[5月17日07:00.仙台市青葉区 ホテル法華クラブ 敷島孝夫&井辺翔太]
「おはようございます、社長」
「ああ、おはよう」
ホテルの朝食会場で再会する2人のプロデューサー。
「昨日はご苦労さん。思いの外、盛り上がったんだって?」
「はい。未夢も、『お客さんが何人集まったかではなく、その中で何人の人達に笑顔を送れたかなのですね』と、学んでくれたようです」
「元がマルチタイプだから、自分で学習することに長けているわけだ。その点、Lily辺りは、『劇場時代の方がまだ良かった』とか言いそうだな」
「さすがにそこまでは言ってませんでしたね。しかし、彼女達は新ユニットとして、バランスを調整しなくてはなりません」
「……キミがそれでいいというなら、そのようにやってくれ。人間のアイドルもそうだが、ボーカロイドも個性に富んだ存在だから」
「はい。分かっております」
敷島はモーニングコーヒーを啜った。
「俺は今日、平賀先生の大学に行って、エミリーの新ボディ稼動に立ち会ってくるよ」
「はい。どのように行われるのでしょうか?」
「まず旧ボディからのデータやメモリーを、別の媒体に移す。そこから今度は、新ボディに移す。電源を入れて、数々のソフトウェアの起動を確認して……ってところかな。まあ、お昼くらいには終わると思う。上手く行けば、そこから井辺君達の方へ行けるんだけどな」
「今日はイベント会場内で、コンパニオンの仕事があるだけです。逆にステージの後だったので、気は楽かと」
「気を気にせず仕事ができるのが、ボーカロイドのいい所だよ」
「はい。よく覚えておきます」
[同日08:00.同場所→東北工科大学 敷島&シンディ]
「東北工科大学、南里志郎記念館までお願いします」
ホテルの前に呼んだタクシーに乗り込み、大学に向かう2人。
LPガスが燃料の普通のタクシーだったが、やはり自重のあるシンディが乗ると、車が重い物を運んでいるような走り方になるのが何となく分かる。
大型車である高速バスに乗った時は、そんなに気にならなかったが。
「昨夜はお楽しみだったみたいだな?」
運転席の後ろに座っている敷島が隣に座るシンディに言うと、シンディは、
「ぴっ……!」
と、顔を赤らめた。
「メモリーは消したはずだけど……」
「最初のシーンだけ残ってたぞ」
(ってことは、おでこを合わせてキスしたところまで……!?)
「まあ、いいさ。それはそれで。エミリーも、ずっと1人で寂しがってたんだ。心置きなく抱きしめ合える同型機がいるってのは、物凄い嬉しいことなんだろうな」
「そうかぁ……」
「いかに前期型とはいえ、さすがにスクラップにされた時は泣いてたしな。で、後期型のお前を見つけた時は驚いてたし、それを稼動させるってなった時は喜んでたし……」
「うん……」
後期型のボディを発見したのは全くの偶然だったし、崩壊し始めていた山奥の廃ホテルから脱出を図る中、それを持ち出すという判断を下したのは敷島だ。
今ではその判断は正しかったと思っている。
メモリーは、前期型から抜き取って保管したものがあった。
前期型がどうしてあんな残忍な無差別テロを起こすようになったのか、解析する為だ。
コンピューター・ウィルスの開発もしていたウィリアム・フォレスト。
彼が新開発のウィルスの実験の為、次々と色んな種類のウィルスを前期型に感染させたからというのが、研究者達の結論だ。
ついには自分の製作者(のコピーサイボーグ)を、笑いながら惨殺するに至る。
後期型は全くのまっさらな状態ということもあってか、本来の性格設定で稼動して今に至っている。
「まあ、仲良くして、これからは人類に貢献してくれ」
そこまで言って、敷島はふと思った。
(新ボディの稼動に成功した後、どうするんだ?)
エミリーのオーナーは平賀、登録ユーザーは敷島である。
シンディのオーナーはアリス、登録ユーザーはやっぱり敷島だ。
(事務所に2体も置いとけないぞ……?)
[同日08:30.東北工科大学・南里志郎記念館 敷島、シンディ、平賀太一、平賀奈津子]
大学構内は物々しい雰囲気に包まれていた。
日曜日ということもあって正門は閉じられており、構内に入るには通用門で許可証(学生なら学生証)の提示が必要なのだが、予め平賀が警備室に話をしていたこともあり、敷島は実際に乗ったタクシーの会社とナンバーを連絡しておけばそれで良かった。
「えー……提灯の方の個人タクシーです。名前は小原タクシー、白い塗装のクラウン・セダン、ナンバーが仙台320……」
警備室の前で、警備員が無線で車の特徴を伝えている。
ようやく中に入れたはいいのだが、今度は記念館に通じる一本道の入り口手前にも臨時のゲートが設けられていた。
しかし警備室から無線連絡を受けていた警備員は直ぐ様タクシーを確認すると、すぐにゲート(というか安全柵)を手で開けた。
「逆に、あからさま過ぎて目立っちゃうかもね」
挙手の敬礼をする警備員を横目で見ながら、シンディが言った。
「まあ、しょうがない。新ボディ稼動は非公開だが、それ自体は非公表じゃないんだから。実際に後で記者会見もある」
「姉さんも一緒に?」
「まあ、そうだな」
「社長は?」
「俺はだだの立会人だから。このプロジェクトの責任者の平賀先生と奈津子先生、それに学会の偉い先生が2人くらいってとこだろー」
「おはようございます、敷島さん」
「おはようございます」
タクシーを降りて記念館の中に入ると、平賀奈津子が出迎えてくれた。
「昨夜はどうも。御馳走様でした」
「いえいえ」
奈津子は平賀と結婚前はほっそりしていたのだが、子供を2人産んだからなのか、少しふくよかになっていた。
「シンディもいいコにしてた?」
「お久しぶりです。奈津子博士」
シンディは深々と頭を下げた。
「前期型とは別人のようですよ」
敷島が代わりに答えた。
「まあ、世間には表向き、そういうことになってますからね」
さすがに前期型のシンディは評判が悪過ぎた。
十条が率先して前期型を処分したがった理由はその辺りにある。
学術的な見地から勿体ないという声もあったのだが、それを押し切った形だ。
十条本人の口から具体的に語られたわけではないが、実は後期型のボディが実在していることを実は知っていたからなのではないかと勘繰る者も学界内ではいる。
「平賀……太一先生は?」
「奥で、他の先生達と打合せをしています」
「奈津子先生はいいんですか?」
「私は今回、助手みたいなものですから」
因みに今、平賀家には奈津子の両親が来ていて、幼児達の面倒を見てくれているもよう。
七海もいるので、平賀家の警備も大丈夫だろう。
「まだ少し時間があるので、旧ボディのエミリーと最後の話でもしますか?」
「あー、それはいいですね。『頑張れ』の一言くらい伝えておきましょう」
「こっちです」
敷島は奈津子について行った。
「シンディはいいのか?」
「昨夜で最後のお別れはしてきたし、私はそろそろ記念館の警備態勢に入るわ」
「そうか」
作業開始時間は9時より。
緊張高まる中、ロボット工学の歴史に残る作業がまもなく始まろうとしている。
「おはようございます、社長」
「ああ、おはよう」
ホテルの朝食会場で再会する2人のプロデューサー。
「昨日はご苦労さん。思いの外、盛り上がったんだって?」
「はい。未夢も、『お客さんが何人集まったかではなく、その中で何人の人達に笑顔を送れたかなのですね』と、学んでくれたようです」
「元がマルチタイプだから、自分で学習することに長けているわけだ。その点、Lily辺りは、『劇場時代の方がまだ良かった』とか言いそうだな」
「さすがにそこまでは言ってませんでしたね。しかし、彼女達は新ユニットとして、バランスを調整しなくてはなりません」
「……キミがそれでいいというなら、そのようにやってくれ。人間のアイドルもそうだが、ボーカロイドも個性に富んだ存在だから」
「はい。分かっております」
敷島はモーニングコーヒーを啜った。
「俺は今日、平賀先生の大学に行って、エミリーの新ボディ稼動に立ち会ってくるよ」
「はい。どのように行われるのでしょうか?」
「まず旧ボディからのデータやメモリーを、別の媒体に移す。そこから今度は、新ボディに移す。電源を入れて、数々のソフトウェアの起動を確認して……ってところかな。まあ、お昼くらいには終わると思う。上手く行けば、そこから井辺君達の方へ行けるんだけどな」
「今日はイベント会場内で、コンパニオンの仕事があるだけです。逆にステージの後だったので、気は楽かと」
「気を気にせず仕事ができるのが、ボーカロイドのいい所だよ」
「はい。よく覚えておきます」
[同日08:00.同場所→東北工科大学 敷島&シンディ]
「東北工科大学、南里志郎記念館までお願いします」
ホテルの前に呼んだタクシーに乗り込み、大学に向かう2人。
LPガスが燃料の普通のタクシーだったが、やはり自重のあるシンディが乗ると、車が重い物を運んでいるような走り方になるのが何となく分かる。
大型車である高速バスに乗った時は、そんなに気にならなかったが。
「昨夜はお楽しみだったみたいだな?」
運転席の後ろに座っている敷島が隣に座るシンディに言うと、シンディは、
「ぴっ……!」
と、顔を赤らめた。
「メモリーは消したはずだけど……」
「最初のシーンだけ残ってたぞ」
(ってことは、おでこを合わせてキスしたところまで……!?)
「まあ、いいさ。それはそれで。エミリーも、ずっと1人で寂しがってたんだ。心置きなく抱きしめ合える同型機がいるってのは、物凄い嬉しいことなんだろうな」
「そうかぁ……」
「いかに前期型とはいえ、さすがにスクラップにされた時は泣いてたしな。で、後期型のお前を見つけた時は驚いてたし、それを稼動させるってなった時は喜んでたし……」
「うん……」
後期型のボディを発見したのは全くの偶然だったし、崩壊し始めていた山奥の廃ホテルから脱出を図る中、それを持ち出すという判断を下したのは敷島だ。
今ではその判断は正しかったと思っている。
メモリーは、前期型から抜き取って保管したものがあった。
前期型がどうしてあんな残忍な無差別テロを起こすようになったのか、解析する為だ。
コンピューター・ウィルスの開発もしていたウィリアム・フォレスト。
彼が新開発のウィルスの実験の為、次々と色んな種類のウィルスを前期型に感染させたからというのが、研究者達の結論だ。
ついには自分の製作者(のコピーサイボーグ)を、笑いながら惨殺するに至る。
後期型は全くのまっさらな状態ということもあってか、本来の性格設定で稼動して今に至っている。
「まあ、仲良くして、これからは人類に貢献してくれ」
そこまで言って、敷島はふと思った。
(新ボディの稼動に成功した後、どうするんだ?)
エミリーのオーナーは平賀、登録ユーザーは敷島である。
シンディのオーナーはアリス、登録ユーザーはやっぱり敷島だ。
(事務所に2体も置いとけないぞ……?)
[同日08:30.東北工科大学・南里志郎記念館 敷島、シンディ、平賀太一、平賀奈津子]
大学構内は物々しい雰囲気に包まれていた。
日曜日ということもあって正門は閉じられており、構内に入るには通用門で許可証(学生なら学生証)の提示が必要なのだが、予め平賀が警備室に話をしていたこともあり、敷島は実際に乗ったタクシーの会社とナンバーを連絡しておけばそれで良かった。
「えー……提灯の方の個人タクシーです。名前は小原タクシー、白い塗装のクラウン・セダン、ナンバーが仙台320……」
警備室の前で、警備員が無線で車の特徴を伝えている。
ようやく中に入れたはいいのだが、今度は記念館に通じる一本道の入り口手前にも臨時のゲートが設けられていた。
しかし警備室から無線連絡を受けていた警備員は直ぐ様タクシーを確認すると、すぐにゲート(というか安全柵)を手で開けた。
「逆に、あからさま過ぎて目立っちゃうかもね」
挙手の敬礼をする警備員を横目で見ながら、シンディが言った。
「まあ、しょうがない。新ボディ稼動は非公開だが、それ自体は非公表じゃないんだから。実際に後で記者会見もある」
「姉さんも一緒に?」
「まあ、そうだな」
「社長は?」
「俺はだだの立会人だから。このプロジェクトの責任者の平賀先生と奈津子先生、それに学会の偉い先生が2人くらいってとこだろー」
「おはようございます、敷島さん」
「おはようございます」
タクシーを降りて記念館の中に入ると、平賀奈津子が出迎えてくれた。
「昨夜はどうも。御馳走様でした」
「いえいえ」
奈津子は平賀と結婚前はほっそりしていたのだが、子供を2人産んだからなのか、少しふくよかになっていた。
「シンディもいいコにしてた?」
「お久しぶりです。奈津子博士」
シンディは深々と頭を下げた。
「前期型とは別人のようですよ」
敷島が代わりに答えた。
「まあ、世間には表向き、そういうことになってますからね」
さすがに前期型のシンディは評判が悪過ぎた。
十条が率先して前期型を処分したがった理由はその辺りにある。
学術的な見地から勿体ないという声もあったのだが、それを押し切った形だ。
十条本人の口から具体的に語られたわけではないが、実は後期型のボディが実在していることを実は知っていたからなのではないかと勘繰る者も学界内ではいる。
「平賀……太一先生は?」
「奥で、他の先生達と打合せをしています」
「奈津子先生はいいんですか?」
「私は今回、助手みたいなものですから」
因みに今、平賀家には奈津子の両親が来ていて、幼児達の面倒を見てくれているもよう。
七海もいるので、平賀家の警備も大丈夫だろう。
「まだ少し時間があるので、旧ボディのエミリーと最後の話でもしますか?」
「あー、それはいいですね。『頑張れ』の一言くらい伝えておきましょう」
「こっちです」
敷島は奈津子について行った。
「シンディはいいのか?」
「昨夜で最後のお別れはしてきたし、私はそろそろ記念館の警備態勢に入るわ」
「そうか」
作業開始時間は9時より。
緊張高まる中、ロボット工学の歴史に残る作業がまもなく始まろうとしている。
私の職場の後輩で二次ヲタの奴も同じことを言っています。
アニメ版デレマスでその気持ち、浄化しましょお!
某シップアニメを作った田中○介を許さない
某シップアニメを作った田○謙介を許さない
某シップアニメを作った○中謙介を許さない
某シップアニメを作った田中謙○を許さない
これは某糞アニメを作った某クリエイターに対する愚痴です
少しストーリーを引っ張っちゃって、すいません。
法華クラブは創業当時は会員制のホテルだったようですが、今では会員証はあるものの、そんなことは無いようです。
元は京都の法華系寺院への参拝客を当て込んで創業し、創業者自身も熱心な信徒だったということなので、少なくとも日蓮正宗系ではないですね。
公式サイトでは、今は特定の宗派とは関係無いとうたっていますが……。
で、仙台の法華クラブって・・・。
あそこにお泊りされたんですね。私は大昔に宿がなくって泊まったことがあります。
朝の団扇太鼓の唱題で、ビックリして起きました。あれ以来あのホテルには泊まってません。
曹洞宗の経営するホテルにも泊まったことはありますが、読経とかなかったです。
やはりアレですか、本山宿泊とかは朝早くから(カット)なんですか?