「それでは被告人○○の窃盗未遂事件に対する審理を始めます」と私が宣言し、模擬裁判が開始された。実際の刑事犯の裁判を傍聴した体験はあったが、裁判所法廷を裁判官側の方から眺めてみるという貴重な体験をすることができた。
5月20日(月)午後、「めだかの学校」で私たちとは別のグループが企画・運営している「大人の社会見学」の第2弾として「札幌地方裁判所」を見学した。
裁判所に入るためには、空港のように手荷物検査(X線検査)と人物に対する金属探知機を通過せねばならないというモノモノしさだった。以前にはなかったことだが、やはりこれも時代の趨勢ということだろうか?
見学は、「法廷見学」と「模擬裁判体験」がセットになったものだった。「法廷見学」は当日裁判が行われていなかった820号法廷に導かれた。対応するのは見学者担当の女性職員である。導かれた法廷は裁判員裁判が行える法廷で、裁判官(3人)の他に6つの裁判員の椅子が用意されていた。私たちは傍聴人席に座り、そこで裁判の制度、裁判所のことなどに関するDVDをまず視聴し、その後女性職員が私たちの質問に答える形だった。そのやり取りの中で、特に新しく知り得たことはなかったと記憶している。
そして「模擬裁判体験」だった。当日参加した12人を籤でもって役割を分担することになったが、私は何と!裁判長の役を引き当ててしまった。他に裁判官2名、検察官3名、弁護人3名、被告人1名、証人2名と割り振られた。
事件は、「被告人がデパートの時計売り場において、腕時計1個をポケットに入れて立ち去ろうとしたところを店員に見つかり、通報され逮捕された」という事件であるが、この行為が有罪か、無罪かを争う裁判であった。
私は法衣を纏い裁判長席に座った。法廷の中で一段と高くなった位置から眺める法廷の景色はなかなか経験できるものではない貴重な体験だった。
※ 裁判長席から見た法廷の光景です。水色の女性は裁判所の担当職員です。
模擬裁判は、裁判長役の私が「それでは○○の窃盗未遂事件に対する審理を始めます」と宣言して始まった。模擬裁判自体はあらかじめ用意されたシナリオをそれぞれが読み進める形で進められた。
それはシナリオに沿って淡々と進められたのだが、途中証人役の方が宣誓書を読み上げた後、自分の氏名を述べるのを忘れてしまったシーンがあった。私はシナリオにはなかったが「証人はお名前を言ってください」と即座にそのことを指摘することができた。(出過ぎかな?)
シナリオに沿って間違いなく、というほうに神経を注ぎすぎてしまったきらいがあり、 これといった感想は持てなかった。これが実際の裁判となると、裁判を正常に指揮することは大変なことなのだろうと思われた。(などという簡単な言葉では推し量れない資質と能力が裁判官には要求されるのだろう)
※ 私と同じように法衣を纏い私の横で裁判官役を務めたK氏です。
無事にシナリオ通りに模擬裁判は終了した。そして担当の職員の方から「当事件について被告は有罪か?無罪か?」を問われた。その結果、有罪と判断した者が5名、無罪とした者が7名という結果で、全体としては「無罪」という判断になった。えっ?私はどちらに判断したかって?それは秘密にしておきましょう…。