報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Cindy” 「アメリカへ向かう準備」

2016-05-10 08:57:38 | アンドロイドマスターシリーズ
[5月9日14:00.天候:雨 東京都江東区豊洲・豊洲アルカディアビル18F・敷島エージェンシー]

 降りしきる雨の中、敷島は傘を閉じてビルの中に入った。
 閉じた傘はシンディに渡す。
 そしてエレベーターで、18Fまで上がった。
「社長、お帰りなさい」
 事務所で待機していたKAITOが出迎えた。
「ああ、ただいま。パスポートの更新に、こんなに時間が掛かるとは思わなかったよ」
「社長はともかく、シンディなどはどうするおつもりですか?」
「さすがに、銃火器装備した奴を乗せるわけにはいかないからなぁ……。とはいえ、向こうの警察の要請なんだから、インターポールさん辺りが何とかしてくれるんじゃないの?」
「ご出発はいつですか?」
「分からん。何しろ、俺だけが行くわけじゃないしな。向こうさんとしては、シンディの他にエミリーも御指名だ。ますます、まず日本から出すのに苦労するよ」
「そうですよねぇ……」
「まあ、DHLかフェデックス辺りに乗せてだな……。アルエットやゆかりもそれで輸送したわけだからな」
「そうなるかしらね」
 シンディも頷いた。
 ただ、当然のことながら、電源を切った状態で輸送する。
 そこをKR団に狙われた前例があるので、敷島としてはあまりその手法には賛同できなかった。
「国外持ち出しの手続きとかしなきゃいけないし、別の意味で大変だ」
「まだ電車やバスなら自由に乗れるのにねぇ……」
「日本の陸路には、そんな手続きは無いからな」
「確かに……」
 と、その時、
「社長。警視庁の鷲田警視からお電話です」
 事務室にいる一海が言った。
「またかよ」
 敷島は社長室に入ると、机の電話を取った。
「はい、もしもし。敷島です」
{「あー、多忙のところ申し訳無い。件のアメリカ行きのことで、1つ情報が入った」}
「何ですか?」
{「参加人数の多少に関わらず、私らを含め、キミ達は民間の旅客機で飛んでもらう。先方さん御指名の美人兵器は、貨物輸送サービスで輸送することになる」}
「JALならJALカーゴ、ANAならANAカーゴといったところですか?」
{「そんなところだ」}
 大きく頷く鷲田警視。
{「キミはキミで、そういった手続きを行ってほしい。詳しいことは、また後ほどだ」}
「分かりました」
 電話を切る敷島。
「飛行機の中だからしょうがないが、護衛がいないというのもアレだな」
「そうねぇ。何かあったら、自動で電源がONになるようなシステムでも、ドクターに作ってもらう?」
「それだ!アリスに頼んでみよう」
 敷島は電話を掛けた。
「あー、もしもし。アリスか?実は頼みがあるんだ」

[同日18:00.天候:曇 敷島エージェンシー]

「今日も、お疲れさまでした。明日も皆さんを必要としている人達がいます。その人達の為にも、明日もよろしくお願いします」
 井辺はボーカロイド達と終礼を行っていた。
「はーい。リン、頑張るねー!」
「ボクもです!」
「頼もしい言葉です」
 井辺が大きく頷くと、ボーカロイド達が事務所奥のボーカロイド居住区に戻って行く。
 ビルの図面上は倉庫扱いになっているのだが、そこに『住んでいる』。
「そういえば……」
 敷島がリン達の後ろ姿を見ている時、ふと思い出したことがあった。
「どうしました、社長?」
「アルバート所長はボーカロイドには関心を示さなかったんだが、リンとレンには関心を示したんだ」
「そうなんですか。それはまたどういった理由で?」
「双子だかららしい」
「双子?」
「アルバート所長が開発したマルチタイプも、姉弟双子だから、少し関心があったのかな」
「設定次第で、動きを寸分違わぬ、同じくすることが可能ですからね。これが初音さんや他のボーカロイドとなると、動きを同じ設定にしても、仕様が違うせいで、少しズレますからね」
「うん」

[5月10日11:00.天候:曇 敷島エージェンシー]

 珍しく今日は事務所にアリスが訪ねて来た。
「珍しいな。キミの方から訪ねてくるなんて……」
「新事務所オープンのセレモニー以来かしら?」
「まあ、そうだな」
 シンディ、すぐに紅茶とコーヒーを持って来る。
「社長秘書やらせてるんだから、もっとスーツとか着せてあげたら?」
「普段はそれでいいの。ケブラー材をふんだんに織り込んだ素材で、防弾・防刃に優れている。いくらシンディが頑丈とはいえ、更にその上から強化する必要があるからな」
「用心深いのね」
「『不死身の敷島』とか『テロリスト泣かせの男』とか言われてるが、それだけ用心深いってことでもあるんだぞ」
「というより、ムチャぶりが人外並みだから泣かれてるんでしょ?」
「ん、そうか?」
「そうだよ!」
 ブラジルで発生した極左ゲリラのテロ事件で、敷島はメンバーの1人を拘束し、日本に拉致したことがある。
 この時既に現地の治安部隊が突入し、その組織のメンバーはほとんどが射殺されたということから、むしろそれで命拾いしたとも言えなくもない。
 鷲田が捜査協力を求める敷島に対し、常に上から目線なのは、そういったことも理由である。
「アメリカでも、何かやらかしそうね」
「向こうの警察は、それに期待して俺も呼んでるんだろ?」
「かもね」
 表向きにはエミリーやシンディを制御できる人も来て欲しいという旨で、けして敷島本人を名指ししているわけではないが、両方1度に制御できるのは敷島だけである。
 平賀はエミリーの言う事を聞かせることは可能だが、シンディはアリスの意向に背く命令はけして聞かない。
 アリスはエミリーのユーザーにもオーナーにも登録された履歴が無いため、そこはアリスよりも敷島の言う事を優先することがある。
 よって、敷島が最も適任ということらしい。
「『エコノミークラスなら行かねーよw』って言っておいたw」
「甘いね、タカオ」
「あ?『エコノミークラスでもいいから、ホテルは星ついてるヤツにしてくれよ?』の方が良かったか?」
「No,no.違う違う。『ファーストクラスにしてよ』って言うの!」
「直接ガチで言うのかよ。これだからアメリカ人は……」
「日本人が甘過ぎるだけよ。はい、これ」
 アリスが書類を出した。
 全て英文で書かれている。
「これまた読みにくいもの持って来たな。デイライトさんか向こうの治安警察が持って来た書類か?」
「違うわよ。これから、こっちから向こうに送る書類よ」
「何だ何だ?」
 敷島は何とか読める英文を読んでみた。
 で、半分くらいで読むのをやめた。
 別に、敷島が完全な英語力を持っているわけではないからではない。
 アリスが作成した、『契約書』であった。
 つまり、これからアメリカに行くに当たって、向こうに求めるサポートから成功報酬についてまで事細かく書き、それを要求するというもの。
「いいのか?」
「いいのよ。これから送るから」
「さすがはアメリカは契約社会だな」
 敷島は半ば呆れた。
 そういえばアリスがデイライト・コーポレーションに入るに辺り、分厚い労働契約書に目を通してサインしていたのを見たことがあるような気がする。
 アリスに言わせれば、『それでも日本は甘い』とのこと。
 外資系であるが、日本法人は日本の慣習に合わせている所もあるからだろう。
「アリス的にはアメリカに飛ぶこと自体は、契約違反にならないのか?」
「それは大丈夫。『本社並びに他国法人より、非常事態が発生し、その解決の為の協力要請があった場合は出来る限りの協力をする。その際、サポートや成功報酬について、自由に交渉可』ってあるの」
「それでこれか!」
 敷島は目を見開いた。
(俺んとこの営業エリア、日本で良かった)
 と、思った。
(飛行機は往復ファーストクラスとか、宿泊先は三ツ星ホテルとかはムリっぽそうだがな)
 とも思った。
 ってか、しっかり書いたんかい!

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1 コメント

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つぶやき (雲羽百三)
2016-05-10 12:55:57
四十九日法要も終わり、納骨も済んだ。
さすがに会場が曹洞宗末寺とあれば、そっちの仏像に拝むことになってしまうので、数珠は無しだ。
御住職が留守だってんで、副住職が執り行ってくれた。
何気に小僧さんもいる寺だ。
今日は御住職について行ったのか、見かけなかったが。
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