四月の末日である今日は、"みそか"(=各月の末日をこう呼ぶ)。
そうそうかつて、何年前だったか、幼かったわたし(弟)と姉の間でとある月の"みそか"の日にこんな会話を交わしたのを思い出しました。
姉◆「いやあ、Mさん、来(き)はったわ」
弟◇「え、来(き)はったん、いつもより早いんとちゃう」
姉◆「そうや、いっつも、つごもり(月の最後の10日間)過ぎて月開けて五日目ぐらいやのに」
弟◇「Mさん、ほんでも太陽暦やのうて太陰暦でものごと決めはる人やろ」
姉◆「あんた、よ~知ってるな、そうや。だいたい正確に来(き)はんのに」
弟◇「今日も大きな荷物、背たろうて来てはるわ」
姉◆「今月はどんな反物、持ってきはったんやろ」
弟◇「んでも、予定より早い今日来(く)んのは、グツ(=具合)悪いんやろ」
姉◆「いやあ、それがそうでもないらしいんよ。今月からMさんが来(き)はるのは、ええことで、言ってみたら、オンチョーやねんて。先月までは来(き)はっても、坊(ぼん)さんの月命日まいりみたいに「ああ、もうそんな日ぃかいな」ぐらいやったやろ」
弟◇「どういう意味か分からん。ほんでなに、オンチョー? あっ、わかった、ぼくつねづね思(おも)てんねんけども、Mさんて、鳥やと思うねん。鳥の顔に似てるやろ、ほらなんとかいう、そこいらをうるさ言いもって飛びまわっている鳥。"音鳥"て書くんやろ。なんかどっかの図鑑で見たで」
姉◆「あんたアホやなあ、オンチョーは"恩寵"と書くねん」
弟◇「ぼく、そんな難しい字習ろてへんもん。で、どういう意味なん?」
姉◆「大人になったら分かるて、言(ゆ)うてはったわ」
弟◇「ほんなら、おねえちゃん、分からへんやろ」
姉◆「いや、テンゴ言(い)いな、わかるしぃ」
弟◇「わかった、あのMさん、いっつも大きな風呂敷包み持ってきはるやろ。あれ、反物やのうて、羽根が入っているんとちがう。疲れたら、羽根つけて京都の呉服問屋に飛んで帰りはんのやわ。おとなは、そんなこと、こどもに言うたら、鳥から反物買ってるのばれるから、言(ゆ)わへんのやろ。ねえちゃん、そんなとこやろ」
姉◆「…うん…、…まあ…、そんなとこやろね」
弟◇「ほんなら、Mさんのいる座敷に行ってあの人は実は鳥やいうこと、確かめへん。面白(おもろ)いやん」
姉◆「あんた、ひとりで行(い)っとき」
弟◇「オンチョーの意味も知りたいんやろ。それに、今月はお茶菓子も上等なん出てるで。見にいこ、見にいこ」
姉◆「うん、もおー」
弟◇「はよはよ。弟として、おねえちゃんのレベルに合わせるのも大変なんやから」
姉◆「こら! 聞こえてるえ」
弟◇「痛(いっ)た~、本気でこつかんといてえな」
そうそうかつて、何年前だったか、幼かったわたし(弟)と姉の間でとある月の"みそか"の日にこんな会話を交わしたのを思い出しました。
姉◆「いやあ、Mさん、来(き)はったわ」
弟◇「え、来(き)はったん、いつもより早いんとちゃう」
姉◆「そうや、いっつも、つごもり(月の最後の10日間)過ぎて月開けて五日目ぐらいやのに」
弟◇「Mさん、ほんでも太陽暦やのうて太陰暦でものごと決めはる人やろ」
姉◆「あんた、よ~知ってるな、そうや。だいたい正確に来(き)はんのに」
弟◇「今日も大きな荷物、背たろうて来てはるわ」
姉◆「今月はどんな反物、持ってきはったんやろ」
弟◇「んでも、予定より早い今日来(く)んのは、グツ(=具合)悪いんやろ」
姉◆「いやあ、それがそうでもないらしいんよ。今月からMさんが来(き)はるのは、ええことで、言ってみたら、オンチョーやねんて。先月までは来(き)はっても、坊(ぼん)さんの月命日まいりみたいに「ああ、もうそんな日ぃかいな」ぐらいやったやろ」
弟◇「どういう意味か分からん。ほんでなに、オンチョー? あっ、わかった、ぼくつねづね思(おも)てんねんけども、Mさんて、鳥やと思うねん。鳥の顔に似てるやろ、ほらなんとかいう、そこいらをうるさ言いもって飛びまわっている鳥。"音鳥"て書くんやろ。なんかどっかの図鑑で見たで」
姉◆「あんたアホやなあ、オンチョーは"恩寵"と書くねん」
弟◇「ぼく、そんな難しい字習ろてへんもん。で、どういう意味なん?」
姉◆「大人になったら分かるて、言(ゆ)うてはったわ」
弟◇「ほんなら、おねえちゃん、分からへんやろ」
姉◆「いや、テンゴ言(い)いな、わかるしぃ」
弟◇「わかった、あのMさん、いっつも大きな風呂敷包み持ってきはるやろ。あれ、反物やのうて、羽根が入っているんとちがう。疲れたら、羽根つけて京都の呉服問屋に飛んで帰りはんのやわ。おとなは、そんなこと、こどもに言うたら、鳥から反物買ってるのばれるから、言(ゆ)わへんのやろ。ねえちゃん、そんなとこやろ」
姉◆「…うん…、…まあ…、そんなとこやろね」
弟◇「ほんなら、Mさんのいる座敷に行ってあの人は実は鳥やいうこと、確かめへん。面白(おもろ)いやん」
姉◆「あんた、ひとりで行(い)っとき」
弟◇「オンチョーの意味も知りたいんやろ。それに、今月はお茶菓子も上等なん出てるで。見にいこ、見にいこ」
姉◆「うん、もおー」
弟◇「はよはよ。弟として、おねえちゃんのレベルに合わせるのも大変なんやから」
姉◆「こら! 聞こえてるえ」
弟◇「痛(いっ)た~、本気でこつかんといてえな」