旅人ひとりー大阪大学探検部一期生のたわごとー

とこしえの精神(こころ)を求めて、さまよ(彷徨)う旅人ひとり。やすらぎを追い続け、やがてかなわぬ果てしなき夢と知るのみ。

ミンダナオキイチゴシジミは2種に分けられるのではないだろうか?

2011-04-01 | 
1978年、僕とドイツ人研究者によりフィリピン、ミンダナオ島のアポ山を基産地とするミンダナオキイチゴシジミの名義タイプ亜種Sinthusa mindanensis mindanensis が記載され、同一論文中に続いて、北ミンダナオのキタン(グ)ラド山を基産地とする別亜種Sinthusa minda-nensis stephaniae が記載された。その後、レイテ島、ネグロス島でも分布が確認され、このうちネグロス島の本種は1981年、僕によりssp. yoshiae とされた。現在、サマール島でも知られ、ルソン島にも分布しているようである。

僕の手元に標本が集まって来るにつれ、両亜種の斑紋の相違が気になり始めた。
レイテ島の♂標本を例にとってみよう。

裏面の違いは写真を見ていただけば明瞭なように、ssp.mindanensis では白色部が際立っている。これは各斑紋の間の地色が白っぽいからである。斑紋の形も仔細にみれば違っている。

次に翅表に目を移してみよう。後翅では特に相違は見られないが、前翅前縁の黒色部と暗青色部は色彩的に似ているので、両者の境界部分は判然としないが、よく観察すると両亜種において暗青色鱗の広がりにはっきりした違いがあることがわかる。ssp. stephaniae では前縁部に暗青色鱗は広がっていないが、ssp.mindanensis では暗青色鱗は明らかに前縁部にまで広がっている。

ミンダナオキイチゴシジミを2種に分ける、すなわちssp. stephaniae を種ステファニーキイチゴシジミとして扱うべきかという問題を解決すべく、現在フランクフルトのシュレーダー博士、トレッダウェイ氏のグループが鋭意研究に励んでいる。彼らの所蔵する標本は膨大なので、彼らの努力によって遠からず僕の問題提起に答える結論がくだされることを期待している。

なお、写真の標本のデータは次の通りである。
Sinthusa mindanensis mindanensis H. Hayashi, Schroeder & Treadaway, 1978 ♂,
     Mt. Balocaue, C.Leyte Is., Philippines, April 2005. Forewing length: 14mm

Sinthusa mindanensis stephaniae H. Hayashi, Schroeder & Treadaway, 1978 ♂,
     Mt. Mahaplag, S.Leyte Is.,Philippines, August 2009. Forewing length: 13mm

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