東京ナイト

旅行、食事、映画にお芝居、日々のささやかな幸せを記録します

「競争の作法 いかに働き、投資するか」

2010-09-29 07:10:53 | 
本は「競争の作法 いかに働き、投資するか」齋藤誠・著(ちくま新書)。



一橋大学の先生が、徹底的に統計資料を読み込み、バブル後の日本経済を分析しています。
すると、「リーマンショック」の実態、「雇用調整」の実態などが僕らが漠然と考えていたイメージとかなり乖離していることが分かります。

例えば雇用調整。
統計資料によれば1997年から2002年にかけて失業者数は230万人から359万人に激増しています。
非正規雇用への大きな流れが加速したのもこの時期でした。
今に至るさまざまな不安や不安定化が顕在化してしまった重要な時期だったと思います。
しかし、そうした「痛み」とは裏腹に、実質雇用者報酬を見てみると、同じ時期、273兆円から270兆円へと1.1%の低下にとどまっています。
これはデフレによる労働コストの上昇によるところが大きいのですが、あれほど社会に大きな影響を及ぼした雇用調整も、生産コストの削減と言う観点から見れば、1%の削減に過ぎません。
つまり、この時期にクローズアップされた「貧困」は、少数の人の不幸であって、実際の大多数はそれを眺めていた、という事になります。

他にも「失われた10年」、「トヨタの拡大路線」、「地方の地価」など、目を開かれるような指摘が随所にある好著です。
惜しむらくは「タイトル」。
なんだか自己啓発本のような安い印象で、内容の誠実さとかみ合っていません。
でも、経済学者が社会に向けて発信した実のある本です。
すごくオススメです!

高尾で自然観察会

2010-09-24 21:59:23 | イベント
昨日は高尾で自然観察会。
といってもそれ程、大げさなものではなく、6人ほどが集まって、ものすごく生きもの全般に詳しい23歳の青年の解説を聞きながら山に登るという企画。

初めての企画でしたが、なかなか面白いイベントでした。
解説を勤めてくれた青年がとにかくかわいらしい。
「これは何という木?」とか聞くと一気呵成にその木の名前からエピソードまで教えてくれます。
詳しいだけじゃなくて、僕たちにも興味が湧くような話もしてくれるので楽しめました。
同じ山を登るのでも、周りの植物達の名前や生態を知って歩くと、より楽しさが増す気がします。
高尾山の豊かな自然が少しだけ身近になった気がしました。

それにしても青年があまりにも自然に詳しいので、理由を聞いたところ、子どもの頃からとにかく図鑑が好きで暇さえあれば読みふけっていたとの事。
長じて、実際に生き物と触れ合うことでますますその面白さに目覚めました、と目をきらきらさせながら話してくれました。
いまどき珍しい純真な青年。

でも、その純真さゆえ、進路には悩んでいる様子。
彼の様な青年が活き活きと自然の豊かな世界を教えてくれる事はすごく有意義なことだと思うのですが・・・。
これからも機会があれば時々、自然観察会などで彼と交流を深めていきたいと思いました。

そういえばお昼過ぎから高尾でもすごい雨。
バケツをひっくり返すような豪雨の中、急いで下山しましたが、こんな雨の中でも山に登ってくる人たちがちらほら。
それはそれで貴重な経験かもしれませんが、世の中にはいろんな人がいるんだなと思いました。
まあ僕たちも似たようなものですが・・・。

連休はずっと都内

2010-09-21 06:48:12 | Weblog
連休はずっと都内。
ほんとうはポルトガルに旅行に行く予定だったのですが諸般の事情でキャンセルに。
事前にいろいろ調べていて、ポルトガルがすごく面白そうに感じていたのですごく残念です。

で、代わりにしていた(やらされていた)のが「本の整理」。
なんだかしょっちゅう同じ事をしている気がするのですが、もともと狭い家に容量以上の本が溢れているので定期的に整理しないと足の踏み場もないのです。

で、昨日は、ようやく解放されて美術館に。
永青文庫で、「神と仏 日本の祈りのかたち展」をみたあと、早稲田の演劇博物館で「森繁久彌展」のはしご。
どちらも小さな展覧会でしたが、人もそれ程多くなく意外に楽しめました。

永青文庫は、目白台にある細川家の個人美術館のようなもの。
そのコレクションを紹介しているのですが、今回は平櫛田中というひとの五大明王の厨子が興味を引きました。
ほんとうは仏じゃなくて神像があるのかと期待していたのですが、全然なかったのが残念・・・。



「森繁久彌展」は、去年なくなった名優を偲んでの企画。
出演した映画のポスターや台本、それにプライベートでの写真などの他、美空ひばりや吉永さゆりからの手紙が公開されていたのですが、字や文面にそれぞれの個性が映されていたのが面白かった。

で、久し振りに森繁調を堪能しようと思って、帰りにレンタルビデオ屋に寄ったら「名作」と言われるものが全く置かれていなくてがっかり。
代わりに「韓流ドラマ」の置き場がすごく増えていました。そんなに借りる人が多いのかな。
でも、森繁久彌が身近に見られないとは・・・。もったいない。

秋のお月見の会

2010-09-18 09:57:50 | イベント
今年の春、幇間芸人さんを呼んでお花見の会を開催しました。
それがすごく面白かったので、昨日、お月見の会を開きました。

会場は清澄庭園にある「涼亭」。
昭和初期に建てられた風情ある建物。



今回の趣向は、「蔵書対決」。
これは、僕がずっと長年温めていた企画で、参加者それぞれが自分の書棚から「とっておきの一冊」を持ってきて披露し、チームに分かれて対決する、というもの。
参加者は、2チームに別れ、「本の珍しさ」「美しさ」「変さ」「面白エピソード」「感動エピソード」などどんなこだわりでも良いの ですが、1分程度、その本について語り、 審判団が勝ち負けを判断し、総合得点を競って両チームが戦う、という「対決」です。

参加者は約20人。そのうち本を持ってきてくれたのが14人だったので7回勝負がありました。
優勝者には商品も用意していて、なかなか盛り上がったと思います。

こういう飲み会って印象に残るし面白いので、今後も定期的に開催することにしました。
次回のテーマは「連句」の予定。楽しみです。

ワリバシカンパニー

2010-09-16 08:08:15 | Weblog
昨日は、僕たち「銭湯振興舎」の事務所のある「千代田3331」というスペースで興味深い説明会がありました。

同じく3331に入居している「トビムシ」という会社が、他のパートナーと組んで日本の森を元気にする新しい試みを始めたようです。
その名も「ワリバシカンパニー」。
http://warebashi.com/



1985年ごろ、日本では250億膳の割り箸が使われていて、その全てが国産だったとの事。
「割り箸=伐採で山を荒らす」というイメージがありましたが、実際は建材を作った時の端材を使うので、環境へのダメージも少なく国内の林業に寄与していました。
しかし、安い中国産(1膳=1円)に押され、2001年にはなんと国産比率は5%にまで落ち込んでしまいました。

現在、中国産の割り箸の値段が上がり、大手外食チェーンがプラスティック製の箸を使うようになったこともあり、割り箸の消費量は年間180億膳ほどに激減。
でも相変わらず国産割り箸の割合はわずか。
一方、建材の端材を使っていた割り箸も、建材自体がカットされた状態で外国から輸入されるため、原料の供給もままなりません。
で、国内の林業も暗い状況が続いています。

そうした中、森を活性化するために必要な間伐材から割り箸を作って、森を元気にしようというのが今回のプロジェクト。
漂白などしていないクリーンな国産割り箸を使うことで、これまでほとんど森に放置されていた(=お金にならない)間伐材に値段がつき、そのことが日本の森を元気にすると言う壮大なプロジェクトです。

説明を聞いていてワクワクしてきました。
僕も月に一度、木こりの真似事をして間伐などをしていますが、森が明るくなり活性化していることへの充実感はあるのですが、切った間伐材を放置していることをいつも「もったいない」と思っていました。
林業を生業にしている中山間地域の人たちにとってはより切実な問題だと思います。

という訳で、推進しているメンバーもかなり強力そうですので、このプロジェクトは注目です。

The Expedition Day

2010-09-14 23:15:21 | イベント
先週の土曜日、代々木でThe Expedition Day~エッジなクライマー+山岳スキーヤーによるトークライブ 「なぜあなたはextremeにチャレンジするのか」というイベントに行ってきました。



日本山岳協会などが主催のイベントで、現在、もっとも注目されているアルパインクライマー、平出和也さん、谷口けいさんの他、ビッグマウンテンスキーヤーの佐々木大輔さん、それに若干16歳のクライマー中島徹さんなど錚々たる顔ぶれが揃いました。
こんなすごいメンバーなのに、会場は空席がちらほら。
ちょっともったいない感じでしたが、先鋭的なクライマー達の話はとても刺激的で興奮しました。

特に昨年、国際的な山岳賞「ピオレドール賞」を受賞した平出、谷口ペアは、飄々とした語り口で映像を交えて、彼らの先鋭的な登山を紹介してくれ、世界レベルの登山がどんなものなのかを垣間見ることが出来ました。

インドのカメットという山を登ったとき、「この山で、この美しいルートを発見できたのは、自分の今までの経験があったから」と平出さんは話していましたが、ダイレクトに山頂に突き抜けるそのルートを「美しい」と表現する感覚はすごく面白い。
やっぱりクライマーはかっこいいです。

翌日の日曜、ひょんなきっかけで、その平出、谷口ペアと一緒に食事をする機会を得て、さらにいろんな話を伺うことが出来ました。
ちょくせつお二人と話してみて、アスリートと言うよりアーティストの様な繊細な感覚が伝わってきました。

なんだか最近、良く分からない自称登山家が注目されていますが、やはり本物はホントにかっこいいです。
いつか大きな山に登りたいと改めて思わせてくれた出会いでした。

「街場のメディア論」

2010-09-11 08:13:57 | 
本は「街場のメディア論」(光文社新書)。



著者の内田樹さんは「日本辺境論」などベストセラーを連発していますが、著書を読むのは今回が初めて。
この本は「危機に瀕するメディア」をテーマにしつつも、日本の不調の原因について語っています。

元は彼が教授を勤める女子大の授業がベースになっているとの事。
そのためなのか、手で触ることの出来る自分の身の回りの出来事から、もっと大きなテーマについて話を広げることがこの本の特徴で、「メディア論」という良く分からないものを上手く「じぶん達の問題」として語っています。
こうした工夫された分かりやすさが広く支持される理由でしょうか。

でも内容は新たな発見がたくさんあり、なかなかスリリングでした。
「テレビの存在理由」「クレイマー化するメディア」「メディアのマニュアル化」「電子書籍」、、、などいろいろなテーマについて語られていますが、ポイントは「現場の心理」。
なぜメディアが存在して、人はメディアに何を期待しているのか、なぜ自分はメディアの現場にいるのか、という本質を考えないまま、仕事としてビジネスとして関わっているために、メディアの根本が揺らいでいる、というのが著者の主張。

変化を常に求めるメディアの本質やそのことがもたらす、社会の劣化についての知見は非常に新鮮で腑に落ちるものでした。

最後に話題の電子書籍についても、「書棚を空間的に形成できない」点が電子書籍の弱点だ、という言及があり、なるほどと思いました。

という訳でオススメです!

「建築がみる夢」

2010-09-10 07:40:39 | 
本は「建築がみる夢」。



この前、鳴子温泉に行ったとき不思議な温泉施設がありました。
その「早稲田桟敷湯」という変わった建物の設計が石山修武だと知って、彼の本を読んでみました。
建築の本は面白い本が多いのですが、この本にもかなり興奮させられました。

石山修武は「前衛」です。
設計した建物のスタイルだけじゃなくて、発想の大本のところから前衛なのだと思います。

この本は、ふたつのパートに分かれています。
ひとつは、数年前、世田谷美術館で開催された彼の個展の内容をまとめたもの。
そしてもうひとつが、彼が構想する12のプロジェクトについてまとめた「物語」。
これがすこぶる面白い。
12の物語は、手紙だったり日記だったりいろんな形式で書かれていますが、どれも建築家が、人と出会い、その出会いが発火点になって、ひとつの建物が生まれる過程や発想法がよく分かります。

登場する人たちのスケールが大きいので、彼らとの共鳴によって生まれる建築も、すごいことになっています。





建築家はブログも書いているようです。
時々チェックしようと思います。
http://ishiyama.arch.waseda.ac.jp/www/jp/top.html

映画「スティーヴィー」

2010-09-08 22:25:47 | 映画
2006年に「スティーヴィー」という映画を観ました。
非常に心に残る映画だったのですが、DVD化もされず、上映の機会もなく残念に思っていましたが、松江哲明の新作映画の関連上映としてポレポレ東中野で2回だけ観られます。

http://www.mmjp.or.jp/pole2/matsue-sp.html

めったにない機会だと思いますのでお時間のある方はぜひ!
上映日:9.13(月)16:00/9.15 (水)16:00

映画の紹介はこちら。
http://www.uplink.co.jp/x/log/001182.php

以下、2006年に観た時の感想です。
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今年僕が見た中で一番心に残る映画でした。

世界一の繁栄を誇るアメリカの片田舎に暮らす、どうしようもない男の姿を描いたドキュメンタリーです。
観ていて、出口のない閉塞状況に息がつまりそうになりました。
楽しい映画ではないです。
でもとてもとても心に残る映画でした。

登場人物たち、それぞれが様々な状況を抱え、上手くいかず、でもそのことについてきちんと状況を把握しちゃんと自分たちの言葉で語ります。
その言葉の深さに驚いたし、感動もしました。

映画の撮影に参加した女性スタッフの撮影日記です。
撮影にも相当な覚悟が必要だったのですね・・・
http://blogs.dion.ne.jp/stevie110/archives/541752.html#more
(もうこのブログ存在しないみたいです。確か、撮影の前に、監督から「ぜったいにスティービーとふたりきりにならないように」と釘をさされビビリながら撮影を続けた、といったないようだった気がします・・・)

銭湯ナイトVol.6 「郷愁の昭和レトロ銭湯」&「女湯秘話 -その闘いと愛-」

2010-09-07 07:17:19 | 東京ナイトイベント
ここ数年、10月10日は「銭湯ナイト」というイベントを開催していました。
新宿のロフトプラスワンという会場で、銭湯についてディープに語り合うトークイベントです。

でも、今年はちょうど同じ日に友人から結婚式の司会を頼まれ、鳴子温泉に行くことになりました。
「さすがに鳴子温泉から帰って来れないし、今回、銭湯ナイトは出来ないかも」と思っていたところ、レギュラー出演者の下北沢つかささんや町田忍さんなどが手を上げてくださり、無事開催の運びとなりました!

という訳で、僕は出演しませんが、今回も面白そうな内容となっています。
ぜひスケジュール帖に「10月10日は銭湯ナイトの日」とお書き下さい!



銭湯ナイトVol.6 「郷愁の昭和レトロ銭湯」&「女湯秘話 -その闘いと愛-」

銭湯フリークは集合!
銭湯のあれこれを語りあうイベント
銭湯のお宝映像も多数

【出演】
町田忍/下北沢つかさ/ナカムラ(風呂屋の煙突)/オプティオ和田(東京レトロを行く)+銭湯女軍団(くの1、くの2、くの3...)

【内容】
ふとしたきっかけで入った古い銭湯、そこは昭和へのタイムスリップゾーン。街の喧騒を忘れ、こみ上げる郷愁と甘い思い出に浸ってしまう場所が、まだひっそりと残っています。今回はそんな、現代を忘れてしまうような驚きのレアな銭湯の数々を写真とトークで紹介します。
後半では、謎に包まれた女湯の実態に迫る、銭湯女軍団によるトークをお楽しみください。
恒例の、銭湯ペンキ絵師、中島盛夫師によるミニ銭湯ペンキ絵のオークションもあります。また、来場の方には「牛乳石鹸」をプレゼントします。

【日時】
2010年10月10日(日曜日)
19:00 - 22:00(開場:18:00)

【場所】
ロフトプラスワン(新宿、歌舞伎町)
ここから前売り予約が出来ます(予約した人は優先入場ができます)
http://www.loft-prj.co.jp/PLUSONE/reservation/

【入場料】
1010円 (飲食別)
※ 前売りあり(ロフトプラスワンにお問合せ)
※ 飲食メニューは居酒屋程度の価格