救急一直線 特別ブログ Happy保存の法則 ー United in the World for Us ー

HP「救急一直線〜Happy保存の法則〜」は,2002年に開始され,現在はブログとして継続されています。

講 義 救急医療 看護師の特定行為研修の理解 2017 PART 1

2017年11月19日 21時04分54秒 | 講義録・講演記録4

講 義 看護師の特定行為研修について
~指導者講習会の企画と実施の工夫 2017~
 

名古屋大学大学院医学系研究科
救急・集中治療医学分野

松田直之

 

はじめに

 医療の明日を架ける橋,地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律(平成26年法律第83号)により,昭和23年法律第203号の保健師助産師看護師法の一部が改定され,平成27年10月1日より「特定行為に係る看護師の研修制度」が施行されるようになりました。「看護師の特定行為」の基準として,平成27年(2015年)3月13日には「保健師助産師看護師法第三十七条の二第二項第一号に規定する特定行為及び同項第四号に規定する特定行為研修に関する省令(厚生労働省省令33号)が定められました(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077077.html)。この看護師の特定行為を資格として推進するシステム,そして指導者を要請する養成研修は,平成27年度より1日6時間程度,以下などのテーマとして「看護師の特定行為における指導者育成コース」として運営されています。超急性期,先端医療,地域医療(へき地医療),災害医療等に,多職種連携の質を高め,広く活躍する人材育成の場となっています。 


看護師の特定行為における指導者育成コースの工夫


1.特定行為研修を終了した特定行為看護師の役割の理解の認識
 研修制度の概要について:講義方式で基盤理解とされます。小グループ討論として,文殊カード,ワールド・カフェ方式などが利用されます。
2.指導者のあり方の体得
 フィードバック形式として動画を見ての2人組ロールプレイ方式が用いられたり,コーティング法や働きながら学ぶものに対する理解が得られるような講義を含みます。指導にあたってのコーチング力とフィードバック力の基盤の作成が目標とされます。
3.実習を行う際の指導計画作成の工夫
 自施設に適応したい「指導計画書の原案」の作成などをとして,既存内容の参照と応用,医療安全の確保,責任体制の明確化,指示系統の明確化などの理解を深めます。仕事の教え方については,「仕事の教え方カード」を以下の段階として使用していきます。
※ 仕事の教え方カード
 第1段 習う準備をしてもらう:すべての修行は準備から始まります
 第2段 作業を説明してもらう
 第3段 実際にやってみてもらう
 第4段 教えたあとを観察する
4.受講者に対する評価方法
 受講者や被教育者に対する学習の評価は,WBA(Workplace-based Assessment),DOPS(Direct Observation of Procedural Skills),Mini-CEX(Mini-Clinical Evaluation Exercise)などが用いられます。これらに対する理解を深めます。
5.指導者が留意すべき事項の整理
 「特定行為研修を進めていくための課題」として,平成27年度と28年度は講義,平成29年度は少グループ討論として,問題事項と留意事項を整理するようにして進められます。今後も,ワークショップ形式として,積極的に討議する流れとなってきました。
 看護師の特定行為における指導者育成コースは,能動的かつ主体的に開催され,ワークショップ形式,および講義とバズセッションなどとして,広く開催されるようになっています。
 
 
特定行為研修について理解する内容について
 
1.看護師の特定行為研修の指導医の特性について
 全日病協会の実施する「看護師特定行為研修指導者講習会」を終了した医師,歯科医師,薬剤師,看護師は,特定行為研修の指導者となることができます。特定行為研修では,特定行為研修の質の確保のために,仕組み化が必要とされます。2017年での特定看護の対応する特定行為38行為(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000050325.html)の共通科目および区分別科目の指導には,必ず研修教育資格を持つ医師を含めることが必要になります。現在は,研修教育資格を持つ医師と同等の経験を有するものを指導者に含めていますが,研修の質の維持のためと客観的評価性と厳格性が必要とされるため,「研修教育における資格の保持」が必要です。教育及び指導の方法に関しては,研修に当たる皆に共通の認識を施す必要があり,指導者教習会で「教育及び指導の方法」を学ぶことになります。その上で,ディレクター,チーフタスクフォース,タスクフォースなど,主担当により留意する事項の重きがシフトします。タスクフォースの数は,講習会のグループ数より多く設定されます。
 現在,2017年度の指定機関数は,49施設であり,大学院8施設,大学病院4施設,大学・短大9施設,地域病院28施設,医療関係団体5施設などの内訳です。
 
2.看護師の特定行為研修の研修生の特性について
 厚生労働省特別研究事業データでは,2017年度レベルの特定行為研修の研修生は,35~44歳の年齢,10年目~20年目の看護師に終了者の中央値があります。特定行為研修に進むものは,概ね3~5年以上の看護実務経験を持つ特徴がありますし,一定の看護経験が期待されます。
 看護実践は,①健康の維持増進に向けての援助,②健康の回復に関する援助の2つの実践を目標としますが,特定医療行為は主に②の「健康の回復に関する援助」に深く関与します。
 
3.専門看護師と認定看護師の定義について
 専門看護師の皆さんとは,患者と家族に起きている問題を総合的に捉える「判断能力」と「広い視野」を持ち,専門看護分野を担うものとして「クリティカルケア看護」,「災害看護」,「がん看護」,「精神看護」,「地域看護」,「小児看護」,「母性看護」,「老年看護」,「慢性看護」,「家族看護」,「感染看護」,「在宅看護」,「遺伝看護」の13分野の各専門性を発揮しながら,専門看護師の6つの役割として「実践」,「相談」,「実務調整」,「倫理調整」,「教育」,「研究」を果たし,施設内にとどまらず,地域を含む「看護の質の向上」に勤める看護師を言います。2016年12月の段階で,専門看護師登録者数は1,883名です。
 一方,認定看護師の皆さんは,看護師として5年以上の実践経験を持ち,日本看護協会が定める615時間以上の認定看護教育を修めて,認定看護師認定審査に合格することで特定の資格を持った看護師さんです。この認定看護資格は,5年毎の再審査として,更新となります。2017年8月の時点で,認定看護師数は18,728名であり,救急認定看護師は1,205名,集中ケア認定看護師は1,169名,小児救急認定看護師は266名です。こういう状況を把握して,救急医療,災害医療,小児救急医療などの厚生労働省の掲げる「6次医療計画 5疾病5事業」(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000139231.pdf)を充実させることになります。
 
4.特定行為看護師養成の教育特性について
 特定行為看護師養成においては,①省察的視察,②抽象的概念化,③積極的実践,④具体的経験の4つの流転において,省察的視察と抽象的概念化として,特に従来の看護教育の基盤を重視することとなります。その上で,特定行為に対する積極的実践および具体的経験として,例えばOSCE(objective structured clinical examination:いわゆる手技試験)において,手技のみではなく準備から報告を含めて評価することとなります。自身の能力を客観的に評価できる能力も育成されなければなりません。手技に特化するあまりに,患者さんに対する声かけを忘れる,針などに対する安全廃棄が抜けるなどの医療安全面を含めた「広義の手技」としての実習経験とすることになります。
 
5.特定行為研修の終了後の多職種連携
 研修を終了した後も,同じ現場の医療従事者としての共同とフォローが必要となります。21区分を終了して500床未満の病院の看護部に所属して10種以上の特定行為を行っているもの,7区分を終了して5~10種程度の看護特定行為を行っているものなどがいらっしゃいます。これらの多くに,職場の看護の質の改善に向けての橋渡しを期待するものがいらっしゃいます。チーム医療で中心的役割を担うようになることにも留意します。
 
 
特定行為研修における教育のあり方について
 
1.カリキュラム
 カリキュラムの構造には,①目標,②方略,③評価の3つが明確とされている必要がある。具体的な目標が,まず,明記される必要がある。一般目標(GIO),到達目標は,施設によって期待するところが異なり,各施設で目標を明確とすることになります。
 学習は,認知心理学的観点より1970年代より変化してきています。1970年代までの学習の成果は,理想的な「行動主義」として「行動が変化すること」を目標として能力の強化を目標としてきました。この内容は,1950年代より,知識(認知),技能(精神運動),態度(情意)の3つの行動の総和として評価されてきていましたし,大学教育シラバスでも踏襲されてきました。社会構造や医学構造が,何を求めているのか,何を変革しようとしているのかの総体を見つめることになります。
 
2.研修目標
  現在は,「アウトカム基盤型教育」として,我々がどのような人材を望んでいるかを明確にすることから始めようとしています。人材像を明確にすることが,正しいか,不確かかは別として,教育の方向性は漠然とした個々人の可能性拡大ではなく,個々人の期待されるべきところに能力を発揮できるものに変化しています。その下で,学習者は既に学習者に存在する知識に照らして,周囲からの相互作用に影響を受けながら発展していく「構成主義的」に立脚するように期待されます。構成主義的学習では,zone of proximal development(最近接発達領域)のように他からの少しの援助により解決能力を獲得できる領域があること,legitimate perpheral participation(正統的周辺参加)のようにカルガモ式に周辺的な立場から徐々に中心的立場に成長していくことなどの社会学習が期待されます。以上を考慮して,目標を定めますが,目標設定は我々がどのような人材を望んでいるかを明確にするところから始まります。
 
3.研修方略
 研修方略というのは,目標を達成するための学習手段です。講義,演習,実習で,学習手段のカリキュラムを作成します。Semantic memory(事実との関連付け),episodic memory(経験との関連付け)などとして,学習を長期記憶化します。エキスパートになると,自己で振り返り,自己で修正できるようになります。このようなレベルへ教育していくこととなります。研修方略では,学習者に「メタ認知」をもたらすことができると良いです。 
 研修を遂行する研修手段としては,negativeなフィードバックについては前後にpositive を挟むサンドイッチ法,対話形式として,1)自分でしてみてどこが良かったと思う?,2)私はここが良かったと思います,3)次に同じことをした時の工夫はあるかな?,4)私はここを●●のようにすると良いと思います,5)それでは,実際にどう改善できるともいますか?6)私はこういうふうにすると●●が●●のようにもより良くなると思います。7)次はもっとうまくできそうですね,とするClub Sandwich法などがあります。その上で,教育は聞き手の姿勢が整っていればいるほど,より良くなるのです。
 さて,ファイブマイクロスキル(5 micro skills)は,①考えを述べさせる,②根拠を述べさせる,③一般原則の伝達,④できていたことの具体的な伝達,⑤間違いを正す,以上の5つを基盤とします。

4.評価の方法
 学習の評価は,「総括評価」と「形成評価」の2つに分けて評価します。総括評価は,合格評価に達するかどうかの評価となります。この合格に足りない内容を相互確認し,学習者が合格レベルを形成できるように指導していく評価方法を「形成評価」と呼びます。Millerのピラミッド(図)などを理念とします。目標と評価の方策をまとめたものを,ブループリントと呼んでいます。当たり前なこととして,設定された目標によって,評価は変化します。複数の評価者が,同様の評価とできるように目標を明確として評価することが必要となります。評価の正当性には,目標の明確化が重要となります。
 

 

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 講 義 救急医療 看護師の特... | トップ | 講座 WHO 敗血症管理 世界... »
最新の画像もっと見る

講義録・講演記録4」カテゴリの最新記事