2016年4月28日に発行された朝日新聞紙の朝刊の経済面に掲載された連載「けいざい+ 東芝の迷宮・7 本社を救った虎の子の『独立国』」を拝読しました。
連載7回目の解説は、東芝の子会社東芝メディカルシステムという国内でも有力な医療機器メーカーを、キヤノンが今年3月17日に買収額6655億円で買収することで決着した話から始まります。
連載記事の冒頭では、ある東芝役員が「東芝メディカルを売らなければ、東芝はつぶれていたかもしれない」とつぶやきます。
朝日新聞紙のWeb版である朝日新聞 DIGTALでは、見出し「東芝の迷宮・7 本社を救った虎の子の『独立国』」と伝えています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/08/1c/6caef03e1a0305169441f54af5ae3357.jpg)
これからの成長分野と考えられる医療機器事業は、東芝にとっても今後の高収益が期待される事業分野です。当たり前のことですが、将来の東芝を支える事業分野です。
しかし、2016年4月27日発行の朝日新聞紙の経済面の見出し「東芝、2600億円減損 3月期WHののれん代」という記事が伝えるように、東芝の原子力事業子会社の米国ウェスティングハウス(WH)の買収時に生じた“のれん代”を2016年3月期決済で約2600億円減らすと発表しました。
この減損を実施した理由については、2016年4月27日発行の朝日新聞紙朝刊の連載「けいざい+ 東芝の迷宮・6 進むと止まるも『のれん地獄』」で解説しています。ごく簡単にさわりを説明すると、2006年に東芝は米国ウェスティングハウスを約6000億円で買収します。この時に、将来の収益力を加味した企業の見えない価値の“のれん代”として、資産計上します。その額は、2016年3月時点で約3300億円でした。
2011年3月の東京電力の福島原子力発電所“事故”以来、原子力発電所の新規受注が難しくなり、将来の収益予測は低下します。いろいろな思惑を経て、米国ウェスティングハウス“のれん代”を2016年3月期決済で約2600億円減らすと発表します。この結果、東芝の財務状況は深刻化します。
今回、東芝が成長分野の医療機器事業を売却する話は、当初は想定していない話でした。東芝が持つ安定して事業利益を上げる子会社だったからです。しかし、2016年3月期決算が過去最悪の5000億円超の赤字になるとの見通しが出てきてからは、“虎の子”の東芝メディカルシステムを売却しないと、東芝の財務内容が悪化するとの背に腹は代えられない状況に陥ります。2016年前期末に約1兆円あった自己資本が、リストラなどの費用で約半分に目減りしたからです。
当初は、東芝の役員は「5000億円で売れれば御の字」と読んでいました。しかし、医療機器事業という成長分野を自社に取り込みたいと考えた、富士フイルムとキヤノンの2社の買収合戦が過熱し、最終的にキヤノンが買収額6655億円ですべての株を買収します。キヤノンは複写機やカメラなどの既存事業の成功以降にで、実は新規事業として高収益を上げる事業を育てたことがなかったからです。
東芝メディカルシステムのルーツは興味深いものです。英国の当時の大手レコード会社EMIは、音楽事業で大儲けたお金を、当時の最先端研究成果だったCT(コンピュータ断層撮影、Computed Tomography=CT)の製品化に投じます。この製品化・事業化に成功したEMIは、当時の音楽事業会社の東芝EMIを通して東芝に接触します。東芝はCTの輸入を始め、その内に子会社の東芝メディカルシステムは、X線CTなどの医用機器では世界的メーカーに成長します。
EMIが儲けた事業収益を新進気鋭の成長分野に投資したことは、現在の日本企業の構造改革の手本としたい事例です。さらに、キヤノンが自社の事業群の構造改革に成功することを願うばかりです。
(追記)
東芝は東芝メディカルシステムを6655億円で売却し、その収益で存続危機を脱しますが、問題になっていた米国ウェスティングハウス“のれん代”を2016年3月期決済で約2600億円減らすことから、まだ単体の資本欠損800億円との経営危機があり、まだ本質的には解決していません。今後の財務改革が必須と考えられています。
連載7回目の解説は、東芝の子会社東芝メディカルシステムという国内でも有力な医療機器メーカーを、キヤノンが今年3月17日に買収額6655億円で買収することで決着した話から始まります。
連載記事の冒頭では、ある東芝役員が「東芝メディカルを売らなければ、東芝はつぶれていたかもしれない」とつぶやきます。
朝日新聞紙のWeb版である朝日新聞 DIGTALでは、見出し「東芝の迷宮・7 本社を救った虎の子の『独立国』」と伝えています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/08/1c/6caef03e1a0305169441f54af5ae3357.jpg)
これからの成長分野と考えられる医療機器事業は、東芝にとっても今後の高収益が期待される事業分野です。当たり前のことですが、将来の東芝を支える事業分野です。
しかし、2016年4月27日発行の朝日新聞紙の経済面の見出し「東芝、2600億円減損 3月期WHののれん代」という記事が伝えるように、東芝の原子力事業子会社の米国ウェスティングハウス(WH)の買収時に生じた“のれん代”を2016年3月期決済で約2600億円減らすと発表しました。
この減損を実施した理由については、2016年4月27日発行の朝日新聞紙朝刊の連載「けいざい+ 東芝の迷宮・6 進むと止まるも『のれん地獄』」で解説しています。ごく簡単にさわりを説明すると、2006年に東芝は米国ウェスティングハウスを約6000億円で買収します。この時に、将来の収益力を加味した企業の見えない価値の“のれん代”として、資産計上します。その額は、2016年3月時点で約3300億円でした。
2011年3月の東京電力の福島原子力発電所“事故”以来、原子力発電所の新規受注が難しくなり、将来の収益予測は低下します。いろいろな思惑を経て、米国ウェスティングハウス“のれん代”を2016年3月期決済で約2600億円減らすと発表します。この結果、東芝の財務状況は深刻化します。
今回、東芝が成長分野の医療機器事業を売却する話は、当初は想定していない話でした。東芝が持つ安定して事業利益を上げる子会社だったからです。しかし、2016年3月期決算が過去最悪の5000億円超の赤字になるとの見通しが出てきてからは、“虎の子”の東芝メディカルシステムを売却しないと、東芝の財務内容が悪化するとの背に腹は代えられない状況に陥ります。2016年前期末に約1兆円あった自己資本が、リストラなどの費用で約半分に目減りしたからです。
当初は、東芝の役員は「5000億円で売れれば御の字」と読んでいました。しかし、医療機器事業という成長分野を自社に取り込みたいと考えた、富士フイルムとキヤノンの2社の買収合戦が過熱し、最終的にキヤノンが買収額6655億円ですべての株を買収します。キヤノンは複写機やカメラなどの既存事業の成功以降にで、実は新規事業として高収益を上げる事業を育てたことがなかったからです。
東芝メディカルシステムのルーツは興味深いものです。英国の当時の大手レコード会社EMIは、音楽事業で大儲けたお金を、当時の最先端研究成果だったCT(コンピュータ断層撮影、Computed Tomography=CT)の製品化に投じます。この製品化・事業化に成功したEMIは、当時の音楽事業会社の東芝EMIを通して東芝に接触します。東芝はCTの輸入を始め、その内に子会社の東芝メディカルシステムは、X線CTなどの医用機器では世界的メーカーに成長します。
EMIが儲けた事業収益を新進気鋭の成長分野に投資したことは、現在の日本企業の構造改革の手本としたい事例です。さらに、キヤノンが自社の事業群の構造改革に成功することを願うばかりです。
(追記)
東芝は東芝メディカルシステムを6655億円で売却し、その収益で存続危機を脱しますが、問題になっていた米国ウェスティングハウス“のれん代”を2016年3月期決済で約2600億円減らすことから、まだ単体の資本欠損800億円との経営危機があり、まだ本質的には解決していません。今後の財務改革が必須と考えられています。
今回のキヤノンによる東芝子会社の買収の規模は、実態は、鴻海精密工業によるシャープ買収より金額がいくらか多いようです。
東芝の今後が心配です。
ソニーやシャープ、NECなどが1万人規模のリストラをし、日立が高層改革をしている最中も、半導体と原子力などの事業強化を図っていました。原子力事業は結局は張り子の虎でしたが・・
東芝を含め日本の電気メーカーは正念場を迎えています。
もし今回、東芝メディカルシステムの買収に成功していれば、いろいろなシナジー効果が期待できたことと考えられます。