睡眠に対する集中治療
名古屋大学大学院医学系研究科
救急・集中治療医学分野
松田直之
救急・集中治療領域を含めて,睡眠の質を改善することはとても大切ですが,まず意識することは,① 炎症活性,② 呼吸数,③ 脈拍数です。交感神経緊張の高い場合に,不穏やせん妄は起きやすく,一般に言われる「眠剤」,GABA作動薬では対応できないことが多いです。メラトニンアナログであるロゼレム®(ラメルテオン)を用いて,メラトニン補充をすることも必要となる場合が多いです。その上で,夜間の眠剤について,半減期を理解して使用することをお勧めします。単に,眠れないというのではなく,なぜ夜間覚醒しているのかの原因を評価することが大切です。新しい感染症が隠れているときもあるのです。患者さんに対して,眠剤についての使い方,そして目的を明確として下さい。
ルネスタ錠(エスゾピクロン)は,ゾピクロンの鏡像異性体であり,入眠と中途覚醒を改善できます。作用機序は,従来のものと同様で,GABAa受容体複合体のベンゾジアゼピン結合部位への結合により,Cl-イオンを神経細胞内に流入させるものです。GABAa受容体サブタイプのα1~α5のうち,α1は催眠作用を,α2~5は抗不安作用があります。このような不眠症治療薬の超短時間作用の定義は,消失半減期2~4時間です。ルネスタは消失半減期5時間であり,超短時間作動薬と短時間作動薬(t1/2:6~10時間)の中間型タイプです。超短時間作動薬に分類されます。
病棟で眠れない患者さんがいると,看護師さんに呼ばれることが多いのは,医師の宿命かもしれません。その上で,看護師さんに夜間覚醒の下人をアセスメントしてていただくような教育体制も必要となります。眠剤の適正使用をしっかりと教育することが重要です。そ従来は,マイスリー(ゾルビデム,消失半減期約2時間),ハルシオン(トリアゾラム,消失半減期約3時間),アモバン(ゾピクロン,半減期3.7時間)などが,超短時間作動薬として使用されています。ルネスタ(エスゾピクロン,消失半減期5時間)は,高齢者で1回1mg,一般成人で1回2mgあるいは3mgが推奨されています。ロゼレムは,メラトニン補充としてメラトニン受容体(MT1R/MT2R)作用として使用します。半減期は1時間から2.6時間です。一浪から二浪の受験生は,眠らないで勉強するとよいのですが,免疫が落ちますので,睡眠は規則正しくし,朝日とともに起きて,勉強をしましょう。
※ 睡眠導入薬 松田式 消失半減期の覚え方(少し どもるように 話してみて下さい)
♪ 毎日 ハルさん ♪ あもばん さいなら~~♪ ルネスタ5時間 ねむれんね〜〜♪
2時間ハルシオン アモバン 3.7時間 ルネスタ5時間
※ メラトニン
メラトニンは,松果体で産生されます。明るい状態だと松果体でのメラトニンの産生が抑制されて眠たさがなくなります。夜になったり,部屋を暗くするとメラトニンが産生されて眠くなります。さて,朝日があたる部屋では,松果体のメラトニン産生がだんだん抑制されて,つまりメラトニンの半減期に合わせて覚醒します。「朝日が登る時間」と「自身が起きる時間」,この時間差をチェックして健康管理として下さい。また,メラトニンは,ラジカルスカベンジャーです。脳内での活性酸素種を消去する作用がありますし,さまざまな臓器の炎症を抑制する「抗炎症効果」があることが知られています。
初版 2012年6月12日 追記修正 2019年3月20日,2020年4月8日