ヒトリシズカのつぶやき特論

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日本経済新聞紙の朝刊2面のコラム「真相深層 リチウムイオン電池 執念がつなぐ」を拝読しました

2019年10月12日 | 日記
 2019年10月11日に発行された日本経済新聞紙の朝刊2面のコラム「真相深層 リチウムイオン電池 執念がつなぐ」を拝読しました。

 この記事のサブ見出しは「日本人3人が化学反応」です。

 この記事は「2019年のノーベル化学賞の受賞者が、繰り返し充電できるリチウムイオン電池を開発した旭化成の吉野彰名誉フェローら3氏に決まった。携帯電話などの普及に道を開き、世界の人々の生活を変えたイノベーションの裏には、吉野氏のほかに日本の研究者2人の貢献があった」と始まります。

 ノーベル化学賞は、これまでにない科学そして化学分野での独創的な学術的な科学技術への貢献に与えられる賞です。こうした「独創的な学術的な科学技術」に基ずく研究開発成果は、さまざまな技術開発によって製品化・事業化されます。

 日本経済新聞紙のWeb版である日本経済新聞 電子版では、見出し「真相深層 リチウムイオン電池 執念がつなぐ 日本人3人が化学反応」と伝えています。



 このコラムの記事は「グッドイナフ先生が受賞されたことについて大変うれしく思います」。吉野氏のノーベル賞受賞のニュースに日本中が沸いた10月9日夜に、東芝の水島広一エグゼクティブフェローがこうコメントしました。

 この東芝の水島広一さんは、今回の2019年のノーベル化学賞の受賞者の一人の米国テキサス大学のグッドイナフ教授のリチウムイオン電池開発に重要な役割を果たした人物です。

 1970年代に、東京大学の助手だった水島さんは、当時、英国オックスフォード大学教授だったグッドイナフ氏から共同研究の誘いを受けて、英国に向かい、共同研究を始めます。そして、リチウムイオン電池を開発に不可欠な正極の研究開発を進め、「コバルト酸リチウム」という材料にたどり着きます。

 このリチウムイオン電池の正極材料の基礎研究成果を見つけた人物として英国オックスフォード大学教授だったグッドイナフ氏(現在は米国テキサス大学教授)は、ノーベル化学賞を受賞します。

 これに対して、旭化成工業の吉野彰名誉フェローは、1982年12月にリチウムイオン電池の正極材料の基礎研究成果を載せた学術文献を読んで、リチウムイオン電池の“負極材料”の研究開発に力を入れます。当初は、この負極材料に電気を流すプラスチックである導電性高分子であるポリアニリンなどを材料候補と考えますが、「うまくいかず炭素材料に切り替える」と、当時の経緯を結果だけ書いてあります。

 この記事では「最後、ちょうどいい炭素材料が見つかった」としか書かれていません。この結果、旭化成はリチウムイオン電池の基本構造を確立し、1985年にリチウムイオン電池の基本構造の特許を出願します。

 この研究開発成果が認められ、旭化成の吉野彰名誉フェローは、今回のノーベル化学賞を受賞します。

 この記事が伝える「日本人3人が化学反応」の3人目は、ソニーの西美雄さんです。西美雄さんは、1966年にソニーに入社し、燃料電池担当などの開発を経て、リチウムイオン電池の開発を担当します。このリチウムイオン電池を製品化した会社は、ソニーエナジーテック(福島県郡山市)です(この社名は時代によって、いくらか変っています)。

 そして、1991年に世界で初めてリチウムイオン電池を商品化し、電池事業を始めます。この当時は、ソニーはビデオ再生機器のベータ型が、当時の松下電器産業(現在のパナソニック)のVHSに負けた後でした。このため、ソニーは小型のビデオ撮影機器開発に注力し、「パスポートサイズ」の小型ビデオ撮影機の事業で成功します。

 この当時は、小型の電池はニッケル水素二次電池(ニッケルコバルト電池の改良品)でした。このため、小型のビデオ撮影機器向けにリチウムイオン電池を商品化を商品化し、より小型のビデオ撮影機器の高性能化を果たしました。小型のビデオ撮影機器はVHS方式ではないため、ビデオ競争での意地を見せることに成功しました。

 当時は、携帯機器向けの二次電池では、松下電池工業(現在はパナソニックの1事業部)や三洋電気などが主な電池メーカーでした。しかし実際には、世界で初めてリチウムイオン電池を商品化したのは、電池メーカーとして新参入したソニーの技術開発者だったということは、現在の今年のノーベル化学賞のさまざまな記事ではあまり(ほとんど)触れられていません。


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16 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
リチウムイオン電池 (ゆりかもめ)
2019-10-12 07:48:21
今年のノーベル化学賞を、旭化成の吉野さんが受賞した日は、1日中、テレビ各社が10数分ずつインタビューしていました。
タレントの司会者のくだらない質問が多く、日本の科学技術の知識を持たない日本人が多いと感じました。
悲しいことです。
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吉野氏おめでとう! (花ぐるま)
2019-10-12 08:04:38
良かったですね77今年は日本人は無いかと思っていましたが~
いい知らせでした
コツコツと研究されてそういう人が頂けると嬉しいです
私の姉の子供が高校、大学も先輩ですので喜んでいました
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ゆりかもめ様 (ヒトリシズカ)
2019-10-12 08:44:27
ゆりかもめ様

コメントをお寄せいただき、ありがとうございます。

今年のノーベル化学賞を、旭化成の吉野さんが受賞したことは、リチウムイオン2次電池の事業化を考えると、研究開発のピークが過ぎ、やや遅い受賞でした。

この間に、日本企業はリチウムイオン2次電池の事業化では、韓国や中国の企業に負け始めた段階に入ってしましました。残念です。

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Unknown (kazuyoo60)
2019-10-12 08:48:35
ご本人の談話の中にITだけの利用では弱い、電気自動車のバッテリー、大容量のバッテリーに電気をためる、それがノーベル賞になったと。かなり前にも候補には上がっていたことも新聞で読みました。
突き詰めて研究開発くださったおかげです。
今期待しているのは、フイルム状の、太陽光発電装置の市販品です。
10年以上前だったので、今の素材より重かったかもしれませんが、古い屋根の上にこの重さを乗せるのは無理とその時思いました。フィルムなら、ガラス戸だって、屋根だって壁だって利用できそうですから。https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_100976.htmlhttps://www.toshiba-clip.com/detail/6053から
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花ぐるま様 (ヒトリシズカ)
2019-10-12 08:49:58
花ぐるま様

コメントをいつもお寄せいただき、ありがとうございます。

今回の旭化成の吉野さんがノーベル化学賞を受賞したことはめでたい話ですが、約10年遅い受賞でした。その理由・経緯は、この話の続きとして書く予定です。

花ぐるま様は関西ご出身でしたね。

花ぐるま様の姉の子供さんは、大阪府立北野高校、そして京都大学工学部に進学なさっているのですね。学業が優秀な一族なのですね。
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Unknown (kazuyoo60)
2019-10-12 08:50:21
最終行を訂正します。https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_100976.html
https://www.toshiba-clip.com/detail/6053
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kazuyoo60さま (ヒトリシズカ)
2019-10-12 09:02:37
kazuyoo60さま

コメントをいつもお寄せいただき、ありがとうございます。

旭化成の吉野彰名誉フェローは、携帯機器向けのリチウムイオン2次電池の研究開発の基礎を築かれた方です。

テレビや新聞紙のリチウムイオン2次電池の研究開発話は、一般人向けにデフォルメされ簡略化されています。このため、本質な事柄が抜けています。

電気自動車向けのリチウムイオン2次電池は一応実用化はされていますが、電気容量を増やすために、かなり異なる正極材料、負極材料になりつつあります。

この電気自動車向けのリチウムイオン2次電池開発の日本の国家プロジェクトのリーダーを吉野彰名誉フェローがお務めです。

また話は変わりますが、透明なガラス基板に太陽光発電基板を載せた製品は既に発売されていますが、高価なので普及していません。

透明な樹脂フォルムは、太陽光によってダメージを受け、すぐに劣化し、基板としての役目を失うので、実用化はできないのです。製品化には、必要条件を満たす必要があり、透明な樹脂フォルムは原理的に不可能なのです。


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kazuyoo60さま (ヒトリシズカ)
2019-10-12 09:09:39
kazuyoo60さま

コメントを加えてお寄せいただき、ありがとうございます。

追加のコメント欄にお伝えいただいたフィルム型ペロブスカイト太陽電池モジュールは、cけの太陽電池です。

ふだんはカバンの中に入れて置いて、携帯機器内のリチウムイオン2次電池の電気容量が減ると、このフィルム型ペロブスカイト太陽電池モジュールを取り出して、発電させ、チャージする道具です。

このフィルム型ペロブスカイト太陽電池モジュールも10数年以上研究開発され、一時は製品化されましたが、高価なので売れませんでした。

屋根の上にのせる太陽光発電装置ではありません。

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お世話になっています (fukurou)
2019-10-12 09:13:12
ヒトリシズカ様
おはようございます。
リチウムイオン電池には、お世話になっています。
今年もノーベル賞がとれたと日本中が喜んでいますが、これがいつまで続くか不安です。

リチウムイオン電池の商品化にソニーの技術開発者がかかわっていたと言うことは知りませんでした。
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fukurouさま (ヒトリシズカ)
2019-10-12 09:29:58
fukurouさま

コメントをいつもお寄せいただき、ありがとうございます。

この話の続きを書く予定です。この旭化成の吉野さんがノーベル化学賞を受賞したことはめでたい話ですが、約10年遅い受賞でした。その後の話を書く予定です。

現在、fukurouさまがご利用のリチウムイオン2次電池は、たぶん日本企業製ではなく、韓国製か中国製ではありませんか。

今回のテレビ番組の放送では、NTTドコモの携帯電話機の中にあったリチウムイオン2次電池には「Made in China」と書かれていました。これが悲しい事実なのです。

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