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報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「トンネルの中は異界」

2018-05-24 10:24:57 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月11日時刻不明 天候:不明 国道48号線 旧・関山トンネル内]

 かつては酷道でもあった国道48号線。
 現在は、特に山形県側において車線の拡幅と急カーブの是正が行われていて、酷道の面影は閉鎖された旧道区間に残すのみとなっている。
 その酷道のハイライトでもあった旧・関山トンネルは、今や異界への出入口と化しているのか。
 本来なら300メートル弱しかないトンネルが、今は異界と繋がっているためか、その10倍以上の長さに延長されている感じであった。

 その異界行きのバスに乗り込んで来た河合有紗は、稲生をこのままこのバスで連れて行こうとしている。

 

 河合有紗:「勇太君……私と一緒に行こう……?この世界では幸せになれなかったけど、浅井先生の御指導で、来世でもう1度やり直すの……」
 稲生勇太:「それならキミは顕正会を辞めるべきだ!僕はまずはそこから始めたんだから!」
 威吹邪甲:「ユタ、典型的な顕正会員であった状態で死んだ亡霊に、何を言っても無駄さ。ここは1つ、ボクが一思いに楽にさせてあげようと思う」
 稲生:「威吹!?」

 威吹はスラッと妖刀を抜いた。
 江戸時代の侍の如く、長刀と脇差の二振りを帯刀した威吹。
 前者は妖刀であるが故、妖怪は斬れても人は斬れない。
 後者はその逆。

 稲生:「大丈夫なのかい!?その刀、幽霊が斬れるかどうかは分からないって!」
 威吹:「やってみなきゃ分からんさ」
 有紗:「ジャマするの……?やっぱり威吹君は悪い妖怪だったんだね……」
 威吹:「元々オレはそうさ。ただ、ユタとの盟約に従って人喰いを止めていただけの話さ」

 威吹は刀を構えた。

 有紗:「オマエも道連れだぁぁぁぁぁッ!」
 威吹:「哀れな女よ……」

 威吹は向かって来る有紗に対し、刀を振り上げた。
 が、有紗が一瞬姿を消すのとそんな威吹がくるっと後ろを振り向くのは同時だ。

 稲生:「威吹!?」
 マリア:「なにっ!?」

 威吹は稲生に妖刀を振り下ろした。
 と、同時に有紗が再び稲生の前に現れて、その手を首筋に伸ばす。
 が!

 有紗:「ぎゃっ!」

 その行動を威吹は読んでいたのだ。
 有紗は後ろから威吹の妖刀に斬られた。

 威吹:「幽霊の考えていることはお見通しだ!」

 威吹は有紗の髪を掴むと、乱暴に稲生から引き離した。

 マリア:「っえーい!」
 威吹:「おろ!?」

 そこへマリアが有紗にタックルをかました。
 有紗はバスの前の方に押し出される。
 中扉の前辺りに来ると突然、ブーッ!というドアブザーが鳴って中扉が開いた。
 現在のバスでは走行中はドアロックされていて、仮に運転手が誤ってドアスイッチを操作しても作動しないようになっているのだが、これくらい古いバスになると、そういう便利な機能は無いのだろう。
 しかも、殆ど減速しないで急な右カーブを曲がった。
 関山トンネルには新旧共にそんな急カーブは存在しないはずだが、やはり空間が捻じ曲がっているのだろう。

 マリア:「消え去れ!有紗!」
 有紗:「きゃああああああああ!!」

 マリアは開いた中扉から、有紗をバスの外に突き落とした。
 と、同時にまたドアブザーが鳴ってドアが閉まった。
 更にはそれまで螺旋状になっていたトンネルが、急にまた真っ直ぐになった。
 タイヤの軋む音も無くなり、遠心力も無くなった。

 稲生:「これは一体、どういうことなんだ?」
 マリア:「亜空間トンネルの中に突き落とした。もう2度とヤツが勇太に付きまとうことはない。だからもう安心だよ」

 マリアは最後笑みを浮かべたが、それはまるで復讐劇を繰り広げた時の魔女の笑顔であった。
 もっとも、稲生にはそこがマリアの萌えポイントなのだが。

 威吹:「うむ……。良くて何とか出口を見つけるにしても、その先は魔界か地獄界か……」
 稲生:「それにしても、どうしてタイミング良く中扉が開いたんだろう?」

 稲生が運転席の方を見ると、運転手の全貌は仕切り板によって見えなかった。
 シフトレバーを操作する左手と、ルームミラーに映るガイコツの顔の下半分が見えるだけだ。
 上半分は深く被った帽子で見えない。

 威吹:「む!?これは……」
 稲生:「なに?」
 威吹:「あれを見てくれ」

 威吹の指さす方を見ると、中扉の上に運送約款が掲示されていた。
 実はこの約款、日本の路線バス車内には必ず掲示されている。
 もちろん全文を掲示するスペースは無いので、『車内のご注意』とか『お客様へのお願い』という形で一部が掲載されているだけだ。
 冥界鉄道公社乗合自動車部(通称、冥鉄バス)にもそれは掲示されているのだが、人間界の路線バスには載っていない一文が掲示されていた。
 それは……。

『運賃は前払いです。運賃を支払われない場合、途中下車して頂く場合がございます』

 と。

 稲生:「これは!?」
 威吹:「ボク達は運賃を払ったよ。取りあえず額は書いていないので、都営バスと同額にしてみたけどね。それでも一応、運賃を払ったことにはなる。何しろ、三途の川を渡る六文銭みたいなものだ。六文銭とはいうが、実際は奪衣婆に渡す賄賂のようなものだから、額が決まっているわけではない」
 マリア:「ギリシャ神話に出てくる、地獄の川の渡し守カロンみたいなものだな」

 但し、カロンの場合は運賃が決まっていたという。
 現在の日本においては冥界鉄道公社が列車、バス、タクシー、汽船で亡者達を運送している。

 マリア:「だけど普通、金を払わない者は最初から乗せないだろうに、ここの鉄道会社は乗せてから追い払うんだな」
 稲生:「さすがにタクシーはそうでしょうけどね。でも、他の交通機関はダイヤが決まってますから。そのせいかもしれません」
 マリア:「さすが日本」

 マリアは苦笑したが、イギリスはまだ他の欧州各国に比べてダイヤの定時性は良い方であるという。

 稲生:「あ、何だか少し明るくなってきた」
 威吹:「どうやら、隧道の出口が見えて来たようだな。果たして、どこへ出るのか……」
 マリア:「どこでもいいよ。どこへでも行き来できるのが、魔道師の良い所さ」
 稲生:「さすがマリアさん。頼もしいです」
 マリア:「……ま、いざとなったら、師匠に迎えに来てもらう」
 威吹:「地獄界にも迎えに来てもらったらしいな」
 マリア:「その通り」

 こうしてバスはトンネルの外に出た。
 トンネルの外は……。

 1:宮城県側の出口
 2:山形県側の出口
 3:地獄界の出口
 4:見当もつかない

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