報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Cindy” 「金帰月来」

2016-12-03 20:30:48 | アンドロイドマスターシリーズ
[11月25日19:29.天候:晴 東京都江東区豊洲・豊洲駅前バスプール→東16系統]

 敷島はさいたま市のマンションに住んでいるが、平日は会社の近くにマンスリーマンションを借りて、そこに寝泊まりしている。
 一端の単身赴任気取りであるが、実際はシンディが護衛兼身の回りの世話役として強制配置されており、それは実質的な監視役を意味する。
 アリスによる、敷島への監視。
 で、単身赴任者のベタな法則として、『金帰月来の法則』というのがある。
 金曜日の夕方ないしは夜に家に帰り、月曜日にまた単身赴任先へ向かうというものだ。

 敷島とシンディは、いつもなら違う行き先のバスに乗る為にバスプールとは別のバス停に向かうが、今日はバスプール内にあるバス停に並んだ。

 敷島:「今度のバスはどこから来る?」
 シンディ:「深川車庫前からです」
 敷島:「だったら空いてるな。シンディ、お前も座っていい」
 シンディ:「えっ、でも……」
 敷島:「いいよいいよ。その方が護衛しやすいだろう」

 そこへヘッドライトの明かりを光らせて、東京駅八重洲口行きのバスがやってきた。
 グライドスライドドアの前扉が両側に開くと、早速敷島達はバスに乗り込んだ。

 敷島:「1番後ろへ行くか。どうせ、終点までだ」

〔発車致します。お掴まりください〕

 ここで降りる乗客を降ろし、敷島達を含めた複数の乗客を乗せたバスが発車した。

〔毎度、都営バスをご利用くださいまして、ありがとうございます。この都営バスは月島駅前、リバーシティ21経由、東京駅八重洲口行きです。次は豊洲二丁目、豊洲二丁目。ららぽーと豊洲、江東豊洲郵便局へはこちらでお降りください。……〕

 都営バスでは全車両Wi-Fiが導入されている。
 敷島は手持ちのタブレットを取り出すと、それでWi-Fiに接続した。

 敷島:「エミリーの腕も、お前と似たようなものになるってよ。よくよく考えてみたら、設計データはアルエットのものを参考にしてるんだから、当たり前だよな」
 シンディ:「そうですね」

 確かに、アルエットには最初から銃火器は装備されていない。
 だから、公安委員会はアルエットのことについては何も言って来なかったのだ。
 ただ、アルエットにはアルエットで、別の武器が装備されているのだが……。

 敷島:「ん?」
 シンディ:「どうしました?」
 敷島:「フィリピンの警察が、とある麻薬組織に突入したところ、人型ロボットの残骸を発見したとあるな……」

 敷島が見ているのは国際ニュースである。
 その後、ネットで検索をしたところ……。

 敷島:「おい、これ……ジャニスとルディじゃないのか?」
 シンディ:「残骸だけでは分からないね……」

 シンディは首を傾げた。
 映像だけではスキャンすることはできない。
 あいにくと今のマルチタイプの性能では、スキャンは直接その物を見ないとダメなのだ。

[同日20:18.天候:晴 JR東京駅・上野東京ラインホーム]

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の9番線の列車は20時23分発、当駅始発、上野東京ライン、宇都宮線直通、普通、小金井行きです。この列車は4つドア、10両です。グリーン車が付いております。……〕

 上野東京ラインが開通したことによって、東京駅をも棒線駅と化したかのような中距離電車。
 しかし、ごく一部に東京駅始発の電車も存在する。

〔まもなく9番線に当駅始発、普通、小金井行きが参ります。危ないですから、黄色い線までお下がりください。この列車は4つドア、10両です。……〕

 眩いヘッドライドを照らしながら、上野方向から中距離電車用のE231系が入線してきた。
 電車のそれはHIDランプであるが、シンディの右目でライト代わりに照らすのはLEDなので、それを光らせる。

 敷島:「光らせなくていい!」
 シンディ:「あっ……」
 敷島:「LEDになったから、消費電力は落ちたんだけどな」
 シンディ:「はい」

 尚、鉄腕アトムなど、両目を光らせるアンドロイドは存在するが、シンディ達は片目だけである。
 これはもう片目には、カメラが内蔵されているからである。
 それでも両目を光らせていた時期はあったのだが、消費電力が大きい上に、カメラがライトの熱で故障したという事案が頻発したので、カメラの付いている左目からはライトが取り外された。
 平賀は常にカスタマイズしているのか、エミリーの場合は左目が光ったり、右目が光ったりと一定を見ない。
 いずれにせよ、LEDという熱が発生しにくく、照度の割には消費電力も少ない照明ができたので、片目だけ光るようにしても十分である。

〔「9番線の電車は20時23分発、上野東京ライン、宇都宮線直通、普通列車の小金井行きです。短い10両編成での運転です。まもなくドアが開きます。乗車口までお進みください」〕

 敷島達は5号車のグリーン車の位置に並んでいる。
 ドアが開くと、敷島達は2階席に移動した。
 これは何も眺望に優れているからではなく、2階席は曲面ガラスになっている為、光の反射でターゲットの姿が歪み、狙撃しにくいからである。
 スナイパーとしての用途があったシンディの言による。

〔この電車は上野東京ライン、宇都宮線直通、普通電車、小金井行きです。グリーン車は4号車と5号車です。……〕

 立場の関係上、敷島が窓側に座り、シンディが通路側に座っている。
 今はまだホームからの明かりがあるので、そんなに目立っていないが、人間そっくりな構造のシンディがロイドとバレやすいことが夜間は起きている。
 それは……。

[同日20:23.天候:晴 JR上野東京ライン1640E列車5号車内]

 かつては発車ベルのみであった東海道本線特急ホームだった所。
 上野東京ラインホームになってからは発車メロディが導入され、その後でゆっくりと発車した。

〔JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は上野東京ライン、宇都宮線直通、普通電車、小金井行きです。グリーン車は4号車と5号車です。【中略】次は、上野です〕

 電車がホームを出ると、ビルに囲まれた高架線の上に出る。
 それでも駅構内に比べると暗く、ブラインドの下ろしていない窓ガラスには、そこに座る乗客達の姿が鏡のように映る。
 マルチタイプなどのロイドには規格として、電源が入っている時はランプが点灯しているのである。
 それこそ両目。
 シンディは緑色の瞳を持っているが、その緑色が淡くボウッと光っているのである(ライトとして点灯させる場合は目玉に当たる部分を回転させて、ライトに切り替える)。
 昼間の明かりではまず分からないくらいの小さな明かり。
 よくスマホやPCなどで、一定時間何も操作していないと画面が薄暗くなり、その後で真っ暗になるだろう。
 正に、画面が薄暗い状態で点灯しているというべきか。
 そうすることで、電源が入っていることを知らせる目的があるという。
 但し、瞼を閉じたり、周囲がとても明るい場所にいる場合は陰に行かないと分かりにくいという欠点があるのだが。
 その為、シンディはこういう所では瞼を閉じるようにしている。
 瞼を閉じていても、人間と違って数々のセンサーなどで危険が及んできた場合はすぐに察知できる。
 元々何もすることが無い場合は、それこそスマホやPCと同じですぐにスリープ状態に入り、バッテリーの消費を抑えるようになっている。
 GPSも作動しているので、自分が今どこにいるのかもすぐに分かる。

 敷島:「新しいマルチタイプは造るのに時間が掛かるし、取りあえずはお前達の腕の交換が先ってことだな」
 シンディ:「はい。新しいパーツがどんなものなのか、とても楽しみです」
 敷島:「アルエットの腕を参考にしているって話だから、だいたい想像は付くけどな」

 下りの中距離電車は、多くの帰宅客を乗せて北へ向かう。

コメント (3)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« “Gynoid Multit... | トップ | “Gynoid Multit... »

3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (マイケル)
2016-12-04 12:03:13
百三さん、こんにちは。

こないだは、ご自身の体験を語って下さいまして
本当に有難うございました。

心より、御礼申し上げます。

百三さんと、コメントされている皆さんって、オフ会
とかやっておられるんですか?
返信する
マイケルさんへ (雲羽百三)
2016-12-04 13:10:26
 こんにちは。

 いや、大したことではありませんよ。
 たまたま運が悪かっただけの話です。

 オフ会ですか?
 特にはやっていませんけど、もし御希望でしたら一考しますよ。
 
返信する
つぶやき (雲羽百三)
2016-12-04 19:55:18
気の合う上司と仕事帰りに、寿司でもつまみながら一杯やった。
信心を辞めたら、怒りっぽくなくなって、底を褒められた。
信仰していた時は正直、
「何だオマエ!信心もしてないくせに!!」
という気持ちが他人に対してあったのは事実。
山門入り口さんの仰る通り、日蓮仏法は唯我独尊的な所があるようだ。
返信する

コメントを投稿

アンドロイドマスターシリーズ」カテゴリの最新記事