その後、石崎は仕事の合間を縫って自分が若い頃に開業に関わった販売店を訪ねて回る事にした。
最初は皆懐かしがってくれたが、話し込むほどに愚痴になる。
やはりどこも似たり寄ったりのようだ。
規制緩和で異業種参入が認められ、ホームセンターでも灯油を販売するようになり、巡回販売の業者も増えた。彼らは業者間転売ルートでの流通になるので価格に差が出来る。
しかも大口取引になるので、仕入値の差は更に開いている筈だ。
又、経費削減の一環として社有車両をリース車に変えたり、全国流通の元売カードでの給油に切り替えたりする取引先の企業も増え、燃料油のマージン圧縮はもちろん、オイル交換などの油外収益も望めなくなったという。
個人客にしても、セルフや広域業者の安さを売りにする店に客足を奪われ、灯油も巡回販売の業者やホームセンターで購入する人が増え、冬場でも昔ほどの量が出なくなったという。
田舎の方でも以前は農家自らが農作業をしていたので農繁期には農機具用の軽油配達も忙しかったのが、高齢化などで農協に委託する所が増えたせいで、それも無くなった。
そういう変化がここ数年で急激に起こったのだ。
どこも皆言うことは同じだ。
「いったいどうなっているのか?」
「社員にボーナスを支給するため、役員報酬を取れない月が年に数回ある」
「自分の給料を取れないどころか、預貯金を崩さなければ支払いができない月がある」
「自分の所の仕入値から考えたら、あんな売価で余所は皆どうしてやっていけているのか?」
特石法が廃止され、大手商社が韓国などから安いガソリンを輸入してPB(プライベートブランド)のガソリンスタンドで販売した。
元売も、元売の資本が入っていたり、取引量が多い特約店や広域業者などへは差別対価で安く卸すので、そういった販売店は大手商社のPB価格に対抗することが出来るが、高値で卸される一販売店にはその市況価格に追随することは不可能に近いのだが、
・・・ここが他業種から馬鹿にされる所でもあるのだが、「この業界は勘定では無く感情で商売をしている」、と。
つまり、「隣の店が○○円なら俺の所はそれより1円下げて売ってやる」といった具合だ。
利益も出せないまま、そういった形で価格競争に巻き込まれているのだ。
消費者にとってはガソリン価格が安くなるのは大歓迎だろう。
「スタンドの数が多すぎる、もっと淘汰されるべきだ」
「経営努力をしてこなかった店が潰れるのは自業自得だ」といった声もある。
確かに、接客力の向上や経営戦略といったことに無頓着な経営者が多いことも事実だ。
消費者は、系列と業転という2本ある燃料の流通ルートのことなど知らない。
古い店より新しい店、高い店より安い店を選ぶのは当然だ。
又、大手商社や広域業者の方は接客技法などセミナーで社員教育をしており、その点でも勝っている。
しかし、生業的に営業している個人が、「ならば!」と5千万から一億も掛かる新店舗を大企業のように簡単に建てられる筈もないし、少ない人員ではセミナーに参加させることもままならないであろう。
あまりにも違う資本力の前ではどうしたって太刀打ちできない。
それに又、差別対価という仕切り値の違い・・・言ってみれば自分の力ではどうしようもない所で闘わされているようなもので、そんな勝負の勝敗は最初から決まっているようなものなのだ。
それでも中には、経営手腕に優れた経営者の下で、この厳しい状況の中でも業績を伸ばしている販売店も確かに在る。
だが、ただ真面目なだけが取り柄といった経営者が多いのだ。
「同じ土俵なら、地場でやっている私たちが負ける筈はないのに」
これがそういった経営者たちの思いだ。
つづく
※この物語はmasumiさんの被害妄想に基づくフィクションです(^^;
実在の人物及び団体とは一切関係ございません。
尚、加筆修正及びキャラの変更等もあるやも知れませぬことをお断り申しておきまする(^^;
最初は皆懐かしがってくれたが、話し込むほどに愚痴になる。
やはりどこも似たり寄ったりのようだ。
規制緩和で異業種参入が認められ、ホームセンターでも灯油を販売するようになり、巡回販売の業者も増えた。彼らは業者間転売ルートでの流通になるので価格に差が出来る。
しかも大口取引になるので、仕入値の差は更に開いている筈だ。
又、経費削減の一環として社有車両をリース車に変えたり、全国流通の元売カードでの給油に切り替えたりする取引先の企業も増え、燃料油のマージン圧縮はもちろん、オイル交換などの油外収益も望めなくなったという。
個人客にしても、セルフや広域業者の安さを売りにする店に客足を奪われ、灯油も巡回販売の業者やホームセンターで購入する人が増え、冬場でも昔ほどの量が出なくなったという。
田舎の方でも以前は農家自らが農作業をしていたので農繁期には農機具用の軽油配達も忙しかったのが、高齢化などで農協に委託する所が増えたせいで、それも無くなった。
そういう変化がここ数年で急激に起こったのだ。
どこも皆言うことは同じだ。
「いったいどうなっているのか?」
「社員にボーナスを支給するため、役員報酬を取れない月が年に数回ある」
「自分の給料を取れないどころか、預貯金を崩さなければ支払いができない月がある」
「自分の所の仕入値から考えたら、あんな売価で余所は皆どうしてやっていけているのか?」
特石法が廃止され、大手商社が韓国などから安いガソリンを輸入してPB(プライベートブランド)のガソリンスタンドで販売した。
元売も、元売の資本が入っていたり、取引量が多い特約店や広域業者などへは差別対価で安く卸すので、そういった販売店は大手商社のPB価格に対抗することが出来るが、高値で卸される一販売店にはその市況価格に追随することは不可能に近いのだが、
・・・ここが他業種から馬鹿にされる所でもあるのだが、「この業界は勘定では無く感情で商売をしている」、と。
つまり、「隣の店が○○円なら俺の所はそれより1円下げて売ってやる」といった具合だ。
利益も出せないまま、そういった形で価格競争に巻き込まれているのだ。
消費者にとってはガソリン価格が安くなるのは大歓迎だろう。
「スタンドの数が多すぎる、もっと淘汰されるべきだ」
「経営努力をしてこなかった店が潰れるのは自業自得だ」といった声もある。
確かに、接客力の向上や経営戦略といったことに無頓着な経営者が多いことも事実だ。
消費者は、系列と業転という2本ある燃料の流通ルートのことなど知らない。
古い店より新しい店、高い店より安い店を選ぶのは当然だ。
又、大手商社や広域業者の方は接客技法などセミナーで社員教育をしており、その点でも勝っている。
しかし、生業的に営業している個人が、「ならば!」と5千万から一億も掛かる新店舗を大企業のように簡単に建てられる筈もないし、少ない人員ではセミナーに参加させることもままならないであろう。
あまりにも違う資本力の前ではどうしたって太刀打ちできない。
それに又、差別対価という仕切り値の違い・・・言ってみれば自分の力ではどうしようもない所で闘わされているようなもので、そんな勝負の勝敗は最初から決まっているようなものなのだ。
それでも中には、経営手腕に優れた経営者の下で、この厳しい状況の中でも業績を伸ばしている販売店も確かに在る。
だが、ただ真面目なだけが取り柄といった経営者が多いのだ。
「同じ土俵なら、地場でやっている私たちが負ける筈はないのに」
これがそういった経営者たちの思いだ。
つづく
※この物語はmasumiさんの被害妄想に基づくフィクションです(^^;
実在の人物及び団体とは一切関係ございません。
尚、加筆修正及びキャラの変更等もあるやも知れませぬことをお断り申しておきまする(^^;
あと、自動車保険の代理店なんかも・・・