東京ナイト

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「光の教会 安藤忠雄の現場」

2009-11-18 07:38:19 | 
本は「光の教会 安藤忠雄の現場」



大宅壮一ノンフィクション賞受賞作。
著者の平松剛さんの本は、以前、「磯崎新の「都庁」―戦後日本最大のコンペ」というこれも建築がテーマのものを読んでいた。「都庁」も非常にスリリングな話で面白かったが、巨大な建築物のコンペの話なので、身近な感じはしなかった。だからこそ面白い部分もあったのだけれど。

で、この本。
大阪茨木に建つ一軒の教会がいかに作られたか、というノンフィクション。もともと構造をやっていた著者が書いただけあって、具体的で、でも門外漢にも分かるような内容。というか、「建物を建てる楽しみ」に憑かれた男たちの物語。
建築家・安藤忠雄のことはもちろん、事務所のスタッフ、施工を担当する工務店の社長と現場監督、それに施主である教会関係者、それぞれを丁寧に取材し、それぞれから見た「ひとつの建物が出来るまで」のドキュメンタリー。

例えば、教会関係者は、かなり強引に設計を進める建築家に不満を感じていたり、そんなことは織り込み済みの建築家は、それを何とかなだめながら、自分の芸術家気質を通そうとするし、、、。

でも何より感動したのは、工務店のスタッフたち。
今回は、教会に予算が全くないので実は赤字の物件。時はバブルの時代。みんなが金儲けに奔走している時、突拍子もないことを思いつく建築家や、毎日現場をチェックしに来る牧師さんの要求に応えつつ、難しい物件を情熱を持って仕上げていく姿には、なんだか胸が熱くなった。

建物だけじゃなく、「なにかを作る」という事の楽しさを改めて感じることのできる素晴らしい作品。オススメ!