Cape Fear、in JAPAN

ひとの襟首つかんで「読め!」という、映画偏愛家のサイト。

『Cape Fear』…恐怖の岬、の意。

紙はしぶとい

2015-11-11 05:51:35 | コラム
【2015総括シリーズ その四】

本年の総括、きょうは漫画や雑誌、写真集も含めた「本=印刷物」でいってみよう。

ここ数年、ずっと「紙が売れない」といわれつづけている。

たしかにそれは事実で、休刊・廃刊に追い込まれる雑誌は「創刊される雑誌」の3倍ちかい。
新聞の購読者は年々減りつづけ、
電車に乗ってみれば分かるとおり、ほとんどのひとがスマホかタブレットをいじくっており、一般書や文庫を読んでいるひとは皆無にちかい。

自分だって文章を読んでいるにはちがいないが、たとえば電車のなかではタブレットで電子書籍を読んじゃっている。
5年くらい前までは「ページを繰る楽しみがないという点で」抵抗があったが、いまはそれにも慣れた。

しかし、絵本は売れているのだそうだ。

そして、文芸でも例外的に売れたものがある。
芸人・又吉直樹の芥川賞受賞作『火花』は、本年で最も売れた小説となった。

面白かったが、「んん…」と思わないところがないでもない。
しかし「某KAGEROU」よりはマシだし、
なんでもそうなのだが、たとえそれがミーハー感覚だったとしても「それきっかけ」でモノを読む行為が習慣づけられるとするならば、歓迎すべきことじゃないかと。

文章の世界の端っこでモノを書き、モノを喰う人間として、切にそう思うのであります。


(1)漫画…『下ネタという概念が存在しない退屈な世界』(原作・赤城大空、作画・柚木N’)

なんもいえねぇ。



表現の限界まで、突き進んでほしい。

(2)小説…『永い言い訳』(西川美和)

映画監督としては中堅的な存在だが、はっきりいえば自分は、物書きとしての美和さんにこそ将来性を感じてしまう。

(3)絵本…『おやすみなさいダース・ヴェイダー』(ジェフリー・ブラウン著、富永晶子・訳)

かわいい。



さらなるシリーズ化を望む。

(4)ノンフィクション…『殺人犯はそこにいる 隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件』(清水潔)

一気に読みたくなるが、読んだら読んだでドッと疲れるし、この世界が嫌いになる可能性が大きい・・・ものの、ページを開くと読むことをやめられないノンフィクションの労作。

野放しにされているという犯人を、司法はどうするつもりなのだろうか。

(5)漫画…『累 かさね』(松浦だるま)

美醜をテーマにする作品に触れるのは、漫画では『洗礼』(楳図かずお)以来か。

繊細な描写で人間の暗部を抉りまくり、ぐいぐい読ませる。

(6)小説…『君の膵臓をたべたい』(住野よる…トップ画像)

目を引くタイトルだが、物語そのものは普遍的なものであったりする。

きっと、映像化されるのではないか。

(7)小説…『ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス』(滝口悠生)

自分が芥川賞選考委員であれば、これを推したことだろう。

(8)ノンフィクション…『アダルト 二階堂ふみがきいた大人の話』(二階堂ふみ)



滑稽なまでに貪欲なふみちゃん、好きだ。

(9)ノンフィクション…『女子大生風俗嬢 若者貧困大国・日本のリアル』(中村淳彦)

センセーショナルなタイトルだが、きっちり取材されていることが分かる。

自分もAV女優や風俗嬢のインタビューを「飽きるほど」してきたが、その現象は「いまに始まったことではない」のである。

(10)小説…『その女アレックス』(ピエール・ルメートル著、橘明美・訳)

映画化が進行中の傑作サスペンス。



「ページを繰る楽しみ」とは、こういうことなのだと思う。





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明日のコラムは・・・

『ヘッドフォンとは無縁、だけれど』

コメント (2)
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