旅人ひとりー大阪大学探検部一期生のたわごとー

とこしえの精神(こころ)を求めて、さまよ(彷徨)う旅人ひとり。やすらぎを追い続け、やがてかなわぬ果てしなき夢と知るのみ。

映画の中の蝶1、「慕情」

2008-08-13 | 
映画の中にが登場し、かつストーリー上、かなり重要な意味を持つ作品はきわめて稀と思われる。あまりに有名な映画「慕情」では、何度も蝶が出てくる。

香港の丘の上で、アメリカ人新聞記者マーク・エリオットと中国人と英国人の血を引く女医ハン・スーインが逢瀬を楽しんでいた時、マークの肩に蝶がとまる(A)
「動かないで、じっとして」「あなたの肩にチョウが、・・・幸運のしるしよ」しかし、蝶は飛び去ってしまう。スーインは思わず叫ぶ「動いちゃだめよ。 いいしるしなのに」
中国の迷信を信じるスーインでさえ、本当に幸せが消え去ってしまうとは、その時は思わなかったに違いない。

マークは朝鮮戦争の勃発とともに、従軍記者として戦場に赴く。前線でタイプライターを打っているマーク、そのタイプライターに蝶が止まって(B)、羽を開いたり、閉じたりする(C)。タイプを打つ手を休めて、微笑みを浮かべて蝶を見つめるマーク。きっとスーインとの楽しかった日々を思い出していたのだろう。しかし楽しいひと時は長くは続かなかった。敵機の爆撃によりマークは亡くなる。

彼の死を知り、思い出の丘に駆け上がるスーイン、丘の上から彼女に手を振るマーク。だが、その姿は一瞬の幻に過ぎなかった。泣きくずれるスーインの傍らの樹にまるでマークの化身であるかのように、蝶が飛んで来てとまる(D)。涙なくして見られぬシーンである。

この映画ほど、が重要な役割を担うものとして描かれている作品は寡聞にして知らない。



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