旅人ひとりー大阪大学探検部一期生のたわごとー

とこしえの精神(こころ)を求めて、さまよ(彷徨)う旅人ひとり。やすらぎを追い続け、やがてかなわぬ果てしなき夢と知るのみ。

映画の中の蝶、8 「二十四の瞳」

2011-11-01 | 
高峰秀子主演の「二十四の瞳」、少年時代に多分学校から鑑賞に出かけたのだろうと思うが、部分的に場面が思い起こされるほど子ども心にも深い印象を与えた名画であった。さきごろ、テレビでデジタル・リマスター版の上映があったので久しぶりに見た。昭和29年(1954年)の木下恵介監督の作品で、同じ年に「七人の侍」が製作されている。

解説によると同年のキネマ旬報で「二十四の瞳」が一位で「七人の侍」が三位だったそうで、世界的な名画が三位だったとは意外な感がするが、文部省特選の子供向け(だけではないが)映画が当時はサムライ映画に勝ったということであろう。因みに二位の映画は何だったのか興味が湧いてくる。

ところでテレビで映画が終わってから解説を聞いていて驚いた。大石先生(高峰秀子)が戦死した教え子の墓参りをする場面で蝶が出てくるという さすがの僕()も恥ずかしながらまったく気付かなかった。
橙色の円で囲った部分がそうである。墓標のまわりで戯れ舞う二匹の蝶(多分モンシロチョウ)をうまくカメラに収めるために監督は長時間を費やして、これにはスタッフ一同ため息まじりで「天気待ちは慣れているけど、蝶々待ちってのは初めてだ」とのエピソードがあったという。

木下監督は戦後の混乱からようやく抜け出ようとしている時代、戦闘シーンが無いのに反戦映画になっているこの作品に、蝶を平和の象徴としてぜひ画面に出したいという強い思いがあったのだろうと勝手に想像している。

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