東京ナイト

旅行、食事、映画にお芝居、日々のささやかな幸せを記録します

「シャーマニズムの未来~見えないモノの声を聴くワザ~」

2011-04-24 07:43:19 | イベント
昨日は、中野ゼロホールで「シャーマニズムの未来~見えないモノの声を聴くワザ~」なるイベントに行って来ました。
東京自由大学の鎌田東二の企画で、ダンスありパネルディスカッションありの5時間近い長丁場でした。

鎌田東二の本は前に何冊か読んでいて、書物だけでは分からない空気や感覚を大切にする人なんだな、と思っていて、以来、気になっていた学者さんのひとり。
「神楽感覚」
「聖地感覚」

今回のイベントはなんだか良く分からないまま、鎌田東二の名前だけでチケットを買いました。
会場に少し遅刻していったのですが、ほぼ満席。
しょうじきガラガラだと思っていたので意外。

で、ステージでは麿赤兒率いる大駱駝艦の白塗りダンスの真っ最中。
うーむ・・・。
死と再生がテーマだと思うのですが、おどろおどろしい音楽、貧相なセット、肝心の麿赤兒にもオーラが感じられず、こけおどしにしか感じられませんでした。

まばらな拍手のあと、ディスカッションの始まりです。
登壇したのは、小松和彦(国際日本文化研究センター教授・文化人類学・民俗学)、鶴岡真弓(多摩美術大学教授・ケルト図像研究)、松岡心平(東京大学教授・能研究)、岡野玲子(漫画家・『陰陽師』、『ファンシイダンス』など)。
司会進行が宗教学者の鎌田東二。

小松和彦の妖怪物の本を何冊か読んだことがあるくらいで他の人は初めてお名前を知る方たちでした。
で、それぞれが30分位の持ち時間で、「シャーマニズムの未来」について語るのですが、ここで面白い現象が。
男性の先生達は、用意した原稿を元にそれぞれの研究テーマに沿って話していたのですが、女性二人はまず「今回の震災について、今語らなければいけないことを話します」、ということで、鶴岡真弓さんは「ヨブ記」について、岡野玲子さんは石巻の「雄勝法印神楽」についてそれぞれ話しました。
ふたりとも、少し巫女的な気質の持ち主なので、何かが乗り移ったように情感をこめて語ります。
まさに語り部。
パワフルな言葉の力に会場は圧倒されていました。
この話を聞けただけでもこの時間の価値がありました。
特に岡野玲子さんが、「別に特別な修行などしなくても、自分の限界を定めずに自由になれば分かるものがあります」と言って、ベリーダンスを踊ったのには驚きました。

その後は、時間の関係もあって、それぞれ少しずつ話したのですが、時間の割りに発言者が多く、話もかみ合わず散漫なままとなってしまいました。
まあ、それだけ女性ふたりのシャーマニスティックな印象が強かったんだと思います。

という訳で、アトムと対話できる(福島の原発は男の子だそうです)岡野玲子さん、眼光鋭く、未来と過去が見えているような鶴岡真弓さんのふたりを知ったことが今回の収穫でした。

三谷幸喜「国民の映画」

2011-04-22 06:58:02 | ライブ、芝居、演芸など
昨日は横浜でお芝居。

「国民の映画」。
三谷幸喜の作、演出。
地震前にチケットを取っていて、その時は「三谷幸喜」という名前だけで決めて、どんな物語なのか、役者は誰なのか全く分からないまま劇場に。

で、開幕。
舞台は戦争中のドイツ。
ナチスの宣伝大臣パウル・ゲッペルスの邸宅にドイツ映画界を代表する監督、俳優達が集められて、パーティーが始まる。
パーティーの目的は、ゲッペルスが長年、温めてきた企画を発表するため。
それは、彼が大好きな「風と共に去りぬ」を超えるような一大娯楽映画をドイツ映画界の総力を挙げて作り上げる、というもの。
完成の暁には、全ドイツ国民に愛される「国民の映画」を作る企画だった・・・。

ロマンチストで不器用で女好きで、でも仕事には真面目なゲッペルス。
どの時代にも、どの世界にもいるような平凡な人物が、権力の中枢にいて戦争犯罪を犯していく。

2時間45分の長い芝居だったけれど、全くだれることなく観ることが出来た。
特にクライマックスの緊張感はすごくて会場が水を打ったように静まり返った。
素晴らしいお芝居だった。

役者も良かった。
主役は名脇役のイメージがある小日向文世。
いるだけで小物オーラが出ていて、でもそんな人物が権力を握る怖さも出ていた。
あと、親衛隊長ヒムラー役の段田安則がそのずれっぷりで一番笑いを取っていておかしかったし、空軍大臣ゲーリング役の白井晃も存在感がすごかった。
風間杜夫も権力に擦り寄る映画界の重鎮、という役どころをコミカルに演じていたり、キャスティングは大成功。

でも会場となったKAAT神奈川芸術劇場のお客の入りはいまひとつ。
しょうじき満員だと思って行ったら、7割ほどしか席が埋まっていなかった。
うーむ、こんないいお芝居なのにね。
横浜が遠いからなのかチケット代が高いからなのか。もったいない。

三谷幸喜は、「生まれながらの悪人が犯罪を犯すんじゃなくて、僕らと同じような小市民が、特殊な状況に置かれたために狂気に走ることが一番怖い」とパンフレットの中で語っていたけれど、帰りの電車の中で、これってちょうど今の東京電力や原子力村の住民達と一緒だということに気がついた。
やっぱり真面目な小市民たちが一番仕事が出来て、一番最悪の結果を招いてしまうんだと思う。
自分たちは悪い事をしているという意識がないから、それを止めることも出来ない・・・。
そんな事も考えさせられる怖い芝居だった。
公演は5月1日まで。
まだチケットは残っているはず!


柳家三三独演会@中野

2011-04-20 07:44:15 | ライブ、芝居、演芸など
昨日は中野で柳家三三の独演会。

三三は若手では一番の注目株。
小三治の弟子らしく師匠譲りの上手い噺できっちり落語世界に連れて行ってくれる。

マクラは震災の時の話。
3・11の時、鈴本があの状況の中、営業していたとか、小三治が地方に行っていて7時間かけてタクシーで東京に帰ったとか。
小三治がいつも以上にむっつりしながらタクシーに乗っている姿を想像するとなんだか笑える。

で、ネタは、、、
前座 柳亭市楽「七段目」
三三「看板の一」
   「おしっくら」
   「文違い」

中でも「文違い」が出色。
ご存知の通り、郭での男と女の騙しあいの話だけれど、色男の酷薄そうな様子とか、その色男にほれて常連客を手管で騙す女郎の計算高さとかが上手く出ていた。
なんだか場の空気が寒々としてくるほど。(実際ホールも寒かったけど)
で、最後に田舎客の勘違いでサゲとなるけど、今でも盛り場で起きていそうな嫌な話だよね。落語としては面白いけど。

という訳で、満員の中野ゼロホールでの独演会でした。

老饕檯(ロウホウトイ)@白金

2011-04-19 00:09:00 | グルメ
今夜は白金で老饕檯(ロウホウトイ)という中華料理屋。

恵比寿駅からけっこう歩いた先にある普通の店構えのお店。
一帯は空襲に遭わなかったのか、古い家屋がまだ残っていて、それが改装されてレストランになっていたりして歩いて楽しい。

で、お店。
数年前に話題になっていたお店で、その時から気になっていたんだけれど、初めての訪問となった。

どのお皿も一定の水準を保っていてなかなか良いお店。
お店もこんな時期なのにほぼ満席だったのはさすが。

で、何より特筆すべきは、前菜で頼んだ「焼腩肉」(皮つき豚バラ肉のカリカリ焼き)。
中国の香辛料を皮にまぶして、それをカリカリになるまで焼いて、で、お肉の部分は柔らかくてジューシー。旨!! 

他にも名物らしい鼓油皇炒麺(黄ニラとモヤシの醤油焼きそば)は細めの麺が良かったし、点心も中身がぷりぷりしていて美味。
写真の魚香茄子もまずまず。



あんまりお酒も飲まなかったので、会計もリーズナブル。
食後は渋谷まで夜の街をぶらぶら散歩。
渋いバーが点在していたり、おいしそうなワイン居酒屋があったりこの辺りは美味しそうなお店がたくさん。
次はどのお店に行こうかきょろきょろしながら楽しく散歩が出来ました。

文化湯@喜多方市

2011-04-18 07:31:56 | 銭湯
この週末は、また福島県喜多方市の酒蔵に行ってきました。
震災前から続いている仲間達とのお酒造りがいよいよ完成を迎えたので、今回は瓶詰めをして、オリジナルで作ったラベルを一本一本、貼っていく作業です。
全て終わった後は恒例の大宴会。
今年も美味しいお酒が出来上がった喜びを蔵の人たちと分かち合いました。

でも、ショックな事がひとつ。
喜多方にある銭湯「文化湯」さんが廃業されていました・・・。
ここは僕が最も愛する銭湯のひとつ。
これまで全国の銭湯を数百軒入ってきましたがベスト3に入る名湯です。

さりげない佇まい、古びてはいるけれど清潔な店内、会津若松のペンキ屋さんに描いてもらったという味のあるペンキ絵、おがくずで沸かしたやわらかいお湯・・・、良い点はいくつもあるのですが、何より特筆すべきは女将さんの人柄。

80歳になる女将さんはたった一人でこの銭湯を切り盛りされているのですが、その女将さんとの世間話を楽しみに常連のお客さんが何人も通ってきます。
ちゃんと長居が出来るようにテーブルが用意されていて、その上には飴やお菓子がたくさん置いてあります。
常連さんはここに座りながら、女将さんとの世間話をずーーーっと楽しんでいます。
男湯で着替えていると、そんな女将さんと常連さんの声が女湯側から聞こえてきます。
しょうじき東北の言葉は良く分からず、詳しい内容は理解できないのですが、やわらかい訛りと楽しそうな笑い声はまるで音楽のようで、本当に至福の時間でした。

僕にもいつも優しくしてくれ、これから宴会だと言う僕に、「この牛乳、飲んでいきなさい」とストーブで温めた瓶牛乳をくれたものでした。
僕も完成した日本酒を届けたりするととても喜んでくれたりして、何と言うかほのぼのとした交流が続いていました。

で、設備の老朽化をだましだまし修理しながら続けていた営業だったのですが、今回の地震でタンクが壊れてしまい、やむなく廃業を決めたそうです。
「あと1年は続けたかったなー」との事。
喜多方はほとんど揺れず、地震の被害は全く無かった、と聞いていたので、無事であって欲しいと願っていたのに本当に残念です。

でも、今までありがとう!

写真は女湯に描かれている富士山。


映画『ヒバクシャ~世界の終わりに~』

2011-04-15 00:08:04 | 映画
今日はアップリンクで映画『ヒバクシャ~世界の終わりに~』の上映と監督の鎌仲ひとみさんのトーク。

原発3部作の最初の一作目。
他の2本はずいぶん前に観ていたけれど、この映画は未見だった。
狭い映画館は満員。
僕は予約をしていたので入れたけれど、今日はかなり入れなかったお客さんがいたとの事。
地震の前の上映では、「お客がひとり・・・。」という時も有ったようで、状況の激変に監督もトークで少しシニカルな言い方をしていた。

という訳で映画。
すごくすごく目を開かされる作品だった。
1998年から6年間をかけて作られたこの作品の取材は、イラクの小児病棟から始まる。
アメリカの経済封鎖で医薬品がない中、苦しんでいるイラクの子ども、というテーマで取材していた監督は、取材を進めるうち、小児ガンの発症率が3倍にも増えている事実を知る。
どうやら原因は、アメリカが打ち込んだ劣化ウラン弾。
そこから発生する放射能がイラクの土地を汚染し、真っ先に子ども達に影響が出ていたのだ。
彫りの深いまっすぐな目をしたイラクの子ども達。
満足な治療も受けられぬまま次々と死んでいく。

次に監督は、広島で被爆した医師、肥田舜太郎さんと一緒にアメリカに飛ぶ。
肥田医師は85歳。ずっと被爆患者を診続けてきた。
アメリカで、かつて世界最大のプルトニウム製造工場だったハンフォードを訪れる。
ここは信じられないことに、昔、周辺住民に対しヨウ素131を散布してその影響を調べた事実があった。
気球を使って作為的にこうした放射線物質を散布したんだけれど、その事実は伏せられていたので、あまりにも多いガンの発症率が問題になるまで誰にも知られることは無かった。
取材を進めると、あまりにも悲惨な状況が信じられないほど。
大規模農園がどこまでも続く土地だが、そこに建つ家々でガン患者のいない家はないほど。
特に女性の発症率が高く、乳がんや子宮がん、それに甲状腺ガンなどの患者や死亡者が異常に多い。
もちろん子どもが真っ先に発病してしまっている。
放射能はどんな症状が出るか予測がつかない厄介な性質らしいけど、ただひとつ「若者優先」というはっきりした傾向があり、若い人ほど発症の可能性が高くなるとの事。
女性は生殖器系にたまりやすいので発症の確率が高いらしい。

で、アメリカ政府は、放射能実験のための散布の事実は認めたものの、ガン発症との因果関係は認めていないので大規模な訴訟になっているが、16年たって6000人いた患者が1600人にまで減ってしまっている・・・。
裁判も最終的に原告の訴えは棄却・・・。

そして取材は最後に日本に。
ここでも肥大医師の粘り強い調査で、チェルノブイリ事故と日本の乳がん患者や奇形児の発生率のはっきりとした相関関係が明らかになる。

という訳で、6年間もかかって作っただけあって、あまりにも膨大な新情報に戸惑うが、福島の状況と重ね合わせると本当に戦慄してしまうような事ばかり。
もはや対岸の火事ではないのだと匕首を突きつけられたような気になった。
特にアメリカの状況は、「ただちに健康に被害はない」という政府の発表は全く正しいのかも知れないけれど、5年、10年経ったときにはものすごく悲惨な状況になることを明確に示している。

あと、怖いのが汚染地域ハンフォードの現状。
結局、今でもこの土地で大規模な酪農と耕作が続けられていて、そこで採れたジャガイモとかがファーストフード店とかに出荷されている。
その一部は日本にも・・・。

放射能は別に目に見えるわけじゃないので、「無かったことにしてしまう」「いちいち気にしないようにする」という対応をとっても、すぐに困るわけじゃない。
で、この土地に住む大規模農場の経営者は、「研究者も大丈夫だと言っているし、なにしろうちのジャガイモはすごく美味しいよ」と胸を張るが、彼の奥さんも甲状腺ガンに罹っていたりする・・・。

同じようなことが福島で起きることを連想してしまった。
何しろその土地で生まれて愛着があるだろうし、生活の事ももちろんある。
いったいどうすればいいのか・・・。

上映後のトークも、観客からの質問の手が次々と上がるような活発なもの。
みんな本当に不安なんだと思う。
でも、大事なのは目をそらすことじゃなくて、知ることだと思うので、この映画、本当に必見です。

映画「ヒバクシャ」公式サイト
鎌仲ひとみさんツイッター

4月16日からリバイバル上映の最新作「ミツバチの羽音と地球の回転」ブログ

『筑摩書房 それからの四十年』永江 朗・著(筑摩選書)

2011-04-13 06:38:19 | 
本は『筑摩書房 それからの四十年』。



創業70年になる筑摩書房の社史。
この出版社は昔『筑摩書房の三十年』という社史を出しているので、その40年後の続編となる。
筑摩は創業者の古田晁と臼井吉見が、「いい本を出したい」という一念でいわゆる「良書」を出し続けてきたが、その後の世の中の変化もあり、1978年に会社更生法を申請している。

この本は、その倒産に大きなスポットを当て、社員の動き、代表的な本の誕生秘話を語りながら現在は自社ビルを持つまでに復活した会社の歴史を綴っている。
社史と言えば、淡々と事象のみが綴られているイメージがあるが、この本は部外者の僕が読んでも面白い。
社史を「お金を払っても読みたい」と思わせる実績が筑摩にはあるが、その期待を裏切らない出来栄え。さすが。

著者は外部のライターなので、あまり遠慮せず、倒産前の会社ががたがたになっている状況も、それに至る経営陣の不甲斐なさも書いているし、スポットを浴びがちな編集だけじゃなく、どんぶりだった営業やゴミ箱のようだった倉庫の状況と、そこからの再生も書かれていて、筑摩復活の理由が良く分かった。

あと、筑摩が出してきた多くのベストセラーについてもそれぞれページが割かれているんだけど、狙って取ったベストセラーもあれば、ひょんなきっかけから生まれたものもあり、自分が読んだ本も多いので、そのエピソードひとつひとつが面白い。
中でも、高校生の時に読んですごく印象に残っている「高校生のための文章読本」、ずっと地味な存在で売り上げも低迷していた教科書編集部が無名の工業高校の先生達を起用して作った本なんだけれど、この本が生み出された過程がよく分かった。
やっぱりプロジェクトXじゃないけど、成功の鍵はひらめきとそれを実行する人の勇気だね。

という訳で、本好きには楽しめる一冊。
社史を読み物として販売しちゃうとは出版社ならではだし、それがちゃんと面白いとはさすが筑摩だと思いました。

福島県喜多方市に日本酒造りに行ってきました

2011-04-11 07:14:04 | Weblog
この週末は、福島県喜多方市に日本酒造りに行ってきました。
福島県、、、ちょうど話題になっていますが、同じ福島でも会津はほとんど揺れず、お世話になっている酒蔵では1本も酒瓶が割れたりしなかったとの事。

3月から始まった酒造り、実は地震の翌日も喜多方に行く予定だったのですが、当然たどりつけず、酒蔵の人たちが僕たちの酒を仕込んでくれたとの事。
あの混乱の中、お酒を仕込んでくれたかと思うと本当に頭が下がります。

で、今回の作業は絞り。
いい感じに醸されたお酒の原液「もろみ」を酒粕とお酒に分ける作業。
普通は機械を使うのですが、僕たちは「雫しぼり」という昔ながらの方法で絞ります。
これは、袋にもろみを入れて、口を紐で縛ってタンクの中で吊るしておくもの。
一晩かけて日本酒が少しずつ紐から搾り出されて行くという、ものすごく手間のかかる作業です。



という訳で、仲間達と二日間かけてこの作業を行って、あとは瓶詰め作業を来週に残すばかりなのですが、福島に直接行くことで気がついた事がありました。

まず、行きの会津鉄道がガラガラ。通常は2両編成でほぼ満席なのですが1両に減っていて、その減っている客車に数人のお客さんだけ。
去年から乗務員の女性がアテンダントとしてサービスしてくれるのですが、その方が「今日は少しお客さんが多くて張り合いがあります」との事。
震災後、どれだけお客さんが少なくなってしまったのか、と思いました。
それでも、「自分の出来る範囲でお客さんに戻ってもらう努力をします」と話して、すごく熱心に沿線の名所を解説してくれたりしました。

これは酒蔵の人たちも同じ。
実は、原発の影響で、海外の顧客からキャンセルが相次いでいるとの事。
台湾、アメリカなどに相当数を輸出していたのでダメージが大きく、さらに日本の毎年買ってくれているお客さんからも、「今年はいいです」という断りがあるとのこと。
去年収穫したお米で、冬の間に醸したお酒なのに・・・。

でも、そんな中でも自分たちの出来る範囲の事を誠実にやっていきます、と日本酒造りを続けていたし、来年のお酒造りのために酒米の種付けの準備も進めていました。
これまで何百年も続いてきた地元のお米での酒造りを、こんなことで止めてたまるかという静かな決意を感じました。

何と言うか、こういう危機の時こそ、その人の本質が顕わになると思います。
僕の会った会津の人たちは、会津魂を発揮して静かに燃えていました。

僕もふだん美味しいお酒を楽しませてもらっているので、東京で少しでもサポートできればと思いました。

お世話になっている酒蔵のブログ。
現地の状況が分かります。
大和川酒造ブログ

「ガンジス川でバタフライ」

2011-04-07 20:12:56 | 
本は「ガンジス川でバタフライ」たかのてるこ・著。



本を整理していて「捨て候補」の一冊だったけど、気になって読み返してみた。
すごく面白い。捨てなくて良かった。

2000年に刊行されている本なんだけれど、実際は90年代前半、大阪出身の女子大生が香港、シンガポール、インドなどをひとり旅した時の旅行記。
典型的な大阪キャラで、お調子モンと周りの友人達には思われているけど、実は小心者でひとり旅なんてもってのほか。
でも、卒業前にそんな自分を変えたくて旅に出ました・・・、とある意味「よくある話」なんだけど、著者のキャラと行動力が突き抜けていて、凡百の旅行記とは全く違う印象。

海外の街角で言葉も分からずまごまごしていて、ひょんなきっかけから現地の人とコミュニケーションが取れた時、スイッチが入ったみたいな、はじけっぷりは本当に痛快。
カンフーの物真似や変顔など、言葉が通じないなりに、工夫して笑わせて、周りの人たちと「ともだち」になってしまう。
その瞬間、「怖い外国人」としか思えなかった人たちが、「ひとりの人間」として見えてくる。
そうした変化を体験することが旅の醍醐味なんだと教えてくれる。
なんだか、また旅に出たくなる気にさせる一冊。

ちなみにタイトルにもある「ガンジス川でバタフライ」。表紙の写真にもなっているけど本当に泳いでいて、なんだかそのバカバカしい弾けっぷりが彼女の真骨頂。
気持ちよく笑わせてもらいました。
オススメ!

「ヒバクシャ―ドキュメンタリー映画の現場から」

2011-04-05 22:30:02 | 
本は「ヒバクシャ―ドキュメンタリー映画の現場から」。



ドキュメンタリー映画監督、鎌仲ひとみさんの書いた本。
彼女はこれまで、「ヒバクシャ」、「六ヶ所村ラプソティー」、それに2010年の最新作「ミツバチの羽音と地球の回転」を撮っている。

「ミツバチの羽音と地球の回転」は去年の六月に観ていて、その時、映画の感想も日記に書いている。
東京ナイト日記

今回の地震で、東電、政府は「想定外」と信じられない発言をしていたけれど、実は、ずっとずっと「原発は危険だ」と言い続けていた人がいて、その発言を、ずっとずっとマスコミも東電も無視してきた。
映画の感想にも書いたけれど、硬直した日本のエネルギー政策が延々続いて来て、いよいよ取り返しのつかない事態を招いてしまった今、何が出来るのか。

まずは「知ることからはじめよう」ということなんだと思う。
今日もお客さんと原発の話で3時間以上も話し込んでしまったんだけれど、知れば知るほど、お寒い状況に恐ろしくなってくる。
福島の原発は、応急処置を何とかやっているだけで、抜本的な解決策はまだその目処すら立っていないみたい。
このまま延々、汚染水が漏れ続ければ、東北沿岸だけじゃなく、黒潮に乗って太平洋中に汚染が広がる可能性がある。
「直ちに健康への影響はない」のかもしれないけれど、10年後、例えばアラスカの沿岸で著しく小児ガンの発症数が増えた場合、僕たちは何と言えばよいのだろうか・・・。

で、「ヒバクシャ」。
この本は、アメリカが湾岸戦争の際、イラクで使用した劣化ウラン弾による影響で、イラクの小児ガンが飛躍的に増えている実態を追ったNHKの番組取材が元になっている。
全く報道はされていないこうした現状を踏まえつつ、日本でずっと広島の被爆者の健康診断を続けてきた老医師も取材。
彼と一緒に今度は、アメリカ本土の被爆の現状も取材している。
アメリカではある時期、核兵器を作るある工場の周辺で、「意図的に」放射能が漏れたことが有り、その結果、周辺の住民が被爆して、ガン患者が急増しているとのこと。

まあ、読めば読むほど、知れば知るほど、唖然としてしまうけれど、監督は実に冷静にその事実を追っている。
多分その視線の先には、日本の原発があったはず。
それがこんなに早く最悪の形で現実となってしまった。

繰り返すけれど、まずは「知ること」が大切だと思う。
鎌仲ひとみ監督の「ミツバチの羽音と地球の回転」が、緊急上映されるとのこと。
未見の方はぜひぜひご覧下さい。
きっと、「この映画をもっと早く観ていれば」という気になると思うし、まだ日本中に原発が有る以上、これから何をすべきなのかのヒントも有ると思います。

【速報!!】『ミツバチの羽音と地球の回転』渋谷で4/16~上映再開決定!!