雅太は、読書の秋ということで、桐野夏生『ポリティコン』を読み耽った。テーマが「農村に理想郷を作る」というわけで、実に興味をそそられた。殺伐とした都会生活から逃げ出したいからといっても、理想郷の現実はシビアで、「年齢が45歳以上の人は生産費と経費が合わないから断っている」。だが、主人公のトイチは、女絡みで許してしまうわけであった。ドロドロした愛憎小説が、展開する中、「養鶏」を中心とした細い村の経済が、大学へ行きたいマヤのカネを捻出するため、拡大戦略に走るのであった。一方で、高齢化した村人も言いたいことを言いまくり、村は割れるのであった…。
外国人嫁、食品偽装、マヤの乱れた環境、何でもありなストーリーが、型にはまった雅太には面白かった。雅太の高校時代など、バブルの絶頂で、「苦労」が欠けていたのである。しかも田舎で、「世間知らず」に拍車がかかり、今はそのツケを倍返しで払っていることになるのであろうか。いや、田舎、日本全体が、そのツケを払わされているのかも知れない、雅太は大きく息を吸いながら、「高齢化問題」「失業問題」「農業問題」などを考える。
小説は有機やら無堆肥農業に言及しているが、一筋縄ではない。一体カネにならない農業で、どうやって生計を立てるのか。必要であるのに成り立たないという矛盾。雅太の実家は個人農家であったが、概算金という買い取り価格があまりにも安いため、「直販できなければ、米なんて作るべきではない」と独自で販路を拡大させていた。それでも「独立」にはほど遠い。今朝も30kの米袋を12ばかり提げたせいか、腰に鋭い痛みが走る。
要するに小説のいわんとしていることは、「理想郷など作れるわけがない」ということなのだろう。創設者の志は、現実の前に空回りするのである。
一方で、雅太の読む『呪術師の飛翔』はあと50ページを残すこととなったが、内容がリアルで濃すぎた。主人公タイシャが、「呪術師の家」に入り、クララ、マンフレッド、エイブラー(ドン・ファンか?!)、ネリダという個性的な呪術師に出会い、さらに家の管理人であるエミリート老人にも出会い、それぞれが師となり、呪術師への門をくぐって行く。夢見の世界、ダブル、霊体の開発を、マジカルパスやら水晶の利用で、促進して行く。特に「意図」を叫ぶことによって。ここで、「意図! 意図!」かのシルビオ・マヌエルが『沈黙の力』で「意志だ! 意志だ!」と狂ったように叫んだ理由が分かった。意志をおびき寄せる意図こそが、ダブルを動かすアクセルであるということを。雅太は、理想郷というのは、肉体の世界には無いのではないかと考えたりする。
幽体の世界こそが理想郷であり、それを生み出す呪術師な村こそが、理想郷ということになるのだろうか。「仏門に入ったらどうですか」という第三者のささやきが聞こえたりするのであった。
外国人嫁、食品偽装、マヤの乱れた環境、何でもありなストーリーが、型にはまった雅太には面白かった。雅太の高校時代など、バブルの絶頂で、「苦労」が欠けていたのである。しかも田舎で、「世間知らず」に拍車がかかり、今はそのツケを倍返しで払っていることになるのであろうか。いや、田舎、日本全体が、そのツケを払わされているのかも知れない、雅太は大きく息を吸いながら、「高齢化問題」「失業問題」「農業問題」などを考える。
小説は有機やら無堆肥農業に言及しているが、一筋縄ではない。一体カネにならない農業で、どうやって生計を立てるのか。必要であるのに成り立たないという矛盾。雅太の実家は個人農家であったが、概算金という買い取り価格があまりにも安いため、「直販できなければ、米なんて作るべきではない」と独自で販路を拡大させていた。それでも「独立」にはほど遠い。今朝も30kの米袋を12ばかり提げたせいか、腰に鋭い痛みが走る。
要するに小説のいわんとしていることは、「理想郷など作れるわけがない」ということなのだろう。創設者の志は、現実の前に空回りするのである。
一方で、雅太の読む『呪術師の飛翔』はあと50ページを残すこととなったが、内容がリアルで濃すぎた。主人公タイシャが、「呪術師の家」に入り、クララ、マンフレッド、エイブラー(ドン・ファンか?!)、ネリダという個性的な呪術師に出会い、さらに家の管理人であるエミリート老人にも出会い、それぞれが師となり、呪術師への門をくぐって行く。夢見の世界、ダブル、霊体の開発を、マジカルパスやら水晶の利用で、促進して行く。特に「意図」を叫ぶことによって。ここで、「意図! 意図!」かのシルビオ・マヌエルが『沈黙の力』で「意志だ! 意志だ!」と狂ったように叫んだ理由が分かった。意志をおびき寄せる意図こそが、ダブルを動かすアクセルであるということを。雅太は、理想郷というのは、肉体の世界には無いのではないかと考えたりする。
幽体の世界こそが理想郷であり、それを生み出す呪術師な村こそが、理想郷ということになるのだろうか。「仏門に入ったらどうですか」という第三者のささやきが聞こえたりするのであった。
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