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報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「ユメカラサメテ」

2025-06-19 20:29:34 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[9月11日11時11分 天候:不明 神奈川県相模原市緑区某所 国家公務員特別研修センター地下医療施設]

 愛原「…………」

 ここは……どこだろう?
 まだ、夢の中なのだろうか……?

 看護師「愛原さん?愛原さん、意識が戻ったんですね!?分かりますか!?」
 愛原「ああ……」
 看護師「先生!意識戻りました!」

 どうやらここは病院らしい。
 私は……えーと……あの新幹線に乗る前までは、何をしていたんだっけ……?
 ああ、そうだ。
 確か、天長会の施設にいて……。

 医師「さすがは、驚異的な回復力だ……!」

 病室に入って来た医師は、私を見て驚いた様子だった。
 白衣を着ているので、白井や上野医師を思い浮かべてしまったが、顔は全然違う。

 医師「いいですか、落ち着いて聞いてください」

 医師は私に色々と教えてくれた。
 私は1ヶ月ほど意識が無かったということ。
 天長会の施設が暴走した上野流太に破壊されたことで建物の下敷きになり、意識不明の重体の状態で救出されたこと。
 当初はヘリで那須塩原市内の救急医療センターに運ばれたものの、その後、政府からの指示で藤野の地下研究施設に移送されて現在に至るということだ。

 医師「あなたの体には、Gウィルスと特異菌が融合したと思われる遺伝子が食い込んでいます。よって政府より、特別監察対象に指定されました。あなたがここに移送されたのは、それが大きな理由です」
 愛原「Gウィルスって……」

 リサの事か?
 しかし、どうして私がそれに感染しているのだろう?
 Gウィルスはそれそのものには感染力は無く、『胚』が体内に侵入することでそれが成長し、宿主の体を乗っ取るというのがセオリーだと聞いているが……。

 愛原「私の体……化け物にでもなったんですか?」
 医師「見た目は違います。ですが、その回復力は、もはや人間とは言い難いかと」
 愛原「回復力……」
 医師「あなたのケガは通常、全治3ヶ月と見られていました。ところが、あなたの回復力は1ヶ月で治すほどです」
 愛原「はあ……」
 医師「これから関係各所に連絡を入れますので、しばらくお待ちください」
 愛原「分かりました……」

 なるほど。
 大ケガをしたという割には、体に巻かれている包帯は殆ど無い。
 特異菌は……まあ、東京中央学園絡みで私も感染している。
 Gウィルスは……まあ、リサと一緒に暮らしているからなぁ……。
 いや、でも、『胚』が体内に入った記憶なんて……。

[同日15時23分 天候:不明 同施設]

 午後になると、善場係長がやってきた。
 因みに病室は、地下の完全な個室である。
 まあ、医療施設というよりは研究施設だから、他に患者などいなくて当たり前だが。

 善場「意識が戻られたと聞いて、ホッとしました。リサなんて歓喜のあまり、失禁したほどです」
 愛原「あらま!……今回、リサは暴走しませんでしたか?」
 善場「さすがに自重できるようにはなったようです。それを踏まえた上で、リサの行動制限を緩和させようという動きもあります。あの事件でもリサは活躍しましたので、その手柄を称えるという点でもです」
 愛原「リサがどう活躍したんですか?」
 善場「ホテル内に取り残された予備校生徒の安全確保と、所長の救助です。上野流太が逮捕された後、すぐさま、愛原所長の救助に向かったんですよ」
 愛原「へえ……」

 それなら、後でリサに感謝しなきゃな……。

 善場「担当医師から聞かれたと思いますが、所長のケガは殆ど治っている状態です」
 愛原「らしいですね。本来なら全治3ヶ月は下らないケガだったのに、実際には1ヶ月で治ってしまったと。私はもう退院ということで宜しいのでしょうか?」
 善場「今、色々と検査をされておられますね?」
 愛原「はい」
 善場「その結果次第ということになりますね」
 愛原「あー……そうですか。……係長」
 善場「何ですか?」
 愛原「私は……化け物になってしまったんでしょうか?」
 善場「どうでしょう?今のところ現れている現象は、驚異的な回復力というだけです。それも、全治3ヶ月のはずが、1ヶ月で済むような……」
 愛原「それだけ?」
 善場「ええ。それに関して言うならば、私やシェリー・バーキン氏の方がよほど化け物です。私の回復力は御存知ですよね?」
 愛原「ええ」

 リサ達と同じ回復力。
 今ここで係長が自分の心臓をナイフで突き刺したとしても、血が噴き出るのはほんの一瞬。
 すぐに血は止まり、それだけではなく、刺した痕すら見る見るうちに消えて無くなる。

 善場「『人間に戻った』とされる私達ですらそうなのですから、それよりはまだ強過ぎる回復力ではない所長は、化け物とは言えないと思います」
 愛原「そうですか……」
 善場「ただ、どんな力が他に秘められているのか、そういった検査を今後しなければなりませんし、もしかしたら実験とかもすることになるかもしれませんね」
 愛原「リサが体験した実験の数々を、今度は私がするわけですか」
 善場「もちろん、非人道的な事はしませんよ」
 愛原「それは助かります」
 善場「まあ、シェリー・バーキン氏はアメリカ政府から非人道スレスレの実験を受けたらしいですけどね」
 愛原「うわ……」
 善場「何にせよ、検査の結果次第では、一両日中に退院はできるのではないでしょうか?」
 愛原「それは良かった」
 看護師「失礼します。善場さん、まもなく検査の時間ですので……」
 善場「承知しました。まもなく退室します。今回は様子見です。リサに所長の現況を報告できそうです」
 愛原「恐れ入ります」
 善場「それと、後日で構いませんので、意識が無くなっている間、所長はそこで何をされていたのか、それも教えて頂けるとありがたいです」
 愛原「分かりました」

 夢の中の出来事を話すのか。
 普通の夢なら、目が覚めたら忘れそうなものだが、今回はまるで現実世界で起きた事のようにハッキリと覚えている。
 覚えているうちに、メモをしておこう。
 私がそれを係長に伝えると、係長は私にメモ帳とペンを渡してきた。

 善場「検査が終わったら、これに書き留めてください」
 愛原「分かりました。ありがとうございます」

 係長と会ったことで、私は現実世界に戻ってきたのだと実感した。

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