幸せとはいったいなんでしょう。
このところの日課となっている英詩を繙いてみましょう。
Happy the man,
……
Whose herds with milk,whose fields with bread,
Whose flocks supply him with antire;
〈"Ode on Solitude" Alexander Pope〉
18世紀に活躍した古典主義的傾向を持つ詩人の12歳の時に作った作品とか。少年らしい純度の高い理想が詠まれています。「幸せな者とは……祖先から引き継いだ土地に暮らし、自前のミルクを飲み、畑で採れた小麦粉でパンを焼き、羊の毛を刈って服を作る、そんな人である」と作者は願望するのです。
こうした循環型自足生活の実践は簡単なことではありません。西行の草庵も寺内にあり、世話する人と組織があってこそのもの。奄美・無我利道場は解散し、宮崎の"しあわせの村"は高齢化が進むばかり。かつてヤポネシア各地にあった"ナロードニキ(日本版「常民の中に」)"的なコミューンは、21世紀となった時代の変化を取り入れて、変容・維持されているのでしょうか。それとも、かたくなに原理を固持して土に根ざしているのでしょうか。
こうした理想主義的田園生活や、常民の海へ入り込むコミューンを達成してきた先輩や、都市を離れて表現活動をしているモノカキたちの行く末を見ていると、わたしには、〈都市の中の草庵〉住まいにこそ快があり、可能性に満ちているように思えてくるのです。
わたしのこの英詩引用と短いメッセージを読んだ女性誌人からは、次のようなコメントが寄せられています。
〈循環型自足生活というならば、ひとを取り巻く環境は自然だけでなく、人間もその一角として、互いに熟成し成長を続けると共に、若い新たな活気が吹き込まれる余地を持ち、知恵や力を交歓するべきなのかもしれません〉
感謝。