インディオ通信

古代アメリカの共感した者の備忘録8年。

ベロボディアの輪② ~自分自身の組み立て~

2011-06-08 05:06:28 | カスタネダ『呪術の実践』 !

 さて、先日の続きである。オルガは夢見でシャーマンのウマイに教えを授かる。

 これから最高の秘密をおぬしに聞かせてやろう。わしらは身体を持ってこの世に生きている間に、二つのものを作り上げる仕事をゆだねられている。第一の仕事は、わしらが住む現実を作り上げること。そして第二の仕事は自分自身の組み立て、つまり、この現実の中で生きる自己そのものの組み立てじゃ。

 両方の仕事にまんべんなく注意を払わねばならぬ。それらのバランスを保つことが、必要とされる聖なる術そのものじゃ。一方の仕事を忘れると、もう一方がわしらを捕らえ、永遠にその奴隷にしてしまう。多くの人々にとって、『精霊の湖』の場、つまり『内なる生き物』の故郷が空っぽとなり、死んでしまっているのはそのためじゃ…。


 …わしは嘘を言わぬ。外の世界との仕事は、内なる探求に劣らぬ満足をもたらす絶対的なパワーと能力を持っているのじゃ。周りの海岸を恐れてはならぬ。そこに見えるのはすべておぬし自身の顕れなのじゃ。自分自身で生み出したものを恐れるのは馬鹿げている…


 この文章を咀嚼するに、自分の頭の中だけを変えるのはナンセンスで、実際に自分の周囲を変えなければならないということだろう。というより、環境を変えなければ、自分自身が変わるわけがないということか。意味深長である。オルガは後で尋ねる(もちろん、夢の中で)。

「どのようにして自分自身をつくり出すかについてもっと聞きたいんです。自分自身の住む現実を生み出すことについては理解し始めています。今は、この現実の中で生きる存在に関して、あなたのおっしゃったことを学びたいんです」

「自分自身や周りにいる人間を見るがいい。みんなが四六時中やっている唯一のことはおのれの自己を作りだそうとすることじゃ。すべての人が絶えず変化成長する自分ということ存在に話しかけ、それを型に嵌め込もうとしているのじゃ。

 人が自己を形作る方法には三つの主要なやり方がある。頭の中で過去に問いかけ、おのれが生み出そうとしている自分の像に合わないものを変えたり、削ったりし、それを助長するものを拡大することによって過去を作り直すことが一つ。他方で、人々は未来について考え、何をするか自分がどのように見えるか、持ち物は何か、他人にどのように受け入れられるか、といったことを絶えず思い浮かべる。

 人々がする第三のことは、自分たちを現在に結び付けることじゃ。自分が何者で何をしているかということについての他人の知覚を、いつも無意識のうちに自覚し、絶え間なくそれに反応しておるのじゃ。こうした反応のいくつかはおのれが抱いている自己の像を支持するが、それを打ち砕く反応もある。人々はある人間が自分に引き付けられ、他の人間がそうではないことに気づく。たいていの場合、自己の像を支えてくれない人々が身近にいると、それらの人々を嫌いになるということが起こる。逆に周りの人々からの支えを体験すると、彼らを好きになるという感情を生み出す。人々はこのようにして自分自身を作りだすために過去、現在、未来を組み合わせるのじゃ。注意して見ておれば、どんな人間でもあらゆる状況でそれが起こっているのがわかるだろう。見回して見るがいい。多くの興味深い例に気づくはずじゃ。

 だが、人が自分を作りあげる方法を余すところなく理解すれば、おぬしは全てを自覚しながらそれから独立していられるもう一つの自己が存在していることに気づくようになるだろう。それがおぬしの慈愛の自己で、しんの自由と魔術が始まる地点なのじゃ。それは偉大なる選択術の源じゃ。だが、現在のおぬしにはこれぐらいで十分じゃろう」


 かくして「もう一つの自己」という思想に発展していくのである。写すのに疲れたので、本日はこれで失敬。