東京ナイト

旅行、食事、映画にお芝居、日々のささやかな幸せを記録します

映画「エンドレス・ポエトリー」

2017-12-09 09:37:25 | 映画
アレハンドロ・ホドロフスキー監督の映画「エンドレス・ポエトリー」を観ました。



監督は御年88歳。「エル・トポ」で知られている方のようですが、僕は未見だったので、この映画で初めて彼の世界に触れました。

で、強烈なエネルギーと個性に圧倒されました。
上の写真もそうですが、全編、色と音楽に満ちています。
でも、監督がペルーの人ということもあるのか、色の使い方が独特で、ちょっとシケた感じが面白かった。

映画は、監督の自伝的物語。
ペルーでの少年から青年に至る成長期が、夢とも現実ともつかない独特のタッチで描かれます。
通貫しているのは「自分らしく生きる」こと、そして「芸術への信頼」。
青春の祝祭に満ちた瞬間を、本当に美しく情熱的に描くのですが、映画を観ながら「この真っすぐなエネルギーって今の映画にはないよなー」って感じていました。
何というか、ここまで何の照れも衒いもなく青春の輝きを語ることって、最近は難しいと思うのです。

でも、映画や詩や音楽に人生を捧げ、その素晴らしさとともに生きてきた88歳の監督だからこその説得力がありました。

映画の最初で現在の町が監督の少年時代のころに変わる場面転換、CGなんかは使わず、演劇の舞台みたいに街をアナログ的に変えたり、歌舞伎の黒子みたいな人が画面の片隅で小道具を片づけたり、最新技術なんか使わなくてもやれることはいっぱいあるって思ったし、それが逆に新鮮でした。
あと、帰り道、寺山修司とかがまだ生きていたらどんな映画を作ったのかなって思いました。
「前衛」ってやっぱりすごいね。

アレハンドロ・ホドロフスキー監督作!映画『エンドレス・ポエトリー』予告編



映画「氷の花火 山口小夜子」

2017-12-04 23:10:16 | 映画
昨日は、山口小夜子 没後10年追悼上映会「宵待月に逢いましょう」。
映画「氷の花火 山口小夜子」の上映や彼女のメイクを担当していた方と監督のトークなど。



山口小夜子さんは、日本人初のパリコレモデル。
高田賢三が「小夜子さんはパリに舞い降りてきたかぐや姫のようだった」と語り、山本寛斎は「彼女は20年間、僕のミューズだった」とする圧倒的な美貌。
パリコレでも15ものブランドから声がかかる売れっ子モデルでした。

そんな彼女の後半生、何度か一緒に仕事をしたTVディレクターが、彼女のゆかりの人や第二の故郷パリやモロッコなどを巡り、インタビューを通じて、稀有な存在だった「山口小夜子」を描いていきます。

ずっとトップモデルを務めてきたけど、移り変わりの激しいファッションの世界、彼女の時も過ぎていきます。
でも持ち前の向上心で前衛的な舞踏などいろんなことにチャレンジしていきます。
なんだかずっと少女のような繊細さと新鮮な感受性を失わなかったし、そのために努力していたんだってことがわかりました。

そして40代でのパリコレ復活。
なんだか、そのストイックさに心が締め付けられるようでした。

「美しいことは苦しいこと」。
監督に語った山口小夜子さんの言葉です。

「服は捨てられない」って言っていた彼女が残した膨大な服。
流行が移り変わるファッションの世界でも、彼女の美しさと同じように、何か筋の通った美意識がうかがわれ古さを感じさせませんでした。

映画の最後は、彼女に憧れてファッションの世界に入ったデザイナーやカメラマンによる「山口小夜子へのオマージュ撮影」。
真剣に一生懸命、彼女の美に近づこうとするその姿に何だか涙が出そうでした。

上映後のロビーは、山口小夜子風のメイクやファッションの女性がたくさん。
移り変わりの激しいファッションの世界に何かを残したんだなって思いました。

夜は、西川口のウイグル料理屋さん「火焔山」で忘年会。
https://tabelog.com/saitama/A1102/A110201/11037565/
西川口はディープ中華の町として独自の発展をしているそうで、興味があって初めて訪問。
お店は満席の大盛況でしたが僕たち以外のお客さんはみんな中国の方ばかり。
でも、お店のスタッフはフレンドリーで居心地はよかったです。
で、味は絶品!

いやー、ほんと都心の中華屋とか行く気が失せるほどのクオリティ。
街をぶらぶらしていたら他にもディープ中華屋さんがたくさんあったので、新年会も西川口になりそうです。
それにしても映画を観た表参道と西川口の町の雰囲気が違いすぎて笑ってしまうほど。
どっちも好きだけど。

『氷の花火 山口小夜子』予告編


映画「沈没家族」

2017-11-05 00:12:41 | 映画
今日は品川区新馬場で「ドキュ・メメント」というドキュメンタリー映画祭。
いろいろやってたみたいだけど、出かけたのが遅くて、インド人女性監督の「カシミール」をテーマにした映画のティーザーと監督自身によるプレゼン位しか聞けなかった。
ドキュメンタリー映画も国によって捉え方が当然違って、シリアスな紛争地帯を撮ろうとしている監督の前のめりで饒舌すぎるプレゼンが印象的。
「絶対にこの作品を作りたいんだ」という意思を感じた。
いろいろハードルは高そうだけど、完成したらすごい映画になりそうなのでぜひ観てみたい。

もう一本は、「沈没家族」という日本のドキュメンタリー映画。
監督は、子供のころシングルマザーとボランティアで集まった大人たちに集団保育されて育ったという人。
みんなで住んでいたマンションや父親など自らのルーツをビデオカメラを持って訪ねてめぐる映画。

この話、なんか知っている気がしていたんだけど、調べてみたら「だめ連」界隈の人たちみたい。
むかーし彼らが書いた「だめ連宣言! 」とかを読んでいたことを思い出した。
自分でも読んだことすら忘れてたけど、頭のどこかには残っているんだね。記憶って不思議。

大人になった監督は意外にふつーの人に育っていてそれもなんだか不思議。
映画の中でも誰かが言ってたけど、もっとアナーキーな人になってるかと思った。

映画祭はまだ続いてたけど、お腹がすいたので途中で抜けて東海道を品川に向けてテクテク。
お目当ての銭湯は臨時休業だったけど、おいしい中華屋「チャイニーズレストラン 野沢屋
」があったり、「幕末太陽傳」の舞台、土蔵相模の跡地がマンションになってるのを見つけたり、夜の散歩も楽しかった。

映画 「We Love Television?」 萩本欽一ドキュメンタリー

2017-11-03 20:37:06 | 映画
今日は渋谷で映画 「We Love Television?」。
萩本欽一さんが日本テレビの土屋敏男と組んでチャレンジしたお笑い番組制作の舞台裏を追ったドキュメンタリー映画。



萩本欽一さんのTV番組ってこれまでそんなにきちんと観てきませんでした。
でもこの前、小林信彦の本を読んでいたら欽ちゃんは浅草の劇場出身とのこと。
毛色はぜんぜん違うけど渥美清やたけしと同じバックボーンだと知って興味を持っていたところに、今回の映画の公開を知って観てみることに。

せっかくならと初日に行ってきました。
欽ちゃんと土屋P、そして次長課長の河本準一の舞台挨拶付きです。

映画は土屋Pの監督作品らしく「電波少年」っぽくアポなしの突撃取材から始まります。
「欽ちゃん、また視聴率30%の番組を作りませんか?」と。

意気に感じた欽ちゃん、そこから番組プランを練っていきます。
チームラボとか東大の先生とかいろんな人に会いながら。
途中、東日本大震災を経て何とか番組がオンエアされるまでの軌跡が欽ちゃんのビデオの自撮り(!)映像を中心に描かれます。

印象に残ったのは、土屋Pが欽ちゃんに「視聴率30%の番組を作りませんか?」と話しかけた時の表情。
そしてオンエアのあと、視聴率を伝えられた時の表情。

「視聴率100%男」と呼ばれテレビの一時代を築いた欽ちゃん。
「数字がすべてだから」と語りますが、その数字を作るために狂気にも似たエネルギーを注ぐその姿は圧倒的。
優しく温かな口ぶりだけに強く印象に残りました。
「視聴率30%を取るためには、出演者だけでなく番組にかかわるすべての人が自主的に自分の限界を超えて初めて達成できるんだ。そしてそのためには予定調和ではなく台本を超えたスパークする瞬間が必要なんだ」。
同じようなタレントと芸人がどの局でも似たような番組をしている今のテレビだけじゃなく、モノを作っているいろんな人に見てほしいと思った映画でした。

舞台挨拶で「欽ちゃん走り」のポーズも見られたし満足です。

映画の後は、國學院大學博物館で企画展「神道の形成と古代祭祀」。
宗像・沖ノ島の世界遺産登録を機に注目されている古代の祭礼。資料点数はそれほど多くなかったですが大好きな博物館なので常設展示もじっくり見て、こちらも満足でした。

映画「オン・ザ・ミルキー・ロード」 エミール・クストリッツァ

2017-10-31 00:03:45 | 映画
今日は映画「オン・ザ・ミルキー・ロード」。



「アンダーグラウンド」のエミール・クストリッツァの9年振りの新作。
クストリッツァは今年9月、彼自身のバンドを率いてのZepp東京ライブがあったので行ってきたばかり。
正直、Zeppが埋まるレベルの演奏じゃなかった気がしたけど、そんなの関係ないくらい自由に楽しそうにステージではしゃいでるオッサンたちが印象的でした。
でもクストリッツァだけは独特のセクシーさがあって、客席の女性陣はうっとりしてうるようでした。

この映画も、クストリッツァが主役を務めていてやっぱりセクシー。
ヒロイン役のモニカ・ベルッチもやたらセクシーなのでそんな不思議な主人公を中心にクストリッツァ得意の寓話的不可思議世界が語られていきます。

物語は内戦中のバルカンとおぼしき美しい村。
ときどき停戦が締結されると戦闘は止むのですが、なぜかすぐに破られまたドンパチが始まってしまう状況がずっと続いています。
クストリッツァは戦争前は音楽家だったのですがいろいろあって今は敵の銃弾をかいくぐりながら牛乳を牧場にもらいに行く係。
ラバに乗ってなぜか黒い傘を差しながらトコトコ向かう先はおかしな時計塔のある牧場。
そこにはユーゴ時代、新体操で活躍したちょっとエキセントリックな女性がいて、当然クストリッツァのことが好きで、で、そこに謎の女モニカ・ベルッチが現れて・・・、と相変わらずのクストリッツァ節。
結婚式のシーンとか「待ってました!」っていう感じ。
クストリッツァはやっぱり音楽の使い方もうまいし目まぐるしくカットが変わって祝祭感あふれるシーンはほんと真骨頂で楽しかった。

でも映画の後半の主人公二人の逃避行はちょっと長すぎかな。
風呂敷を広げたものの息が続かなくなったみたいで、「アンダーグラウンド」程の魔術性は感じられませんでした。
でもこういう映画こそ映画館でみるべき作品だなって思いました。

映画「パターソン」

2017-10-29 23:55:44 | 映画
3年振りにブログを更新します。
ずっと更新が止まっていましたが、元気にしていました。
書かなくなった理由は「ただなんとなく」という感じです。

で、更新することにした理由も「ただなんとなく」なのですが、ちょうど昨日、自分のブログを読み返したら、「こんなことしてたのか」って自分でも忘れていたような事が書いてあって、それって記憶力の悪い自分にとっては貴重なことなんだって気が付いたからかもしれません。

この3年間も「あー書いておけばよかった」って思う出来事がいっぱいあったのに残念だな~。
まあ、これからは気負わず適当に更新していこうと思います。

という訳で今日は映画「パターソン」。


ジム・ジャームッシュの新作。
ジャームッシュの映画は「ストレンジャー・ザン・パラダイス」から観ています。
僕にとって青春時代を代表する作品なので、やっぱり新作が出ると気になってしまいます。

映画はニュージャージー州のパターソンという街でバス運転手をしているパターソンという男が主人公。
美人の奥さんとブルドックと一緒に小さな家に住んでいる彼は、誰にも見せていない詩をずっとノートに書いています。
毎朝6時15分から30分の間に起きて、隣に寝ている奥さんを眺めて、ささやかな朝食を食べて、バスの停留所に歩いて通って、同じルートを運転する規則正しい生活。
それは一週間変わることなく続きます。
僕たちはその変わらない日常をずっとスクリーンを通じて見続けます。

とは言え、平凡な日常にもささやかな波乱が起きて(奥さんがギターを始めたり、いつも通うバーでちょっとした事件が起きたり)、まあいろいろあるよ、という映画。
ほんとシンプルにそんな映画でした。

でも退屈かというとそんなこともなくて、僕たちの生活と同じように「毎日は続いていくんだな~」って思ったし、それはそれで貴重なことなんだって。
まあ平凡な日々でもあんなに美人でユニークな奥さんがいれば退屈しないだろうし(っていうかあの美人の奥さんの心理がよくわからなかった)、彼には詩もあるしで、そういう心の拠り所があれば人生は輝くんだよ、という映画なんだと思いました。

最後、「ミステリー・トレイン」に出ていた永瀬正敏が重要なストレンジャーの役で出てきていい味出してました。

という訳で、小品ながら味のある映画でした。

映画の後は、東北沢の「石川湯」に入って、経堂の「魚粋」で美味しいお刺身をたべて、なんだか僕も日常のささやかな幸せを感じた一日でした。

東京女子流主演映画「5つ数えれば君の夢」

2014-04-09 22:50:50 | 映画
という訳で、今日は東京女子流のメンバー5人が出演する映画「5つ数えれば君の夢」。



女子流は、一昨年の武道館ライブまではかなり熱心に通っていましたが、武道館以来、すっかりご無沙汰。
何故なのかよく分からないのですが、まあタイミングでしょうか。
でも、ときどき対バンで見かける彼女たちは、すっかり大人びていて、何だかりっぱなアーティストだなー、となんとなく遠くから見かける感じで、若干ほろ苦く思っていました。

今回も、この映画を観るつもりは無かったのですが、熱心な女子流ファンの人に勧められ、とりあえず観てみました。

で、素晴らしかった・・・!!

女子流うんぬんではなく、ただ映画としての完成度が非常に高い。
ベタな言い方ですが傑作だと思います。

もともと女子校が舞台の映画はけっこう好きで、中原俊監督の「桜の園」などは何度も繰り返し観ています。
男性にはうかがい知れない、独特の空気と緊張感、そしてやっぱりスクリーン上の彼女たちがまとう清らかさに惹かれるんだと思います。

でもこの映画、女性監督ということもあって、かなりシビアで苦いストーリー。
ある女子校を舞台に、その文化祭で行われるミスコンに出場する二人の少女をメインに物語は展開します。
ひとりは、校内の「1軍グループ」のメンバーでイケメンの彼氏もいたりする庄司芽生。
もう一人は、クラスの同級生と同調することなく、群から離れて生きるダンス好きの新井ひとみ。

他に、庄司芽生の取り巻きでいじわる役の小西彩乃、いつもひとりの園芸部員・山邊未夢、学祭委員長のしっかり者・中江友梨。
みんな驚くほど自然に演じていて「アイドル映画」というこそばゆさは全く感じません。

で、みんなそれぞれ葛藤を抱えて生きていて、みんな不機嫌そう。
そう、この映画、アイドルが主演なのに「輝く笑顔」とか「淡い初恋」とかぜんぜんありません。
ただひたすら上手く行かずに不機嫌な彼女たちが衝突したり悩んだりしています。

男性目線の「少女の聖性」を排し、怖いくらいの薄っぺらで俗な姿が描かれます。
本当はミスコンに出たくてたまらないくせに表面上は渋る庄司芽生。
彼女の彼氏は冷たい嫌なやつなのに、イケメンでみんなの憧れだから付き合っています。
その彼から強引に誘われた翌日、彼女の首筋に貼られた絆創膏が怖いです。

そんな芽生の取り巻きとして、彼女を持ち上げることで自分のプライドを満たそうとする小西彩乃。
いろいろ真っ黒な彼女は今回の当たり役。
「私があなたを幸せにしてみせる」と芽生に迫るシーンは怖いほど。

山邊未夢も中江友梨もそれぞれ屈託があって心が晴れません。
自分へのものの言い方ひとつに傷ついたり、しっかり者の仮面の下で焦燥に駆られています。

そんな中、圧倒的な輝きと聖性を保ち続けるのが新井ひとみ。
校舎の屋上をただまっすぐに歩くだけのシーン。
背すじをぴんと伸ばし前を見つめ慌てることなく歩いているだけなのですが、選ばれた「特別な子」なんだ、という刻印が見えるようで、その孤独と悲しみも伝わってきます。

とにかく、今の新井ひとみを記録できただけでもこの映画は価値があります。
ステージで踊って歌う女子流の姿とは、全く違う美しさと存在感を感じました。
少しハスキーで舌足らずなしゃべり方と声も魅力的。
大きな画面に負けることなく、そのオーラで劇場を包んでくれました。

ほんとうに素晴らしい映画。
女子流ファンだけでなく、アイドル好き、映画好きにはぜひ観てもらいたい映画です。
新進監督の山戸結希の名前もしっかり覚えました。
カメラワークも良かったし、女子校の制服もとても可愛らしかったし、落ち着いた音楽も良かった。
アイドル映画にとどまらず、関わったスタッフが誇りをもってきっちり仕事をしたのが伝わってくる完成度の高さでした。

という訳で、いま美しく輝いているアイドルは、すぐにでも映画に出るべき!
さくら学院もDorothy Little Happyも東京パフォーマンスドールも、彼女たちのいろんな魅力をスクリーンで観てみたいって思わせた素敵な映画でした。

小沢昭一追悼上映:『経営学入門 ネオン太平記』

2013-02-22 00:11:27 | 映画
今日は新文芸座で映画。

『経営学入門 ネオン太平記』(1968/日活)
監督:磯見忠彦 脚本:今村昌平 撮影:姫田真佐久
出演:小沢昭一、古川潤子、古川由子、園佳也子、西村晃、松尾嘉代、吉村実子、春川ますみ、加藤武、北村和夫、桜井隆之介、三國連太郎、渥美清、桂米朝、小松左京、野坂昭如

先日亡くなった小沢昭一の追悼上映会ということで、今週は小沢映画ばかりが掛かっています。
実は昨日も『喜劇 爬虫類』(1968/松竹)と『スクラップ集団』(1968/松竹)を観てきました。
今日は『3匹の狸』(1966/東宝)との二本立て。

で、『経営学入門 ネオン太平記』は猛烈に楽しい映画。
主演の小沢昭一が、大阪のアルサロ支配人役を熱演。
こういうねちっこくて、ちょこまか動く役柄は、まさにうってつけ。

ストーリーは、東京本郷の古本屋の息子が、真面目な生活に馴染めず、大阪に流れてきてアルサロ(昔のキャバクラ)の支配人として、ホステスを叱咤激励したり、ライバル店と競争したり、地元のPTAの反対運動に対抗したり、と大忙しの毎日。
その一方で、元ホステスの奥さんと子供がいながら、美人の双子姉妹(古川潤子、古川由子)にもてたり、実に美味しい役を活き活きと演じています。

脇も、渥美清が、オカマバーのホステス役で和服の女装姿(!)を披露したり、若き桂米朝師匠と小松左京が渋ちんのサラリーマン役でアルサロに遊びに来てたり、野坂昭如がTVショーの司会役でちょっと出てたりと、やたらゴージャス。
みんな映画の現場に遊びに来てる感じ。

最後は、大阪御堂筋で水着姿のホステス100人位を支配人小沢昭一が先導してマラソン大会。
多分ゲリラ撮影なんだと思うけど、自由でアナーキーな映画屋の雰囲気が伝わってきます。

数年前、小沢昭一にはまって、夢中になって彼の本を読んだり、舞台を見たりした時期がありました。
でも、舞台を観に行っても、多分僕たちが最年少という位、若い人が客席にいません。
その時は、自分でイベントをよく開催していたので、若い人に小沢昭一さんの素晴らしさを知って欲しいと思い、企画を考えたり、ロフトの人に相談したりしたのですが、結局、勇気がなくて実現は出来ませんでした。
あの時、声を掛けておけばよかったなー、と後悔しています。

話す時の「間」がとにかく素晴らしくて、惚れ惚れする程の話術の持ち主でした。
ご冥福をお祈り申し上げます。

さくら学院卒業生、三吉彩花さんが素晴らしい存在感!/映画『グッモーエビアン!』

2013-01-17 00:36:09 | 映画
今日は久し振りに映画を観に行きました。

麻生久美子と大泉洋、そして、さくら学院卒業生の三吉彩花さんが出演する、『グッモーエビアン!』



物語は、元パンクバンドのギタリストで今は会社勤めの麻生久美子とその娘、しっかり者の中学3年生、三吉彩花の二人が暮らす小さなアパートに、海外放浪していた風来坊パンクス、大泉洋が帰ってくるところから始まります。

音信不通でやっと帰ってきても、特に何をするでもなく、楽しくふらふらしている大泉にイラつく三吉さん、反抗期です。
でも母親の麻生久美子は、呑気な大泉をとがめるでもなく、むしろ楽しそう。
ただでさえ悩み多き思春期。
進路、苦しい家計、呑気な大人と三吉さんの悩みは尽きません。

ある日、進路希望の調査票に「就職」と書いた三吉さんを心配して、学校の先生が訪ねてきます。
いろいろ説明する先生に、「いい学校出て、いい会社入って、ってそんなのつまらん!!」と言い放つ母。
パンクです。

という訳で、パンクな親と暮らす真面目な少女の物語。
映画も、三吉さんの目線で語られるので、ほとんど主役と言ってもいいほどの大活躍。
正直、芸達者な麻生久美子と大泉洋と一緒にやって大丈夫かな?、と三吉彩花さんのことが心配でした。
でも、そんな心配はすぐに杞憂だと気がつき、あとは物語にすんなり入っていけます。
麻生久美子と大泉洋と共演してもぜんぜん引けを取らないし、むしろこの映画は三吉さんの美しさが無いと成立しない作品だと思いました。
シャーペンを物憂げにくるくる回すその姿がこの映画の大きな魅力。
もう立派な女優さんです。
作品自体も、シンプルだけど、とても自然ですがすがしい映画でした。

さくら学院で経験したことが少しでもこの映画で役に立っていれば良いと思うし、今の生徒達の目標となるような存在に成長したことを、さ学のファンとしては嬉しく思いました。

それにしても、ちょうどSKE48メンバーの大量卒業が発表されたばかり。
メンバーのひとりは、「SKEとして活動しながら別の可能性も目指したくて、いろいろなオーディションを受けたかったが、メンバーでいるうちは無理、と言われ卒業を決めた」と話しています。
単なる「握手券付きCDの販売員」としか扱われず、その将来にも気を配ってもらえないメンバーは本当にかわいそう。

今のアイドル界で最も良い運営のひとつが「さくら学院」だと思っているのですが、ちゃんと「芸能人」だけでなく「ひとりの人間」としての将来を考慮しながら、キャリアを積めるようにしている気がします。

良い作品に恵まれ、そこできちんと結果を出せて、女優としてキャリアを伸ばそうとしている三吉彩花さんを見て本当に嬉しかった。
あとは、動向が伝えられていない前生徒会長、武藤彩未さんが次にどんな姿を見せてくれるのか、ということが楽しみ!

剛速球の映画!/「希望の国」

2012-12-02 10:44:43 | 映画
昨日は久しぶりに映画。

園子温監督作品「希望の国」。
原発問題を描いた寓話的作品。
とは言え、園子温なので、あくまで直球勝負。
映画が終わった後、ほぼ満員の館内が静まり返るほどの剛速球でした。

映画は、福島の原発事故が起きた後の、ある原発立地県が舞台。
地震で原発がメルトダウン、周辺に暮らす酪農家一家の平和な生活が一変、という話。
20キロ圏内とそこから一歩でも出ると圏外になって退避しなくてもいいとか、マスコミの偏向報道とか去年の福島の事故と同じような話。
大きな飛躍も無く、淡々と福島事故と同じような経過を辿って物語は進みます。
まるで再現ドラマのように。

では、園子温はなぜ映画を作ったのかと考えると、2012年のこの時期にもう一度、あの事故を思い出させるためだと思うのです。
映画の中でも、酪農家の息子の奥さんが妊娠して、放射能に敏感になるんだけど、避難先の町の人は、「過剰反応」だと白い目で見る、というエピソードが出てきます。
「たった1ヶ月前は、みんな放射能を気にしていたのに、なんで俺達が白い目で見られるんだ! 放射能は無くなったのかよ!」、という息子の台詞は、そのまま観客に刺さります。

僕自身、これ程、アイドルにはまる理由のひとつが、「原発事故の記憶からの逃避」なのかなと思っていたりします。
何となく「忘れたい」と思っているんでしょう。
でも忘れちゃいけないんですよね。

そうしないと、この映画の最後のように、放射能から避難したはずなのに、そこでも原発事故が起きるかもしれません。
逃げずに、忘れずに「一歩一歩」進んでいく。
そんなメッセージを受け取りました。