立された先祖供養のための道場で、毎日念仏回向が行われています。法要中も見学自由とあったので、中に入って阿弥陀如来に手を合わせ、しばし読経に聴き入りました。観光寺院だとフラッと来てお勤めの場に参加するってあまり機会がないんですね。・・・でもお寺って本来こういうところだよなって改めて思いました。

 

 

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 もらったMAPに、延暦寺バスセンターの近くに「栄西禅師修行の地」があると知り、受付で訊いてみたら、「碑が立っているだけ。けもの道でおススメしない」と云われ、そう云われると逆に闘志?が湧いてきて、それらしいけもの道を分け入って、木立の中で見つけました。

 今はすぐ近くにバスセンターや国宝殿があるけど、栄西が入山したころは、本当に険しいけもの道だったんだろうと想像すると、受戒し、僧侶となる覚悟がいかに厳しく尊いものだったか、じんわり伝わってきました。(つづく)

 

 

 

 

 


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