恥かしながらその存在さえ知らなかった「産総研(産業技術総合研究所)」をこのほど初めて見学した。通産省管轄の研究機関として、さまざまな分野の産業化に資する研究を進めていることが分かった。
8月24日(月)午後、「めだかの学校」8月の野外教室の研修先は月寒にある「国立研究開発法人 産業技術総合研究所北海道センター」だった。
似たような研究機関として本部が札幌にある「道総研(北海道立総合研究機構)」については、講座等の受講経験もあり、その存在を知っていたが、「産総研」については恥かしながら初耳だった。
月寒にある「産総研北海道センター」は、札幌ドームからもそれほど遠くない広大な敷地の中にたくさんの研究施設が並んでいた。
その一角にある建物の会議室に招かれ、まずは北海道センターについてのガイダンスがあった。
それによると、北海道センターの前身は昭和35年に設立された「北海道工業開発試験所」だそうである。その当時、北海道は石炭産業全盛の時代で、石炭の無煙燃料化とか、石炭の液化、ガス化などの研究を行っていたという。
その後、平成5年度には「北海道工業技術研究所」と改称され、平成13年の中央省庁の改編によって全国にあった国立の15研究所群が統合されて独立行政法人(本年度から国立開発法人に移行)の「産業技術総合研究所」となり、旧「北海道工業技術研究所」もその一部所として改編されたそうだ。
前置きが長くなったが、北海道センターでは地域に根ざしたさまざま研究開発と産学連携の活動を行っているということだった。その中でも、特にメタンハイドレートの実用化、遺伝子組み換え植物の水耕栽培による創薬技術の開発について多くの説明が割かれた。
北海道の近海海底にも多くの資源が存在すると推定されるメタンハイドレート資源から天然ガスを生産する技術の開発に力が入れられているらしい。実用化までにはまだまだ課題が多いようだが、説明を受けた後の施設見学では精力的に研究開発が進められていることを伺わせてくれた。
※ メタンハイドレートの実験室を窓の外から眺めることができた。
次に、創薬技術の開発のための水耕栽培であるが、完全に密閉された空間でいちごやジャガイモが栽培されている。完全密閉の理由は遺伝子組み換え植物が外界の植物に影響を与えないように、また外界の病原菌が栽培植物に付着しないためということだ。
北海道センターの完全密閉の水耕栽培工場は二つあったが、最新式の方は建設費が10億円とのことだった。
※ 完全密閉の水耕栽培実験施設の外観です。もちろん中へは入れません。
そこでエピソードが一つ生れた。
完全密閉の工場はもちろん私たち見学者は中へは入れない。模型で水耕栽培されているジャガイモを見ることができたが、なんだか奇妙に見えた。水の中にジャガイモが浮かんでいるように見えたのだ。
それを見て、私は「これは一個500円位するのでは?」と話していたところ、説明者が「いや、もっとコストはかかっていますね」ということだった。
国の機関はコストを度外視して開発するが、それがコスト的にも見合うものになれば民間企業が導入を考えるというのが、このような世界での考えのようである。
施設の見学をしていて「へぇ~」と思うことが一つあった。
国の研究施設だから「きっと、整然としているのだろう」という漠然としたイメージがあったのだが、実際には廊下の天井部分にたくさんの配線が走っていたり、大きなダクトが頭上を覆っていたりと、なんとなく雑然とした感じだった。
※ 施設の廊下には写真のように無数の配線が走っていました。
※ こらはメタンハイドレートの実験室傍の壁の大きなダクトです。
国立の研究機関といえども、今や体裁などをかまっている暇はなく成果を求められているということか? わずかに垣間見ただけではあるが、そんな雰囲気を感じさせてくれた今回の見学だった。
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