[10月9日06:30.JR仙台駅・東北新幹線ホーム 敷島孝夫、アリス・シキシマ、初音ミク、鏡音リン・レン、エミリー、シンディ]
〔14番線に停車中の電車は、6時36分発、“はやぶさ”2号、東京行きです。……〕
大きな欠伸をしてホームを歩くアリス。
「ほら、寝るならせめて座席に座ってからだ」
敷島は自分の嫁の背中を押しながら言った。
「徹夜は得意なのに……朝の早起きはVery hard……」
「あー、そうかい」
「アリス博士も充電したら元気になるんじゃない?」
鏡音リンがいたずらっぽく言った。
「あー、それでそうなるなら、是非そうしてやりたいくらいだ。てか十条理事、『端っこのいい車両ぢゃよ』って、つい10号車の“グランクラス”だと思ったら、そうじゃなくて、1号車じゃんよ」
定員の少ない1号車に乗り込む敷島達。
「高速バスにされるところを“はやぶさ”まで格上げされたんだから、いいと思いなさい」
シンディは文句の多い敷島を窘めた。
敷島に辛辣な物言いをするアンドロイドは、マルチタイプではシンディ、ボーカロイドではMEIKOか。
「へーへー。アリス、お前は窓側だ」
「Year...」
するとアリス、ポーチの中から取り出すは、アイマスクに耳栓。
そして、リクライニング全倒。
「朝飯食わなくていいのか?」
「zzz...」
「早っ、寝入り早っ!」
敷島は改めてびっくりした。
「凄いヤツと結婚しちゃったな……」
敷島はアリスの横の通路側に座る。
「たかおさん、駅弁買ってきましょうか?」
と、ミクが言った。
ボーカロイド年少組は、3人席に座らせている。
「いいよ。お前達はアリスを見張っててくれ。こいつ、意外と寝相が悪……」
「ううーん……」
「何だ?」
「……牛タン弁当買ってきて……」
「お前、寝るのか食うのかどっちかにしろよ!」
列車は定刻通りに発車した。
[同日07:00.東北新幹線“はやぶさ”2号1号車内 敷島]
敷島は手持ちのPCを出していた。
アリスは弁当を食べ終わった後で、また寝入ってしまった。
PCでボーカロイド達のスケジュールをチェックしている。
(よしよし。KAITOのヤツ、撮影現場に到着したな)
KAITOからその旨の信号が送られて来た。
もし仮にアクシデントがあって、予定通りに現場に着けない場合も、そういった信号が送られて来る手筈になっている。
「ねえ、プロデューサー」
「ん?」
敷島の後ろの席に座るシンディが、上から覗き込んできた。
上を向くと、シンディの巨乳で顔が見えない。
「普通にこっち来いよ。で、何だ?」
「アタシ達、楽器持って来てないけどいいの?」
「向こうで用意するってさ。もしかしたら、こっちで使ってる楽器のせいかもしれないだろ?」
「そーかなー?」
「研究者は色んなこと考えて大変なこった。俺は事務職だから、もっと気軽にやらせてもらおう」
「ふーん……。これは要らなかったわね」
シンディはコスチュームの中から、犬用の首輪とロープを出した。
「要らねーよ!てか、持って来んなよ」
ノースリープから突き出た白い二の腕には、ボーカロイドと同じくナンバリングが施されている。
ボーカロイドが英数字なのに対し、マルチタイプはローマ数字だ。
エミリーの右腕には『Ⅰ』と赤字でプリントされ、シンディには『Ⅲ』と印字されている。
派生型のキールには、何もペイントされていない。
恐らくオリジナルの5号機の方のキールには、『Ⅴ』と書かれていたのだろうが。
[同日09:00.東京都新宿区西新宿 財団本部 敷島、アリス、ミク、リン・レン、エミリー、シンディ、平賀太一]
「おはようございます。朝早くから、ご苦労様です」
財団本部に到着すると、平賀が出迎えた。
「あっ、おはようございます」
「Hi.」
アリスは右手を挙げたが、平賀は明らかにスルー。
師匠である南里から受け継いだエミリーには二言三言何か言ったが、シンディの方は見もしない。
「じゃあ、研究室にどうぞ」
「お邪魔します」
エレベーターに向かう面々。
「すっかり嫌われちゃいましたね、博士?」
シンディがこそっとアリスに言った。
「いざとなったら、七海を預かるわよ」
「それはいい考えです。ご命令下さったら、あとは私が……」
「ルイージが惚れ込んでるから、あいつにも協力させるわね」
「お前ら、信頼を勝ち取るくらいの気概が無いのか」
敷島は2人を窘めた。
まずは会議室で実験の概要が説明される。
敷島達が昏倒した“アヴェ・マリア”など、危険と思われる楽曲については、防音室内でエミリー、シンディ、キールが演奏する。
研究者達はその外で、その曲が演奏されている時、何が発せられているのかを調査するという寸法だ。
(俺は約束通り、ここまで来たんだから、あとはボカロ達連れて行ってもいいな)
敷島だけはここから立ち去ったという。
相変わらず、逃げ足は速い。
〔14番線に停車中の電車は、6時36分発、“はやぶさ”2号、東京行きです。……〕
大きな欠伸をしてホームを歩くアリス。
「ほら、寝るならせめて座席に座ってからだ」
敷島は自分の嫁の背中を押しながら言った。
「徹夜は得意なのに……朝の早起きはVery hard……」
「あー、そうかい」
「アリス博士も充電したら元気になるんじゃない?」
鏡音リンがいたずらっぽく言った。
「あー、それでそうなるなら、是非そうしてやりたいくらいだ。てか十条理事、『端っこのいい車両ぢゃよ』って、つい10号車の“グランクラス”だと思ったら、そうじゃなくて、1号車じゃんよ」
定員の少ない1号車に乗り込む敷島達。
「高速バスにされるところを“はやぶさ”まで格上げされたんだから、いいと思いなさい」
シンディは文句の多い敷島を窘めた。
敷島に辛辣な物言いをするアンドロイドは、マルチタイプではシンディ、ボーカロイドではMEIKOか。
「へーへー。アリス、お前は窓側だ」
「Year...」
するとアリス、ポーチの中から取り出すは、アイマスクに耳栓。
そして、リクライニング全倒。
「朝飯食わなくていいのか?」
「zzz...」
「早っ、寝入り早っ!」
敷島は改めてびっくりした。
「凄いヤツと結婚しちゃったな……」
敷島はアリスの横の通路側に座る。
「たかおさん、駅弁買ってきましょうか?」
と、ミクが言った。
ボーカロイド年少組は、3人席に座らせている。
「いいよ。お前達はアリスを見張っててくれ。こいつ、意外と寝相が悪……」
「ううーん……」
「何だ?」
「……牛タン弁当買ってきて……」
「お前、寝るのか食うのかどっちかにしろよ!」
列車は定刻通りに発車した。
[同日07:00.東北新幹線“はやぶさ”2号1号車内 敷島]
敷島は手持ちのPCを出していた。
アリスは弁当を食べ終わった後で、また寝入ってしまった。
PCでボーカロイド達のスケジュールをチェックしている。
(よしよし。KAITOのヤツ、撮影現場に到着したな)
KAITOからその旨の信号が送られて来た。
もし仮にアクシデントがあって、予定通りに現場に着けない場合も、そういった信号が送られて来る手筈になっている。
「ねえ、プロデューサー」
「ん?」
敷島の後ろの席に座るシンディが、上から覗き込んできた。
上を向くと、シンディの巨乳で顔が見えない。
「普通にこっち来いよ。で、何だ?」
「アタシ達、楽器持って来てないけどいいの?」
「向こうで用意するってさ。もしかしたら、こっちで使ってる楽器のせいかもしれないだろ?」
「そーかなー?」
「研究者は色んなこと考えて大変なこった。俺は事務職だから、もっと気軽にやらせてもらおう」
「ふーん……。これは要らなかったわね」
シンディはコスチュームの中から、犬用の首輪とロープを出した。
「要らねーよ!てか、持って来んなよ」
ノースリープから突き出た白い二の腕には、ボーカロイドと同じくナンバリングが施されている。
ボーカロイドが英数字なのに対し、マルチタイプはローマ数字だ。
エミリーの右腕には『Ⅰ』と赤字でプリントされ、シンディには『Ⅲ』と印字されている。
派生型のキールには、何もペイントされていない。
恐らくオリジナルの5号機の方のキールには、『Ⅴ』と書かれていたのだろうが。
[同日09:00.東京都新宿区西新宿 財団本部 敷島、アリス、ミク、リン・レン、エミリー、シンディ、平賀太一]
「おはようございます。朝早くから、ご苦労様です」
財団本部に到着すると、平賀が出迎えた。
「あっ、おはようございます」
「Hi.」
アリスは右手を挙げたが、平賀は明らかにスルー。
師匠である南里から受け継いだエミリーには二言三言何か言ったが、シンディの方は見もしない。
「じゃあ、研究室にどうぞ」
「お邪魔します」
エレベーターに向かう面々。
「すっかり嫌われちゃいましたね、博士?」
シンディがこそっとアリスに言った。
「いざとなったら、七海を預かるわよ」
「それはいい考えです。ご命令下さったら、あとは私が……」
「ルイージが惚れ込んでるから、あいつにも協力させるわね」
「お前ら、信頼を勝ち取るくらいの気概が無いのか」
敷島は2人を窘めた。
まずは会議室で実験の概要が説明される。
敷島達が昏倒した“アヴェ・マリア”など、危険と思われる楽曲については、防音室内でエミリー、シンディ、キールが演奏する。
研究者達はその外で、その曲が演奏されている時、何が発せられているのかを調査するという寸法だ。
(俺は約束通り、ここまで来たんだから、あとはボカロ達連れて行ってもいいな)
敷島だけはここから立ち去ったという。
相変わらず、逃げ足は速い。
エミリーの腕にはローマ数字で『1』、シンディは『3』、5号機のキールは『5』です。