ヒトリシズカのつぶやき特論

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日立製作所デザイン本部が目指すエクスペリエンスデザインの話を拝聴しました

2014年02月11日 | イノベーション
 最近、社会イノベーション事業に軸足を移して事業売上げが絶好調な日立製作所のデザイン本部が目指す“エクスペリエンスデザイン”について話をお伺いしました。

 日立製作所は研究開発グループの傘下に中央研究所(東京都国分寺市)、日立研究所(茨城県日立市など)、横浜研究所(横浜市)の3研究所と、デザイン本部と呼ばれる“デザイン研究所”を持っています。

 このデザイン本部は以前は、国分寺市の中央研究所の隣りと東京都渋谷区青山の2カ所に拠点を構えていましたが、最近は東京都港区赤坂に移転しています。いろいろな方と会うには、都心部の方がいいとの判断のようです。

 デザイン本部の仕事の内容は、1957年に家庭電化製品のデザインの研究所として設立されてからは、プロダクトデザインがまずは主な仕事だったそうです。1980年代からはコンピューターのモニターディスプレーに表示するなどのインフォメーションデザインの仕事が増え、さらに2000年過ぎからサービスデザインが始まったそうです。

 インフォメーションデザインは各種ソフトウエアなどのインターフェースのデザインが主な仕事だったそうです。これに対して、サービスデザインは新しいサービスモデルの利用シーンを想定したユーザーとの“接点”となるインターフェース・デザインだそうです。例えば、日立製作所が今後力を入れるヘルスケアサービスのサービスモデルに対する各種のインターフェースデザインや地域のエネルギー・マネジメント・システム(AEMS)などの各インターフェースが対象になっているそうです。

 比較的分かりやすい、具体的なサービスデザインは、日立製作所が受注し、納品した英国の鉄道システムの事例だそうです。



 最近放映されているテレビコマーシャル(例えば、関東圏では毎週土曜日の午後9時から放映される「世界不思議発見」の中などで放映されています)では、英国のロンドン市まで向かう少年が鉄道の切符を購入する券売機システムでのやり取りや、駅構内のキヨスクでの食べ物の購入シーンのやり取りを円滑にするインターフェースデザインが示されています。人間と情報、モノとの関係ややり取りの関係性がデザインされています。

 日立製作所が事業として注力する社会イノベーション事業では、「デザインの役割は『イノベーションの創出』を担うことに進化している」と説明します。1990年代後半は、デザインの役割は「問題の解決」でしたが、近未来の社会像、あるいは近未来の社会インフラなどを想像し、その社会を想像し、それを実現するイノベーションを創出することが仕事になるとのことです。

 こうした「イノベーションの創出」を担うデザインは“エクスペリエンスデザイン”(Experience Design)と考えられています。



 日立のデザイン本部のWebサイトによると「お客さまの経験価値をデザインする」と説明されています。

 お客さま(ユーザー)が製品・サービスに接する一連の時間軸での流れで、顕在的・潜在的に求めていることを発見し、それを具現化し、「心地よい印象」「見たことのない驚き」「知的な喜び」「徹底的な安心感」などの“経験”を製品・サービスに織り込むことをによって「うれしい経験・体験とは何かを」描くことが、エクスペリエンスデザインなのだそうです。

 今回、エクスペリエンスデザインについて説明した方は「デザイン本部のデザイナーの中でもエクスペリエンスデザインの理解度がいくらか異なり、以前のソリューションの考えから抜け出ていない方もいる」とのことです。

 サービスデザインを実現するための手法の一つがエクスペリエンスデザインになっているようです。

 一番の課題は、「エクスペリエンスデザインによって製品・サービスに接するユーザーに向けてデザインができても、それを実現する事業部側がまず受け入れ、事業収益をどう上げるかを設計(デザイン)し実現することにある」そうです。

 近未来像を描くことはやはりかなりの難問です。長くなったので、今回はここまです。