東京ナイト

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特別展「日本の素朴絵」@三井記念美術館

2019-08-26 00:42:58 | 展覧会
今日行った展覧会、猛烈に面白かったので久しぶりの更新です。

日本橋の三井記念美術館で開催の特別展「日本の素朴絵」。


副題に「ーゆるい、かわいい、たのしい美術ー」とありますが、まさにそんな愉快な作品が並んだ美術展でした。
若冲や白隠、仙厓、それに木食などの有名作家の作品も展示され、その達者な腕が光っていましたが、やはり注目は庶民やそれに近い階層の無名作家たちの「素朴絵」。
特に平安、鎌倉期の作品は素朴な信仰心が描かせた心温まるものばかり。
いやー、素晴らしかった。

まず最初の部屋に並んでいた立体から度肝を抜かれます。
イノシシを抱えた猟師の埴輪からはじまり、リーゼントにしか見えない頭の神像と見たことのないくらいゆるゆるの獅子と狛犬が本当に圧巻。


特に和歌山の川根丹生神社からきた室町の狛犬は人面犬みたいな頓馬な表情とあんまり力の入っていない感じのポーズが絶妙で、その前から動けませんでした。
小品とはいえ石像なので作るにはそれなりに時間がかかったと思うのですが全然それを感じさせないところが見事です。今の時代だとこのゆるさは狙っても出せない味ですね~。

他に、「つきしま絵巻」や「十王図屏風」は日本民藝館所蔵とのことですが、あの展示の雰囲気ともちょっと違うのか見たことのない作品。
あと、南天棒という禅僧の「雲水托鉢図」も素敵。


という訳で、本当にここまで来たか、という感じのエッジの立った意欲的な展覧会。
作品につけられた解説も「狛犬としての威厳は微塵もないが素朴でかわいい」とかずいぶんな個人的感想でこの展覧会の雰囲気にぴったり。
監修の矢島新さんが書いているのでしょうか。コメントを読んで何度か笑ってしまいました。
日本美術に新しい評価軸を立てた画期的な企画だったと思いました。(言い過ぎ?)


三井記念美術館のあとは、東京駅まで歩いて、KITTE内にある学術文化総合ミュージアム「インターメディアテク」。
特別展示『メガロマニア植物学』が目的。

巨大な葉っぱを乾燥させ額装しただけの展示だけど、これがその巨大さ故、異様な迫力でこちらも大満足。
そこらの現代アートを上回る驚きでした。


「リアル 最大の奇抜」@府中市美術館

2018-04-01 19:53:31 | 展覧会
今日は府中市美術館で「リアル 最大の奇抜」。



西洋絵画の画法が入る以前の江戸期の「リアル」を集めた展示。
会場にはいるとまず森狙仙の「群獣図巻」。
輪郭を線で描かず、細かな筆で一本一本の毛をひたすら描くことで獣のモフモフした柔らかさやしなやかさを表現した絵。
何というか超かわいいんだけど、獣の目つきがリアルでそこは怖かったww。



他に、村松以弘の「白糸瀑図」は細部は南画の画法を取り入れてるんだけど、横幅170cmもの大作に仕上げることで迫力と驚きを与えてくれる先品。

熊本藩の中老職にあった米田松洞は、桃源郷のような山の風景をひたすら細かく書き込んでいて、でもちょっとほのぼのした風合いもあってアールブリュット風の味も出ている作品。

最後の部屋は、司馬江漢と円山応挙の作品が一堂に。
南画から西洋絵画までいろんな画法を取り入れることで自分なりのリアルを追及した司馬江漢。今見るとちょっと消化不良なこともあってヘタウマ風に見えちゃう絵もあるんだけど、もともと超うまいのに敢えて新しい画法にチャレンジしたその画家としての業が時代ごとの作品の変遷が展示されていることで垣間見れて良かった。
一方の円山応挙はやっぱり卓越したうまさ。20代のころの作品から段違いでビックリでした。

という訳で、かわいい動物画とか若冲とかの流行りじゃなくて、自分なりのリアルを追及した江戸期の画家、という面白い視点でまとめられた今回の展示はとっても面白かった。

あと、常設展の牛島憲之も良かった!
淡い印象なんだけど、ときどきハッとなるような色使いをしていて印象的。


帰りは自転車で行ったので、桜を見ながら野川沿いをのんびりサイクリング。
もう散り始めていたけど文字通りの桜吹雪を浴びながらのサイクリングは気持ち良かった。

銭湯は千歳烏山の給田湯。ちょっと心配してたけど、中島さんのペンキ絵も新しくなっていて一安心。それにしても日のあるうちの銭湯は本当に最高ですね。




みうらじゅんフェス!@川崎市市民ミュージアム

2018-03-23 19:14:11 | 展覧会
今日は川崎市民ミュージアムで「みうらじゅんフェス!」。



今週末で閉幕とのことで平日にもかかわらずすごい人出。
客層もおしゃれサブカル女子やそんなにおしゃれじゃないサブカルおじさんに加え、中学生以下は無料ということで小学生御一行まで・・・。



で、展示はかなり広い会場を埋め尽くす、みうらじゅん(MJ)のコレクションの数々。
小学生のころに作り始めた有名な怪獣スクラップから自作のフォークソング、初めて「ガロ」に掲載された漫画、いやげものにゆるキャラ・・・、とにかくMJのマイブームの変遷が一堂に会したすごい展示。
まあ、一つ一つ見ていけば、別に渾身の一作という訳でもないのでさらっとみられるんだけど、その物量には圧倒される。
何年か前、横浜美術館で村上隆の膨大なコレクションを展示した展覧会を観たことがあって、その時もその物量に圧倒されたけど、なんか印象が全然違った。
村上隆は、集めざるを得ない切迫した業の深さを感じたけど、MJは小学生からずっと変わらないコレクター癖が感じられてなんだかほほえましい。

MJ本人が語るビデオがいろいろ流れていて解説付きで見ることができる展示方法もうまい。
やっぱりあれだけ楽しそうに語られたら、何でもないものでも輝いて見えてくるよね。
川崎市民ミュージアムは、そもそもこの企画を立てたのもそうだけど見せ方も上手だなーって思いました。
エロは控えめだったけどね。

ちなみに、いやげものの展示を見ていたら、我が家にあるいやげものと同じものが二つあった・・・。
別にそんなにMJに傾倒してるつもりもないんだけど、知らず知らずのうちに影響を受けているのだろうか・・・。

という訳で、なんだかみんな笑顔で楽しくみられる素敵な展示会でした。
あ、自転車で行ったので帰りは用賀の栄湯。唐破風のいい感じの銭湯でした。

「1968年」-無数の問いの噴出の時代-展@国立歴史民俗博物館

2017-11-22 22:33:58 | 展覧会
この前の日曜日、千葉県佐倉の国立歴史民俗博物館で開催中の「1968年」-無数の問いの噴出の時代-展に行ってきました。



ベトナム反戦運動や三里塚闘争、水俣病闘争、それに東大の安田講堂攻防など市民や学生たちが熱かった1968年ころを振り返る画期的な展示会。
もう50年経つんですね・・・。

展示はアジビラや記録文書、新聞など文字資料がほとんど。
でも、時代の勢いや雰囲気が伝わってきて一つ一つの資料をじっくり読んでしまいます。
どの資料からも、文字を信頼して、思いを伝えようとするまっすぐな気持ちが今もにじみ出ています。
これが本当に新鮮でした。

写真が氾濫して、文字もあふれている今と違って、手間と時間のかかるガリ版刷りで1枚1枚、その思いを刷っていたあの時代、まっすぐなだけに読んでいてつらい現実も見え隠れしましたが、それでもそれぞれの文書に込められた思いの強さは強烈でした。

時代が違うんだよ、といえばそれまでですが、やはり集められた膨大な資料を前にすると、空っぽな己の現実を思って立ちすくんでしまいます。

あの時代、これらの資料を作った人たちは70歳くらいでしょうか。
今、この資料を見たらどう思うのか想像するほかありませんが、それぞれ忸怩たる思いがあるのではないでしょうか。
それか、そんな感傷は乗り越えるほどタフになっているのか・・・。
という訳で、とっても見ごたえのある展覧会でした。

で、せっかく佐倉まで来たので国立歴史民俗博物館の常設展も見学。
この博物館には10年位前に1度来た以来。
しょうじき、覗きからくり位しか記憶になかったのですが、展示はかなりリニューアルされているようできれい。
何より館内がとても広いので回り切れないほど。というか、時間切れで本当に回り切れず最後の方は駆け足になるくらいすごい博物館でした。
立地が悪いからお客さんもそんなに多くはないのでゆっくり見られるのもいい感じです。
レストランはいまいちだったけど、国立歴史民俗博物館すっかり気に入りました。
また来よう。

最後は京成佐倉駅に帰る途中に見つけた「小料理 花びし」。
食べログにはなぜか何のコメントもないお店だけど、実は地元の人気店らしくほぼ満席。
どの料理もおいしくて大満足。
今度博物館に来た時もまた来よう、と思えるお店でした。

「大神社展」@東京国立博物館

2013-05-20 00:02:07 | 展覧会
新宿でのアイドル現場の後は、東京国立博物館で開催中の「大神社展」に。
渋っ。
でも、神道系の神像は、仏像にはないユニークなものが多いので、前からまとまった展示を見てみたかった。

で、大集合した神像は、国宝、重文が勢ぞろい。
でも名品ばかりで、「面白いもの」が少なかったのが残念。
いわゆる正統派ばかりじゃないのが神像の良さなのに。
この前、秋田の博物館でみた「えっ」って驚くような神像は無かったな。

とは言え、面白くなかったわけじゃなくて、細かく見ていくと「ゆるい」感じの展示品を楽しみました。
なんだか甲冑に描かれた竜の目が可愛かったり、神像もとぼけた顔をしているものがあったり、いろいろ発見があってよかった。

12世紀の御神輿もあって、これが今の御神輿とほとんど同じなのも面白かった。
屋根には鳳凰が付いていて、飾りがたくさん付いていて、太い房がゆらゆら揺れる感じになっていてっていう形式。
まあ、「わっしょい」とはやらなかっただろうけどね。
昔の人はどんな思いで、この御神輿を担いだんだろうか?

今回は、伊勢神宮の式年遷宮に合わせて開催された大規模な展覧会。
なかなかこれほどの規模の展示が見られることは無いと思うので行ってよかった。
あと、一緒に行った人が、学芸員並みに詳しい人だったので、分からないことをすぐに聞けたし、かなり勉強になりました。

展覧会のあとは、おすし屋さんに寄って〆。
2日間とも充実した良い週末でした。


会田誠展: 天才でごめんなさい@森美術館

2013-03-24 09:02:45 | 展覧会
六本木でのアイドル現場の後、そのまま森美術館で開催中の展覧会に。
「会田誠展: 天才でごめんなさい」。



「美術手帖」の特集を読んで気になっていたので、行ってみました。
会田誠と言えば「美少女」が大きなモチーフ。
アイドル現場のあとに見るのは良いタイミングでした。

とは言え、美少女は作家の数あるテーマのひとつ。
平面だけじゃなくて、立体や映像など多彩な表現がごちゃごちゃ展示された賑やかな展覧会でした。
何かみんなユーモラスなんだよね。そこが魅力。
結局、2時間以上滞在して、ひとつひとつの作品をじっくり眺めていました。

無料のイヤホンガイドで作家自身が自作について解説してくれたり、至れり尽くせりのサービス。
まあ、「犬」という作品の内容について女性団体が抗議したりとかあったみたいなので、美術館側が作家に責任を取らせているのかな、と穿った見方もできちゃうけど。

一番お気に入りの作品は、この「美しい旗」。
焼け野原に凛々しく起立する女子高生。美しい。



「今 和次郎 採集講義展」@パナソニック潮留ミュージアム

2012-02-19 23:03:19 | 展覧会
ウメサオタダオ展の後は、新橋に移動して「今 和次郎 採集講義展」。



今和次郎は実は今までちゃんと読んだことがなかった。
でも、今回、あまりにも細かい彼の調査を見て、本当にびっくり。
梅棹忠夫とはスケールが違うけれど、実に面白かった。

銀座を歩く人の履物調査とか赤ちゃんのおしめの柄の調査とか、その時の時代の空気が感じられるような、今となっては貴重な調査も非常に興味深かったけど、それに加え、そうした調査を記録し編集する時のデザインセンスが素晴らしい。
今だったら単にエクセルでグラフにしちゃうような数字も、抜群のデザインセンスで編集して、それを眺めて見ているだけで楽しめるように工夫されている。

彼の代表作「考現学採集」。
装丁は一緒にやっていた吉田謙吉だけど、何てモダンなデザインなんだろう。
かっこよすぎる。



さらに、農家の調査や東北の人々の暮らしを向上させるような地道な活動もしていたことも今回初めて知って何だかだいぶ興味がわいてきた。
小さいけれどとても良い展示会だった。


ウメサオタダオ展@日本科学未来館

2012-02-19 22:28:41 | 展覧会
今日はお台場の科学未来館で「ウメサオタダオ展」。
民博で去年やっていた企画の巡回展。

梅棹忠夫は、ひとことで言い表すことのできない知の巨人。
どう表現するのかと思っていたが、草稿や著作、年表など地味な資料を中心としつつも、見せ方に工夫があって楽しめた。



梅棹忠夫は中学生の時に山を始め、その時から自然に目覚め、動物学者として歩み始める。
旧制中学の早熟した若者はやがて興味の対象を人や社会に向け、人類学者、民族学者として世界をフィールドに活躍し、やがて岡本太郎などと一緒に日本民族学博物館の創設に関わり初代館長を務める。
一方で、『知的生産の技術』というベストセラーもモノにするなど本当に多才な人。

でもやっぱり若い頃の登山や探検の記録が一番面白かったかな。
彼の本は何冊か読んでいるけど、高校生の時にはすでにイギリスの山岳書を読んで山の技術を磨いたり、20歳くらいで海外に探検に行ったりといった探検、山岳関連の本が面白い。
何というか本当にエリート。
若い頃の写真も展示してあったけど、素晴らしく知的でかっこよかった。

来週、関西に行くので久し振りに大好きな民族博物館に行ってみようかな。

五百羅漢展@江戸東京博物館

2011-06-19 22:23:16 | 展覧会
今日は江戸博で「五百羅漢 ―増上寺秘蔵の仏画  幕末の絵師 狩野一信」展に。
数年前から話題になっていて、ずっと観たかった展覧会。

いやー、噂にたがわぬすごい作品でした。
狩野一信は、1816年生まれの絵師。
名前からすると典雅な狩野派の人かと思いきや、実はあんまり縁の無い在野の絵師で、幕末の時期、芝増上寺に住み、十年かけて五百羅漢図を100幅描いた。

凄まじく迫力のあるその作品は、蕭白、若冲にも通じる印象だけど、もっとアクが強く、一度観たら忘れられない。

で、せっかく人生を賭けて描いた五百羅漢図だけれど、96幅まで描いたところで一信は亡くなってしまい、その作品もずっと忘れられていたとのこと。
しばらく前にぐうぜん発見され、今回、大規模な展覧会で一挙に公開されることになった。

羅漢とは、釈迦の弟子で、悟りに達した尊い聖者のこと。
まずびっくりするのが、羅漢達の「濃さ」。
眉毛もじゃもじゃ、筋肉隆々、実に人間臭い羅漢達が、大きな絵の中に沢山。

それぞれの絵は「余白の美」なんて言葉は無縁の「濃さ」。
羅漢だけでなく、動物や植物が生き生きと隙間無くびっしりと描き込まれている。

100幅の絵は、いろいろなテーマに分かれて描かれているんだけど、羅漢達が瞑想していたり、仏像を彫っていたり、議論していたりといった平和な日常生活から、地獄にいたり、鬼達を退治していたりと、ドラマチックなシーンもあって飽きさせない。

びっくりしたのが、羅漢達の神通力を描いた作品群。
この絵の中では、頭から水を噴出させている羅漢が・・・。



こちらの羅漢は、実は不動明王の仮の姿で、「ジャーン!」とばかりに顔の皮をはがすと不動明王のお顔が・・・。



いったいどういう発想なのか。
素晴らしい。
他にも教典からビームが出て鬼を退治していたり、へんてこりんな動物達が登場したり、ホント楽しすぎる。

昨日は日本民藝館で渋い江戸の美を観て、今日はこの濃い五百羅漢。
江戸の振り幅の大きさを実感した週末でした。

開館75周年記念 日本民藝館名品展

2011-06-19 01:14:31 | 展覧会
今日は大好きな日本民藝館へ。
「開館75周年記念 日本民藝館名品展」という企画でした。

河井寛次郎、芹沢介などのお馴染みの作家の作品の他、初代館長、柳宗悦の書も展示されていました。
柳宗悦の書は初めて見ましたが、デザイン的に工夫してあっておもしろい。さすがですね。
写真の書もよかったですが、「今日 空晴れ又」という書が印象に残りました。



常設の展示も相変わらず素敵すぎます。
印象に残ったのは、室町の頃の牛王宝印と沖縄の焼き物。
どっちも小品ですが、かわいらしくて良い感じです。
こういう小品が素晴らしいのが民藝館の良いところ。

実は、震災のあと、お皿とか骨董とかに凝っていた自分がバカバカしくなって、「もう、なんでもいいや」とか思っていましたが、俄然、物欲が湧いてきました。
やっぱり出来る範囲で「用の美」に囲まれていたいものです。

今日は旧柳宗悦邸も開館していていました。
こんな生活もあるんですね。うーむ・・・。