報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「最終的に行き着く先」

2022-10-21 11:51:07 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月12日08:00.天候:晴 宮城県仙台市若林区某所 愛原の実家]

 愛原:「今日は一旦、荷物を持って出るぞ」
 高橋:「あ、はい。分りました」

 朝食中、私はそう言った。

 高橋:「お盆期間ですし、御親戚の方が来られるんですね」
 愛原:「そうだ。その間はホテルに泊まってもらうから」
 リサ:「先生は?」
 愛原:「俺は親戚付き合いがあるから、家にいるよ。親戚達が帰ったら、またここに来れるから」
 リサ:「『先生のお嫁さんです』って、紹介……」
 愛原&高橋:「せんでいい!」

[同日09:15.天候:晴 同区白萩町 仙台市地下鉄薬師堂駅→東西線(列番不明)電車先頭車内]

 出発の準備が整った私達は、最寄りの地下鉄駅に向かった。

 高橋:「探索と言っても、随分ゆっくりなんですね?」
 愛原:「まあ、同じ仙台市内だからな」
 高橋:「え?そうなんですか?」
 愛原:「それに、順調に行けば金庫はすぐに見つかる」
 高橋:「そうなんですか」

 

 愛原:「今が夏で良かったよ」
 高橋:「そうなんですか?」
 愛原:「山奥だから、冬だと大変だ」
 高橋:「え、でも、仙台は雪が少ないんじゃ?」
 愛原:「それはこういう平地の話だよ。これから行く所は、仙台でも山奥の場所だ。冬は凄い雪だぞ」
 高橋:「そうなんですか」

〔1番線、2番線に、電車が到着します〕

 仙台市地下鉄もパターンダイヤが組まれており、この薬師堂駅は東西方向の電車が同時発着する駅である。
 その為、パターン外である深夜・早朝やダイヤが乱れている時などを除けば、接近放送も簡素なものとなる。
 4両編成の電車が到着する。
 都営大江戸線みたいな構造だが、それの半分の長さだ。
 電車に乗り込み、私達はドア横の手すりや吊り革に掴まった。

〔1番線、2番線の電車が発車します〕

 短い発車サイン音が乗って、ドアが閉まる。
 開業時からホームドアが設置されており、電車もワンマン運転である。

〔次は連坊、連坊。仙台一高前です〕

 坊が連なると書いて、連坊。
 この坊とは、寺院のことを指す。
 寺院が連なる、つまりお寺の多い地区なのである。
 私が家族や親戚で参詣しに行くお寺も、最寄り駅としてはそこにある。

 リサ:「鬼斬り先輩、怒るよ」
 愛原:「何が?」
 リサ:「『そんな邪宗の寺に行って、ホーボーだー』って」
 愛原:「ホーボー?」

 謗法のことか。
 まあ、日蓮正宗は他の宗派を一切認めない教えだからな。

 高橋:「先生んとこのお寺は何宗なんですか?」
 愛原:「曹洞宗だな。いわゆる、禅寺だよ」
 高橋:「ああ、座禅を組むんですね」
 愛原:「そう!……禅寺というところは、食事も修行の1つと考えているようでね」
 高橋:「何か、『ちゃんこも稽古の1つだ』の相撲みたいですね」
 愛原:「そうかもな。あそこの精進料理が美味くてね。それだけが楽しみだよ」
 リサ:「精進料理……!?」

 リサが反応する。

 愛原:「精進料理に、肉や魚は入っていないからな?」
 リサ:「なーんだ……」
 高橋:「それに、邪な鬼なんか入れちゃったら、先生に罰が当たりますぜ」
 リサ:「邪じゃないもん!」
 愛原:「何か、蓮華も言ってたな」

 仏教から邪鬼扱いされるリサw
 恐らく、衆合地獄に現れるという美しい鬼女のように見られるのだろう。

[同日09:21.天候:晴 仙台市青葉区中央 仙台市地下鉄仙台駅→JR仙台駅]

〔せんだい、仙台。南北線、JR線、仙台空港アクセス線はお乗り換えです〕

 電車が仙台駅に到着する。
 この駅での乗降は多い。
 私達も電車を降りた。

 愛原:「余計な荷物は、コインロッカーに預けておこう」
 高橋:「はい」
 愛原:「あくまでも、探索に必要な物だけを持って行くんだぞ」
 高橋:「もちろんです」

 地下鉄の改札口を出るのは当然だが、その足で地上に向かう。
 地下鉄駅構内にもコインロッカーはあるが、私達はJR側のコインロッカーを利用することにした。
 探索が終わってから回収することになるので、JRの駅に近い所の方が良いと思ったからだ。

 愛原:「忘れ物は無いか?」
 高橋:「大丈夫です。救急スプレーも持ちました」
 愛原:「それ、必要かなぁ……?」
 リサ:「グリーンハーブは持っていた方がいいかもね」
 愛原:「またメタ発言を……」

 とにかく、今は必要でない荷物をコインロッカーに預けた私達は、今度はJRの在来線乗り場に向かった。

 高橋:「ん?Suica使わないんスか?」
 愛原:「今度の行き先は、Suicaのエリア外なんだよ」
 高橋:「え!?そんなド田舎?!」
 愛原:「そんなド田舎にこれから行く所なんだよ」

 その為、その駅まで行くのには紙の乗車券でなければならない。

 リサ:「新幹線のキップ以外で、紙のキップで乗るの久しぶり」
 愛原:「だろうな。無くすんじゃないぞ」
 リサ:「はーい」
 愛原:「必要な物があったら、今のうちにな」

 改札口を通過すると、コンコース内にはNEWDAYSがある。
 リサは当然のように、そこに立ち寄った。

 高橋:「先生、昨日の事が新聞に載ってますよ」
 愛原:「そうだろうな」

 私は地元の新聞を購入することにした。
 地元の地方紙ということもあり、昨日の事件の事は一面記事トップで伝えている。
 『日本アンブレラの秘密施設か!?巨人が脱走!!』『渓流釣り場、阿鼻叫喚の地獄!!』『BSAAが出動し、対応に当たる』という見出しが目立った。

 愛原:「新聞によると、BSAAがあの巨人を退治してくれたらしい」

 他の面を見ると、巨人系BOWのイラストが描かれていた。
 『エルヒガンテか?』と書かれていたが、私もそう思った。
 尚、プロレスラーのエル・ヒガンテ氏とは何の関係も無い。
 エルヒガンテは『追跡者』たるBOWとはまた違うので、昨日の私の緊張は杞憂だったということになる。

 愛原:「また、こういうのがいるかもしれん。心して行こう」
 高橋:「はい」
 リサ:「お待たせー」
 愛原:「だから、また色々と食べ物を買うー!」
 リサ:「探索はお腹が空くからね」
 高橋:「現地調達しろや!」
 愛原:「いや、それは恐らくムリだと思う」
 高橋:「そ、そうっスか!」

 これ以上、リサが余計な食べ物を買わないよう、早めにホームに行くことにした。
 多分、まだ電車は入線していないと思うが。
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“私立探偵 愛原学” 「最終的に行き着く先は?」

2022-10-20 20:25:27 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月11日21:00.天候:晴 宮城県仙台市若林区某所 愛原の実家]

 リサ:「お風呂上がりましたー」

 リサは再び体操服とブルマに着替えていた。

 愛原の母親:「はい。脱いだ服は洗濯カゴに入れておいてね。洗濯しておくから」
 リサ:「ありがとうございます。お義母さま!」
 母親:「は?」
 愛原:「こら!」
 高橋:「おい!」

 リサの奴、油断も隙も無い。

 愛原:「高橋、次はオマエ、入って来いよ」
 高橋:「いいんスか?」
 愛原:「オマエも相当汗かいただろ。さっさと洗って来い」
 高橋:「そういや、変な汗、かきまくりましたからねぇ……。じゃあ、お先に失礼します」
 愛原:「ああ。リサも奥の部屋に行ってろ」
 リサ:「はーい」

 高橋が風呂に、リサが客間に行くと、リビングには私と両親だけしかいない。

 父親:「明日も出掛けるのか?」
 愛原:「思いの外、大掛かりな仕事でね。まあ、半分以上は伯父さんのせいなんだけど」
 父親:「あの人も困ったものだ。義姉さんの所で、しばらくおとなしくしておいた方がいい」
 愛原:「それで、また明日も車を借りられるかな?」
 父親:「いや、さすがに明日はダメだ」
 愛原:「ダメか……」
 父親:「明日は買い物とか、色々出かけないといけないから」
 愛原:「そうか……」

 それなら明日は、電車などで移動しないとダメか。

 父親:「明日は一体、どこへ行くつもりなんだ?」
 愛原:「伯父さんが小牛田に住む前に、住んでいた家だよ」
 父親:「? 何だって、またそこへ?」
 愛原:「俺は子供の頃、その家に連れて行かれたことがある」
 父親:「ああ、あれか。だけど、あの家は今、人手に渡ったんじゃなかったか?」
 愛原:「その家の鍵が、裏の物置にあったんだよ」
 父親:「そうなのか?しかし、勝手に入るのは……」
 愛原:「勝手に入って大丈夫さ。家主の人は、もういないことになっているから」
 父親:「ん?ん?ん?どういうことだ?」
 愛原:「とにかく、お父さんは何も心配しなくていいよ」
 父親:「しなくていいよって、オマエ……」

 今の家主は五十嵐皓貴。
 そう、かつての日本アンブレラの代表取締役社長だった男だ。
 息子の元副社長共々逮捕され、今はドロドロの裁判劇を繰り広げている。
 確か今は、東京高裁で争っているのではなかったか。
 弁護士の見解では、控訴棄却となって、地裁の判決通りの有罪で決まりだろうとのこと。
 だがあの2人のことだから、最高裁へ上告するだろう。
 これまた何年も掛かるというわけだ。
 そして、研究職の最高責任者だった白井伝三郎はとっとと遁走していると。
 もちろん五十嵐はあの家に住むつもりは毛頭無く、秘密の研究所として使用するつもりだったのだろう。

 愛原:「あの家さ……。この家が建て替えられる前の家と、似たような構造だったんだよな」
 父親:「ああ。どういうわけかな」

 私の記憶が曖昧だった理由も分かった。
 伯父さんが私の前で金庫を開け閉めしていたのは、この家ではなかった。
 そして、私にはもう1つ不可解な記憶がある。

 愛原:「あの家にいた時、俺は偏頭痛のような症状に襲われたことがある。薬を飲んで寝ていたんだけど、俺が何十時間眠っていたか覚えてる?」
 父親:「伯父さん曰く、『脳の病気だが、知り合いの医学者から新しい薬をもらったから、それを飲ませた』と言っている」

 その医学者が誰なのかは分からないが、アンブレラの人間だった可能性はある。
 そして、私が飲んだ薬というのは……。

 愛原:「俺は昼間に眠った。そして目が覚めたら、太陽が西に傾いていた。だから昼から夕方まで眠ったんだろうと思った」

 この時、私の頭はスッキリしていた。
 偏頭痛が嘘のように。
 しかし、あの薬はロキソニンという常識的な薬ではなかっただろう。
 とにかく、本来なら脳の病気で死んでいた私は、こうして生きている。

 父親:「だが、オマエが起きたのは、その次の日の朝だったんだ」

 どうしてそのような事が発生したのか。
 私は眠っている間に、伯父さんの家からこの家に戻されただけだったのだ。
 家の構造は同じ。
 そして、部屋の造りも同じ。
 違うのは、家の向きだけ。
 2階の部屋を出た私は、太陽が傾いているのを見て、西と東を間違え、それが更なる体内時計に狂いを発生させた。

 愛原:「そもそも俺は、どうしてあの家で頭痛を起こしたんだろう?」
 父親:「さあな。子供の頃はオマエは、酷い頭痛持ちだった。酷すぎて、何度も吐いたりしただろう?」
 愛原:「ああ」

 偏頭痛の重い症状の1つ。
 吐き気と嘔吐。
 今は頭痛など、飲み過ぎた時くらいしか経験していない。
 それも、リサと会って以来だ。
 恐らく、リサに何か植え付けられたんだと思う。
 だが、それ以上リサは何もしてこない。
 しようものなら、私に嫌われることを知っているからだ。
 そしてそれは、リサにとっては最大の懸念である。

 愛原:「その家に、明日行こうと思うんだ」

 そして、そこで金庫開けツアーは終わるものと信じている。

 父親:「分かった。気をつけて行けよ。……ああ、それと明日からは親戚達がお盆で前泊しに来る。悪いけど、あのコ達は……」
 愛原:「分かってるよ。あの2人には、明日はホテルに泊まってもらうから」
 父親:「すまんね」
 愛原:「いやいや」

[同日23:00.天候:晴 愛原の実家]

 私も風呂に入った後は、奥の客間に向かった。
 2階には私の自室がある。
 恐らくそこに住めば、私も『子供部屋おじさん』になるのだろう。
 しかし今夜は、高橋達と寝ることにした。

 愛原:「明日は電車で出掛けるが、考えようによってはその方がいいかもしれない」
 高橋:「そうですか。そんなに交通の便利な所なんですか?」
 愛原:「都会的な考え方ではな」
 高橋:「ん?」
 愛原:「ま、とにかく寝よう」
 高橋:「はい」

 1階の奥には仏間と客間がある。
 仏間は床の間を兼ねていて、和室8畳である。
 その隣には襖を隔てて、6畳間がある。
 私と高橋は8畳間に布団を敷き、リサはその隣の部屋で寝てもらっている。
 だが……。

 愛原:「リサ、覗くな!不気味だぞ!」
 リサ:「ちっ……!」

 襖の隙間から、赤い瞳を光らせたリサの目が覗いていた。
 心霊写真が写る事、請け合いである。

 リサ:「先生、わたしの布団に、いつでも来ていいからね?」
 高橋:「アホ!さっさと寝ろーっ!」

 明日で探索が終わるといいなぁ……。
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“私立探偵 愛原学” 「逃走」 2

2022-10-20 14:30:10 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月11日17:30.天候:雨 宮城県柴田郡川崎町 中心街のコンビニ→山形自動車道]

 コンビニには、およそ30分ほど滞在した。
 リサのトイレが長かったので、少し心配したが、どうにか間に合ったという。
 戦いの後ということもあってか、肉を希望した。
 そこで私は、レジ横にあるショーケースからフライドチキンを2本買ってあげた。
 私は私で、ペットボトルの飲み物を買う。

 愛原:「そろそろ行こうか」
 高橋:「はい」

 休憩を終えると、私達は再び車に乗り込んだ。

 愛原:「慌てる必要は無いんだが、急いで帰った方がいいかもな」
 高橋:「と、言いますと?」

 車は宮城川崎インター前の交差点で、信号待ちの為に止まっている。
 この時点で雨は弱くなり、雷も遠くになりつつあった。

 愛原:「あの巨人が何なのかは分からない。恐らく、ロス・イルミナドス教団が用意したエルヒガンテ辺りの仲間のような気がするけどな」
 高橋:「資料によりますと、あれもだいぶ昔のBOWでしょう?」
 愛原:「だからって、今でもいないとは言い切れない。何しろ、もっと昔のBOWの日本式改良版がここにいるんだから」

 私はリサを指さした。

 リサ:「んふ?」

 リサはフライドチキンを頬張っていた。
 もう既に1本は食べ終わり、骨に残った肉を名残惜しそうにしゃぶっている。

 愛原:「まあ、もちろんタイラントの類とも考えられるが、俺はあまり巨人風のBOWにいいイメージは持っていないんだ」
 高橋:「どういうことっスか?」

 信号が変わる。
 前に少し進むが、インターは右折した先にある為、対向車がいると曲がれない。

 愛原:「タイラントにしろネメシスにしろ、その後の時代に登場した奴らにしろ、巨人系BOWは『追跡者』というイメージが強い」
 高橋:「な、なるほど」

 黒幕の命令を受けて、主人公達を執拗に追いかけ回す巨人系BOW。
 ここにいるリサと同様、最初のうちは主人公達の攻撃を殆ど受け付けない。
 アメリカのオリジナルのリサ・トレヴァーは狭義の『追跡者』とは言えないが、主人公達を先回りしていることが多く(但し、本人にその自覚はあったのかどうかは不明。たまたま出先に、同じ主人公が現れただけかもしれない)、広義の『追跡者』に含める事もあるようだ。

 愛原:「俺が言いたいのは、あの巨人もまた『追跡者』型で、そのターゲットが俺達に指定されてやしないかという心配だよ」
 高橋:「そ、そんなことってありますかね?」
 愛原:「いや、分からん」
 高橋:「分かりませんか……」

 信号が変わったタイミングで、高橋はインターへの連絡路に入った。

 愛原:「リサはどう思う?」
 リサ:「追跡者かどうかは分からないけど、わたし達の後を追っていたのは確かだと思う」
 愛原:「だよなぁ……」

 ETCレーンから料金所を通過し、高速道路の上り線に入る。
 この頃には雨は殆ど止んで、西の空からは太陽が顔を出し始めていた。

 高橋:「姉ちゃんからはまだ何も?」
 愛原:「まだだ。今頃はBSAAも駆け付けてるだろうから、追跡者もロケラン一発でKOだと思うんだが……」
 リサ:「ネメシスのクソ野郎は、アメリカではそのロケランの弾を拳で弾き返したらしいよ?」
 愛原:「あ、そうだった!」

 クソ野郎って……。
 リサも汚い言葉を使うこともあるんだな。
 まあ、ネメシスに対しての気持ちは分かるが。

 愛原:「だからネメシスに対しては、レールキャノンぶっ放してようやく倒したんだっけか。後のBSAA創設組とはいえ、まだ当時は婦警さんだったのに、あのジル・バレンタイン氏は凄いな」
 高橋:「さすがは、“オリジナル・イレブン”っスね」

 BSAA創設組の手に掛かれば、ここにいるリサも最終形態への変化を余儀無くされ、しかしそれでも倒されてしまうことだろう。
 幸いなことに、彼らの殆どは欧米人である。
 日本に駐在している者は、誰一人いない。

 高橋:「先生、途中で給油しますよね?」
 愛原:「ああ。オマエのENEOSカード使おう。Tポイントも、それで溜めていい」
 高橋:「あざっス!」
 愛原:「料金は後で俺が立て替えといてやるから」
 高橋:「あざっス!」

[同日18:30.天候:晴 宮城県仙台市若林区某所 ENEOSスタンド]

 宮城川崎インターから山形自動車道に入り、村田ジャンクションから東北自動車道下り線に入る。
 あとは、元来た道を戻るだけ。
 仙台南ジャンクションで仙台南部道路に入り、長町インターで降りる。
 そこから国道4号線(仙台バイパス)の下り線に入り、その沿道にあるENEOSのセルフスタンドに入った。

 愛原:「リサ、ゴミ捨てて来てくれ」
 リサ:「はーい。ついでにトイレ行って来る」
 愛原:「行ってらっしゃい」

 尿便意が近いのではなく、恐らく今はナプキンを早めの周期で交換しなくてはならないのだろう。

 愛原:「だいぶ、車汚れたな」

 未舗装路を往復した上、帰りはゲリラ豪雨の中を走るハメになり、洗い越しを何ヶ所も通過したからだろう。

 高橋:「洗車します?」
 愛原:「そうだな。そうしよう」

 先に給油を行う。
 それが終わる頃、リサが戻って来た。

 愛原:「! そうだ。リサ、車に乗ろう」
 リサ:「?」

 車は洗車機に移動する。
 セルフスタンドなので、洗車機も車に乗ったまま行う。

 リサ:「おお~!」

 案の定、初めて洗車機を利用するリサには新鮮な体験だったようだ。

 愛原:「父親から借りた車だから、さすがに汚いまま返すのはアレだからな」
 高橋:「仰る通りです」

[同日19:00.天候:晴 同区内某所 愛原の実家]

 こうして私達は、無事に私の実家に到着した。

 母親:「まあまあ、随分遅かったのね」
 愛原:「そ、そうかな」
 父親:「随分と遊び回ったみたいだな?」
 愛原:「いや、一応仕事だったんですけど……。あ、これ、福島のお土産」

 私は国見サービスエリアで購入した土産を渡した。

 父親:「おお、こりゃすまない。で、車は?」
 高橋:「満タンにして、洗車もしておきました」

 高橋はそう言って、キーレスリモコンを父親に返した。

 父親:「おー、洗車までしてくれたのか。悪いねぇ」
 高橋:「い、いえ……」

 未舗装の林道で汚れたからとは言えないか。

 母親:「すぐ、御飯用意するわね」
 愛原:「ありがとう。でも、その前に……」
 父親:「何だい?またどこか行くのか?」
 愛原:「大丈夫。家の敷地内だから」
 父親:「?」
 愛原:「父さん、また物置小屋の鍵、貸してくれないかな?」
 父親:「今から物置に行くのか?」
 愛原:「大丈夫。すぐ戻って来るから」
 父親:「……すぐ、戻って来いよ?」
 愛原:「分かってる」

 私は再び父親から物置小屋の鍵を借りると、裏庭に向かった。
 さすがに19時を過ぎると、真夏でも暗くなってくる。
 今日はお盆期間中でも裏庭で工事は行われたらしく、物置小屋への通路には蜘蛛の巣が張っていなかった。
 仮囲いの位置なども、若干変わっている。
 また、リサの睨みが効いているのか、物置小屋にはもう蜘蛛の巣は張っていなかった。

 愛原:「こういう時、力持ちの2人がいてくれて助かるよ」
 高橋:「お任せください!」
 リサ:「わたしに任せて」
 愛原:「じゃあ、早速頼む」

 私はあのプレハブ小屋の神棚に入っていた御札の裏を見ながら言った。
 高橋とリサが軍手をはめて金庫を持ち上げ、それをひっくり返した。

 愛原:「あー!やっぱりあったよ!チクショウ!」
 高橋:「とんでもない爺さんですね……!」
 リサ:「先生の伯父さんじゃなかったら、爪で引き裂いてやるところ」

 金庫の底には、鍵と筒が貼り付けられていた。
 私達はそれを一先ず回収し、家に戻ったのだった。
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緊急の夢日記20221020

2022-10-20 00:37:46 | 日記
本当は夢日記を書くのは不吉だと聞いたことがあるので、書きたくないのだが、しかしどうしても気になるので、ここに書き記しておく。

ある日の勤務中、私が巡回業務から警備室に戻ると、室内には台車でないと運べない程の大きさの段ボール箱があり、後輩(Y)が1人だけそこにいた。
私がこの荷物は何かと聞いてみると、今年入ったばかりの新人(KR)がメールセンター業務中、宅配業者から間違って受け取ってしまった荷物だという。
伝票を見ると、宛先はこのビルになっていたのだが、名前は本社の重役になっていた。
KRは住所だけを見てしまい、それは合っていたから受け取ってしまったのだろう。
それに、もしかするとこの重役が後にこのビルに来て、先に必要な物を送っただけかもしれないので、KRの対応が一概に間違いだとも言い切れない。
Yの話によると、隊長は総務課に行っていて、暫く戻って来ないらしい。
荷物がここにあるのは、何でも、すぐに業者を呼んで引き取らせる必要があるらしく、地下にあるメールセンターに置いていたのでは間に合わないからだという。
警備室は1階にあるので、正面から堂々と業者を出入りさせるつもりらしいな。
普段なら、有り得ない話なのだが。

そうこうしているうちに、箱の中から変な臭いがしてきた。
何だか生ゴミみたいな臭いだ。
隊長はまだ戻って来ないし、業者も来る様子が無い。
それでも止せばいいのに、何故かYは箱を開けてみようと言い出した。
普段の彼は私よりも冷静な性格なのだが、その割には大胆な事を言うものだ。
私が止めるより先に、彼は箱の蓋を開けてしまった。
ますます臭いは酷くなる。
私とYで中を見ると……何と!

バラバラ死体が入っていたのである。
私はすぐに目を背けたが、Yは冷静に、しかし薄笑いを浮かべながら頭部やら右腕やら左腕やらを確認している。
と、そこへ別のチームの後輩(KD)が警備室に入ってきた。
Yが30代なのに対し、KDは20代である。
何かあったのか聞いてくる彼に、私は無言で箱を指差した。
KDはその箱を興味津々に確認したが、やがて中身を理解すると急に無言になり、箱に向かって合掌し、最敬礼すると、トイレの方に向かって行った……。

という内容の夢だった。
あまりにも具体的過ぎるので、こうして夢日記として書き記しておきたいと思う。
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“私立探偵 愛原学” 「逃走」

2022-10-18 18:11:22 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月11日17:00.天候:雨 宮城県柴田郡川崎町 とある林道→コンビニ]

 私達は現場から逃げるようにして立ち去った。
 尚、途中の渓流釣り場に立ち寄るのはやめることにした。
 林道から更に奥に入った所にある為、もし追跡されていようものなら袋小路に追い詰められるようなものだし、何より、それで一般の釣り客が巻き込まれるようなことがあってはならないと思ったからだ。

 愛原:「取りあえず、町の中心部まで逃げよう」
 高橋:「はい!」

 林道を走行中、何度も後ろを振り向いたが、巨人が追って来ることは無かった。
 また、ゲリラ豪雨にも当たってしまった。
 未舗装の道をゲリラ豪雨の中走行するのだから、これもまたスリリングだ。
 晴天時には存在しなかった“洗い越し”が発生することも多々ある。

 愛原:「もしもし、善場主任ですか!?」

 私は大きく揺れる車内の中、スマホで善場主任に連絡を取った。
 そして、事の次第を説明した。

 善場:「お疲れ様です!それは大きなお手柄です!すぐにBSAAに探索と掃討を依頼します!詳しい報告書は後日の作成で結構ですので、まずは身の安全を最優先にしてください。もしもクリーチャーやBOWと遭遇するようなことがあれば、銃の使用を認めます」

 私と高橋は銃の所持が許可されている。
 また、使用許可に関しても、『バイオハザード事件に関わるBOWまたは異形の対敵に対してのみ許可』されている。
 つまり、今の善場主任の発言は、先ほどの巨人を『BOWまたは異形』認定したようなものである。
 電話で話している最中、車は舗装路に辿り着いた。
 ここまで来れば、国道286号線はもうすぐだ。
 最低でも、そこまで行けば安全だろう。
 地方の3桁国道とはいえ、沿道には高速道路のインターチェンジもあるから、深夜・早朝でもなければそこまで寂しくない。

 高橋:「先生、国道に出ました!」
 愛原:「よし!」

 といっても、まずは国道の旧道。
 三叉路になった橋が特徴。
 私達は改めて後ろを振り返ったが、巨人の姿は無かった。

 愛原:「ここまで来れば大丈夫だろう」

 ところがその時、パトカーのサイレンの音が聞こえて来た。

 高橋:「な、何だ!?」

 そのパトカーは近くの駐在所から来たのだろうか。
 いわゆる、ミニパトだった。
 国道286号線の現道を、川崎町の中心街方面からやってきた。
 しかしパトカーは、私達の車に気にも留めず、そのまま林道の方に入って行った。

 愛原:「何かあったのか?」
 高橋:「ま、まさかあの巨人が追って来てるんじゃ……?」
 愛原:「え!?」

 だが、有り得ない話ではない。
 巨人は私達を捕まえようとしていたわけだし、どうにかして地上に上がったなら、あとは林道を一本道だ。
 その際、あの渓流釣り場の出入口の前を通ることになる。
 その時、もしも釣り客が目撃したり、最悪襲撃されたりしたとしたら?
 当然、誰かが警察に通報するだろう。
 それで、最寄りの警察である駐在所からまずは出動するのが筋だろう。
 ……うん、私の推理、何だか当たってそうな気がする。

 高橋:「ど、どうしますか、先生?」

 A:パトカーの後を追う。
 B:このまま中心街に向かう。

 私はBを選択した。

 愛原:「街へ向かおう」
 高橋:「そうですか?」
 愛原:「善場主任からは、『まずは身の安全を最優先に』と言われている。それに、俺達の武器で倒せるかどうか分からない。取りあえず警察は出動したし、善場主任からもBSAAに出動依頼を掛けることになった。となると、もう俺達、民間人の出番は無い。邪魔にならないよう、なるべく現場から離れるのが正しいと思う」
 高橋:「分かりました」

 高橋は頷くと、車を走らせた。
 そして、国道286号線の現道上り線に入った。
 オレンジ色のセンターラインが引かれた、片側1車線の対面通行である。

 愛原:「リサの爪でも怯まなかったし、俺のショットガンでも大ダメージが与えられない。高橋のマグナムならいいダメージが与えられるかもしれないが、狙いが定められないと撃てないだろ?」
 高橋:「確かに」

 私の見立てでは、あの巨人は巨体な見た目に反して、動きは素早いように思える。
 それに対応できるのはリサだが、リサの小さな体で、あの巨体をどうにかできるのだろうかと思う。
 日本版リサ・トレヴァーが、あれと同じ巨人のタイラントを使役できるのは、この欠点に対応する為だとも言われてるので。
 残念ながら、今ここにタイラントはいない。
 もしもいたなら、迷わずそれをけしかけていただろう。

 リサ:「先生、トイレ行きたい……」

 リサが股間をモジモジさせて言った。

 愛原:「ん?そうだな……」

 高速に入れば菅生パーキングエリアという、パーキングエリアにしては大規模な休憩箇所があるのだが……。
 リサの様子からして、そこまで持ちそうにない。

 愛原:「高橋、途中にコンビニがあったら、そこに入ってくれ」
 高橋:「分かりました」

 とはいえ、こんな田舎の国道。
 そうそう滅多にコンビニがあるわけでもない。
 ようやくそれがあったのは、ほぼほぼ川崎町の中心街であった。
 高速入口のすぐ近くである。
 そこに滑り込むようにして入場し、店舗前の駐車場に止まった。

 高橋:「着きました!」
 愛原:「ご苦労!リサ、行ってきていいぞ!」
 リサ:「うん!」

 リサはポーチも一緒に持って、コンビニ店内に入った。

 高橋:「俺も一服して、何か飲み物買い足して来ます」
 愛原:「ああ。俺も行く……ん?」

 その時、また善場主任から着信があった。

 愛原:「ちょっと俺は電話するから、先に降りててくれ」
 高橋:「分かりました」

 高橋は車を降りて、タバコを手に喫煙所に向かった。

 愛原:「もしもし?」
 善場:「愛原所長、お疲れさまです」
 愛原:「何か、続報が?」
 善場:「はい。ちょっと大変なことになりまして、所長の仰る巨人型BOWが、釣り客を襲っているとの情報が入ってきました」
 愛原:「やっぱり!」
 善場:「今、BSAAがヘリで現場に向かっていますが、いかんせん天候不順で難航しています」

 空を見上げると、まだ暗く、雷鳴が轟いている。
 ゲリラ豪雨なのだから、1時間もすれば止むと思うのだが……。

 愛原:「こちらは今、凄いゲリラ豪雨で……」
 善場:「まずは宮城県警と自衛隊が対応に当たるようです。所長方は、現場から離脱してください」
 愛原:「はい。もうだいぶ離れていまして、今は町の中心街にいます。休憩した後、すぐに高速に乗って、まずは仙台の実家に引き上げるつもりです」
 善場:「承知しました。それで、探索の結果は如何でしたか?」

 私はプレハブ小屋の中で、次の行き先が書かれた御札を見つけたことを話した。

 善場:「そうですか。まだ、行き着いていないのですね」
 愛原:「何だか伯父さんに振り回されているようで、申し訳ないですね」
 善場:「いえ。これも、愛原公一氏の目論見なのかもしれません」
 愛原:「と、仰いますと?」
 善場:「所長方をそのような形で誘導することにより、自身の知っている日本アンブレラの関連施設を教えているのかもしれません」
 愛原:「な、なるほど……」

 それなら警察に逮捕された時とか、検察官の取り調べの時とかに話せば良かったのに、どうしてそうしなかったのだろうか?

 善場:「このような形を取れば、公一氏は逮捕されず、ただ単に情報を提供しているだけになりますからね」
 愛原:「そういうことですか!」

 ヘタに供述すると、裏取りなどで拘束期間が長くなってしまう。
 まだ起訴猶予に持ち込める時点で、あとはもう余計な事は喋らないという作戦だったのか。
 で、釈放されて一般人の身になった後で、私に情報提供させると……。

 愛原:「時間も時間ですし、探索の続きは明日にしたいのですが、よろしいでしょうか?」
 善場:「はい、結構です。何度も申し上げておりますが、けしてムリはなさらないでください。所長方はあくまで、民間の方々ですので」
 愛原:「分かりました」

 電話を切った瞬間、目の前の国道下り線を、けたたましいサイレンを鳴らしながら警察車両が何台も走行して行くのが見えた。
 その中にはパトカーだけでなく、機動隊員を乗せているであろうマイクロバスの姿もあった。
 
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