関心のある方々にとっては、あるいは常識なのかもしれないが、私のような凡人にとってはなんとも不思議な言説を聞いた思いだった。“宇宙人”と聞くと、UFOに乗ってやってくるなんとも不思議な生物というイメージしか思い浮かばないのだが…。
少し話は古くなるが、1月21日(土)午後、札幌市中央図書館において、中央図書館講座「第56回 サイエンス・フォーラム」が開催され、参加した。今回のテーマは「われわれのルーツを宇宙に探る」と題して、北大低温研究所の大場康弘准教授が講師を務めた。
※ 講義をする大場准教授です。気鋭の若手研究者という印象です。
大場氏は私のような門外漢にはまったく存じない方であるが、その道においては先駆的な研究に取り組まれている高名な方のようである。
大場氏はまず「我々は宇宙人だ!」と高らかに(?)に宣言した。その心は、地球外生命のうち知性を持つものの総称として “宇宙人” と呼称されているが、地球も宇宙に存在する星の一つと考えれば、地球人も宇宙人の括りに入るという意味のようだ。
※ 「宇宙人」と聞いて私たちがイメージするものを大場准教授が示してくれました。
ここで大場氏はフランスの画家、ポール・ゴーギャンの最も有名な作品の一つである「我々はどこから来たのか 我々は何者なのか 我々はどこへ行くのか」という作品を私たちに紹介した。大場氏がこの唐突とも思えるゴーギャンの絵の紹介は、科学者は芸術家のこうした根源的な問いに答える責務があるという、科学者の自負のようなものを示したのだと私は受け止めた。
※ ポール・ゴーギャンの「我々はどこから来たの~~」題する画です。
さて本題であるが、大場氏は地球誕生から、地球の歴史と生命の誕生について私たちに説明してくれた。地球の誕生はおよそ46億年前とされているが、誕生直後は「マグマオーシャン仮説」という仮説があり、地球上がマグマに覆われていて、生命が生まれる材料はなかったと推測されているという。そして地球誕生後数億年後には地球の表層が冷却して海が誕生したが、その頃にも生命の起源はつくり出せなかったという説が先駆者たちの実験から通説になっているという。
生命の誕生の痕跡があるとの説が有力であるのが41~38億年前に地球外から地球に向かって宇宙塵(小惑星のかけら)が降り注いだとされる「後期重爆撃期」に生命誕生の起源があるのではないかというのが科学者の中で一つの仮説となっているという。それは降り注いだ宇宙塵の中にアミノ酸を含む有機物が含まれていたという説である。
※ ヒトの体を構成する要素を説明する図です。
大場氏はその有機物を検出することに世界で初めて成功した研究者だということだが、それがどれだけのインパクトを伴ったものなのかについて、種々説明されたが私の理解力はまったく及ばなかった。
ただ、大場氏の業績は1990年代から科学者たちによって提唱されていた仮説に一種の証明がなされたという点において大きなことだといえるようだ。大場氏は「はやぶさ2」が小惑星から持ち帰った隕石の有機物分析チームの一員にも所属しているという。近年宇宙への関心が一段と高まっているが、それに伴って地球生命の誕生の謎の解明も一段と進むことなのだと思われる。しかし、科学のお話は門外漢にとっては難しいなぁ…。
故さくらももこさんがエッセイに書いてましたね。
昆虫にかぎらず、生命は宇宙(地球外)由来ですか。なるほど、地球そのものが宇宙(地球はまだない)にあった物質でできているんだから、そこに生命の種が……と考えても不思議はありません。
まあ、ぼくに想像できるのは、この程度のSF的なころがらくらいで、たぶん講座を受講していたら寝ていたでしょうねえ……。
私は大場准教授のお話をしろまめさんが見通したように私も理解したのです。
「我々は宇宙人だ!」と講義の当初に言い放ったのは、大場氏たち科学者にとってはある意味常識的なことなのだと思いましたね。