杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

縁を大切にする生き方

2008-09-23 12:17:45 | アート・文化

 昨日(22日)は、金谷の松井妙子先生のアトリエをお訪ねし、27日から始まるお茶の郷博物館での展覧会準備に追われる先生に激励&10月25日のしずおか地酒サロントークセッションのご案内をしてきました。先生は、吟醸王国しずおか映像製作委員会の吟醸会員にもなっていただいている、大事なスポンサーのお一人。パイロット版は、本来、企画書一枚で会員になってくださった方への感謝&経過報告と、新規会員獲得を目的に作ったものですが、すべての会員や、関心がありそうな方にピンポイントに声をかけて観ていただく機会がなかなか作れず、歯がゆい思いをしているところです。

 

 経費がかかる公的施設での上映は、10月25日のアイセル21が最後になります。その後は、会員さんのもとへ戸別訪問するなどして、なんとか全員の方にご報告をと思っています。

  

 

 多くの人の手を借りて作り始めた作品ですから、手を差し伸べてくれた人へはできる限りの誠意を尽くして作品作りを続けたいというのが理想です。無関心や否定的な人を無理に振り向かせるエネルギーよりも、手を差し伸べてくれた人を裏切らない努力のほうがエネルギーの掛け方としては正しいかな、とも。

 

 

 

 松井先生との対話の中で、「自分の名前や手法や業績にこだわり過ぎると、人付き合いを狭くする」というお話がありました。世間の注目を集めれば、人は、つい、自意識過剰になるもの。酒の世界でも、クリエーターの世界でも、一度でも評価を得ると自分のモノサシを絶対視し、自分が裁判官にでもなったつもりで他人を“裁こう”とする人がいます。

 

 

 中には、まともに観ないで裁こうとする人もいる。無関心でいてくれるほうがずっと楽です。さまざまな裁きの洗礼を受け、精気のない私を見て、松井先生は 「人の縁を大切にする生き方には、裁判官はいらない。弁護士の心が必要よね」と温かい言葉をくださいました。・・・作家生活を30年以上続け、つねに評価と裁きの対象に身を置いてきた先生の言葉には重みがあります。

 

 

 

 

 

 夜は、浜松で、昭和50年から浜松ホテルにごり酒の会を毎月、一度も欠かさず、400回以上続けているホテルオーナーの諸川雅一さんを取材しました。継続・回数ともに、ギネスものの酒の会とのこと。私も過去に1~2度、誘われて参加したことがあります。酒通の集まりというよりも、財界人の社交場といった雰囲気でしたが、400回も続いているというのは、「人の縁を何よりも大切にしてきた」諸川社長の人徳でしょう。

 

 にごり酒というのは、昭和40年代に、かの坂口謹一郎博士が京都伏見の増田徳兵衛商店に試験醸造させ、太鼓判を押した『月の桂』のこと。有名政治家の甥であり、お若い頃から政界・財界の超一流の人脈を持ち、その縁を大事にしてきたという諸川社長だけに、「縁の重み」も人一番体感されてきたのだと思います。

 

 

 

 私のようなペーペーのライターだって、人の縁に育てられ、ここまで生きてこられました。新しいことに挑戦するときは、その重みをいっそう感じます。

 挑戦者には落ち度がたくさんあり、失敗もつきものです。松井先生、諸川社長のお話を通じ、懸命に努力する挑戦者には、落ち度や失敗を受けとめ、必要があれば弁護する懐を、自分も忘れないように持とうと思いました。

 

 

 

 繰り返しのご案内になりますが、松井妙子染色画展は、9月27日(土)から11月3日(月・祝)までの約1ヵ月間、島田市お茶の郷博物館で開催します。染色作家生活32年の中から、厳選した40点が再結集。松井先生の分身ともいえるフクロウ、カワセミ、魚などをモチーフに、自然や生き物や故郷への賛歌を温かく謳い上げる作品ばかりです。

 

 

 松井先生の大ファンである磯自慢酒造の寺岡洋司社長も、ご自身のコレクションを出展されるそうです。いつか松井妙子ラベルの磯自慢が出来るといいな!!

 先生は、27日(土)、10月5日(日)、11日(土)、19日(日)、25日(土)、11月2日(日)、3日(月・祝)に会場へいらっしゃる予定です。ぜひ足をお運びください。


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